2017年10月18日 (水)Road to Tokyo from Fukushima vol.3 ジャパンパラ陸上 in福島 ~"自分"に挑み続ける~ @山田賢治


9月23日(土)と24日(日)、

福島市のとうほう・みんなのスタジアムで開かれた「ジャパンパラ陸上競技大会」。

福島県出身の選手は9人。地元の声援を受けながら、レースに挑みました。

 

その中で私が注目したのは、庭瀬ひかり選手、23歳。

須賀川市に住み、地元の信用金庫で働きながら、夜や休日に練習をしています。

パラ陸上は、障害の種類や程度によって、レースが分けられますが、

庭瀬選手は、車いすを使う選手の中で、最も障害の重いクラス。

100mの日本記録保持者です。大会前の練習と本番に密着しました。

 

庭瀬選手は、いつも自ら運転して練習場にやってきます。

車いすが、車の屋根に収納できる、特別な車です。

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 生まれたときから、

全身の関節が脱臼し、背骨が湾曲するなど、骨が変形する「ラーセン症候群」の庭瀬さん。

自分の体について、こう話します。

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「生まれたときから、この体なんで。この体しか、わからないんですよね。

だから、歩ける人をうらやましいと思わないし、なんでこの体なの?って言ったこともないし」

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 中学校時代は、車いすで走り回る活動的な女の子でした。

その姿を見た先生にすすめられ、地元の車いすマラソンに参加。

いきなり2位の成績を収めます。

そして、4年前。

競技用の車いす、レーサーを手に入れ、本格的に陸上競技を始めました。

レーサーは、オーダーメイド。

正座で乗る選手が多い中、膝が折りたためないため、足を下におろし、ベルトで固定します。

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 庭瀬選手は、車いすを使う選手の中で、最も障害の重いクラス。

日本の女子で唯一、世界でも数少ない選手です。

「お手本になる選手がいない。自分がやるしかない。

自分の記録を塗り替えることが一番のベストタイムになるので、それを目指してやってきています。

“こんな不自由な体をしていても、頑張れることはあるんだよ”ということを見せたいと思います。」

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100mの自己ベストは、31秒台。

リオパラリンピックでは、決勝に出場した選手で、最も遅い記録が29秒台。

庭瀬選手は、今、30秒を切ることを目標にしています。

 

常に意識していること。それは、「今ある機能を、最大限使うこと」。

庭瀬選手は、肘の曲げ伸ばしができないため、車輪を、地面の近くまで押し出せません。

腹筋や背筋のトレーニングで、こぐ際、頭が左右にぶれなくなり、

ゴールへ、まっすぐ力が向かっていくようになりました。

ピッチを早め、スピードアップを図りますが、それには限界があります。

  

そこで意識しているのは、肩の後ろの骨、「肩甲骨」の動きです。

肩の可動域を広げて、ひじが伸びない分、肩でカバーしようとしているのです。

肩甲骨を後ろに引き上げることで、前に進む力が増すといいます。

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しかし、庭瀬選手には、今、大きな課題があります。

体重は30キロ。軽い分、スタートからトップスピードに早く到達しますが、スタミナが切れ、残り30mで失速。

そこで、最近、シートの下に「おもり」を巻きつけることを始めました。

体重を、おもりで増やそうという試みです。

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重くすることで、こいだときに惰性の力が生まれ、後半の失速を防げるのではないか。

しかし、スタートダッシュに、より大きな力が必要になり、

トップスピードまでに、時間がかかってしまう問題も生まれます。

 

おもりを4キロ、2キロ、0キロとそれぞれ走り、トップスピードも測りました。

そして、この日の練習で、今度のレースのおもりをどうするのか、結論を出しました。

「0でいきます。決めました。決まりました。よかった、まよいなく。」

 

「とりあえず何でもやってみて、ダメだったらダメでした。

じゃ、どうする?と次につなげていく。

ダメならできるようにやり方を変えればいい。

やれる可能性があることはすべてやります、それが私のモットーですから」

 

本番の日。

やや緊張した面持ちでウォーミングアップ。集合時刻ギリギリまで体を動かし、スタートラインへ。

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※オレンジ色のユニフォームが庭瀬選手

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スタートから勢いよく出たものの、

記録は、自己ベストに0秒08及ばず、31秒86。

地元で30秒を切ることを目標としていただけに、レース後、悔しい表情を見せました。

しかし、最後、来シーズンに向けて、「いろいろと試していきたい」と力強い声が。

“やれる可能性があることはすべてやる”というポリシーを貫き通したあとに、

どんな成長が待っているのか、楽しみにしたいと思います。

 

パラリンピックには、“残された機能を、最大限にいかせ”という精神があります。

まだまだ自分には、使っていない機能があるのではないか―――。

“自分”に挑み続ける庭瀬選手の姿を、これからも追っていきます。

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投稿者:山田 賢治 | 投稿時間:16:43 | 固定リンク


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