聴覚障害者の間には料理を学び自分の店を持ちたいと夢見る人は多い。しかしコミュニケーションが困難なだけに店を開き軌道に乗せるのは並大抵なことではない。
東京新宿で10年前にろうの男性が開いた居酒屋が今も満員盛況の毎日が続く。
店主は吉岡富佐男さん、その人生は苦難の連続だった。店を開くきっかけとなったのが働いた自動車工場のリストラ、そのあと接客に苦労した吉岡さんを支えた姉の死、入院。それらをそのつど乗り越え今日に至る。
10年続いた最大の理由は、聞こえない人だけでなく聞こえる人も大勢店に通い続けたことである。
覚え立ての片言の手話で日々の生きづらさを訴える客の愚痴をみずからの体験が培った包容力で受け止める。吉岡さんの願いは自分に続く聴覚障害者が現れること。接客術、料理へのこだわり、店の雰囲気作り…「10年」の秘密に迫る。 |