特報フロンティアトップ > これまでの放送 > これまでの放送詳細

これまでの放送

2014.01.10[九州沖縄地方]
九州発 環境ビジネスが経済を変える

番組写真
番組写真 番組写真

2014年、環境ビジネスの勢いが、九州各地で加速している。長崎では、日本初の「浮体式」洋上風力発電の実証試験が開始。鹿児島では、国内最大の太陽光発電所が運転を始めた。環境ビジネスの将来性に賭け、他業種からの参入も増加。ごみ処理や浄水設備などの高い技術をもとに、行政ぐるみでアジア進出を目指す北九州市の取り組みも本格化している。拡大する環境ビジネスは、九州経済の起爆剤となるか。その将来を展望する。

ゲスト
ノンフィクション作家 山根一眞さん


放送まるごとCHECK

放送した内容すべてテキストでご覧いただけます

九州発 環境ビジネスが経済を変える

ゲスト
ノンフィクション作家 山根一眞さん

西東
「間近にきますと相当大きいですね。まるでビルのような高さになっています! ここは長崎県五島沖。日本初の、新しいタイプの風力発電実証実験が行われています。」

番組写真

この巨大な風車。どこが新しいかといいますと、黄色い支柱は、海底に固定されていません。実は、海に浮かんでいるのです。コンクリートでできた支柱のなかは空洞。風や波をうけても決して倒れません。その秘密は…。

西東
「この風車の支柱の重心を下に置くことで、仮に強い大きな波が来ても、傾いても、まるで釣りのうきのようにすっと戻る仕組みになっているんです。」

いま、さまざまな環境ビジネスが、九州の経済に刺激を与えています。各地で急増する太陽光発電、メガソーラー。これまでとは違う高性能の太陽光パネルが、急ピッチで生産されています。

番組写真
番組写真

太陽光パネルメーカー
「日本の品質“ジャパンクオリティ”ですね、こういったものを持って世界で勝負していきたい。」

環境ビジネスが次にねらうのは、アジアの途上国。ベトナムの汚水を飲み水に変えたのは、北九州市の技術です。

ベトナムの水道公社 幹部
「おいしい。ベリーおいしい!」

九州の環境ビジネスに、大きな期待を寄せる人がいます。科学技術に詳しいノンフィクション作家、山根一眞さんです。

番組写真

山根さん
「スイッチ入れると虹も出るんです。」

え?どういうことでしょう?

山根さん
「これがにわか雨のスイッチ、これが霧雨のスイッチですね。」

実はこれ、スイッチ一つで庭に雨を降らせ、打ち水をする装置なんだそうです。

山根さん
「打ち水効果で本当に涼しいです。」

環境に、人一倍こだわりのある山根さん、どうして九州の環境ビジネスなんですか?

山根さん
「環境を考えた技術を、本当にこつこつやっていらっしゃる方がたくさんいらっしゃるのですよ。九州のみなさんが一緒になって九州から日本を変えてやろうじゃないか。」

特報フロンティア、九州の環境ビジネスが経済をどう変えるのか、最前線を追います。

2014年、九州の経済はどう飛躍するのでしょうか。いま成長を期待されているひとつが「環境ビジネス」です。九州では風力発電やメガソーラー、そして水の浄化やゴミ処理技術まで、環境を良くすることに取り組むビジネスが数多く動き出しています。今日は、その将来性を探ります。まずは再生可能エネルギー。こちらをご覧ください。

番組写真

東日本大震災をきっかけに注目され、導入が進められてきました。発電量はまだ全体の2%ほどですが、日照時間が長く風力発電に適した土地も数多くある九州は、高い可能性を秘めています。九州経済産業局が行った調査によると、去年前半、九州で新たに工場を建てるために取得された土地は132件。その7割以上が、太陽光発電のための施設です。

メガソーラー・風力発電 広がる経済効果

宮崎県国富町。新型の太陽光パネルを製造する工場です。東京ドーム8個分の敷地で、一日に生産するパネルは1万5千枚。予約は半年先までいっぱいです。人気の秘密はその耐久性。強度の強いガラスを使い、ひょうが降っても傷がつかない設計です。

エンジニア
「このように(鉄の球を落としても)まったく問題ないことがわかります。」

番組写真
番組写真

さらにこだわったのが、日影ができても発電効率が落ちない性能です。一般のパネルと比較した実験です。従来のパネルは、少しでも影ができると、つないだ電球が一気に暗くなります。一方、新型のパネルでは、影ができても、電球の明るさはほとんど変わりません。この違いは、どこから生まれるのでしょうか。太陽光パネルの内部の構造をみてみます。

従来型では、「セル」と呼ばれる部品が直列につながれて発電しています。一つのセルに影ができると、回路が途切れ、パネル全体の機能が大きく低下します。

番組写真

それが、新型パネルでは。発電した電気が複数の回路を流れる仕組みになっています。影ができても、回路が途切れることがないため、発電を続けることができるのです。

ソーラーフロンティア 掛川一樹工場長
「設置した直後ではなかなか(効果は)わからないんですけども、数年間のデータをみていただければですね、その差は歴然だという風に思っております。」

実はこの工場、6年前まで大手電機メーカーのプラズマテレビの部品を生産していました。しかし、リーマンショックの影響で生産を停止。工場は買収され、太陽光パネルの製造拠点として生まれ変わりました。高度な半導体の技術を持った従業員もそのまま引き継がれました。新型パネルには、プラズマテレビで培った技術が活かされているのです。

ソーラーフロンティア 掛川一樹 工場長
「こちら九州はですね、半導体事業が進んでおりまして。日本の品質”ジャパンクオリティ”ですね。こういったものを持って世界で勝負していきたいというふうに考えております。」

太陽光発電から、新たなビジネスも生まれています。福岡市のベンチャー企業です。社員は4人。1年あまり前から太陽光パネルの点検を行う事業を始めました。

数万枚のパネルが並ぶメガソーラー。故障しているパネルがあっても、見た目ではわかりません。そこでこの企業は、故障したパネルを瞬時に特定する装置を開発。どこよりも早く実用化にこぎつけました。

番組写真

システム・ジェイディー 伊達博社長
「太陽光パネルは、お客様が壊れたということを認識できない商品なんですね。壊れたことをお客様に見える化する、そういう検査装置、テスターといったもが必ず必要になるだろうと。」

売り上げはわずか一年で、1億円を超えました。取引先の評価も上々です。

番組写真
番組写真

取引先社長
「故障すると発電量が減りますよね。発電量が減ると、やっぱりそれだけ売電収入が減りますから、非常に助かっています。」

国は、太陽光発電の経済波及効果が、2030年には6兆円に達するとみています。

風力発電も大きな可能性を秘めています。なかでも、国が注目しているのが海に浮かぶ「浮体式洋上風力」です。去年10月、長崎・五島沖で日本で初めての実証実験が始まりました。

石原環境相
「再生可能エネルギー、その普及にあたっては、特に導入ポテンシャルが最も高いといわれています、このような洋上風力がカギを握っていると考えております。」

番組写真
番組写真
番組写真

環境省は、2年後の実用化を目指しています。将来的には、ここに100基以上が並ぶ風力発電の一大拠点を作る構想です。

佐賀県呼子。ここでも、新しいタイプの風力発電の実験がまもなく始まります。世界で初めての、風力と潮力を同時に利用する「ハイブリッド発電」です。実験を計画しているのは、海底油田の採掘を手掛ける石油開発会社です。今後事業化を進めていくにあたって、地元の協力が欠かせないといいます。

三井海洋開発 中村拓樹部長
「日本の海では、ほとんどの海域で漁業がおこなわれていて、漁業者の方はそれをなりわいにされているわけですよね。漁業関係の方とどう共存していくかというところが、大きなポイントになるわけです。」

そこで、この会社は風力発電が漁業者にも利益をもたらす仕組みを考えました。開発会社は、漁業者に風車を貸し出し、リース料を受け取ります。一方、漁業者は、発電した電気を電力会社に売ります。これによって、支払ったリース料を上回る収入を得ることができるのです。

番組写真
番組写真

実験が行われる地域では、特産のイカの水揚げがここ10年あまり減り続けています。漁業者の間では、安定した副収入が得られるかもしれないと期待が高まっています。

佐賀玄海漁協 酒井英氣理事
「活性化にこれはつながっていく最高のチャンスじゃないかと思うんですね。漁師がいくらかでも飯が食べられればいいかなという気持ちです。」

山根さんに聞く 環境ビジネスの可能性

ゲスト
ノンフィクション作家 山根一眞さん

長年、ものづくりの現場を取材してきた山根一眞さんに、環境ビジネスの経済効果について聞きました。

九州全体の活性化につながるような産業のモデルを僕は作っていくべきだと。そういう動きがないのかといえばしっかりあるんですね。

どんな動きなんですか?

たとえば、風力発電。私たちは風力発電の風車を見ると、ポールがあって、風車がまわっているみたいだな、と思ってしまうじゃないですか。

番組写真

実はあの上の箱の部分に発電機があるわけですが、ナセルといいますが、あれは大きいものでは、マイクロバスのちょっと小さなものくらいの大きさがあります。全体で重さも100トンくらいあるという、すさまじい装置なんですね。

ナセルにもたくさんの機械が入っているんですね?

だいたい、15000点くらいの部品からできているといわれていて、自動車は20000点くらいですから、そう考えると、これは、全体が自動車並みのすごいものなんだ、と。その部品というのはたくさんの部品メーカー、サプライヤーが集まってはじめて成り立つわけです。

これは(かつて)北九州を中心にした、九州の自動車産業というものを誘致をして、その時にたくさんの部品メーカーというものも育ってきた。それによって、自動車の生産が増えたと同時に、雇用もものすごく拡大していった。つまり、九州経済にとって大きなプラスになりましたよね。まさしく次の時代では風力でそういうことが可能だ、と。それをもし持てば、九州からどんどん世界の風車を輸出していくことが可能になる。世界の中心になりうる。再生可能エネルギーという地球に優しい、絶対に求められているエネルギーをりながら、九州はどんどん儲けると、これが大事だし、可能なんです。

未来が開けたビジネスのように感じたんですけども、九州というのは、環境ビジネスに対して、今後どのような覚悟で臨んでいけばいいと思いますか。

巨大なメガソーラーを置いたり、風車を置ける場所というのは、非常に人里離れた場所ですよね。そこで大量電力が生まれても、今度、それを運ぶ送電線の能力が弱ければ運べないわけですよ。そのためには、僕はそれを、パワーハイウェイと呼んでいるんですけどね。自動車が通るハイウェイは、ものが動くんだけども、電力を運ぶ道として、僕はパワーハイウェイというのを日本にしっかりつくるべきだと、ずっと提案をしてるんですけれども、そういうインフラをね、国自身がつくらなければ、どこまでも広がっていくわけじゃないわけですよね。で、そういうことで、日本自身を変えていくという。それで、そういうものが、九州だけじゃないです。まず九州全部にそのネットワークを、パワーハイウェイをつくる。そこにたくさんのこういう産業が生まれ、かつ、再生可能なエネルギーが発電する場所が生まれてくれば、「みんな、九州を見習え」となるじゃないですか。そういうことをやるんですよ、九州は、まず先に。そうすると、国自身もね、「あ、九州方式で日本を変えていかなくちゃいけないな」ということになり、そうすると、それが本州、さらに東北、北海道というふうにして、エネルギーの新しい時代をね、もたらしてくれるだろうと思うのです。

アジアへ売り込め 北九州市の環境技術
番組写真
番組写真
番組写真

さらなる成長のため、九州の環境ビジネスが次に狙うのはアジアです。ベトナム第3の都市、ハイフォン。先月、住民の暮らしを支えるインフラが完成しました。安心して飲める水道水。実現させたのは、北九州市の浄水システムでした。

ハイフォン市水道公社 クォン副総裁
「きょうはハイフォンの水道にとって画期的な日です。おいしい、ベリーおいしい!」

昭和30年代、深刻な大気汚染と水質の悪化に悩まされていた北九州市。

(昭和30年代の映像)

「かつて魚が面白いようにとれたという洞海湾は工場排水による汚染が進み、魚が一匹もすまない死の海になってしまいました」

地元の企業は、公害を克服する過程で培った技術やノウハウを生かして、さまざまな環境技術を開発してきました。光触媒を利用し、工場などから出る悪臭を脱臭する装置。煙などに含まれる、微量の粉じんを測定する技術。こちらは、特殊な膜を使って、汚水を浄化するシステムです。こうした技術をとりまとめ、アジアに売り込んでいるのが北九州市です。

ハイフォンに水道技術の売り込みを始めたのは5年前。水道水の源である川には、生活排水や工場排水が垂れ流されていました。

「生ごみ、とかこういう…見てわかりますよね。川に捨てられて。あそこ見えます?」

北九州市の技術が採用される決め手となったのは、安くて安全な水を提供する独自のシステムでした。

番組写真
番組写真

使われているのは活性炭です。活性炭にすみついたバクテリアが、半永久的に汚水を浄化し続ける仕組みです。オゾン式と呼ばれる一般的なものと比べ、建設費は半分。ランニングコストもわずか20分の1に抑えられます。

北九州市上下水道局 久保田和也 さん
「この品質であれば、市民のみなさまに喜んでいただけると感じました。水道技術屋として、本当にうれしいと思います。」

「乾杯!」

北九州市は、地元企業が持つ技術を、アジアに売り込む戦略を次々に立てています。この日は、アジアの主要都市の幹部と地元の水道関連の企業を招き、親睦会を開きました。

地元の水道関連会社 社長
「今のハイフォンに最も適したプランをもって、一度提案に上がりたい。」

番組写真

地元の水道関連会社 社長
「ふつうこういった形でお会いできない。こういった形でお話しすることはとてもできない。こういう場があることは非常にありがたいと思います。」

アジアを目指す 九州発環境ビジネス

ゲスト
ノンフィクション作家 山根一眞さん

環境ビジネスというと、どこの企業が頑張ってやっているか、という企業の経営者の判断とか、あるいは手腕で変わっていくと思いがちですけれども、もちろん、それも大事ですが、非常に大きな裾野のある産業ですから、「俺がやるぞ」と言ってもままならない。誰かがマネージメントしなければいけないわけです。そこの土地の所有者は当然市ですから、市がやっていくことだと思うのです。だから、市、自治体が、国と一緒になって、未来へのビジョンを出していく役割を持っていると思うのですね。北九州の場合は、今まで環境都市としてやってきた実績があります。そういう北九州が、今度はこれをやるか、ということになれば、他がやるのとは違いますよ、北九州、いよいよですか、じゃあパートナーを組みませんかと、そういう形になってくると思うのです。

中国のPM2.5みたいなことが起こってくると、もう年間実は中国のメディアの中で調べてみると、1年間に1万数千人がPM2.5による肺や呼吸器の疾患で亡くなっている、ということが言われるようになって、極めて深刻な問題であると受け止めるようになりましたよね。そうなると、国としても、これを放置すれば、国そのものの安定を欠くことになりますよね、住民、国民の不満が大きくなれば中国にとっても。そうなると、当然ながら各企業にこういう対策を義務付けてくる。排出をするな、と。そうするとノウハウがないとそれはできない。そこで初めて、日本の環境ビジネスがお金になる、という時代がやってきた、ということだと思うのですね。

いま、という時期で見ると、条件は整っているとおっしゃいましたけれど、どういう時期にあると思いますか。

もちろん、これは新しい産業を立ち上げるわけですから。あるいは、新しい産業ミニ都市を作ろうということですから、誰かが言い出してすぐにワッと行くものではない。そのためにはあらゆる分野の日本の優れた人たちを集めたシンポジウムや、特に公開で意見の交換をしながら、そして多分、今度は日本だけではなくて、アジアの各国の代表も招きながら、アジア全体の新しい環境時代というものをどうするのか、ということを話し合いながら、着実に進めていくべきだと思います。

それを非常に象徴するのが、2013年の5月に、中国と韓国と日本の環境大臣が集まった会議が、北九州で開かれたんですよ。 いま、中国、韓国と非常に関係が悪いじゃないですか。国同士の関係。環境は別なんですよ。これはPM2.5が1つのテーマだったんですけども、それ以外の環境ビジネスについても、今後お互いに協力してやっていきましょうと話して、共同のメッセージも出しました。

これは確実に儲かる、大きな富を得ることではあるけれども、かつての産業のようにただ富を得れば良い、というだけではいけないと思うのですよ。

そういう意味で望ましい未来図というものをいつも念頭に置きながら、どう具体化するのか、ということを徹底的に細かく、注意を払って、かつ大胆にやっていく、ということだと思いますね。

九州でうまれた環境ビジネスは、日本からアジアへ、その影響力が広がっています。風力発電やメガソーラーの現場では、関係する部品メーカーでも生産が活発化し、さらにメンテナンスなど、さまざまなビジネスの種が生まれつつありました。 また、アジアでは、北九州市のように自治体が後押しする取り組みだけでなく、法律の専門家や国際取引のノウハウを持つ業者が、環境ビジネスの企業と協力して交渉をまとめる動きも、一部で始まっています。

さまざまな業種の企業、そして自治体が一体となって、オール九州で取り組むことができれば、その可能性は非常に大きなものになるのではないでしょうか。

ページ先頭へ