2019年4月15日

サクラ咲け!~被災地に再び桜並木を~


「天空の山桜」。地元の人たちがこう呼んでいるサクラが、九州北部豪雨の被災地、福岡県朝倉市の東林田集落にあります。このサクラは高台にあったため被害に遭わず、ことしも満開の花を咲かせました。その一方で、川沿いに広がっていた桜並木は、あの豪雨で流されてしまいました。「ふるさとにあの桜並木を取り戻したい!」。動き始めた地元の若者たちを追いました。

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こちらが「天空の山桜」です。おととしの九州北部豪雨で大きな被害を受けた朝倉市の東林田集落にあります。高台にあるため被害を免れ、ことしも見事な花をつけました。

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集落の住民でつくる復興委員会の林隆信委員長です。ほかの住民たちと一緒に8年前から、この「天空の山桜」のライトアップをしています。「この天空の山桜は復興のシンボルで、住民たちのよりどころの一つになっています。ただ、豪雨の被害もあって、山桜までの道のりは危険です。復旧工事が終わるまでは山桜には近づかず、遠くから楽しんで欲しいです」(林隆信さん)。しかし、東林田集落では残った桜があった一方で、流されてしまった桜もあります。「豪雨の前は、もともと、集落の川沿いに桜並木があって、天空の山桜と一緒に、桜の里みたいな形で守っていこうという活動をしていたんです。でも、豪雨で完全に川沿いの桜並木はなくなってしまいました」(林隆信さん)。

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この写真がその桜並木です。以前は、地元を流れる赤谷川沿いに広がり、サクラの季節には住民たちの憩いの場となっていました。

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こちらは九州北部豪雨のあとの現在の様子です。川の水があふれ、
サクラの木は流されたり枯れたりして、すべて失われました。

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この集落で生まれ育った、塚原健児さんは、復興の役に立ちたいと、20代から40代までの13人からなる若者グループ、「東林田Lover’s」を作りました。
桜並木にも特別の思いがあるといいます。「サクラの時期になると、やっぱりここに来ることも多かったですし、夏になると蛍も飛んできていましたので、すごく思い出深い場所です。豪雨のあと、桜並木がなくなっているのを初めて見たときには、落胆しました」(塚原健児さん)。

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塚原さんたちは今、桜並木を復活させる取り組みに力を入れています。きっかけは九州大学の学生たちが行った聞き取り調査の結果を見たことでした。「アンケート結果の中に、桜並木を復活してほしいというものがありました。地元の人たちにとって、思い出深い桜並木だということがわかったので、復活に向けて、なにかできたらいいなと思いました」(塚原健児さん)。

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塚原さんたちは去年12月とことし2月、親の世代にも呼びかけて、「東林田未来会議」を開きました。この中で、川の改修工事が終わったあとの川沿いに、およそ1キロにわたって、桜並木を整備する計画を話し合いました。塚原さんは仮に時間がかかっても、桜並木を復活させてふるさとを復興したいと考えています。

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「今、集落に戻って来られていない人たちが、また集落に戻ってきたいと思えるように、地元に残っている人間の責任として頑張りたいと思っています。桜並木があっての東林田という人たちが多いと思うので」(塚原健児さん)。


【取材後記】
塚原さんは豪雨の前は、集落の行事などにあまり参加していなかったといいます。しかし、豪雨を経験して「これからは自分たちが集落を盛り上げ、作り上げていかないといけない」と感じたといいます。冒頭に紹介した復興委員会の委員長の林隆信さんは「豪雨を機に、塚原さんらと知り合いました。これまで地元の行事は、年配の人が中心で、若い人たちはあまりでてこなかったのですが、豪雨の後、彼らと知り合い、復興に向けて共に行動をすることができていて、うれしく感じています」と話していました。塚原さんたちは、自分たちのグループを「東林田Lover’s」と名付けています。集落への愛をこめて、この名前にしたということです。メンバーの名刺には、もう一度、桜並木を取り戻そうという決意を込めて、桜並木のイラストがプリントされています。住民の1人が「桜並木は当たり前のようにそこにあったから、今、思い出そうとしても、何本くらいあったか、思い出せない」と話していたことが強く印象に残っています。あらためて、おととしの九州北部豪雨がいかに、人々の日々の当たり前の生活を変えてしまったのかを考えさせられたからです。桜並木の周辺は、豪雨で川の流れが変わってしまい、二次災害を防ぐために今も大がかりな川の改修工事が続いています。工事が終わるまでには少なくともあと3年はかかる見通しで、桜並木をよみがえらせるにはまだまだ時間がかかります。それでも塚原さんたちはあきらめずに復活に向けて活動を続けたいと考えています。

久留米支局記者・山崎啓

投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:10時57分 | カテゴリ:WEBいち! | 固定リンク

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