2019年03月06日 (水)なぜ消える?電動工具の謎


今、建設現場で、「知られざる盗みの被害」が相次いでいるのを知っていますか?狙われるのは、電動のこぎりや電動ドライバーといった「電動工具」。このところ高額の被害が相次いでいます。これまで表面化してこなかった建設現場ならではの被害の現状や背景を取材しました。

【被害相次ぐ工具窃盗】

w_190305_03_03_01.jpg

「床の溶接機、10万円くらいするやつですね」「タイルカーペット貼るときに使うんですけど、2万5千円くらいですね」「床を抑えたり、金物を付けたりするものですね。8万円です」。マンションやホテルなどの新築ラッシュが続く福岡県内の建設現場で、電動工具を盗まれる被害が今、相次いでいます。

w_190305_03_02.jpg

福岡市中心部の新築ホテルの現場では、電動ノコギリやドライバーなど4点、あわせて10万円ほどの工具が盗まれました。

w_190305_03_03.jpg

こちらの新築マンションの現場では、20点あまり、109万円相当の工具が被害に遭いました。

w_190305_03_04.jpg

昨年1年間の被害は、警察が把握しているだけでも福岡県内で104件に上ります。

【なぜ工具が狙われる?】

なぜ、電動工具が狙われるのでしょうか?

w_190305_03_05.jpg

内装業者の岩崎憲一さんは、過去に5回ほど盗みの被害に遭いました。「被害額は、20万円、30万円ぐらいはありますね。廊下などに出してたんですよ。部屋の前に置いていたらなくなって、その間たった2分3分ぐらいですかね」

w_190305_03_06.jpg

病院やマンションなど、規模の大きな建物の建設現場では、複数の業者が作業していて、見知らぬ人がいても不審に感じることは少なく、被害に遭いやすいといいます。

w_190305_03_07.jpg

また、盗まれた物のほとんどが質屋やネットオークションなどで売られていて、電動工具が高値で売れることも被害につながっています。

一方、被害届を出さない人が多いのも、工具窃盗の特徴です。福岡市内で大工として働く米倉善明さんも、過去10回あまり被害に遭いながら、ほとんど被害届を出したことがありません。「被害届は1回提出しただけで、あとは出していません。どうせ戻ってこないだろうというのがあるので、すぐに新しい工具を買いに行きますよね」

w_190305_03_09.jpg

被害を届け出ない理由の1つに、工具の所有者の確認が難しいことが挙げられます。電動工具には、メーカーの保証など、工具と所有者を結びつけるものがありません。その理由は、壊れた原因が、初期不良などメーカー側にあるのか、大工が使ったことによるものか、判断するのが難しいためです。米倉さんは、盗まれた工具を警察署から返されたことがありますが、受け取るときに自分のものだと証明することが難しかったといいます。「警察署で『これは自分の工具です』と言うと、警察からは『なぜ分かるんだ』と。そういう言い方をされました。これだと、正直なところ、盗まれても諦めますよね」

【対策始まる】

w_190305_03_10.jpg

対策に乗り出したところもあります。神戸市にある情報通信会社では、工具の製造番号と所有者の情報を結びつけて管理するシステムを開発しました。さらに、警察と連携し、情報を共有する取り組みを試験的に始めています。

w_190305_03_11.jpg

連携の仕組みです。所有者は購入した時に工具の情報を登録します。警察は、所有者の分からない工具があった場合、会社のデータにアクセスして製造番号を検索します。これにより、工具の所有者の情報を知ることが出来ます。この取り組み、兵庫や愛知など4県の警察で、試験運用されているということです。

w_190305_03_12.jpg

また、転売を防止するためのQRコードも考案しました。携帯電話で読み取ると、「防犯登録されている」というメッセージが表示されます。このシステムを開発した会社では今後、工具を販売する店舗などに呼びかけ、登録の普及を進めるほか、警察とも連携して、被害に遭った所有者に速やかに返却される仕組みを作っていきたいとしています。「自転車のように、買ったら必ず登録してもらい、警察に届けを出せば、盗まれても出てくる可能性があるということを、しっかり広めていける形にしたい」(神戸市の情報通信会社)

【取材後記】
私たちが日常生活の中で物を盗まれた場合、警察に届け出ることが多いと思います。しかし電動工具の場合、「警察署に足を運ぶことで、作業仲間に迷惑がかかる」といった声や、建設現場に警察官が入ることで、工期が遅れることを懸念する声など、盗まれたことの届け出よりも、現場を心配することを優先する声が多く聞かれました。また、「その日の仕事ができなくなるので、『工具を忘れた』と言って、その足で買いに行く」と話す大工もいました。さらに、やむにやまれず、ついつい現場に工具を置きっ放しにしているケースも多いというのです。現場から数百メートルも離れた場所にしか駐車場がない建設現場も多く、毎日のように重い工具を持って現場と駐車場を往復するのは、それだけで重労働だというのです。とはいえ、電動工具は仕事をする上で必要不可欠です。その認識が強いだけに、被害届を出さないことにもつながっているようにも思いますが、逆に、その認識の強さを、仕事に欠かせない電動工具を絶対に盗まれないよう、しっかり管理していこうという思いにつなげて
みてはどうかと取材を通して感じました。

福岡放送局記者 福原健

投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:10時51分


ページの一番上へ▲