2019年01月16日 (水)"帰りたいけど帰れない"~長期避難世帯集落は今~


平成29年7月の九州北部豪雨から1年半あまり。避難生活を続けている人は福岡県と大分県で今も1000人を超えています。このうち、福岡県朝倉市では、杷木松末地区と黒川地区の6つの集落の91世帯が、二次災害のおそれがあるとして「長期避難世帯」に認定されています。日中は出入りできますが、もとの自宅に住むことができない状態が続いています。再建への希望を持ち続けながらも、不安を募らせる集落の人たちの今を取材しました。

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朝倉市の山あいに位置する杷木松末地区の石詰集落。この集落に暮らしていた人たちは長期避難世帯に認定されています。豪雨から1年半がたっても、崩れた斜面の山肌はむき出しになったままです。

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「とにかく、これから上が全部流れてですね・・・」。石詰集落の区長、小嶋喜治さんも自宅に住むことができなくなり、毎日のように仮設住宅から集落に通い、復旧工事の進捗状況を確認しています。

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今後、長期避難世帯の認定が解除され、再び住めるようになるには「危険性が低くなった」と判断される必要があります。しかし、その判断ができる本格的な復旧工事の完了まで、あと何年かかるのかは見通せていません。

「今は、河川や道路復旧の本格工事が始まるまでのブロックをずっとつくっている。100個、200個じゃ足りない。何万個といりますけんね。1、2年で終わる工事じゃない」(小嶋喜治区長)。

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そうした状況の中、小嶋さんは集落に暮らしていた住民たちの不安をひしひしと感じています。

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小嶋さんとともに石詰集落で生まれ育った、小ノ上喜三さんです。
自宅は全壊。営んでいた柿農園も一部が流されましたが、川のすぐそばでかろうじて残った選果場で作業を続けています。ふるさとを捨てられないと思っているからです。

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「ここは一生かけて整備して、自分の一生が詰まっていますからね。これを捨てるというのは自分を捨てるような風に感じますからね」(小ノ上喜三さん)
しかし、もとの暮らしを取り戻したいと思っても、先はまったく見通せません。

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「今ある家でも残れるのは4~5軒じゃないですか。4~5軒の家でこの集落を維持していけるのか心配しています」(小ノ上喜三さん)将来が見通せない中でも、区長の小嶋さんは、集落の絆だけは失いたくないと考えています。

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そこで、年末には集落の入り口に、高さおよそ2点7メートル、土台の幅もおよそ80センチある大きな門松をつくりました。復興への願いを込めてです。

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年明けには、去年豪雨で行うことができなかった、「鬼火たき」も行いました。住民など40人以上があつまり、勢いよく燃え上がる炎を見ながら、1日も早い復興を願いました。そして、久しぶりに顔を合わせた集落の住民たちと一緒に、お餅を食べたり、お酒を飲んだりして、以前のような楽しいひとときを過ごしました。

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門松づくりも鬼火たきも、住民がひとときでも笑顔になってほしいと小嶋さんが企画しました。「長期避難世帯に認定された集落であっても、再建への希望は持ち続けたい」。小嶋さんの願いです。

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「やっぱり生まれ育ったところが一番大事ですけんね。とにかく、1日も早く、普通の生活に戻ってもらいたいです」


【取材後記】
「きょうのように住民のみなさんと顔を合わせるのが何よりも楽しみです」年明けの鬼火たきを取材した際に小嶋さんは私にそう話してくれました。住民たちと笑顔で話す小嶋さんが印象的で、ほんとうにこの集落のことが大好きなのだなと改めて感じました。小嶋さんは「集落のために」と、2年が任期の区長を1年延長しています。長期避難世帯がいつ解除されるかわからず、先が見えない中で、さまざまな悩みや不安を抱えながら、それでも集落のことを考え、絆を大切にしている姿が深く心に残りました。私自身、今後も継続して、石詰集落を、そして九州北部豪雨の被災地を取材していきたい。そう強く思いました。

久留米支局記者 山崎啓

投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:18時25分


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