2018年07月23日 (月)きのうの敵はきょうの友


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7月の西日本を中心とした記録的な豪雨では、住宅だけでなく、工場なども被災して、途方に暮れている事業者の方がいるかもしれません。1年前の九州北部豪雨でも朝倉市では300余りの中小企業が被災し、1年がたった今も、売り上げが被災前の水準に戻っていない企業もあるといいます。こうした中、被災しながらも、いち早く操業を再開し、業績が豪雨前の水準を取り戻している会社があります。背景には、ライバル企業からの知られざる支援がありました。

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朝倉市にある建材メーカーのオークマでは、ハウスメーカー向けに住宅用のドアなどを作っています。

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工場もあるオークマの会社の裏には妙見川が流れています。

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「この川は普段は10,20センチくらいの水かさで非常に穏やかな川なんです」(オークマ 大隈賢一郎 副社長)

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九州北部豪雨では、この妙見川が氾濫。工場に大量の泥水が流れ込み続けました。

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商品のドアおよそ8000枚がだめになり、工場の機械も壊れました。被害は数億円にも及び、操業中止に追い込まれました。

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「仕事ができなくなってしまうので、売り上げもなくなる。いろんなもう不安要素が頭をかけめぐったような状況でしたね」(オークマ 大隈賢一郎 副社長)。先が見通せない中、オークマにあるところから支援の手がさしのべられ助けられたといいます。それは、意外な相手でした。

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オークマを支援してくれた先は、朝倉からおよそ700キロ離れた岐阜県下呂市にありました。建材メーカーのハウテックです。

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オークマと同じ、住宅用のドアを作っています。ハウテックとオークマは互いに、同じハウスメーカーに商品を販売するなど、30年来、しのぎを削ってきたライバル企業です。

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ハウテックの中川正之社長は、朝倉の豪雨のニュースを見て、オークマからの商品の供給が止まり、自分の客でもあるハウスメーカーが困るのではないかと即座に感じたといいます。

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「オークマさんのお客さんに対する納入が滞るだろうから、まず第一にお客様が困るだろうと思いました。すぐ役員にLINEを送り、オークマさんにとりあえず状況確認の電話をしてくれと伝えました」(ハウテック 中川正之社長)

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中川社長はすぐに商品の増産と輸送ルートなどの確保を社員に指示しました。社員たちは、残業や休日出勤で増産に対応。商品のこん包方法をオークマと同じ仕様のものに変えたり、九州や四国など配送したことのない遠い地域にまで商品を運び、利益もほとんど出ない中で商品を供給し続けました。

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ハウテックの中川社長は、単に、自分の客のハウスメーカーを助けたいという気持ちだけではなかったといいます。「長年よきライバルとして頑張っておられるオークマさんですよね。お客さんも困っているし、オークマさんも困っている。だったら我々がなんとかしなければという気持ちがありました」

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「ハウテックさんの話を伺ったときは心からありがたいと思いました。感謝の気持ちしかないのが正直なところです」(オークマ 大隈賢一郎 副社長)

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オークマはその後、被災から1か月あまりで操業を再開しました。ライバルのハウテックは、商品を納めたあと、オークマの顧客を囲い込むことなく返してくれました。このため、オークマは操業再開後も顧客を失うことなく、売り上げはすぐに被災前の水準に戻ったと言います。ライバルがこけたら、助けるより、客を奪うチャンスと考える企業もあると思います。これまでの災害現場での企業取材を通して、操業を止めている間、顧客を奪われて、操業再開後も客を取り戻せず、経営が厳しくなる企業も多いと聞きました。
そういう事態を避けるためにも、まさに「きのうの敵はきょうの友」ではありませんが、今回のような企業どうしの助け合いが専門家も効果的だと指摘しています。

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「自助には必ず限界があります。今回のケースは機転が利いてうまくいったケースですが、たまたまにしないためには仕組みとして、自治体や商工会議所などが、どうすればこうした取り組みを推進できるか、どうしたらマッチングできるかを考えていただきたいと思います」(名古屋工業大学大学院 渡辺研司 教授)

【取材後記】
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日本海側の新潟と太平洋側の神奈川のメッキ組合は、災害時に生産を代行するため、人や工場を融通し合う協定を結んでいるといいます。事前に相手の工場を視察して、同じ仕様で製品を作れるようにするなどの対策も進めているということです。これは、中越地震や東日本大震災を教訓に結んだもので、距離が離れた地域どうしだと、同時に被災する可能性も低いため、違う地域同士の連携も重要だと感じました。

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ことしも西日本を中心とした豪雨など、各地で災害が頻発しています。BCP=事業継続計画など、災害に自ら備える“自助”はもちろんのこと、他の企業と連携する“共助”を模索するなど、いま一度、企業の備えは十分か、見直す必要があると感じました。

福岡放送局記者 仲沢啓

投稿者:ロクいちスタッフ | 投稿時間:10時48分


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