9月4日(金) 放送
「4回連続『幸福度日本一』
何が評価されたの?  変わる幸せのかたち②」

角谷:
「都道府県幸福度ランキング」で4回連続日本一となった福井県。
街の人たちに聞くと好意的に受け止める人もいた一方、「あまり実感はない」と話す人もいました。実際のところ何がそんなに評価されたのでしょうか。
宗像記者と見て行きます。宗像さん、福井が1位というのはわかりましたが、他県も含めた詳しい順位も教えてください。

宗像:
今回の順位はご覧の通りです。1位が福井、2位が富山、3位が東京。
福井は首都・東京を抑えての4回連続1位です。
このランキングは「基本指標」と5つの分野の「分野別指標」ごとに選び出した統計データをもとに総合的に評価して順位付けをしています。
ことしは新たな指標が5つ追加され、75の指標で評価されました。
このうち福井は特に「教育」と「仕事」の指標が際だって高くなっています。

宗像:
まず仕事についてですが、「働く女性の割合=女性就業率」が全国1位、「インターンシップの実施率」「大学卒業後の進路が決まっている学生の割合」も1位となりました。
さらに「若者失業率の低さ」も4位、「正社員の割合」も3位と上位になっています。

続いて「教育」です。
「子どもの運動能力」「不登校児童の少なさ」がいずれも1位で、「小中学生の学力」も3位と高い水準になっています。
こうした福井県の評価の高さについて、分析を行ったシンクタンクの研究員は次のように指摘しています。

(日本総合研究所 安丸尚登研究員)
「福井県の強みは教育と仕事の充実。学校や家庭に子どもたちが健全に成長できる教育環境がある。技術を持った中小企業がきちんとあって、若い人が地元で仕事に就けている」

一方、ランキングから見えてくるのは好評価ばかりではありません。
弱い分野の課題も浮き彫りになっています。
たとえば「文化」の分野は毎回順位が低く、今回も総合で38位でした。
中でも「外国人宿泊者数」は43位、「文化活動を行っているNPO法人の数」は45位などとなっています。

角谷:
新型コロナウイルスの影響で全国一斉に外国人旅行者は激減していますが、確かに感染拡大前は常にインバウンド面の課題が指摘されていましたね。一方、新型コロナ感染拡大の中での「変化」、何か見えてくるものはあるのでしょうか。

宗像:
これまで福井県は大都市圏からの往来やインバウンド面での「交流人口の拡大」を目指してきましたが、コロナの影響でそれは難しくなってきました。
不特定多数の人との接触を避けたいとの風潮が広がる中、これまでマイナスだった「人が少ない」「田舎」といったことが逆にプラスの要素として受け取る見方が強まっています。

角谷:
社会が大きく変化し、「幸せのかたち」も変わる中、「幸福度ランキング」にも何か影響が出てくるのでしょうか。

宗像:
幸福度ランキングを分析したシンクタンクの研究員は、今後はコロナの影響で幸せの基準が変わり、ランキングの指標にも影響が出る可能性があるとしています。

(日本総合研究所 安丸尚登研究員)
「リモートワークという働き方が本格的に浸透したことで、若い世代のワークライフバランスや住環境、子育て環境などに関心が高くなっている。また異常気象や自然災害のリスクも含めて「安心安全に暮らせる地域か」ということにも関心が高まっている。そのような点が幸福の基準になっていくと考えている。
リモートワークという点で考えると、都市部の家がコストが高い家の中にワークスペースが求められることになった。子どもがいる家庭では「子どもを遊ばせる空間」と「仕事をする空間」を分けなければならない。広い住空間に対するニーズは今後高まっていく。ランキング作成にあたって“新型コロナインパクト”が統計の数値にどう影響してくるのか、社会のパラダイムが変わる中で地域の幸福価値観がどう変容していくのか注視していきたい」

宗像:
研究員は、コロナの影響で大きく変化する幸せのかたちに合わせた幸福度の指標づくりを検討していく考えを示していました。「3密」への嫌悪感の強まりなどから、満員電車での通勤や狭いマンションや職場生活などを余儀なくされる都市部への評価が下がっているとの指摘もあります。それなら子育てや生活環境が充実した地方に住むという選択も増えてくるのかもしれません。

角谷:
4回連続で幸福度ランキング1位になった福井県にとってはむしろこれからが正念場ですね。
宗像:
そうですね。新幹線開業も控える中でこうした社会の大きな変化を受けて、福井の長所をアピールしながら県民が望む地域を作っていくことができるのかが、今後の焦点になると思います。


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