1月16日(木) 放送
「家庭での介護②」

角谷:
「ニュースザウルスふくい」ではおよそ2か月前から「家庭での介護」についてのお便りを募集し、放送やサイトでご紹介しています。
きょうはこうしたお便りから見えてくるものについてお伝えしていきます。
羽生:
これまでにあわせて48人の方からお便りを寄せていただきました。こちらはその一部ですが、家族を介護中の方が苦労をつづったものも多くありましたし、長い介護生活を終えた方が介護した家族のことを思って書かれたものもありました。
私たちも当事者の方ひとりひとりの「生の声」を読ませていただきながら、県内にはこれだけ多くの介護に携わっている方がいらっしゃるんだということを実感しましたし、ひとごとじゃないんだということを強く感じました。
角谷:
お便りを寄せてくださった方はどのような方々なのか。こちらをご覧下さい。

角谷:
まず男性が10人、女性が37人。女性が多いですが、男性で介護中の方からも介護の苦労話などをいただいています。

角谷:
そして年齢層ですが、やはり親の介護に携わる50代60代の方が多いですが、70代で、介護する側もされる側も高齢者の「老々介護」の実情を書かれた方もいらっしゃいましたし、中には30代で母と祖母の介護をされている方もいました。

角谷:
そして、きれい事ではすまない介護生活の中で抱えた、人には言えない苦しい思いをつづる方もいました。今月いただいた、夫を介護する県内の60代の女性と嶺北にお住まいの男性からの投稿を短くご紹介します。

「うちも60代とまだ若いし、先が長いと早くから施設入れるのも、自由が無くて可哀想かなと思ってしまうし、そうかと言っても私もそろそろ限界かなと思うし、ショートステイも月に5日ほど利用しますが、それさえも何で行かなあかんのやと、私が楽したいからやと言います。
自分の中で頑張ろうという気持ちと、無理はよくないという気持ちが交錯してます」(県内・60代女性)

「介護に無縁の頃は、そんな非人間的な事。と思っていましたが、診る立場になると180度考えが代わりました。社会資源を使ってもいますが、どうする事も出来ず日々疲れ果てています。
介護してる者を鬼にも変えるのです。
大事にしてあげてと言われると内心、「これ以上どうしろというの」と負担になります。四面楚歌です。
人の事は解らないという事を分かって欲しいのです」(嶺北・男性)


羽生:
こうした介護についての声を、私たちはどう受け止め、どう行動していけばいいのか。専門家に聞きました。

-介護の問題に詳しい福井大学の北出順子講師です。北出さんは自身も母親を介護する当事者でもあります。

北出講師:
「一番思いましたのは、え、ここまで書いてくださるんだっていうことを思いました。いろんな思いを抱えて介護していらっしゃるってことがひとつと、もうひとつは、よく声をあげてくださったなと思いました。本音ってなかなか言えないと思うんですよ人間って」。
「今介護していらっしゃる方というのはひとつ余裕がないこと、余裕がないから、声を上げられない。あげたくないのではなくて、あげられないのではないかなということをひとつ思いました。だからこそ、この本音を出せる場づくりっていうのが、お便りとかインターネットによる投稿だと自分の空いた時間にできますよね。それっていうのが、非常に大事な場になったんだろうなということを思いました」。

羽生:
お聞き頂いたように「余裕がないから声をあげられない」というご指摘、なるほどと感じます。
「声があがっていないから大丈夫」ということではないんですね。

角谷:
お便りを読ませていただく中でも、介護で大変な中でよく声をあげてくださったと感じる方、いらっしゃいますよね。

羽生:
こうしたお便りをお寄せいただいている方の内訳をみますと、いま介護している最中の「当事者」の方がおよそ半数の25人。介護を終えた「経験者」の方が16人などとなっています。

角谷:
そしてこちら。お便りに書かれた内容に含まれる介護をめぐる課題について、分類した表です。
「認知症の方の介護」について書かれている方は11人いらっしゃいました。
また、「家族や親族の理解や協力がないこと」については指摘するものも10人と多くありました。
また、10年以上と長期間介護をしているとの内容や、介護のために仕事を辞めたり、就職できない、などの内容、
また中には気持ちが追い詰められて自殺を考えたことがある、という内容などもありました。
羽生:
本当にさまざまな重い課題がありますが、これまで朗読させていただきながら、特にこちらの「親族や家族の無理解や非協力」の部分は、とても印象に残りました。
角谷:
介護で体力的・精神的にきつい中で、介護していない遠方の家族や親族などから心ないことばをかけられて、というようなお便りがありましたよね。一方でこの部分は、地域の方やまわりの方に支えられた、という経験を多くの方が寄せてくださっているところでもあります。
嶺南に住む50代の女性の投稿もそのような内容です。ご紹介します。

「介護の為に転入し独りで義父母を介護する私に近所の方は大変優しく、まだ体が元気だった義父が夜雪の中何度も徘徊し、県内の親族から『何やってる』と怒りの電話やメールが絶え間ない中、子供を家に残し取り乱す義母をなだめながら義父を探してると近所の方が『爺さん婆さんには昔世話になったし』と一緒に探して下さり、これが地区の繋がりか、と涙が出ました。
義父が真夜中に徘徊し始め入所すると、寂しがる義母の話相手をしてくれました。
全体的に地域の繋がりが薄くなるこれからはあてはまらないかもしれませんし期待するものでもありませんが、周囲にした事が回り回って家族に還ってくるのかなと。
日々の自分の言動も気をつけようと思います」

角谷:
地域の方の理解と支えに助けられた経験、嶺南にお住まいの50代の女性のメッセージでした。
寄せられるお便りを通して、今後、行政機関や介護に携わる方々、また地域の一員としての私たちに問われているものは何か。福井大学の北出講師は次のように話しています。

北出さん:
「一番学ばなければならない、この声から我々が学ばなければいけないっていうのは、よく何かあったら連絡してくださいとか、思ったことがあったらおっしゃってくださいって、私もよく言ってきましたし、よく聞きますよね。まさにそうなんですけど、間違いではけっしてないですけど、余裕がなく一生懸命介護されてる方に対して『あなたから言ってね』というのは、ちょっと酷じゃないのかなと思いました。
いろんな方いらっしゃいますから、本当に(自分から連絡してくるのを)待ってていい人と、こちらから聞いてあげなくちゃいけない方と、本当の小さな会話が助けになる人といろいろいると思うんですよね。
それともうひとつは、けっこういろんなことを思ってらっしゃる方がいらっしゃいますので、このそれぞれのいろんなご体験を、介護してるしてないに関わらず、我々が目にすること、耳にすることで、どんどんひとごとじゃなくなるのかもしれないなっていうことも思いました」。

羽生:
北出さんの「小さな会話が助けになる人がいる」という話、心に残りました。
角谷:
家庭での介護についてのお便り、引き続き募集しています。また今後、お便りを寄せた方の中から協力を得られた方には取材させていただいて、特集番組などでもお伝えしていく予定です。

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