2月28日(木) 放送
「女性就業率1位の謎」

五十嵐:
「幸福度日本一ふくいの謎」。きょうのテーマは「女性就業率1位の謎」です。
福井県は、働く女性の割合を示す「女性就業率」、共働きの世帯の割合を示す「共働き率」がともに全国1位です。

五十嵐:
女性就業率や共働き率の高さは、歴史的な産業構造が理由のひとつだと言われています。

豊島:
繊維やメガネなどの基幹産業では女性が家の近くで働き手として活躍するケースが多く、母親が働く姿を見てきた子どもたちも、自分も大きくなったら働くのが当然だという価値観が根づいた、ということも言われています。

五十嵐:
国が4年前に行った意識調査は、「子どもを持っても働きたい」と答えた女性の割合が福井県は
37.8%1位と全国平均を10ポイント近く上回っています。
豊島:
「よく働く」と言われる福井の女性たちですが負担や不満に感じていることはないのか、その背景や課題を取材しました。

(報告:植田祐記者)
ー 福井市の建設会社です。

ー 「男性社会」のイメージが強い建設業ですが、社員32人のうち女性は8人、4人に1人が女性です。

ー 女性が働きやすい職場環境づくりに、会社を挙げて積極的に取り組んできました。

ー 取り組みのひとつが、女性社員でつくる「女性部会」です。定期的に開かれる「ランチ会」。ランチを楽しみながら職場の課題について気軽に話します。

ー 出された意見は社長にも報告。取り組みを始めて2年。女性たちのアイデアはたびたび職場環境の改善に反映されてきました。

ー この会社では、結婚している女性社員7人の全員が共働きです。
女性社員:
福井の人はみんな働くのが普通という環境。自分の両親もそうだしみんな仕事をしている家系。

ー 一方で、家事をしない夫への不満も。
女性社員:
うちの夫は最近やっと茶わんを自分で下げられるようになった。3世代同居だとみんな家事をおばあちゃんがやってたから。

夫にちょっと掃除ぐらいするとか片づけるとかそういうことはしてほしいなと言っているけどなかなか。徐々に手伝うようにしてもらっているけど。

ー 国の調査では、福井県の共働き女性の仕事や家事以外の「ゆとりの時間」は、1日あたり2時間48分と全国平均より25分短く、全国で下から3番目に低いというデータもあります。

ー 家庭での家事の分担はどうなっているのか。
共働き女性の1人、松羅美幸さん(40)のお宅を訪ねました。

松羅さんは、エンジニアとして働く夫と中学生と小学生の娘の4人家族。
夫婦が帰宅するのは、ともに夕方6時ごろ。
夕食の準備など、ほとんどの家事を妻である松羅さんが担っています。
妻が家事をするのは夫婦の間では当たり前になっていて、あまり意識してこなかったと言います。

夫・松羅敬さん:
(家事を)きっちりする家庭と僕と一緒で全くしないと家庭とどちらか分かれている。しているとこはえらいなとは思うけど僕らはマネできない感じはする。単身赴任をしたことで女性の大変さがわかり感謝の気持ちは大きくなった。
料理してほしいかな?たまにしてほしいって思う?
妻・松羅美幸さん:
どうだろう。してもらうより自分でした方が早いから。今から1から教えてやってもらうよりは、できることをやってもらった方が楽。

ー 一方、2人の子どもたちに聞くと、意見が分かれました。
妹・釉さん:
お父さんは家事をしなくていいと思う。男だから。男の人のほうが働く量とかも多そう。
姉・響さん:
お父さんもしたほうがいいと思う。お母さんだけに負担かけてちょっとかわいそう。

ー 共働き女性の負担をどう軽減するのか。 県が進めているのは、将来を担う小学生たちへの呼びかけです。 キーワードは「共家事」。小学校で出前授業を開いています。

ー 家族の誰がどんな家事をしているかを、子どもたちが事前に調べてきたチェックシート。結果を見るとやはり、ほとんどの家庭で母親に集中していました。
ー 「共働き」が多い福井県だからこそ、家事も男女で分け合う「共家事」を普及させようという試み。子どもたちに意識を持ってもらうことで時間をかけて確実に家事の分担のあり方を変えていこうとしています。

福井県女性活躍推進課 松本伸江課長:
女性自身にも家事は自分がやらなければいけないという思い込みみたいなものが実際ある。意識を変えて、家庭内でも『共家事』というふうにして女性の負担を軽減していきたい。

五十嵐:
取材した植田記者です。
働く女性たちの負担に目を向けると、就業率や共働き率の高さを手放しで喜ぶ訳にはいかないということなんですね。

植田:
そうですね。家事も自分たちでやるのが当たり前、と話す女性もいましたが、一方で、県の担当者の話にもあったように、やらなきゃいけないと長年の習慣で「思い込んで」しまっているという側面もあると思いました。

植田:
総務省による調査では、子どもがいる共働き女性の仕事や家事以外の自由な時間、いわゆる「ゆとりの時間」は、平均で2時間48分と全国平均を25分下回っています。
これは島根県、岩手県に次いで全国でワースト3位なんです。

植田:
こちらは家の手伝いをしている小学生の割合です。福井県は78.9%で、一見高い数字のようですが調査に参加できなかった熊本県を除くと全国で最下位です。
県の担当者は、3世代同居が多い福井県では家事を祖母や母親がやってしまうことが多く、子どもたちに家事をする習慣が育ちにくいといったことが理由として挙げられるのではないかと話しています。
五十嵐:
3世代の同居や近居は、育児の負担を軽減するという点ではメリットがあると言われますが、思わぬ欠点もあるということなんですか。

植田:
そういうことも言えるかもしれませんね。
一方で、ここまでデメリットを多く指摘してきましたが、女性就業率が高く共働きが多いことで、メリットが多いのも事実です。
ひと月あたりの世帯収入は福井県は58万6500円で全国10位。
夫1人の収入だけではなく、妻も働く人が多いからこその高さです。
こうした福井の状況は女性の働く環境とともに、県外から注目されています。

ー 2月に、山梨県で開かれた大学生たちによる研究報告会。
集まったのは東京の中央大学で行政学を学ぶ学生たちです。女性が活躍する社会をどう作り出すのか、福井をモデルに考える研究の成果を発表しました。
報告会に参加した大学生:
働けていることに喜んで生き生きしているイメージを 福井に実際行ってみて強く思った。
家庭と仕事を両立させながら両方で充実した人生を送っていくことに魅力を感じていると感じた。

植田:
このように全国から注目されているからこそ、「福井の女性は働き者だから」とこれまでの慣習で当たり前とするのではなく、「共家事」推進の取り組みのように働く環境や意識を改善し続けていくことが大事だと、取材を通して強く感じました。

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