1月24日(木) 放送
「“同居”から“近居”へ 変容する家族の形」

角谷:
親と子、孫が一緒に暮らす「3世代同居」。福井は3世代同居が多いと言われますが、 羽生さんのまわりはどうですか。
羽生:
私は大野のいなかで過ごしたんですけども、子どもの頃は私も含め同級生のほとんどはおじいちゃんおばあちゃんと暮らしている子が多かったですし、でも今はまわりを見ると結婚したら同じ敷地内に住んでいるけど世帯は分けているとか、近くに親が住んでいるとか、そういうのが増えてきたかなと感じています。

羽生:
あと、子どもを出産して今月、私たちの職場に復帰した宮崎キャスターも、義理の祖父母と両親、そして、生後8か月の息子と暮らす4世代同居です。
平日の食事の準備は義理の母親がしてくれるなど助かっていると話していました。
角谷:
ですが今、この福井でも「3世代同居」は減り、家族のかたちが変わり始めています。

角谷:
こちらは、全国と福井県の「3世代同居率」を示したグラフです。
福井では昭和60年には30.6%と、実に3分の1が3世代同居世帯でした。
羽生:
その後は、年々減少。平成27年にはおよそ半分の15%。
それでも全国平均の5.7%の3倍近くで、全国でも山形県に次いで2番目に多いということです。

角谷:
祖父母が育児に関わることなどで女性が働きやすい環境づくりにもつながると言われ 福井の幸福度の高さを象徴する「3世代同居」。時代とともに変わりゆく家族の支え合いの今を取材しました。

越前市に住む谷川さん一家です。最高齢は92歳の祖母、60代の両親、そして小学生の娘まで、4世代6人が同居しています。

谷川智恵さん(38)。
県外で生まれ育ち、越前市出身の夫との結婚を機に移住して来ました。
谷川智恵さん:
家族が多くて、おばあちゃん、おじいちゃん、おおばあばもいて、幸せを分かち合っているという感じ。

4世代が暮らすのは、同じ敷地にある屋根続きの住宅です。

谷川さんと夫、娘の3人が暮らすスペース。キッチンやトイレ、お風呂場は 両親と祖母のスペースとは別に備えられています。

谷川智恵さん:
お手洗い使う順番とか、片付け方とか台所というのは今は気にしなくていいので、すごい助かっています。こっちに戻れば自分たちの生活に戻りますし、どっちもが自然にできるのはいい距離感かなと思います。

日中は仕事に出ている谷川さん。同居する義理の両親に小学5年生の娘の世話を頼みます。
谷川智恵さん:
「いってきまーす。 ピアノお願いします」。

インターネット通販会社で正社員として働く谷川さん。勤務時間は夕方6時すぎまでです。その間に、娘を小学校へ迎えにいくのは、

義理の父の正美さんです(69)。
足をけがしている娘。安全に下校できるよう正美さんが気づかいます。

習い事のピアノ教室にも送り届けます。谷川さんは、同居する義理の両親のおかげで、子育ての負担が軽くなっているといいます。

谷川智恵さん:
パートで働くよりは、正社員でずっと働き続けたいなと思っていて、満足に仕事をさせてもらっていますし。やっぱりこれが3人で暮らしたりとかするとできないと思うので、すごいありがたいなと。

3世代同居世帯の割合が全国で2番目に高い福井県。
それでも、その割合は年々減少しています。 理由について、専門家は。

福井県立大学 塚本利幸教授:
やはり3世代同居っていうのは、特に若い世代からすると、自分よりも目上の人たちと一緒に暮らさなきゃいけない。かなりストレスフルな選択で、全国的にも減少はずっと進んでいる。

その上で「同居」に代わって3世代が近くで生活する「近居」という暮らし方に注目します。

福井県立大学 塚本利幸教授:
同居っていうよりは独立して暮らしているのだけれども、親世代子世代がわりと近くに住んでいて、頻繁に行き来ができる。どっちが現実味がある話かっていうと、3世代同居よりは近くに住みませんかっていうことだと思うんですよね。

広がりつつある「3世代近居」。実際に「近居」している越前市の三好拓朗さん(34)宅を訪ねました。 妻と2人の息子と市内のアパートで暮らしています。夫婦共働きの三好さん。

毎朝、自宅を出ると、向かうのは車で10分ほどの場所にある実家です。

ここで三好さんの母(58)に子どもを預けます。

三好さん夫婦の仕事が終わるまで子どもの面倒をみてもらいます。

三好拓朗さん:
困ったらすぐ行けますし、食事なんか面倒見てもらえるので、楽です。

子どもが産まれたのをきっかけに、両親との支え合いのあり方を考えた三好さん。 互いに干渉しすぎない暮らし方がいいと考えて最終的に「近居」を選択しました。

三好拓朗さん:
仕事のこととか用事で結構忙しかったりするときもあるので、やっぱり気をお互いそんなに使いたくないっていうのもあるのと、ただ離れすぎちゃうと、甘えたいときに甘えられないというか。

実家とは気軽に行き来できる距離で、休日にも家族みんなで顔を出します。同居はしなくても日頃から触れあえるほどよい距離感がありがたいと感じています。

三好拓朗さん:
子どもも行きたいと言いますし、僕もやっぱりおじいちゃん、おばあちゃんに一緒に見てもらいたいなって思うので、こうやって連れてきて一緒に遊んでもらってます。
三好さんの母:
楽しいですね。にぎやかで。
時代とともに変わりゆく家族のかたち。世代間で支え合う幸せのあり方も今、変わろうとしています。

角谷:
ほどよい距離感はいいと思いましたし、私、近居の実体験もあるんですよね。小学生の頃おばあさんが近くにいたんですけど、おばあさんに教えてもらっていたことが今の自分にも生きていると思うので非常に共感しました。
羽生:
私も将来家庭を持った時、やっぱりおじいちゃんおばあちゃんが近くにいてくれたら助かるなというところはすごいあります。
一方で世代間で生活スタイルというのは違うから、距離も保ちつつ、同居のメリットもいかしつつというのはいいスタイルなんだなと感じます。

角谷:
スタジオには取材した影山記者です。
3世代同居世帯は福井でも減少傾向にあるということでしたが、行政は何か対策などに乗り出しているのでしょうか。

影山:
福井県は「3世代同居」を目的に住宅を改修する際の補助金を支給する支援制度を5年前から設けています。また全国の都道府県に取材したところ、全体の30%にあたる14の府県で同様の支援制度を設けていることがわかりました。福井県が始めた5年前と比べるとその数は7倍に増えています。

羽生:
自治体も少子化や人口減少対策として期待をかけているんですね。
影山:
そうなんです。一方、若い世代には「同居」となると束縛感や不自由さを感じる声があるのも事実です。そこで注目されるのがリポートでもご紹介した「近居」です。

影山:
福井県の制度では「3世代同居」と「近居」、両方を支援する仕組みですが、申し込み件数を年度ごとに見ると、「同居」のほうは平成28年度の66件をピークに横ばいが続いています。
一方で「近居」は、制度が始まった平成27年度以降、年々右肩上がりで、先月末の段階では82件と過去最多となっていて、多くの人が近居を選んでいる傾向がうかがえます。
羽生:
こうした自治体の取り組みは、今後広がっていくのでしょうか。
影山:
お隣の岐阜県など現在も導入を検討している自治体があり、拡大は進むことが見込まれます。一方、専門家は自治体ができる対策には限界があるとしています。

福井県立大学 塚本利幸教授:
最終的な家族の形態だけに注目して3世代同居近居をしませんか、そしたら何か補助しますよ援助しますよと言ったって働くところがなければ、若者は都市部に出ていかざるを得ない。全体的な方向としては国レベルでまずきちっとする方向に注力をしていただくということが一番いいと思います

影山:
3世代の同居や近居は人口減少対策として有効な面があるのは事実だと思います。 一方で、国も自治体や個々人の家庭の努力に任せきりにするのではなく、支え合って暮らしたい人はそうした家族の形を選ぶことができるよう、またそうでない人は別の形を選べるような支援のかたちを考える必要があると感じました。

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