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放送内容まるわかり!

2015年11月21日放送

なぜ辞められない? "ブラックバイト"の闇

学生生活に支障をきたすような過重な労働を強いたり、厳しいノルマを課すアルバイト、いわゆる"ブラックバイト"が社会問題化しています。 今月発表された厚生労働省の調査では約6割の学生が「一方的なシフト変更」や「残業代の未払い」など何らかのトラブルを抱えていることが明らかになりました。 なぜいま"ブラックバイト"が広がっているのか?過酷な状況にも関わらず、学生はなぜ辞めないのか、辞められないのか? 深読みします。

今週の出演者

専門家

大内 裕和さん(中京大学 教授)
坂倉 昇平さん(ブラックバイトユニオン 事務局長)
山田 久さん(日本総合研究所 チーフエコノミスト)
村田 英明(NHK 解説委員)

 

ゲスト

レッド吉田さん(タレント)
早見 優さん(歌手)


小野 アナウンサー
いったいなぜ辞められないのか、ご質問もたくさん来ています。

視聴者の声

長野県・30代・女性
「アルバイト募集はたくさんあるじゃありませんか。なぜ辞めないのですか。」

神奈川県・30代・男性
「本当に嫌なら、別のバイトを探してくら替えするべきでは?」

小野 アナウンサー
やっぱり疑問に思う方多いので、そこらへんからひもといてまいりましょう。
今回は深読み初挑戦のプレゼンター、魚住アナウンサーです。


プレゼンテーション①

魚住 アナウンサー
私、いま31歳ですが、最初そういうふうに感じていました。なんで辞められないのかなと。
ただですね、違うんですよ、いまの若者の認識が。
先ほど国の厚生労働省の調査で、バイトの関連でトラブルに遭った学生が、6割ほどいるとありました。

「ブラックバイト」といいますと。

このように劣悪な環境を想像されるかもしれませんが、それだけじゃないんです。

深読みレストラン、略して「深レス」。どこにでもあるようなレストランですが、こういったところにもブラックバイトが潜んでるかもしれない。これが怖いんです。

深読太君、大学1年生です。バイトをしなければいけない状況にあります。

いま、大学生の2人の1人が、「奨学金」を受けて大学に行っています。
年々、大学の授業料は上がっていて、奨学金を受けないと学費もままならないという人も。
読太君も、バイトをして、生活費などの足しにしたいと考えています。
そこでいまの若者、バイトといいますと、これ。

スマートフォン。すぐ見つかるんですよね。「アルバイト急募!!」。
この深読みレストランのバイト情報、出てきました。「週2日OK」。
読太君、週2日だったら、勉強と両立できるかなと考えました。
面接に早速行きました。

「いらっしゃーい。お、君が読太君か。きょうから僕たちの仲間だよ」「週2日で採用するよ」

「仲間の証、制服だよ。」「似合うねー、読太君ね、いいねー。
はい、これ。2000円、給料から天引きしとくから。」
制服、自腹で購入するところもあるんです。
仕事続けますね。週2日で入りたいと言った読太君に店長のひと言。
「じゃあね、読太君ね、勤務は水・木・・・金・土・日」。

こうした一方的なシフト変更。学生のアルバイトのトラブルでいちばん多い問題なんです。
仕事を続けます。読太君、昼間は勉強をしていますので、夜の時間帯、働きます。
11時、12時、1時、だいぶ疲れてきたなぁ。あぁーっ。

「読太君、お皿割ったでしょ。1枚100円。20枚だから、2000円ね。はい、没収。」
そして、やっと閉店。
「読太君、誰のミスか分かんないけど、レジ締めたら金額合わないじゃん。」

はい。連帯責任。みんなで割り勘。
これ、バイトが赤字を補填するケースまであるそうなんです。
お店も閉まりました。もう午前3時ですよ。
「お、読太君、いいとこにいるね。ちょっとさ、きょう店汚れちゃったし、掃除やってってくれないかな? 残業でね。でもね、これ、給料出ないから。」

こんなことが続くと読太君もちょっと、辞めようかなぁと思うこともありますが・・・最初にあった、なぜ辞められないのか。こちらです。

「就職に役立つ」 いま正社員になるのが非常に難しいといわれています。
街なかの就職活動の指南本、ハウツー本を見ますと、どれも、「アルバイトは就職に役に立つ」と書いてあるんです。

実際番組のアンケートで、「アルバイトが就職活動に役に立つ」と答えた学生、67%もいます。
採用面接とかの時にアピールできると思ってしまう。
また、1つの仕事をやり遂げたほうが評価は高いという記述も「就活本」にはありました。
「それなら、こんなバイト辞めてしまえばいいのではないか」と思うかもしれません。
でも、こういった深レスの過酷な労働環境、この店だけじゃないんです。
いま、人手不足です。非正規労働者は4割もいます。

そうしますと、バイトは貴重な戦力なんです。なので、ほかの会社も似たりよったりの環境があるんですね。
そうすると、読太君、ほかに行っても同じかもなぁと思ってしまうわけです。
一方で企業も人手不足ですから、バイトをつなぎ止めなきゃ、ということで、ちょっと辞めたいなぁと思ったバイトに、バイトリーダーがですね。
「いやぁ、読太君、君はね、本当に仕事がよくできる。社員並みの仕事を君に与えるよ。」

と、シフト管理、金庫の管理、鍵管理などまで任せてしまう。 すると読太君の心に変化が。

「あれ、もしかして、僕、頼りにされてる?」
賃金も多少上がる場合もあります。
こうなるともう読太君ね、バイト辞められない、頑張ろう、となってしまいます。
たまにバイトが休みの日に学校に行っても・・・

スマホ。LINEのグループ、いまみんな、アルバイト先の「グループ」に入ってるんだそうです。
バイト仲間だったり、リーダーから、「きょうシフト入って」など来るわけですよ。
そうすると、この忠誠心の読太君。バイトに行かなきゃとなります。
学校に行きました。授業中です。
授業抜け出してまでも行かなきゃ。
バイト先の人間関係を壊せない、ということもあるようです。
さあ、かくして、最近大学では、読太君の姿が見られなくなったといううわさが広がっています。
読太君、ちょっときょう、かぜ引いてしまいました。きょうは家で休んでいたい。

「バイト来いよ」。
ついには大事な試験の日。

「バイトでしょ」と。
このように、学生が学生らしい生活を送れなくなることを「ブラックバイト」というんですよ。

じゃあ、読太君、どこに行ったか。

「どうも、きょうからバイトリーダーの深読太です」。
「お、きょうも学生が来たね。ようこそ、深レスに。君もきょうから僕の仲間だよ」。

吉田 さん
ミイラ取りがミイラになってしまったってことですね。

早見 さん
それは、でも、ほかの、深読みレストランだけじゃなくて、ほかの企業もそうだっていうことは、何か方程式があるような感じなんですか?

小野 アナウンサー
感じがしますね。

村田 解説委員
方程式というか、いま話にあった、バイトが戦力という話なんです。

基幹労働化。基幹労働っていうのは、普通の会社だと、正社員とかがやる中心的な仕事ですね、本来であれば。
ところが、いわゆるバブル経済が崩壊してもう20年あまりになりますけども、その間、日本の雇用システムはどんどん変わっていっています。
学生アルバイトまで使って、この基幹労働をさせるという仕組みを取る企業が増えてきてる。
要は、コストを徹底的に削減する。正社員よりはアルバイトの賃金安いですから、人件費がいちばん削減できるわけですね。
で、いまどんどんどんどん非正規雇用、アルバイトを含めたパートとか増えていて、いまの全労働者の4割以上になってるわけです。
そうした中で、特に特徴的なのは、新しい企業が、この「深レス」みたいに、どんどん店舗を展開して、事業拡大することで収益を得ようとする。
そうすると人がいりますよね。その中で、賃金の安いアルバイトをどう活用するかという企業が増えてきている。

早見 さん
じゃあ、利用されちゃうんですね、学生さんたちが。

吉田 さん
でも、学生がしっかりしていかなければいけないという話になってきますよね。

小野 アナウンサー
どうなんでしょう。坂倉さんは全国のブラックバイトに悩む学生の相談に乗ってらっしゃるそうなんですけど、学生ももうちょっとしっかりしたほうがいいなっていうようなことなんですか?

坂倉 さん
僕たち、ブラックバイトユニオンという団体で、学生のアルバイトの労働相談を受けていますが、いちばん多い相談が、辞められないとか休めないという相談なんです。
具体的になぜ辞められないのかというと、皆さん「辞めてはいけない」って思ってたりする。
さっきの話にもつながってきますが、いざ辞めようと思っても、店長なんかに「え、お前辞めるの? 自分勝手だな」「無責任だな」とか、「仕事をなめるな」とかですね、「甘えるな」とか、「仕事と勉強どっちが重要なの?」とか、そういうことを言われてしまう。
実際、仕事は非常にたくさんあったり、責任も重いので、そういった言葉で責任感をあおられてしまうと、辞められなくなってしまう。

吉田 さん
真面目な人ほどそうなるんじゃないですかね。
正義と悪っていうので、辞めることは悪なんだよみたいな感じで植え付けられてしまうと、あ、だめなんじゃないかなっていう強迫観念で辞められないみたいなことですか。

視聴者の声

「ブラックバイト、確かに諸悪の根源。でも、ホワイトすぎる学生にも問題ある気がします。自分の考えを持って、社会の入り口であるバイトに取り組むことは大切です。」

「コンビニで罰金を払わされたから、むかついてすぐ辞めた。すぐっていっても、2か月は頑張ったけど。」

小野 アナウンサー
2か月は頑張りすぎだと私は思いますけど。

早見 さん
そういう時、両親に相談とか、人生経験豊富な先輩とかに相談とかしないんでしょうか?

大内 さん
そこはやはり、アルバイトが変わったってことだと思うんですね。かつてのアルバイトであれば辞められたし、休めたと思うんですよ。
先ほどの基幹労働化っていうのがポイントで、なんで前、そんな簡単に辞められたかっていえば、かつては正規労働の補助労働だったんです。だから、仕事場のメインの部分は正社員がやっていて、補助ですから、休んでも職場が成り立たないってことはないですよね。
それから、基幹労働になるってことは、相当の研修をして、仕事も習熟するってことになるわけです。
そうすると、働かせる側も辞められてしまっては困るし、本人もそれだけやりがいとか感じている。

小野 アナウンサー
先生。辞められたら困るんだったら、大事にしないといけないじゃないですか。
この実態は全然大事にされてないですよね。

大内 さん
大事にしなくても、辞めない事情があるんだと思います。
いちばん変わったのは学生の経済状況ですね。これは大学生の仕送り額の推移を見たものなんですけど、本当にこの20年間ですさまじく下がってるんですね。

「10万円以上」というのが減って、「5万円未満」が増えてます。部屋を借りて生活すれば、普通10万円以上かかりますよね。
5万円未満だと、都市によっては部屋代すら足らないってこともあります。
かつてのアルバイトは、基本的な学費や生活費は親が支えてくれていて、例えば、サークルとか、遊びとか、旅行とかね、自分に自由になるお金を稼ぐためのものですから、それだったら、嫌なところだったら辞めて、しばらく間が空いても大丈夫ですよね。
でも、こういうふうに生活に食い込んでると、辞めてしまって、次がすぐに見つからなかったらすぐ困ってしまう。あるいはずっと続けないといけない。
そういう学生が弱くなってることに、職場の側がつけ込んでいる。足元を見られてると思うんです。

吉田 さん
大人の問題ですよね。

大内 さん
学生の間で、「バイ活」という言葉があります。
「学校の授業に出るので休む」とか、「試験で勉強するので週5日は入れない」というと、10社以上バイトを落ちるっていう例が、私の周りでもたくさん起こっています。
働かせる側のほうが、学校と両立しない働き方を求めてるわけです。
落ちてる学生はみんな、授業を大事にしてる学生。学校と両立させようと思うと、決まらないっていう職場が多い。どうせ入ったら損するから。

視聴者の声

「塾のアルバイトにて、学校と会社、どちらを取るのかと責められた。」

「自分の学校なのか、かわいい生徒たちなのか、どちらを取るのかと責められました。」

「去年は高2だったけど、クリスマスとその前後、計5日間で40時間働き、そのあと辞めるまでに半年かかった。」

「学費のためにバイトをしてるけど、連帯責任の罰金制度、残業代未払いは当たり前だと思っていた。それが社会の暗黙のルールなんだと思っていた。」

「うちのコンビニは、ノルマでクリスマスケーキ5件、予約取れないと買い取りです。これは違法ではないのでしょうか。」

坂倉 さん
これはですね、無理やり強制的に買わせている強要の場合は、違法ってことになります。
ただ、なかなか難しいのが、最近は自発的に買わせる。
買うのは当然だよねというふうに思わせて買わせるようなケースも非常に多いんです。
他にも、おせち等は単価も高いですし、お歳暮もある。
恵方巻きとか、母の日のプレゼントとか、父の日のプレゼントとかもノルマで買わされる。

吉田 さん
そういうバイトやってる人で、そういうふうな経験したら、もう本当、クリスマスがトラウマになったりとかして。

大内 さん
クリスマスが嫌いな学生、増えてます。「来ないでほしい」って、この間も学生が言ってました。

視聴者の声

「仮に月末締め、15日がお給料日の場合、15日の給料日を最後に辞めようとしたら、じゃあ、先月の末からきょうまでの分は払えませんと言われる。」

「お金合わなかったら出すの、学生時代は当たり前かと思ってた。」

山田 さん
経済的な環境の変化っていうのもあると思うんですね。
というのは、ちょっと前まではものの価格が下がって、企業にしても、例えば、いわゆる円高っていうことで、安く海外からものが買えてたので、コストを簡単に減らせました。
ところが、最近ものの価格、上がり始めています。そうすると、レストランなど低価格で売っているところは、コストが上がってくるので、どっかで圧縮しないとだめで、人件費を減らしたいというのが出てくるわけです。

かついまは、一方で人手不足。本来人手不足だと給料上がったりするはずです。
日本の場合は正社員は賃金交渉をして上げたりするんですけど、いわゆるパート・アルバイトさんは、そういう仕組みがないから上がらない。
かつ、企業としては人採れないので、安いコストのアルバイトの人をできるだけ長く使おうとする。
要は企業として追い込まれてる部分もあって、環境は変わってるのに、安いものを売っていこう、できるだけコスト安いものをっていう、そこといまの環境が合わなくなってきて、そこのしわ寄せがアルバイトに来ている。

吉田 さん
法律的にはどうなんですか? 違法なんですか? 使ってる側というのは。

視聴者の声

「罰金や残業未払いなど、建前上のルールで暗黙の了解だ」

「社会のこと知らないねなんて言われたら、何が正しいか分からなくなってしまうんです」

小野 アナウンサー
ここは1つはっきりさせたいと、この番組でも思います。魚住アナウンサー、あれ、お願いします。

魚住 アナウンサー
はい。厚生労働省の調査でも、6割がそういったトラブルの経験があるとありましたけれども、実際に学生が経験したケースをここにまとめました。

坂倉 さん
お給料っていうのは勝手に減らすことはできないんですよ。
もし減らすとしても、本人の合意がないと減らしちゃいけなくて、もしそれを勝手に減らすとしたら、賃金未払い分があることになり、つまり違法行為になってしまいます。

坂倉 さん
特にサービス業、接客業とかに非常に多いですけれども、実はこういった場合も、休業手当といって、最低限、給料、もともと支払われる給料の6割を払わなければいけない。
これも払わなかったら違法になってしまいます。

坂倉 さん
こういう相談もすごく多いんですが、特に塾とかで、授業が終わったあとに会議が1時間ぐらいあったというようなケースもよくある。
もちろんこういった長時間賃金が払われないっていうケースはやはり未払いってことで違法になります。

坂倉 さん
これも本当に多いんですよ。
ひどいケースで、飲食店で働いていたら、「ちょっときょう、たまには別のお店に行ってよ」って言われて3時間離れたところに派遣されて、しかも、交通費も払われなかったという相談もあります。
これはですね、もともとの最初に契約書をもらっていて、そこにどこのお店で働くかって書いてなきゃいけないんですよ。
書いてなかったらそもそも違法ですし、そこと違うところに無理やり行けって言われたら、それは断ることができるんです。

坂倉 さん
これはですね、非常に多いんですけれども、強要すると違法ですけれども、あと、勝手に給料から天引きをしても違法になります。断って大丈夫です。

坂倉 さん
僕らが受けてる中では、実はこれがいちばん多い相談なんですが、基本的に法律上は2週間前に辞めますというふうに言えば、2週間後に辞めていいってことになっている。
別に代わりの者を見つけるのって経営者の方の責任ですので、学生の人が代わりの者を見つけろなんていう相談も結構多いんですけれども、そんなことする必要は全然ない。

早見 さん
学生の人たちがこれを知っていたら、もう少しはっきりと意思表示をできるってことなんですよね。

坂倉 さん
それはあると思いますね。やっぱり労働法の知識もないですから。

村田 解説委員
いまの学校教育の中で、就職についてのやり方、どうやったら企業に入れるかは教えますが、こういう労働のルールについては教えてないんですよね。
だから、みんな知らない。知らないままに、ある意味、洗脳されてしまうようなところがある。

小野 アナウンサー
でも、ちょっと変わった感じしますね。
私たち世代は、権利ばっかり主張して、あんたたちはっていってよく怒られましたけど、逆ですよね。

大内 さん
先ほども、就活に役立つというのが出ていましたが、1990年代以降、就職が厳しくなる中で、学校でもキャリア教育っていうのが行われるようになってきた。
これが、ちょうど就職が難しくなった時と時期が一緒だったものですから、学校でも、どうしたら会社に気に入られて、会社に入ることができるかっていう方法を教えるようになった。
本来であればキャリア教育っていうのは、仕事の能力とか、あるいはいまの労働法のような、不当なことに対しては不当だと言えるっていうこともバランスよく教えるべきだと思うんですけど、おそらく、入った時期や手法に問題があって、とにかく職場に気に入られなさいっていうメッセージを学生に送ってしまってる。
そうすると、就職難で学生は不安ですから、とにかく気に入られなきゃならないと思い込む。
アルバイトで不当なことを不当と言うよりは、アルバイトでこんなつらい経験をしましたって語ったほうが、使える人間だと思われる。そういう印象を持ってしまっている。

吉田 さん
なるほど。ちょっとねじ曲がってきてるんですね。

大内 さん
実際に調べてみると、本当にアルバイトの経験が役立ったかどうかは、ほとんどの学生がアルバイトやってるから証明できないんですよ。
証明できないんだけど、しかし、それがキャリア教育と結びついて、そういうことは役立つんじゃないかと思ってしまう。
だから就活のために、わざとそういうきつい経験をできるアルバイトを選ぶ学生が出てくる。

早見 さん
それは、でも、文化的にもおかしいですよね。気に入られるじゃなくて、就活してる時に、どうやってこの会社に貢献できるかとか、そうやって自分の意見を持っていないと、反対に怖いなと思うんですけど。

大内 さん
そうですね。そこで貢献とか能力ってことが問われればいいと思うんですけど、むしろ適応力が問われてしまう。
大学でもいま行われている「インターンシップ」も職場体験ですから、何かを身につけるというよりは、その職場になじむとか、適応するって要素が強いですよね。

吉田 さん
個の意志というのが弱くなってきてるってことなんですか? みんなに流されてしまうというか。

坂倉 さん
むしろ、でも、意志は強いんじゃないかなと思います。
1人1人が責任を感じて、あれだけの仕事を大量にしてるわけですから、昔の学生バイトなんて、本当に、こういう言い方はしたくないですけど、ある意味気楽に働いてたわけですよ。
ところが、いまは学生バイトっていうのは「真剣にやるもの」になっている。会社のほうも、学生バイトはちゃんと働かせなきゃいけない、と位置づけている。

小野 アナウンサー
「息子もひどいコンビニで働いているので、辞めさせようとしてますが、バイトリーダーがもっとひどい目に遭っているので、助けたいんだと続けるんです」。
こんないい子、そりゃあ辞めてもらうと困りますよね。

坂倉 さん
残ってる人にさらにしわ寄せがいってしまうと。
ただ、店長にしわ寄せがいってしまうとかっていうことで、辞められないなんて人もいたりします。

小野 アナウンサー
確かに企業のほうも、そういう熱い思いのある人を採用したいなって人事担当者が思っても、不思議はないような気もしますね。

坂倉 さん
それで就職できる先っていうのは、いわゆるブラック企業みたいな、本当に単に体力とか、単に耐える力が問われる企業で、違法行為でも疑問に思わないところだったりする。
ブラックバイトがブラック企業の予行演習になってしまってるわけですね。

視聴者の声

「学生だけじゃなく、主婦パートにもブラックは当てはまる。」

「実際娘がブラックバイトと思われる学習塾でバイトをしてるので、強い憤りを感じます。」

「卒論に支障が出ました。」

「若者を粗末に扱うこのような国は、今後ますます衰退の一途をたどると思う。」

「なぜこれほどまでに問題化しているのに、際立った対策が見えてこないのか。」

「国は「一億総活躍社会」と言うだけでなく、具体的な施策を打ち出して、ブラックバイトがなくなるようにするべきだ。」

小野 アナウンサー
じゃあ、ブラックバイトをどうやったらなくせるのかっていうことを、ここからちょっと話していただきたいと思いますが、その前にちょっと魚住アナウンサーのこんなプレゼンをお聞きください。


プレゼンテーション②

魚住 アナウンサー
いまですね、学生みずから立ち上がる動きが広がっています。学生が労働組合を作っている。
アルバイト学生も労働基準法などで守られていますが、それを知らない学生が多い。そこにつけ込むブラック企業に対して、「NO MORE ブラックバイト」と、組合が法律を武器に立ち向かっているんです。
札幌から大阪まで、全国9か所あります。
いくつかケースをご紹介いたします。

学生アルバイト、仕事の悩みがあります。先ほども紹介したとおり、賃金未払いに自腹購入などなどいっぱいありますが、このトラブルの時に会社との間に入るのが「ブラックバイトハンター」。

これ、ブラックバイトユニオンに加盟している学生たちなんですが、まずは悩みを抱えているこの女性に聞き取り調査をします。

LINEだったり、メール、雇用契約書などなどがありませんかと、まず証拠を固めます。
それから、法律に詳しい学生が親身になって相談します。

そして、いざ向かうは会社。ブラックハンターが、悩みを抱えてる女性と一緒に行くことが非常に心強い。
そして、会社に対して、雇用契約書渡しましたか? 通知しましたか? 労基法に違反してませんか? などなど交渉します。

そうすることによって、企業から改善を引き出すことができたんです。
大手の学習塾、飲食店、アパレルなどなどで、困っている学生と共に力を合わせて、自分たちの働き方を変えていっているんです。

吉田 さん
でも、それ、改善だけであって、ペナルティーは科されないわけですよね、企業に対して。

坂倉 さん
例えば、相談を受けて、調査をやって、会社に交渉することもありますし、行政に告発することもあります。
労働基準監督署という部署があるんですけれども、そちらから指導をさせるとか、そういったこともやることもありますし、さまざまな手法を取って、ブラックバイトをなくすための取り組みをしています。

吉田 さん
ペナルティーというか、公に出れば嫌だから、みんな辞めていくと思うんですよね。
どんどんしていったほうがいいとは思うんですけども。

坂倉 さん
そうですね。そういった問題、明らかに違法行為をしている会社などについては、社会的にどんどん発表していくなどの取り組みも私たちはやっています。

小野 アナウンサー
ですけど、昔は、学生のアルバイトって、雇う側もどっか支援する気持ちがありませんでしたか。
「この子がいつか将来社会の役に立つかもしれないから」って、応援してもらった記憶が、経験があります。
それがいつの間にかこんな、学生がみずから組合を立ち上げて身を守らなきゃいけない時代になったんだろう。

村田 解説委員
日本の労働側と経営側の、労使の関係っていうのが、だいぶん変わってきてるってことなんですよね。
いま労働組合の組織率って20%切っているんです。17%ぐらい。
これは企業の労働組合。そうすると、労働側の、働く側の権利の主張がなかなかできにくい環境が日本の社会に広がってる。
そうなると、学業を置いておいてでも、学生たちが立ち上がらなければいけないような現状が起きてる。
このこと自体が問題だってことを、まず私たちが考えなきゃいけないと思うんですよね。
そして賃金の問題もあります。

これは法律で最低限支払わなきゃいけない、これに反すると、ペナルティーがありますよ、という「最低賃金」を国際比較したものです。
日本の場合は国が目安を決めて、都道府県ごとの実情に応じて決めるんですが、平均がことし18円上がったんですが、それでも時給798円。
外国と比較しますと、いま例にあったフランスなんて高いですよね。1300円ぐらいあります。
で、アメリカも、低いようにありますが、これは連邦政府の最低賃金なので、州ごとにそれぞれ違っていて、1000円超えてるところあります。
なおかつ、最近の動きとしては、アメリカでも時給で1500円ぐらいに、1800円ぐらいかな、15ドルぐらいにしようという、そういう取り決めをしていってる州も出てきている。

小野 アナウンサー
最低賃金が低いから、学生がブラックバイトに悩まされてるんですか?

坂倉 さん
最低賃金ギリギリの方ってすごく多いんですよ。
ですので、最低賃金上がれば、もう少し賃金も高くなってくるので、学生の扱いも多少変わってくる部分はもちろんあると思います。

村田 解説委員
待遇も変わってきますし、これで分かるのは、非正規労働がなぜ増えてるかということ。
その中でアルバイトも増えてる。賃金が安いから。
正社員よりも賃金が安いから、安い労働力として使われてるわけだから。

小野 アナウンサー
最低賃金を上げれば、企業も、それだったら正社員を増やしてもいいじゃないか、そっちのほうがいいじゃないかっていうふうになるんですか?

村田 解説委員
同じような労働をやってるわけですね、正社員と。
にも関わらず、正社員よりも低い賃金しかいま支払われていないって、そういう労働に対する対価として、どういった賃金に設定するか。
これは非常に重要で、ここを変えていかないと。

吉田 さん
ものすごい使い勝手がいいんですよね。そこは底上げしてあげないことには、企業側も考えが変わらないと。

坂倉 さん
学生だから最低賃金でもいいっていうのが、昔からずっとあるわけですよ。
ところが、もちろん学生自身もいまお金がなくなってきているってこともありますし、しかも、雇ってるほうは、学生だから安いから、どんどん使っちゃえってことで、責任どんどん負わせていく。
正社員並みの仕事を負わせていくと。そうすると、すごく利益は上がっていくわけなんです。

小野 アナウンサー
最低賃金って大事なんですね。

坂倉 さん
そうなんです。特に僕らに相談来るケース、実は業界も結構限られてるんです。
ほとんどが、3つあって、1つは飲食業。ファミレスとか居酒屋とか。
あとは、コンビニとかアパレルとか量販店のような小売店、小売業。そして、塾なんですよ。
このあたりは、人件費をどれだけ削ることができるかってとこで、ある意味、売り上げがどんどん上がっていく、急成長していけるっていう、そういう業界なのではないかと思っています。
なので、まさに学生のアルバイトを酷使することによって、そういった業界がかなり成長してきた。
ある意味ブラックバイトっていうのは、サービス業の利益の源泉とまでいえるのではないか。

山田 さん
本当はこれって、もっと最低賃金を上げていく、それから、しっかりした非正規の方の労働環境を守っていくってことになってくると、ある意味適正なコストっていうのがあるはずで、そうなってくると、企業はいま、ともかく安くっていうのはまだ浸透してますけれども、本当はコストが上がってくると、経営のほうが少し工夫をして、もうちょっと新しいものを作ろうとか、もうちょっとお客さんが喜ぶことを、頭を使ってですね。
経営のほうがいろいろやってっていう、そっちの方向に転換していかないとだめ。
ところが、十分これができてないもんだから、相変わらず安いものっていうのが。
これがまた、賃金が安くなるっていうですね。で、賃金、皆さん安いから、安いものしか買わないっていう悪い、悪循環が日本を覆ってるってことですね。

大内 さん
大学教育も関係してるってことですね。安かろう悪かろうであれば、高度な教育はいらないわけですよ。
逆に言うと、なんで大学に来るかっていえば、そこでいろんなものを身につけて、そのことが付加価値の高いものを作れるってことになると思うんです。 かつては「学生さん」って言われてましたよね。
いまはバイトに行くと、「学生気分は捨てろ」って言われるわけですよ。学生がですよ。
でも、「学生気分は捨てろ」ってことは、学生に学生時代を過ごさせないってことです。ということは、われわれ一生懸命教育をしても、学生が何も身につけることができない、 そんなことやっていて、本当に日本経済はもつのか。確かに短期的には安く使ったほうがいいけれど、やっぱりそれは長期的に考えれば、大学で学ばない人がこんなに出てしまったら、誰が付加価値の高いものを作るんですか。
歌手だってボイストレーニングが必要だし、コメディアンだってネタをちゃんと仕込まなければおもしろいことはやれないわけで、学校で学ぶから付加価値の高いものが作れる。
そういう点では、ブラックバイトを放置することは、日本経済の将来にとってとてもまずいと思います。

吉田 さん
あと、心もゆがんでいくんじゃないかなとか思うんですよね。
やっぱりそういう経験すると、大人ってこんなもんなんだと、社会ってこういうことなんだっていって、ずるしようとか、そういうふうな方向になっていくんじゃない。
自分だけ得すりゃいいみたいな。自己だけなんだみたいな。

坂倉 さん
責任感じてるので、やっぱり自分が責任を負わなきゃいけない、自分が悪いって思ってる人、結構多いんですよ。
結局、辞めたら自分が会社に迷惑をかけてしまうというふうに思ってる方も多いんです。

早見 さん
なんか、かわいそうになっちゃいますね、学生さんが。

坂倉 さん
そうなんです。それを改善しようと思った時に、結局国は全然対策も、いまのところできてないですので、実際に働いてる人自身がああやって解決をしていく。

村田 解説委員

国の対策としては、簡単に言うと、例えば来年の3月から、ブラック企業の求人をハローワークで受けつけないようにする。これ、やるんですが、アルバイトは対象外なんです。

プレゼンであったみたいに、民間の、スマホとかでいまアルバイトを探してるわけでしょ。
ハローワークに行く学生少ないんですが、ここだけしか対象になってない。そういう中途半端な感じになってる。
それから、もう1つは、ブラック企業を公表しますってことしの5月から始めたんですが、それはまだ1例も報告ない。公表されてない。
理由はですね、対象になるのが大企業に限定されてる。しかも、1つの事業所、例えばファミレスだったり、1つのお店でこういう長時間労働が、違法な長時間労働があるだけじゃだめなんです。
少なくとも3か所以上とかね。いろんな条件があるんで、ハードルが高いですね。
だから、もう少し、アルバイトまで含めて、何らかの対策をいま、とらなければいけない。

吉田 さん
でも、社員ってやっぱり弱いから、言ってしまうとなんとなくっていうふうなのもあるんじゃないですかね。

坂倉 さん
学生バイトのうちから、ある意味そういう声を上げられるようにしていくというか、そういう練習にもなると思うんですよね。
国とか政治家でも変えられない労働条件を、ちゃんと学生であっても、変えていけば。

吉田 さん
でも、学生の気分からすると、それをやってしまうと、面倒くさい人って見られてしまうんじゃないかなって。
就職活動が、結構響くんじゃないかと思ってしまうんじゃない?

大内 さん
だから、そのマインドね。そのマインドを変えられるかどうかですよ。
そこで、自分が言ったらだめなんじゃないかじゃなくて、言わないと、言ってみようっていうふうに思えるかどうか。そこが勝負だと思います。

山田 さん
経営者のほうが、意識変える必要があると思うんですね。いま日本、海外のからアジアの人、たくさん来てくれてますね。これ、日本の品質がいいとか、おもてなしの心、心なんですね。
だから、これから日本がやっていくのは、そういう付加価値を上げていくっていうことなんで、実はそれ自身が日本の企業を発展させるっていうことなので、こういうことをなくしていくことが大事。

小野 アナウンサー
分かりました。どうもありがとうございました。

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