2018年03月03日放送放送内容まるわかり!

7年たってどうなった? 福島第一原発"廃炉"のいま

東京電力福島第一原子力発電所の事故からまもなく7年。国と東電は、最長40年で廃炉を完了させることを目指していますが、溶け落ちた核燃料が構造物と混ざった「燃料デブリ」の現状把握、大量の汚染水の取り扱いなど、本格的な廃炉作業を始める以前の課題に次々と直面。先行きは見通せていません。 歳月とともに事故の記憶が薄れる中、いま私たちは廃炉の何を知るべきなのでしょうか。廃炉に立ちはだかる本当の"壁"とは?。深読みします。

今週の出演者

専門家

開沼 博さん(立命館大学 准教授)
柳原 敏さん(福井大学付属国際原子力工学研究所 特命教授)
水野 倫之(NHK解説委員)

ゲスト

金子 貴俊さん(タレント)
香坂 みゆきさん(タレント)

今週のグラフィックレコーディング

グラフィックレコーダー
山田 夏子さん


首藤 アナウンサー
おふたりはいまの福島第1原発の様子って、聞いたこと、知ってることありますか?

香坂 さん
ついこの間、ロボットが入って、って映像を見たような記憶はある。

金子 さん
少しずつ廃棄物とか処理したりとか、進んでいるんでしょうけど、順調にいってるのかどうなのかっていうのは分からないですね。

首藤 アナウンサー
きょうは廃炉について一から考えたいと思います。7年たったいまだからこそ考えないといけない問題があるようなんです。


プレゼンテーション

徳永 アナウンサー
おはようございます。なんで7年かといいますと、実はこの番組、今月をもって終了します。この模型もいったん見納めなので、廃炉を取り上げずに終わるのはいけないなと思って、ここでせき止めてお伝えします。
でも、深読みっぽく模型を作って平たい言葉だけで文章を作ると、いかに大変かが改めて実感できるなと思いました。

まず、「廃炉」とは何かからいきます。

金子 さん
そこからですね。

徳永 アナウンサー
原子力発電所は、いつまでも発電できるわけではありません。役目を終えたあと、元の状態に戻すこと。これを「廃炉」といいます。
言葉では簡単ですけど、放射性物質がたくさんあるので、安全に戻すのは大変なことなんですね。ましてや福島第1原発は事故後、ご覧のとおり、爆発し、放射性物質が出ちゃった状態。これ以上被害を広げないように処理するのは実に大変だと言われています。

毎日いま5000人近い方が廃炉の作業に取り組んでいらっしゃるということなんですね。7年たっても。
いろんな難しいことあります。決まっていないこともあります。でも、確実に決まっていることが1つあります。それはこの大方針です。

首藤 アナウンサー
「40年で廃炉にする」と。

徳永 アナウンサー
国や東京電力の大方針は、事故が起こった年から40年以内に廃炉にするというものです。つまり2051年。

香坂 さん
もう私はいない。

徳永 アナウンサー
いやいや、そういう計算をしない。2051年に廃炉は終わりますよっていう大方針はぶれておりません。これは決まっていると。

香坂 さん
これは事故がなくても、普通に使われてた原子炉を廃炉にする場合もこんなにかかるの?

徳永 アナウンサー
ここまではかからないそうなんですけど、事故を起こしているんで、40年はかかるかなと。

金子 さん
実例はないわけですもんね。

徳永 アナウンサー
そうですね。手順、ないとできないですよね。ロードマップっていうのがあるんです。おおまかに言うと、まずはこれ。

金子 さん
使用済み。

香坂 さん
これはよく聞く言葉ですよね。

徳永 アナウンサー
なんか聞いたことあるけどぴんとこない言葉をちゃんと潰しておきましょうね。使用済み燃料って見たことあります?

香坂 さん
ない。

金子 さん
ないですね。

徳永 アナウンサー
写真がございます。これが使用済み燃料です。

金子 さん
その棒ですか?

徳永 アナウンサー
そう。核燃料ってちっちゃいんですけど、それを棒状になるように連ねて、適度に反応させるんですね。そうすると、ものすごい熱がずっと出続ける。それでお湯を沸かして、そのエネルギーを電気に変えるのが原子力発電というものです。
でも、めちゃくちゃすごいエネルギーなので、役目を終えたあともとんでもない熱が出続けて、放っておくと溶けちゃうんですよ。

香坂 さん
だからプールに入っている。

徳永 アナウンサー
そう。ずっと冷やし続けないといけない。なので、プールとよく言われます。

福島第1原発の1号機から4号機というのは、各建物の上のほうに全部プールがあって、使い終えた燃料を保管していたんです。これを安全に取り出しましょうね。それを、事故から2年以内、つまり、2013年にはその作業を始めましょうねという計画でした。さあ、どうなったか。

金子 さん
始まったのかな?

徳永 アナウンサー
がれきの取り除きもだいぶ進みました。そして、4号機。

2013年に取り出し作業が実際に始められ、その次の年には取り出しが終わっています。実は。

香坂 さん
終わってるんだ。

徳永 アナウンサー
予定どおりです。4号機だけ。あとはずれ込んでいます。

香坂 さん
手をつけてないってこと? それとも、つけてるけど進んでない?

徳永 アナウンサー
つけてるけど、なかなかスピードが出ません。

1号機は、さっき見てもらって、ちょっと外観違うなと思った方いるかも。骨組みをつけて取り出しやすくしました。2号機はどうやって取り出すか、いま考えております。

3号機は、取り出した時に放射性物質が外に飛び散らないように、かまぼこ状のカバーをかけて、外観がだいぶ変わってきております。

金子 さん
閉じ込めてる状態ですね。

徳永 アナウンサー
そう。進んではいますが、予定どおりいっていません。なぜかというと、燃料は燃料でも、この問題が3つの号機にはあるからです。

首藤 アナウンサー
「燃料デブリ」。

徳永 アナウンサー
同じ燃料でも今度は「デブリ」というものがあります。それを説明します。 デブリとは、要は溶けちゃった燃料です。

「メルトダウン」って、よく聞きますよね。

香坂 さん
聞きました、聞きました。

徳永 アナウンサー
1号機から3号機はあの時発電してたんです。で、燃料が溶け出しちゃったんです。中でいろんな構造物を溶かしちゃって、ぐちゃぐちゃになっているとみられています。たぶん。

香坂 さん
たぶんですよね?だって見に行ってないんだもん。

金子 さん
行けないんですもんね。

徳永 アナウンサー
まだ人類の誰も中に入って見た人がいません。だって、入ったら死んじゃうから。線量が高くて。だから、ロボットを開発して、中入れてちょっと見えたってニュースが。

香坂 さん
見ますよね、たまにね。

徳永 アナウンサー
たまに見るでしょ。あれは早く中を確認したいからなんです。

香坂 さん
確認できたんじゃないの?

徳永 アナウンサー
断片的に。全体がどんな感じになって、どれぐらいの線量で、位置がどこにあって、は、全部は分かっていないです。

香坂 さん
まだ分かっていない。

金子 さん
入るだけでもすごい苦労があるわけですよね。

徳永 アナウンサー
すごい技術が必要なんです。どうなってるかも分かっていなければ、分かったとて、どう安全に取り出すかの方法もまだ決まってはいません。
ただ、決まっていることが1つあります。

国や東電の計画です。事故から10年以内にこのデブリの取り出しを始めますよという予定だけは決まっています。

金子 さん
あと3年ぐらいですか。

首藤 アナウンサー
2021年?

徳永 アナウンサー
つまり、東京オリンピックの次の年にはデブリの取り出しが行われますという予定です。
だから、オリンピック見てる時に必ず思いだしてください。来年はデブリ。

金子 さん
複雑な見方になっちゃいますね。

香坂 さん
もうすぐだっていうふうにね。

徳永 アナウンサー
そう。東京は盛り上がっていても、福島はその時も作業してる方が必ずいらっしゃいます。それを忘れないでいただきたいということであります。
デブリだけでもこんなに話があるのに、いろんなことニュースで見ませんか?これ。

首藤 アナウンサー
汚染水はよく聞きます。

香坂 さん
そのまま海に行っちゃってるんじゃないかとか、心配になるよね。

徳永 アナウンサー
ちょっと整理すると、燃料はたとえ溶けても、高い放射線量と高い熱はずっと出ます。

だから、冷やし続けないとまた被害が広がります。だから、ずっと水かけてます。冷やしてます。
そうすると、中壊れてますんで、下に放射性物質が溶け出した水がたまります。それを「汚染水」と呼んでいます。

香坂 さん
それはどこ行くの?

徳永 アナウンサー
そこですよね。下にたまります。さらに地下水もどんどん入ってくる土地なので、中にどんどん増えます。かつては何度も、一部が海に出ていましたっていうのが分かって問題になるっていうのを繰り返した。やれ対策しなきゃっていうんで、井戸を掘って水を事前に抜いたり、凍土壁っていって、下を凍らせて水が入ってこないようにって、いつもニュースでやってるあれは、被害広がらないようにしているということなんですね。
この汚染水というのがどうなるか。ずっと中に置いておくわけいかないんで、こんな技術があるんです。

首藤 アナウンサー
放射性物質除去設備。

徳永 アナウンサー
こすんです。この設備に汚染水通すと、放射性物質のほとんどがここに残って、ろ過できちゃうんです。

香坂 さん
ろ過したものは海に出しても大丈夫なんですよね?

徳永 アナウンサー
全部こせるわけではないんです。だいぶ薄まる。

香坂 さん
だいぶ薄まったのができてくる。

徳永 アナウンサー
その水をどうするかをまだ決められていないんです。そこで、とりあえず、こうしてます。

香坂 さん
なんかそれ、いっぱい増えてる。どんどん増えてる。

徳永 アナウンサー
タンクに入れて敷地内にとりあえず置きました。7年たって、どうするか、まだ決まっていません。だから、きょうもとりあえず、置きます。

香坂 さん
それって1日どれぐらいずつ増え続けていくんですか?

徳永 アナウンサー
汚染水はだいたい1日140トン、いまでも発生してるそうなんです。

金子 さん
1日ですか?

徳永 アナウンサー
1日で。ろ過をして、タンクを置いていって、いま合計で。

首藤 アナウンサー
850機のタンクがあって、100万トン。

香坂 さん
でも、これ毎日まだ増えてるわけですよね。

徳永 アナウンサー
そうです。イメージしやすいように言うと、100万トンの水っていうのは東京ドーム1杯分です、だいたい。どうするかはこれから決めます。とりあえずなんです。これもです。

首藤 アナウンサー
廃棄物も。

徳永 アナウンサー
説明は簡単に済ませてしまいましたが、水からだいぶ除去しても放射性物質はフィルターに残りますよね。

香坂 さん
それをどうするかも決めてない?

徳永 アナウンサー
これ、簡単に捨てちゃだめですよね。どこに、いつ、どうやって持っていき、どうやって保存していって廃棄するか、決まってません。

香坂 さん
いまどこに置いてあるの?

徳永 アナウンサー
密閉をして、とりあえず敷地内に置いてます。どうするかはこれから決めます。
廃炉って元に戻す作業なんですけど、どんどん増えています。
さらに作業していらっしゃる方の服や手袋、マスクにも当然つくことがあります。勝手に捨てるわけにはいかないので、とりあえず燃やして、かさを減らしています。

香坂 さん
でも、かさは減らしても残るわけですよね。

徳永 アナウンサー
そうです。だから、とりあえず敷地内に置きます。

まだどうするか決められていないので、とりあえず増え続けています。

金子 さん
どんどんたまっていきますね。

徳永 アナウンサー
はい。でも、決まっていることは1つあります。

40年でこれらすべてなんとかするということは決まっています。

香坂 さん
「とりあえず」と「なんとかする」って。

金子 さん
アバウトですよね。

徳永 アナウンサー
難しい言葉を原発のニュースで聞きますが、突き詰めて平たくすると、そういうことです。

香坂 さん
とりあえずなんとかする。

徳永 アナウンサー
はい。7年たって、いまこんな状態です。

香坂 さん
この「とりあえず」と「なんとかする」の専門家はどこにいるの?

首藤 アナウンサー
どこに?水野さん。

水野 解説委員
それをこれから議論していこうと思うんですが、いちばん大きいのは、いったい責任者が誰なのか、どこなのか。もちろん、東京電力に責任あるのは当然ですよね。ですけど、東京電力っていま実質国有化されてるんですよ。株式の過半が、国が持ってるんで。だから、東京電力だけで決められない部分があって。じゃあ政府が決めるのか。ここらへんがちょっとあいまいな点がありますんで、それをきょう、いろいろ議論していきたいと思いますけどね。

首藤 アナウンサー
40年で終わります?

水野 解説委員
ずっと私、取材してきた実感からいうと、本当に40年で廃炉が完了できると思ってるんだとすれば、それはちょっと楽観的すぎないかなと思うんですね。

こちらは東電と政府が決めてる廃炉工程表というんですが、世界で初めてのことが多いので、遅れ気味なんですね。使用済み燃料の取り出しは去年の9月に遅らせたんですが、先の説明あったように、2021年から溶けた燃料を取り出す。それから、40年で廃炉を完了する。これは変えなかった。これは死守してるんですよね。

香坂 さん
そこに自信があるんですか?裏付けというか。

水野 解説委員
2021年というのは、先ほどちらっと説明ありましたように、2020年に東京オリンピックがありますよね。世界的に注目されると。その時に、当然、福島原発、廃炉にめど立ってるよっていうところを見せたいという感はあると思うんですね。来年取り出ししますからっていうのは。
だけど、あともう3年しかないわけですよ。だけど、炉内の様子とか格納容器の中、先ほどちらっと小石状のものが映ってるような映像ありましたけども、あれほんの一部で、全体どうなってるかはわからない。じゃあ取り出し器具どうするかっていうのはまだ決まってない中で、あと本当に3年で取り出しできるんですかと。

金子 さん
いまのところ、取り出す技術っていうのも世界中どこにもまだないわけですか。

首藤 アナウンサー
柳原さんは廃炉技術がご専門なんですけれども。

柳原 さん
取り出すのは、ロボットで取り出すんですね。人は当然入れませんからね。ロボット技術っていうのはいま結構進歩してますので、これから設計していけば、それは僕は可能になると思いますけどね。

香坂 さん
これから設計していく?

柳原 さん
いままでの経験もあります、もちろん。例えばアメリカのスリーマイル島で同じような事故が起こったんですね。その時の燃料デブリって、原子炉圧力容器っていう、容器の中にあったんですよね。それを取り出してるんですね。そういう経験はありますので、本当に英知を結集すれば、それは可能だと思いますね。

金子 さん
アメリカの場合、燃料デブリ取り出すのはどのぐらいの期間かかったんですか?

柳原 さん
準備期間は、3〜4年くらいあったんですけども、5〜6年で実際は取り出してます。

香坂 さん
でも、状況としてはここまでのひどい状況ではないってことですよね。

柳原 さん
そうですね。スリーマイルはいまの福島とはちょっと違ってて、燃料デブリっていう溶けた燃料が、原子炉圧力容器っていう容器があるんですけども、その中にだいたい、ほとんどとどまってたんですよね。
福島の場合には圧力容器の外側までいってるっていうことがいま分かってきてるんですね。外側のところも取り出さなきゃいけないっていう、そういう困難さはありますね。

水野 解説委員
大変なので、工程は当然計画があったほうがいいんですけど、あんまり計画ありき、工程ありきっていうのはどうかなと。 普通、溶けた燃料の取り出し開始しますというのを聞いて、私なんかは、先ほど見えた映像の小石状のものをロボットアームみたいのでがっと取り出していくのかなというイメージをしていたんですが、どうやら違って、最近いろいろ話を聞くと、掃除機みたいなものを入れて、砂状の本当に細かいのを、それを吸い取ってく。それが取り出し開始だというんですよね。それも意味あると思うんですよ。取り出したらそれの性質も分かりますし、状況も分かるんで。だけども、この計画を死守するためにとりあえず取り出したっていう形だけを作るっていうことはどうなのかなと。ゆっくり着実にやったほうが最終的には早く終わるかもしれないんで、状況を見ながら柔軟に見直していくっていう姿勢は求められると思いますけどね。

首藤 アナウンサー
開沼さんは社会学者でいらっしゃるんですけれども、廃炉の状況を何度も取材されているんですね。実際入られてどうでした?

開沼 さん
もう20回ぐらい入っていますけれども、なかなか一般的な感覚でつかみにくい話だと思うんで、難病になった時の対応だと思っていただくと、いろいろ理解しやすいかなと思うんです。
どういうことかというと、ここまで7年間かかったけども、手術とかにタッチできてないわけですね。燃料デブリの取り出しみたいな本丸の部分に。じゃあここまで何やってたのかっていうと、例えば難病になったら、まず、出血してるよねとか、体の状態のチェックしなくちゃだめだよねっていって、点滴つなげたりとかっていうことですよね。原発の場合は汚染水対策っていわれることだったり、周囲の放射線高いところをきれいにして作業しやすくしたりっていうことをやっていたと。
いまロボット入れたりしてるのは、まさに内視鏡とかを使おうみたいな話。本当に人間の体にやるのと同じように、中を見て放射線の量とか、温度を見るということをやってるんです。
水野さんの話のとおり、手術をとにかく急ぐべきかっていうと、手術の方法が確立されてからやったほうが命助かる可能性あるよねとか、あと、お金の問題もあるから、いまやったら高いけども、もうちょっと待ったら何かが変わってくるかもしれないとか。とにかく急ぐっていうことがいいのかっていう話っていうのも見つつ、とはいえ、問題が起こってるのは事実だから、手術もしなくちゃならないよねっていうところなんですよね。


グラフィックレコーディング

徳永 アナウンサー
そこなんですよね。視聴者の皆さんの声リアルタイムで書いていきます、担当は山田夏子さんでございます。

いま専門家のお三方が指摘してくださった質問がちょうど来始めてたところでした。「本当に終わるの?」「技術はどこまで進んでるんですか?」とありましたが、いま開沼さんからあった、これ正直な声で来てますね。「お金の話を知りたいのです」という人もいます。

首藤 アナウンサー
お金はいくらかかるんですか?

柳原 さん
いま国が考えているのが、8兆円っていうふうに言われてます。燃料デブリ取り出し、いわゆる廃炉の部分で、廃棄物の処理とか処分の部分はここには含まれていないですね。スリーマイルでいくらかかったかっていうと、当時のお金でだいたい日本円にして1000億円くらいかかってるんですね。

金子 さん
全然分かんない。安いのか高いのか。

柳原 さん
福島の場合には、先ほどのスリーマイルよりかずっと事故のレベルが大変なんで、だいたい50か60倍くらいかかるんじゃないかなと。それが8兆円っていう、だいたい試算してるんですね。

金子 さん
これは税金から支払われるんですか?

柳原 さん
これは東京電力が払うということになってます。

首藤 アナウンサー
東京電力が払うってことは?

水野 解説委員
それも元を正せば、わが家の電気代。

香坂 さん
そうですよね。

水野 解説委員
なんで8兆円もかかるのか。もちろん世界で初めてのことなんで、大変っていうのはあるんですが、中はいろんな堆積物がいろんなところにあったり、放射線が極めて強いんで、それに立ち向かおうとすると、新しい技術が必要だということで、新型のロボットを開発したりしている。これがここ1年ぐらい見てますと、なかなかうまくいかない場面があって、ロボット投入したけど途中で止まっちゃったとか、カメラが映らなくなったとかいろいろある。

僕は最近取材していて思うのは、ローテク。これがカギになってくるんじゃないかなと。

金子 さん
ローテク?

水野 解説委員
先日、小石状のものが2号機の中で見えたりしたんですが、どうやって見たかというと、作業員の方が釣りざおの先にカメラをつけて突っ込んで、それで見たんですね。人の手作業。もちろん被ばくに注意しながら。人の手作業で、それがいちばん確実。ロボットを1年前に投入したんですが、止まっちゃった。ハイテクは捨てて、ローテクでやったらうまくいったと。
去年の調査では、カメラが強い放射線で、数時間でだめになっちゃったんですね。最近のビデオカメラ非常にちっちゃいんですが、それはCCDとかCMOSとかいわれる半導体を使ってるんですね。半導体って放射線には弱いんですよ。それでいま、あるメーカーがローテクのカメラを開発しようとしてるんですよ。

肝になるのはこれ。真空管なんですよ。

香坂 さん
昔のテレビの後ろについてた。

金子 さん
よくご存じですね。

香坂 さん
まだ20歳よ(笑)。

水野 解説委員
真空管って放射線の感度が低くて、放射線に強いんですよ。これ使えるんじゃないかということで、この間取材に行ってきましたけども、このメーカーではこの中に入れて、非常に強い放射線を当てて、いま試験をやってるんですが、どうやらこのまま入れても1週間以上はもつ感じは見えてきていると。意外と既存技術、足元の技術が使えるんじゃないかというのがカギになってくるんじゃないかなと。
もちろんハイテクも必要ですよ。でも、それも使いつつ、既存の技術を、1回足元見直して、融合させながらうまくやっていくと。そのために研究者の方、それから、技術者の方の総力を結集する必要はあると思うんですけどね。

香坂 さん
百科事典見れば片づけ方が出てるっていう状況じゃないわけじゃないですか。

水野 解説委員
教科書が全くないんですよ。

柳原 さん
これは日本の技術者が本当に総力を挙げて取り組む話ですよね。初め、確かに放射線のレベル非常に高いからロボットを使わなきゃいけないってみんな考えたわけです。それで新しいロボットを開発したりしている、その中で昔の技術も使えるんじゃないかというのが出てきたと思うんですよ。そうすると、状況を把握しながら1歩1歩進んでいくっていうのがいまの状況かなというふうに思います。

首藤 アナウンサー
汚染水の話、来てます。

視聴者の声

東京都・50代・女性
「汚染水をタンクに保管していても、長時間たつとタンクの劣化など心配ないですか?」

徳永 アナウンサー
「40年の根拠も分からない」っていう声もありますが、

「汚染水や土、誰もが納得する処分方法はあるんでしょうか?」と。

柳原 さん
汚染水は、いまタンクにたまっているのは、トリチウムっていう放射性物質が少し入ってるやつなんです。

金子 さん
体に悪いわけですよね、それ。

柳原 さん
少しですけどね。ほかのやつはだいたい取れてるんですよ。取れて、先ほど説明がありましたように、廃棄物として保管してるんですね。トリチウムだけはどうしても取りきれない。これは、水と同じような、水の中の水素と同じような性質で、なかなか取れない。それをいまためている状況なんです。

香坂 さん
それを取り出す技術も、誰かがいま一生懸命研究してるとか、そういう段階ですか?

柳原 さん
普通の原子力発電所だと、それを海に流すようなことは十分可能なんですよ。

香坂 さん
流しても大丈夫なんですか?

柳原 さん
大丈夫なんです。濃度の制限を設けて流すことはできるんです。

香坂 さん
じゃあなんで流さないの?

水野 解説委員
福島第1原発も、事故前、普通に運転していた時はトリチウムで汚染された水を薄めて基準以下にして、海に日々流していた。

香坂 さん
それは問題がないことなんですね?

水野 解説委員
法律上は問題ない。いま原発再稼働進みつつありますが、再稼働した原発でも同じことはやっているという説明を東電とか政府はして、理解を求めようとはしているんですね。
福島の人がそれをどう受け止めるかですよね。福島の人にとっては、この問題、福島だけが苦しんでいる。福島だけの問題にしないでほしいという考えがあるんですよ。薄めて海に流せば安全というんであれば、福島で発電した電気を使っていた東京、東京湾に流せばいいじゃないですかと言われたら、どう答えます?

香坂 さん
福島に流そうが、東京湾に流そうが、海なんて全部世界中つながってるわけだから、本当にそれが海にとって大丈夫なのか、人間にとって大丈夫なのかっていうことを示してくれれば、どこから流れていっても問題がないわけですよね。

開沼 さん
いまのお話のとおり、普通の原発で出ているものですと。さらに太陽光線で自然発生してるものでもあるんですよね。腕時計の光る部分に使われたりっていう事例も過去にはありました。そういった意味では意外と身近にあるものなんだけども、タンクの中に入ってる水を処理する時に、例えば海に流しますっていう話をしたら、「海に流す」ってたぶん新聞の見出しは立ちますよね。「タンクの水を海に放出」。 その時に地元の方は、例えば漁師の方とかは、それは風評被害を起こすんではないかと。漁師の方が危ないと思ってそれを流すなと言ってる話ではなくて、そういう話は分かってるんだけども、分かりやすく言えば東京の人が買わなくなったりする姿が思い浮かぶから流さないでくれという話になる。
そういうふうに見た時に、何が問題なのかっていうと、科学的な問題というよりは、社会的にみんなでこの問題を共有して、ちゃんと大丈夫なものは大丈夫だと、もちろん危険なこともあるけども、このことは違うよねって言えるかっていうことなんですね。

金子 さん
海に流さない方法はないんですかね?

水野 解説委員
ありますよ。

開沼 さん
政府の有識者を集めた委員会で検討していて、一応5つぐらい方法があるかなっていうふうに言われています。スリーマイルの時は大気中に出すという方法もとられたりとか。だから、海だけじゃなくて大気中とか、あと地中に埋めるとか、いろいろ方法は技術的にはあるんですが、ここまでの有識者の委員会の話だと、コストパフォーマンスとかを考えると、海に流すというのがいいんじゃないかなというふうには言われていますが、答えは出ていません。

首藤 アナウンサー
このタンクはどんどんたまり続けていってるわけですよね。

水野 解説委員
タンク、ずっと作り続けることできないです。敷地は限られているので。あと最長3年、2〜3年で、敷地、作れるところはいっぱいになるという状況なんですね。
じゃあ、あと2〜3年時間があるのかといえばそんなことはなくて、仮にどんな方法にせよ、海に流したり、蒸発させたりするにしても、その装置を作らなきゃいけない。それから、それを作るにあたって、原子力規制委員会のチェック、審査を受けなきゃいけないっていうんで、最低でも2年ぐらい、準備に時間かかるんですよ。3年でいっぱい。でも、2年はそういう準備が必要なんで、もうそろそろ限界といいますか、決めなきゃいけない時に来てるんだけど、いったいそれを誰が決めるんですかと。東京電力ですか?国ですか?

香坂 さん
誰が決めるかも決まってないの?

水野 解説委員
当然、普通に考えれば東京電力が決めるのかなと思うんですけども、東電の社長は、いま国の審議会で方法を議論しているので、その結論を待って考えたいと思いますというような、ちょっと国を頼るような姿勢を見せる。
じゃあ政府はどうなんですかっていうんで、先日も経済産業省のこの問題の責任者に、最終的には国の責任で決めるんですかと問いただすと、まあそういうことですかね、みたいな、ちょっと煮えきらない感じなんですよ。

香坂 さん
えー、そんな感じなんですか?

水野 解説委員
誰が責任者かよく分かってない。それでずっと問題先送りにされてきていて、このままいくともう時間切れになって、敷地はありませんと。あと3年でいっぱいになっちゃうんで、もうどうしようもないんで、こうさせてくださいみたいなね、時間切れというのは、ちょっとだめだなと思いますよね。

香坂 さん
40年たったら本当に私もいないと思うし、世代も変わってきちゃって、起こった事故自体も全く分からない、そのあとに生まれて育ってきた人たちが大人になって、この問題を処理しなきゃいけなくなる。ますます誰が、責任がってことになりますよね。

徳永 アナウンサー
責任っていう話でいった時に、感覚の差というのをツイッターとか見てると感じます。まず、福島ではない地域からの声です。

「東京にいると、3.11前と生活は変わらず、廃炉作業続いていることを忘れてしまう」っていう率直な声。「地元が廃棄物の処分場になるのではと不安です。でも、原発から離れているので実感が湧きません」という人もいます。
でも、福島からたくさん声が来てるので、できるだけ紹介させてください。

「福島にありますが東京の電力です。無関心すぎますよ、東京の皆さん」「福島県だけの問題ではありません。どういう認識で取り組んでいるんですか」。こんな人もいます。

「福島に住んでいても、どうせどうにもならないから情報を集めなくなっていました」とか「東京の人は関心ないのかな」っていう声、たくさん来始めています。

視聴者の声

福島県・30代・女性
「後出し、後出しでイライラします。結局は設置されている福島が被害を受ける。原発のある場所を丸ごと切り取って東京湾にくっつけたら、もっと問題解決のために必死になるんじゃないですか」

首藤 アナウンサー
と。みんな所詮ひと事なんじゃないのかなという厳しい声なんですけれども。

開沼 さん
この問題って、ひと言で煎じ詰めるとこれなんだと思うんですよね。
「何が分からないかが分からない」っていうことが根本にあって。危険だから嫌だとかっていう話だったらまだ分かるんだけども、危険かどうかも分かんない。

香坂 さん
それも分かんない。確かに。

開沼 さん
どういう方法で私たちがもやもやとしてるものを取り除けるかも分かんないという話になってると。 実は、こういう問題って社会学などではこういう言い方するんです。

「ニンビー」って読むんですけれども、英語の"Not In my backyard"「自分ちの裏庭にはお断りだ」という意味なんですが、どういうことかっていうと、社会的に、例えばゴミを置く場所とか迷惑施設が必要なのは分かると。自分の利便性にも絶対必要だ。それ進めてくれって理屈では分かるんだけども、それあなたのうちの裏庭に置きますよっていう話になっちゃうと嫌だよねっていう話になると。
まさにいまの汚染水、あるいはそれを処理した水をどういうふうに処理するのかっていうことの問題だけじゃなくて、積み重なっているがれきとかその他の廃棄物も、実は何の議論も始まっていないんですよね。
立ち戻んなくちゃだめなのは、私たちは何が分かんないのかが分かんないんだっていうところからどういうふうに抜け出すかっていうことを7年たっても考えられていないっていうことなんですよね。

柳原 さん
何が分からないのか分からないっていうのは、1つの原因として、40年で終了するっていう、終了の姿が見えてないんですよね。
この中長期ロードマップっていう全体の計画が作られたのが前の話で、その当時は状況がよく分かってなかった。何年かかけて、原子炉の中がどうなってるかっていうのを一生懸命探してきたんですよね。だいたい少しずつ分かりかけていますので、そろそろ最終のゴールのところをどうしたらいいかっていう、この議論が必要になってくるんじゃないかなというふうに思いますね。

香坂 さん
聞いてると、議論をする人たちでさえ、それはたぶんあっちが最終的に決めます、いやいや、そっちが決めますっていう感じですよね。

首藤 アナウンサー
そうですよね。専門家たちの中での責任っていうのも。でも、それも、私たちがその人たちに責任取ってって言ってるのも「NIMBY」なんですかね?

水野 解説委員
官僚はだいたい2年ぐらいで異動していきますので、そういう人事制度の中ではなかなか難しいというのもあるんですけども、自分の任期中に汚染問題は絶対に解決してやるんだとか、そういう気概を持ってやる人がどれだけいるのかという点は、いろいろ取材していて思うところはありますし。

香坂 さん
反対に自分の任期中にはあまり変化を起こさないで、ちょっとずつ進んでる感が出てればいいって思ってる人が多いって感じ?

水野 解説委員
そこまでは言いませんが(笑)。

香坂 さん
ちょっとそう思っちゃった。

水野 解説委員
ちゃんと自分の任期中にはここまでやるっていうような気概持ってやってほしいと思いますし、東京電力も、なかなか自分たちだけでは決められなくて、国の顔色をうかがいながらやらなきゃいけないっていうのもあって、いったいどうなんだ、みたいな。

香坂 さん
国の顔色うかがうんじゃなくて、生活してる人たちの顔色をいちばんうかがってほしいですよね。

金子 さん
福島の人たちのね。

柳原 さん
少し倫理的な問題も僕はあるような気がするんですよ。というのはね、放射性物質ですとか、いまの汚染水どうするかっていう問題もそうなんですけれども、当分の間はこのままでもいいんですよ。当分の間。1年、2年だと、このままでいても、そんなに。その先は問題になりますけどね。自分がやってる間には、決めて責任取りたくないっていうのはね、取らなくてもいいっていうような、そういう倫理的な問題があるような気が。

香坂 さん
やっぱりそうか。

柳原 さん
先を見て、これは自分たちの責任だということで、もうちょっと前に進むような、そういう意識のある人たちが必要なような気がしますね。

金子 さん
さっき福島の方が、東京の人が関心ないって言ってましたけど、今後、われわれは、何かできることっていうのはあるんですか?

開沼 さん
難しいんですけども、原発の建物の周りの地下の水を抜いて海に流すと。実はこれも若干放射性物質入ってるんですね。そういうことをやってきてるんです。
その時に、当然、地元でもめますよね。政府が来て、流すべきであると。東電も流させてくださいという話をして、地元の人は、でも、そんなことをやったら風評が出るし危ないっていうふうに懸念して不安になる人もいるという時に、最終的に、お願いしますと言って、分かったよって言ってボタンを押すのが地元の人になってきたんです。
これはどういうことかっていうと、地元の人が同意したから流したんだって言われちゃうんですよ。そうなると、さすがにボタン何度も私たち押す役をやらされてきたけども、いやいや、こっちが悪いみたいになってるでしょと。そういう話じゃないよねと。いろいろプロセスの中でお願いしますって言われる話になってくるのは分かるけども、そこはちゃんと責任持って、この問題は風評も起こさないし、自分たちで何かあった時には責任取りますって誰かが言うという役割を、そろそろ地元じゃないところに持っていってくれという声もあるんですね。

水野 解説委員
あと、福島の人たちを苦しめてる風評というのはいったい誰が原因作ってるのかを考えていくと、もちろん流通段階での問題というのもあるんですが、スーパーに行って、野菜とかがあって、福島産とほかの県産があった時に、無意識のうちにほかの県産を選んでるとかね。
でも、福島県産って放射性物質の検査、きわめて厳格にやっていて、例えばお米なんかはすべて、年間50億円かけてすべて検査をしていて、基準以上って全く出てないんですよね。

金子 さん
お魚も海外に輸出されたって言ってましたね。

水野 解説委員
じゃあ値段が戻ったかというと、戻ってないんですよね。それは福島だけの問題じゃなくて、全国民がちょっとずつ加担してるところがあるんじゃないかということを考えてもらいたいですね。

香坂 さん
そういった意味では、私たちが協力できることはあるっていうことですよね。

水野 解説委員
福島でちゃんとそういう検査が行われているんだと、安全というのは確認されているんだということは知る必要があると思いますね。

開沼 さん
昨年、東京のシンクタンクが、東京の人に「福島に行くことを友人や自分の家族に勧められますか?」って聞いたら、「ちゅうちょする」っていう人は35%出たんですね。食べ物、旅行、両方なんですけども。
この問題って非常に深刻で、6割ぐらいの人は行ってもいいよ、食べてもいいよ、むしろ積極的に応援したいって言うんだけども、4割ぐらいの人がそこを避けてる状況は7年たっても続いてる。これをずっと続けていってしまうと、例えば、中には福島出身の職業とか結婚の段階で、そこに懸念を持つような感覚とかが残ってしまうんじゃないかということもいま心配されてることですね。

視聴者の声

東京都・30代・女性
「批判ばかりであいまいな世論。不安だから福島の外に出したくない、ファジー(あいまい)に済ませたいという世論が、廃炉のいちばんの壁なんじゃないでしょうか」。

首藤 アナウンサー
長い廃炉に向けての社会、どう向き合っていくんでしょうか?

開沼 さん
不安がだめなのかっていうとそういう話じゃなくて、当然不安だよねっていうところからスタートしなくちゃだめで、不安を無理やり押さえつけることはできないですよね。
でも、例えば食べ物の話とかだったら、福島にツアー行って、「食べること、私自身ちゅうしょしてます、正直」っていう人も行って、農家の方としゃべってみると、この人が作ってるんだ、福島のものって言われると違うけど、この人ならいいんだと。顔見える環境を作っていくということも重要で、廃炉だとこれ難しいんですけどね。そういうのもあるかなと。

首藤 アナウンサー
来週は福島県富岡町から放送します。

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