2018年01月27日放送放送内容まるわかり!

まもなく開幕!ピョンチャン五輪 南北"急接近"の思惑は?

今月、2年ぶりとなる韓国と北朝鮮の閣僚級会談が開かれ、ピョンチャン五輪に北朝鮮が選手団や芸術団などを派遣することで合意。南北合同チームの結成や「統一旗」を持って合同で入場行進することも決まり、対話と交流を活発化させる見通しとなりました。 一方、こうした動きによって北朝鮮に対する国際社会の包囲網が緩むという懸念も。南北融和の動きは、核・ミサイル開発の問題に影響を与えるのか?日本や国際社会はどうすべきか?深読みします。

今週の出演者

専門家

礒﨑 敦仁さん(慶應義塾大学 准教授)
木村 幹さん(神戸大学 教授)
ソ・テギョさん(ジャーナリスト)
出石 直(NHK 解説委員)

ゲスト

髙田 延彦さん(元総合格闘家)
大沢 あかねさん(タレント)

今週のグラフィックレコーディング

グラフィックレコーダー
山田 夏子さん


首藤 アナウンサー
北朝鮮と韓国の急接近、街の声は、「期待と不安どっち?」と聞くと、不安のほうがやや多かったですね。おふたりは?

髙田 さん
この緊迫した状況の中で、オリンピックが終わったあとのことを話さずに、とりあえずスタートするっていう、このやり方って危険を伴うっていうか、何の解決にもなってないですね。

大沢 さん
不安のほうですかね、私も。オリンピックと政治って別問題で考えなきゃいけないんですけど、核・ミサイル問題ってどうしても切り離せない問題だと思うので。

首藤 アナウンサー
そうですよね。韓国と北朝鮮の関係、いまどんな状況なのか。まずは田中アナウンサーのプレゼンです。


プレゼンテーション

田中 アナウンサー
おはようございます。いまの関係を知る上でも、歴史もひもときながら見ていこうということで、冬のオリンピックっぽく、

このようなソリで、お互いのこれまでの距離感っていうのを見ていきたいと思っております。

まず、オリンピックが行われるピョンチャンですが、韓国のここにありますね。ここから北に80キロほど行きますと、軍事境界線。もともと1つだった朝鮮半島を分ける境がある。
なんで2つに分かれたのか。

第2次世界大戦のあと、北はソビエト連邦側、南はアメリカ側に2分した。その後、北は北朝鮮、南は韓国という、それぞれの独立した国になった。
事態が動いたのが1950年、北朝鮮が半島を統一しようということで、力ずくで韓国を攻めた朝鮮戦争というのがありました。

さあ、両者の距離がここで広がってしまった。

この朝鮮戦争は1953年に、

いったんやめようね、と。終わったわけじゃない。あくまで休戦中ですということなんですね。
そのあとは、アメリカ・ソ連による冷戦時代が続く。韓国・北朝鮮もずっとにらみ合うという状況が続きます。
その事態、少し変化があるかなと思ったのが1991年です。ここ、なくなりました。

首藤 アナウンサー
ソビエト連邦崩壊。

田中 アナウンサー
韓国と北朝鮮のこの距離に変化があるかな?と思ったら、1992年にこんなことがあった。

髙田 さん
出た。

首藤 アナウンサー
核開発ですね。

田中 アナウンサー
実は核作ってんじゃないの?っていう疑いが出てきた。仲よくなるとかいう前に、おいおい、核作ってる疑いあんのかよってびっくりしちゃった。両者は歩み寄るどころか、緊迫状態。修復不可能なんじゃないかっていうぐらいのところまできた。

そんな中で韓国の大統領になったのがキム・デジュンさん。政策とは、これです。

「北風と太陽」という言葉がありますが、北風ではなくて、太陽のように温かく、緊張したこの状況を解かしていけないかという政策なんですね。
北朝鮮って当時、経済はどん底。さらに、飢きんもあって多くの餓死者が出た。

だったら、食料援助しようと。あとは経済で困ってるならば、韓国の人たち、どんどん北朝鮮に旅行して、お金落としましょうよ。そして、北朝鮮に工業団地を作って、そこに韓国の企業いっぱい進出する。北朝鮮の人たちを雇いましょうよ。
そうすれば、韓国からどんどんお金が入って経済潤うよね。これに喜んだ人が。

首藤 アナウンサー
キム・ジョンイル総書記。ジョンウン委員長のお父さん。

田中 アナウンサー
そうです。北朝鮮としては困ってますから、これはありがたいよねということで、両者の距離が一気にここで、ぐぐぐっ。

かつてないほど急接近するわけです。これが、2000年。この両者で、分断以来初めてとなる南北首脳会談というのまで行われました。
この仲のよさを世界中にアピールする機会が2000年にありました。それが、シドニーオリンピック。

平和の祭典の開会式に、韓国・北朝鮮の選手が合同で入場行進。持ってる旗は国旗じゃないです。統一旗。だから、両者が持てる旗なんですよね。

首藤 アナウンサー
2人で持ってるシーンが印象的です。

田中 アナウンサー
選手団見ますと、笑顔もこぼれてたりして。韓国の中でも友好ムードというのがすごく盛り上がる。この統一旗がソウル市内にいっぱい掲げられたりとか、韓国の人が北朝鮮の試合を本当に一生懸命応援するというシーンもたくさん見られた。この年、キム・デジュンさんは、韓国の人として初めてノーベル平和賞まで受賞します。
友好ムードはスポーツによって高まるよね。いいよ、これっていうことで、さらに続いていきます。2年後です。

髙田 さん
これね。

田中 アナウンサー
アジア大会、印象的ですよね。いわゆる「美女軍団」といわれる。韓国の若い男性たちがアイドルを追いかけるかのように写真撮ったりとか、大変なフィーバー起きましたよね。

髙田 さん
韓国の男性たちがほれ込んじゃってたもんね。

田中 アナウンサー
すごかったですよね。となると、韓国の人たちにブームになって、北朝鮮に行きたい、もっと旅行行こうってなるわけですよ。で、どんどんまたお金が北朝鮮に落ちると。
北朝鮮はうれしいし、さらに自分たちのいいイメージが世界に伝わる。両者にとってこれはすごくいいよね。もっともっとスポーツで友好ムードを高めていこうよ。

夏だけじゃなくて、2006年のトリノオリンピックも合同で入場。そして、統一旗を持ってと。 ただ、ちょっと気になるのは。

大沢 さん
核ですよね。

髙田 さん
それがある。

田中 アナウンサー
本当に平和を目指すなら、この問題をちゃんと見つめなきゃいけないですよね。
ということで、キム・デジュンさんのあとを受け継いだノ・ムヒョンさんの時に、こういう協議が行われました。

「6か国協議」、北朝鮮の核の問題について真剣に話し合う協議です。2005年、北朝鮮は一切の核兵器と核計画を放棄する。これ、約束したんですよ。すごいことですよ。

髙田 さん
よく言ったね。いま思えば。

田中 アナウンサー
ついに平和来たよって大盛り上がり。 そして、翌年の2006年、核実験します。北朝鮮。

首藤 アナウンサー
放棄するって言ったのに、翌年?

田中 アナウンサー
えっ?ですよね。裏切られちゃったってことですよね。
世界中が怒りますし、韓国は。

首藤 アナウンサー
そりゃそうですよね。

田中 アナウンサー
どん引きですよね。キム・デジュンさんたちのような、温かく、北朝鮮に優しくしようっていうのじゃ、やっぱりだめなんじゃないのっていう世論が高まりまして、

もっと制裁を強く、という政権に、韓国は変わるわけです。 北朝鮮も2011年にキム・ジョンイル総書記が亡くなります。引き継いだのが息子のキム・ジョンウン委員長ということになります。

キム・ジョンウンさんになってからは・・・。

髙田 さん
さらに力を入れた、核開発に。

田中 アナウンサー
そして、ミサイル。繰り返します。韓国は制裁、強硬にという政権の時でしたから、そんなことするなら、あんだけ旅行行っててお金落としたけど、やんない。韓国の企業も全部引き上げますよ。北朝鮮に落としてたこういうお金、もう落とさないよ。さあ、どうだ。これで困っただろう。どうだ。

でも、やめることなく、突っぱねて、なおミサイルや核実験って続いてますよね。この開いた距離、元に戻っちゃったね。こうやって動かない状態がまたしばらく続くわけですよね。
この状態、やっぱりよくないんじゃないかということで、去年、韓国の大統領になったのがムン・ジェインさんです。

強く強く、ってやっても事態動かないんだったら、やっぱりこれだね。

髙田 さん
また?

田中 アナウンサー
また、共に平和になりましょう。共に繁栄しましょう。北朝鮮ともっと仲よくなろうよ。
これまではスポーツによって平和のムードというのを構築してきましたよね。ピョンチャンオリンピックが近いわけですから、もう1度、スポーツの力を信じましょうよ、オリンピックで合同チームなんて見たくないですか?って、ずっとアピールしてきた。その熱意が通じたのかもしれません。ことしになって北朝鮮は。

首藤 アナウンサー
出ると。

田中 アナウンサー
代表派遣の用意があるよ。いいの?っていうことで緊急会合が開かれまして、こうなりました。

選手団はもちろんですが、応援団、もしかしたらあの美女軍団が見られるかもしれない。統一旗で入場。シドニーやトリノの時のあの夢よ、もう1度。そして、念願だった南北合同チームがついにオリンピックで初めて実現する。

アイスホッケーの女子で。というところまでムンさんがこぎ着けました。
あの時のムードを思いだして、もっとスポーツで平和、そして、今度こそ、非核化どうですか?

首藤 アナウンサー
そう。それをしてほしい。

田中 アナウンサー
それ、話、別だよね。

それとオリンピック結びつけられたら困るなって言われちゃったんですよ。
もっと気になるのは、前のめりの大統領と国民の距離ですね。世論調査が行われました。ムン・ジェインさんがずっと言っている合同チーム、嫌だよっていう人が7割超えています。

あんなにシドニーの時には一緒に統一旗振ってたのが、統一旗、嫌だっていう人、半分いるっていう、この状況なんですね。友好ムードをというふうには言われてますが、オリンピックまで2週間、本当に大丈夫?

髙田 さん
だって、何回もそういうことをやったってさ、オリンピックとか終わるとまた戻っちゃうんだもん。悪い関係に。

首藤 アナウンサー
それ、思っちゃいますよね。ムン・ジェイン大統領、大丈夫なんでしょうか?

出石 解説委員
ムン・ジェインさんもいま、こんなはずじゃなかったと思ってると思うんですよね。 これ、最新の世論調査の支持率なんですけれども、
就任した時は80%以上あった支持率が、いま6割ちょっと。就任以来、いちばん低い数字になっちゃったんですね。支持しない理由でいちばん多いのが、南北合同チームなんです。大統領はみんなが感動するだろうって言ってたけど、むしろ支持が離れちゃってる。これはどうしてだろうと思ってると思いますね。

首藤 アナウンサー
ソさん、この支持率、どう見ますか?

ソ さん
これはですね、20代と30代で減ってしまったんですよ。女子アイスホッケーというのがポイントなんですけども、まず、なぜアイスホッケーなのか。ショートトラック、韓国強い。韓国独自でメダルが取れるので、合同チームいらない。アイスホッケー、じゃあなんで女子なのか。男子アイスホッケーは強いんですけど、女子は弱い。マイナー種目の弱い女子っていう、それに20代が自分の姿を重ねたわけですよ。社会での。韓国の不公正がはびこる社会で自分たちと同じ立場だと。政治に利用されてしまった

首藤 アナウンサー
政治に利用されている、弱い立場の、スポーツ。それで支持率が、大統領から気持ちが離れちゃった?

ソ さん
そうです。パク・クネ政権の時の社会の不公正を正すという名分が、ムン・ジェイン大統領にはあったんですけども、それを裏切られてしまった。変わってないんじゃないのっていう、一時的な失望っていうのが出ています、いま。

髙田 さん
ちょっといいですか? なんでこんだけ苦い経験をね、15年、20年にわたって繰り返されてるのに、ムンさんはまたあえて。おそらくまた同じ結果になるんじゃないかっていうことは予想できるじゃないですか。なぜまた近寄っていくんですか?歩み寄っていくんですか?

ソ さん
去年を思いだしていただきたいんですけど、去年は、いつ戦争が起こるか分からない、そういう緊張感があったのが、対話してる間は戦闘は起きない、暴発は起きないだろうという、1つの担保にしたいというのがあります。 もう1つは、韓国って、言うなれば島国と同じですから。北朝鮮が開放していないので。韓国としても北朝鮮との関係を改善して、そういう状況を変えたい。出生率も低い、人口も減ってるという中で、北朝鮮が1つの経済発展の原動力になるような、そういう長期的なプランを描いている。そういう事情があります。

木村 さん
皆さんこういう問題起こると、韓国の人たちはものすごく、例えばオリンピックで合同チーム作る、選手団来る。それにものすごく大きな期待をしてると思いますよね。ですけど、必ずしもそんなことはないと思うんですよ。 昔は韓国の人たちってものすごい大きな期待を持っていて、91年ですよね。

卓球で合同チームが作られた。サッカーでも作られたことがあるんですね。その時には、選手の人たちは、政治の犠牲になった。出られないんですから。一部の選手は。それでも、これは将来の統一につながるんだから大事なんだっていう思いがあったんですよ。
ですけど、今回の場合には、ムン・ジェインさんを含めて、これを含めて統一につながるかと本当に思ってるかっていうのは甚だ怪しいですし、もっと言えば、核の放棄につながると思ってないですね。でも、やらないよりはましだと。世論も、低い期待しかないんだったら、ホッケーの若い女の子が出られない、その犠牲払う必要があるの?テンションが下がってる中でやっている。国民も納得しないし、政府もうまいこと説明できないっていうのがいまの状況なんですね。だから、皆さんが考えているほど韓国の人たちはすごい期待してるわけでも、実はないっていうところも大事なんじゃないかと思いますね。

首藤 アナウンサー
礒崎さん、北朝鮮の政治がご専門なんですけど、北朝鮮はどういう思惑で今回参加するっていうふうに。

礒﨑 さん
新年の辞という、元日のキム・ジョンウン委員長のスピーチから今回大きく動き始めたわけですけども、スピーチの内容を見ても、キム・ジョンウン委員長は、核というものは、自分たちから先に使わないと。そして、平和ということも10回も連呼した、つまり、アメリカからの攻撃を避けたい。韓国と対話している間は、少なくともアメリカから攻撃されることはない。これが第一義的ですよね。
しかも、北朝鮮の周辺に韓国と日本とアメリカと、北朝鮮に対して圧力を加える、制裁を加えようとした連携を、ここでくさびを打つことができるわけですね。アメリカと韓国の間に距離が出てくる。これは北朝鮮のねらい。 さらに大きく言えば、10年前は、先ほど説明がありましたとおり、韓国の政権で北朝鮮にどんどん外貨を渡していく経済協力の時代があったわけですから、その時代に戻して北朝鮮の経済成長につなげたい。こういったいくつもの思惑があるように思います。

大沢 さん
ピョンチャンオリンピックの間は、核・ミサイル開発みたいなものは、北朝鮮はやる予定はないんですか?

礒﨑 さん
元日のスピーチを見てみましても、韓国に思いきった対話を呼びかけた一方で、核・ミサイルについては量産して実戦配備するんだっていうことも言いますから、それは両方進めていくってことですね。ただ、実験は一時的にやっていないっていう状況が、いまは続いているということになります。

大沢 さん
オリンピックの期間中もやる可能性はある?

礒﨑 さん
常にあります、それは。ただ、いままでよりはその頻度は低いということになるわけですね。

木村 さん
そこんとこね、すごく大事なところで、核の話っていうのは本音と建て前みたいなところがあるんですよ。韓国の人たちも韓国政府もなんですけど、核放棄、もちろんしてもらったらいいですよね。だけど、放棄させられると思ってるかっていうと、甚だ大きなクエスチョンマークなんですよ。そうすると、最低限オリンピックの間にやらなければハッピーだ、少なくとも戦争が起こらなければ最低限いいと。
もっと言えば、核に関しても、どこまでみんな考えてるか、人によってもちろん違うんですけども、頻繁にミサイルの実験が行われたり、頻繁に核の実験が行われたりしなければ、現状よりは改善してるんだから、それぐらいでもやっておいたほうがいいんじゃないかっていうぐらいの感じなんですね。

首藤 アナウンサー
それで対話。視聴者の方はどんな意見来てますか?


グラフィックレコーディング

グラフィックレコーダー
山田 夏子さん

田中 アナウンサー
今回、韓国と北朝鮮に対していろんな聞きたいことがあるっていう視聴者の方が多いです。

「肝心の選手たちはどんな気持ちなんでしょうか?」「発言を守らない国を擁護してまで、韓国はいったい何したいんですか?」。

首藤 アナウンサー
その声には、ソさん、どうでしょう。

ソ さん
韓国はですね、北朝鮮の核凍結という、1歩前進というのを目標にしてるんですよ。廃棄に向けて凍結させるっていうことなんですけども、いまのところは。

髙田 さん
難しいでしょ?

ソ さん
そうです。例えばオリンピック期間中に北朝鮮で何か軍事挑発があって、アメリカの選手団が帰ってしまうと、ぼろぼろのオリンピックになってしまうわけですから、目も当てられないので、一応時間を稼いで、その間にアメリカと北朝鮮を何とかつなげる。それが韓国の隠れたミッション。

大沢 さん
アメリカは今回ちょっと期待してたんじゃないですか?ここまで近づいて。でも、結果、ふたを開けてみれば、非核化の話は結びつけるな、みたいな。

ソ さん
そうですね。韓国の統一省という南北関係を扱う機関があるんですけども、そこの長官がきのう会見をして、歴史上初めて、南北会談で核の話を持ち出した時に北朝鮮側が出ていかなかった、今回。初めて最後まで聞いてたっていう。そういう面で、北朝鮮も出てくる何かしらの理由があると韓国側では見ているという。

大沢 さん
それは追いつめられてるっていうことですか?

ソ さん
1つは制裁が効いてきてるっていう見方もありますし。

髙田 さん
オリンピックをおいしく使おうっていう思惑もあるんじゃないですか?

ソ さん
ものすごい完全な政治利用です。南北共に政治利用してます。

出石 解説委員
ここは考え方に違いがあって、韓国の説明というのは、オリンピックを機会に南北が仲よくなったら緊張が緩んで、そして、核やミサイルの問題の解決につながりますよと。
でも、そうじゃないでしょうと。いま仲よくしてるのはあくまでもオリンピックのためであって、核・ミサイルについては全然進んでないじゃないですか。オリンピックを平和にやるのは結構ですけれども、それが本当に融和なの?本当に核問題の解決につながるの?って疑問の声もあるわけですね。

木村 さん
そこは難しいんですよね。われわれは、例えばアメリカは北朝鮮に対して強硬な姿勢をとってると思いがちなんですけども、アメリカの専門家としゃべると、本音としては、核を北朝鮮に放棄させるのは難しいと思ってるんだよね、それ前提で考えないといけないよねっていう話はたくさん出てくる。そっちのほうが多いぐらいなんですよね。
そうすると、成功するかどうかはともかくとして、韓国がいろいろやってくれてること自身は、成果が出なかったらはねればいいし、成果が出ればそれを得ればいいし、見てるっていうところもかなりあるんですよね。今回の話っていうのも、アメリカ政府、少なくとも公式には歓迎してますし、トランプさん、これを受けて、僕もキム・ジョンウンに会えるかな、みたいなことを言ってみたりするわけですよね。

髙田 さん
ころころ変わるからね。

首藤 アナウンサー
アメリカもアメリカでね。

木村 さん
でも、半分ぐらい本音だと思うんですよ。会えて、本当に核がなくなったらラッキーなわけじゃないですか。

髙田 さん
ただ、オリンピックの話題でいまこうやって一色になってる時に、北朝鮮が、米韓の合同演習、永遠にやめろと。これは結構な強いメッセージじゃないですか。それに関してはどう思われます?

木村 さん
もちろん、韓国側は、永遠にやめろって、受けないですよね。そうすると、さっきの核と同じ話になるんですよ。北朝鮮からすると、じゃあ凍結してくれ。凍結っていうのはすぐ解凍することもできるわけですね。だけど、凍結する間は進んでないわけだから話ができる。いま、その低いレベルでずっとやってるんですよ。その駆け引きなので、韓国がどういうふうなカードを出せるのかとか、北も見てるし、韓国もアメリカも、北がどういうカードを出してくるんだろうかっていうのも見てると。そのあと考えるんでしょうね、おそらく。

田中 アナウンサー
視聴者の方も、高田さんのように、北朝鮮っていったい何を考えているんだろうということを気にしている意見がいっぱい来ましたね。
今月になって急にオリンピック出るって言った、直前の参加表明っていうのは何のためなんだろう。例えば

「北朝鮮にとっては単なる時間稼ぎっていう思惑もあるのか」。逆に、「経済制裁が効いているからこそ、融和ムードを演じて韓国を取り込みたいのか」。

礒﨑 さん
いずれもあると思いますよ。元日に突然対話を呼びかけたように見えるんですけども、実際北朝鮮の新聞を、論調を見ていって、変化が明確に出てくるのは昨年の9月なんですね。
9月に核実験をして、そのあと2か月ほどたってから、アメリカに届く距離のICBMの実験、ミサイル実験に成功したということを表明するわけで、アメリカと対抗できるだけの抑止力を持つことができた。こういう自信をつけ始めて、9月下旬から急にキム・ジョンウン委員長の動静報道が、軍関連の視察を一切やめて、靴工場、化粧品工場、農場、りんご畑など、経済関連のものにシフトしていく。つまり、核・ミサイルを放棄するんではない。核・ミサイルを持ったからこそ、これからは経済に集中したいんだっていう思いが明確に出てくる。
しかし、制裁が強まっている中で、みずからの力で経済を立ち上げることは非常に難しい状況にあるので、どこかに声をかけないといけない。本当はアメリカが対話をしてくれて、北朝鮮と対話をして、経済制裁を解除してくれればそれに越したことはないわけですけど、トランプはそんなことをやるつもりもない。日本もやるつもりもない。韓国は、言えば来るのが分かっていたわけですから、それを元日に、3か月、4か月ほどは最低でも戦略を練って、準備して、勝算があるからこそ呼びかけたと見ていますけどね。

髙田 さん
そう考えちゃうと、何だかんだ言いながら、北朝鮮は持ってはいけない核を持ってしまったということじゃないですか。だだをこねて、何だかんだ時間を引き延ばして。っていうことは、どの国も、核を持てば持ったもん勝ちっていうことが、ここで証明されちゃうってことにはならないですか?

礒﨑 さん
もともと核の問題っていうのはそういう側面がある。インドが核実験をしたら、その隣のパキスタンは怒り狂ってまた核実験をする。こういう核の動きはありましたね。

視聴者の声

岐阜県・70代・女性
「すべての韓国国民が、北朝鮮と仲よくやれると思っているのでしょうか」

首藤 アナウンサー
合同チームへの批判もありましたし、支持率も下がってるっていうこともありますけれども、統一っていうことに対して、同じ民族としての。ということは、いまどんなふうな論調で、何を目指しているんでしょうか?

ソ さん
いまは「統一」って言わないんですよ。「統合」って言うんですよ。

首藤 アナウンサー
統合?

ソ さん
統一に向けた統合、経済の統合、制度の統合。それを長く続けて、最終的に統一すればいいかなっていう、その次元まで下がってるんですよ、韓国はいま。そのために、統一という完全な目標を立てるんではなくて、少しずつ進めていく。

大沢 さん
韓国国民のどれぐらいの人が、それを願ってるんですか?

ソ さん
いまは半分ぐらいです。若い人になればなるほど半分以下になってしまって、50代以上はまだ6割ぐらいあるんですけどね。

大沢 さん
若い人、別の国っていう感覚があるんですかね。

ソ さん
完全に別の国です。

木村 さん
全くそうだと思います。いま、韓国人もそうですし、韓国政府も、統一っていうものはあまりに難しすぎて、すぐにイメージできなくなってるんですよね。若い人にとってみれば、北朝鮮に親戚がいるったって見たこともないわけですし、70年も別の国やってるわけですから。

実はムン・ジェイン政権っておもしろくて、統一政策ってないんですよね。昔は必ずあったんですよ。だけど、そういった、「統一=国是」っていう時代じゃなくなってるんですね。もっと言えば、核兵器の放棄も国是じゃないかもしれない、国民からすると。分かりやすく言うと、あした平和に、豊かに生きていければそれでいいじゃないというのが、韓国人の本音なんだと思いますけどね。

首藤 アナウンサー
北朝鮮の本音はどうなんでしょう。

礒﨑 さん
同じですよね。北朝鮮も当然、統一というものは、かなり先の話だからこそ、韓国の存在を認めるということですね、韓国と対話をしているということは。つまり、対話というのは一見して統一ムードなんだっていう先入観があるわけですけど、むしろ逆で、お互いの存在を認め合うということになるわけですから。
注目すべきは、キム・ジョンウン委員長の発言って、かなり振り幅が大きいところございまして、3年前の新年のスピーチでは、南北で首脳会談をしない理由はないと首脳会談の可能性を呼びかけていたり、自分たちの社会主義体制、社会主義は優越しているけども、しかし、社会主義というものを南に対して、韓国に対して強要したことも、強要するつもりもないと。南の存在を認めている。

髙田 さん
この局面で軍事パレードって本当にやると思います?

礒﨑 さん
2月8日にですね。

大沢 さん
オリンピック開幕の前日?なんで前日なの?

出石 解説委員

朝鮮人民軍の創設記念日って4月だったんですよ。それを、先週かな?急にこの日に変えますよ、と。

首藤 アナウンサー
記念日を変えてまで2月8日にしたと。

出石 解説委員
開会式の前の日に、どうも軍事パレードをやりそうだと。これは、北朝鮮は攻めてきてると思うんですよね。だって、これに対して文句を言ったら、じゃあ選手団引き上げますよ、オリンピック行くのやめますよと。

大沢 さん
韓国、ちょっと揺さぶってるというか。

礒﨑 さん
もう1つ、北朝鮮の大きな文脈として、昨年から歴史の見直しといいますか、書き換えというものが始まっている。「キム・イルソン全集」というのが、全100巻あるんですけども、100冊の「キム・イルソン全集」はもう完結しているのに、昨年からまた、第1巻から修正版が出始めているんですね。
つまり、何かキム・ジョンウン委員長にとって、こういうふうに北朝鮮の歴史はあるべきであるという姿があって、それに基づいてさまざまな変化、祝日を増やしたり、歴史書の書き換えをしたりっていう、その一環だというふうにも見ることができますね。

首藤 アナウンサー
オリンピックまで2週間、大丈夫なんですかね?無事にちゃんと始まるんですかね?

ソ さん
1月9日の南北対談で、軍事当局間会議をやるって言ってるんですけど、北側が返事をしてないんですよ。このパレードにしても、韓国側は何も言わないんですよ。でも、本音としては、ミサイル発射じゃなくて軍事パレードだったら我慢するよっていうのが韓国です。ここはいったん引いて、肉を切らせて骨を断つじゃないですけど、ここまでは我慢できると。何も言わないと思います、韓国は。

木村 さん
韓国政府ね。これはあくまで韓国政府なので。

大沢 さん
かなり立場が弱くなってる。

ソ さん

対話と融和、外から見るとすごい弱気に見えるんですけども、韓国も40年以上、北朝鮮と交渉してますから、みんな何が起こるかっていうのは分かるんですよ。いきなりほごされるっていうのも分かってる。でも、問題は、韓国の国民がここについてこられないんです。だから支持率が下がるんですよ。

首藤 アナウンサー
政権はこう行きたいけど、いやいや、それは待ってという国民がいる。

ソ さん
政権は去年から一生懸命水面下で北と交渉してきて、よし、それが実現したっていま喜んでるんですけど、国民のほうは、え?きのうまでミサイル撃ってたでしょって。

大沢 さん
それはそうですよね。国民にしたらね。

田中 アナウンサー
オリンピックのあとの心配っていうのを結構皆さんしてますね。

「終わったあと、手のひら返しって予想されませんか」「オリンピックが終わったあと、関係が元どおりになっちゃいそう」「いまの友好関係は作られたフィクションじゃないですか」。

髙田 さん
そう思ってる人がほとんどなんじゃないですか?いままでのやり方見てたら。

ソ さん
また統一省の話で申し訳ないんですけども、3月25日に米韓合同軍事訓練、延期してるのをやりますっていう、長官が期限を切ったんですよ。そこまでに米朝の手をお互いつながせないと、この動きは終わってしまうという非常にいま危機感があって、スポーツ交流なんかを通じてそれを維持しようとは思ってるんですけども、政治とスポーツというのは効果はありますけど、最終的には別の分野ですから。

出石 解説委員
この合同軍事演習っていうのは、いつもだいたい3月、4月にやってるんですよね。ところが今回は、オリンピック中はそういうのは控えましょうっていうことで、アメリカと韓国が合意してるんですよ。ただ、オリンピック・パラリンピックが終わったらやりますよと。

大沢 さん
やったら、また緊張状態に。

出石 解説委員
北朝鮮は、こんなことやったら、それは挑発だろうと。だから、オリンピック・パラリンピックが終わったあとにこれをやるかどうかっていうのが、1つのポイントだと思うんですね。

髙田 さん
また緊張状態に戻るんじゃないですかね。対話と融和っていうスタイルを、キム・ジョンウンさんはとる意思はないでしょ。

礒﨑 さん
もちろん楽観視はしてはいけないところはあるんですけども、今回オリンピックに参加するっていうのは、一方的に韓国に花を持たせているだけなんですね。北朝鮮にとってまだ経済的なメリットもないわけですし、北朝鮮が得たものってまだまだ少ない。いまは韓国との信頼を醸成して、ムン・ジェイン政権と信頼を作り上げてから、一気に韓国から北朝鮮はものを取りたいという思いがあるわけですね。

首藤 アナウンサー
ものを取りたい(笑)。

礒﨑 さん
でも、そのためには北朝鮮も譲歩していかないと、周囲にいるアメリカが説得できない。アメリカが納得しなければ経済制裁は解除できない。そこまで分かっているにもかかわらずメッセージを投げかけたのはなぜかってことを考えると、今後、北朝鮮はミサイル発射を一時停止するとか、核実験はやめときましょうかとか、査察を今後入れましょうかとか、そういう交渉に入っていくということになるわけですね。

大沢 さん
韓国は、オリンピックが終われば、今後どういうステップを北朝鮮に踏んでいくと思いますか?

木村 さん
対話をしていって、できれば今年度中に首脳会談までやってしまいたいと。ただ、韓国政府も韓国国民もそれにすごい期待をしているかっていうと、たぶんそんなことはなくて、でも、やってる間は戦争が起こらないわけだし、アメリカも強硬策が採れないわけだから、やらないよりはましだと。実は意外と韓国側も北朝鮮側も、ただ交渉をやっていってうまいこといけばいいけど、それが本当に大きな成果が出ると思ってるかどうかは、かなり疑問の余地がある。

田中 アナウンサー
視聴者からもう1つ来ました。

「この急接近について、トランプ大統領はどう感じていますか?」。

髙田 さん
そうなんですよ。

出石 解説委員
いちばん難しいですよね。何考えてるかいちばん分かんない人ですからね。
ただね、いまは日本とアメリカと韓国で、北朝鮮に圧力をかけましょうというふうに、一応なってるわけですよ。その時に、オリンピックをきっかけに韓国がそこから離れていっちゃうんじゃないかと。どんどん北朝鮮のほうに行っちゃうんじゃないか、前のめりに行っちゃうんじゃないのっていうことを心配してると思うんですよね。

首藤 アナウンサー
足並みがそろわない中で、本当に核・ミサイルの問題ってどうなっていくんですか?

木村 さん
先ほどもあったんですけど、核って1回持ったら放棄させるのはものすごく難しいですね。どっちかにかけろって言われたら、放棄しないでしょう。北にとって放棄するメリットがないからですよね。
ですから、これによって劇的に変わるとみるのは難しくて、もう1枚、2枚、北朝鮮なり、韓国なり、アメリカが出せるかどうかにかかってきてる。そのための、あくまでステップの段階に、いまあるんじゃないですかね。

礒﨑 さん
北朝鮮が核を持ったことによって、周辺国、日本も含めて核を持つんではないか。それもアメリカとしては止めないといけないわけですから、ここは本気で北朝鮮と対話しなくてはいけない。
しかし、各国が納得する、日本も納得するような形で解決するのは何十年やっても難しいわけで、どちらがよりましな政策なのか、戦争をやってでも北朝鮮を潰したほうがいいのか、それとも、人命の被害は避けつつ、北朝鮮と歩み寄ったほうがいいのかっていうのは、韓国が今回、対話に出てきていますから、アメリカはもしかすると大きな大妥結を考え始めるかもしれないですね。

首藤 アナウンサー
日本は?拉致問題もありますけど。

出石 解説委員
そう。日本は拉致問題があるわけですよ。拉致問題は時間かけてられないんですよ。だから、日本もね、核については時間かかるけども、拉致については、すぐに対話で交渉するという判断も必要だと思いますよ。

首藤 アナウンサー
そこは切り分ける。

ソ さん
韓国は、やっと来たチャンス、南北対話がうまくいくように日本に後押ししてほしいと思ってると思いますよ。日本の世論、日本の政府、冷めた目で見るのではなくて、韓国も頑張ってるんだなっていう感じになってくれたら、いちばんいいんじゃないかなと思います。

首藤 アナウンサー
ありがとうございました。

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