2017年12月16日放送放送内容まるわかり!

38億人の"聖地" エルサレムは誰のもの?

今月、アメリカのトランプ大統領は「エルサレムをイスラエルの首都と認める」と宣言しました。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地が集中するエルサレム。これまでイスラエルは「永遠の首都」だとして国際法に違反して占領し続けてきましたが、国際社会は認めていません。今回のアメリカの方針転換によって中東和平はどうなるのか。 そもそもエルサレムとは歴史的・宗教的にどんな意味を持つ場所なのか。いちから分かりやすく深読みします。

今週の出演者

専門家

立山 良司さん(防衛大学校 名誉教授)
今野 泰三さん(中京大学 准教授)
出川 展恒(NHK 解説委員)

ゲスト

金子 貴俊さん(タレント)
香坂 みゆきさん(タレント)

今週のグラフィックレコーディング

グラフィックレコーダー
山田 夏子さん


首藤 アナウンサー
トランプ大統領の発言で、世界では暴動が起きたり、死者も出たり、大変なことになっているんですけれど、このテーマについて番組でアンケートを採りました。こんな声が多かったんですね。

視聴者の声

新潟県・40代・女性
「なんでトランプさんがよその国の首都を決めちゃうの?」

北海道・40代・女性
「この発表がなぜそんな大事件なのかということもピンとこなかった」

首藤 アナウンサー
かくいう私もピンときていない1人なんですけれども、おふたりはあのニュースどう見ましたか?

香坂 さん
なんでそんなこと言うの? っていうね。

金子 さん
しかも、また急にね、北朝鮮の問題もあるのに、なぜこのタイミングでそんなこと言うのかなっていうのと、それほど世界が騒いでるっていう、どんなに重要な話なんだろうっていう。

香坂 さん
でも、エルサレムがなんで取り合いになってるかとか。
もともとのこともよく分かってないですよね。

首藤 アナウンサー
そうですよね。そのあたり、きょうは専門家の皆さんに、私たちの「分からない」に、とことん答えていただきたいと思います。
まず、世界が騒ぐエルサレムってそもそもどんなところなのか。田中アナウンサーのプレゼンです。


プレゼンテーション

田中 アナウンサー
難しい話ですね。ただ、このプレゼンを聞くと、いま世界で起きているニュースがちょっと分かるかもしれないので、なるべく分かりやすく説明していきます。
この発言ですね。トランプ大統領

「エルサレムはイスラエルの首都だ」と言いました。イスラエルってそもそもどこだっけ? というところからですが、日本から遠いですよね。ここです。中東の地中海の沿岸にあります。

そして、ニュースになっているエルサレムという町ですが、ここ。ちっちゃなところなんですよね、エルサレムというところ。

この小さな町をめぐって、トランプさんの発言で、

大国の首脳たちがずっと非難の声を上げている。
この場所が特別なところだからなんですが、ちょっと見ていきましょう。

エルサレムというところ。このエルサレムの旧市街という1キロ四方のところがあるんですが、ここが「聖地」なんですね。ユダヤ教、イスラム教、キリスト教にとっての聖地。

首藤 アナウンサー
3つの宗教の聖地。

田中 アナウンサー
そうなんです。まず、

ユダヤ教にとっての聖地はこれです。この壁。

「嘆きの壁」。
ユダヤ教の先祖の人たちが王国を作って、神殿もあった。

でも、新しい国を作るって入ってきた人たちに追い出されちゃって、神殿も壊されちゃった。その残りの部分。
ここの部分だけが残っていて、いまだにユダヤ教の人たちにとっては大事な場所として、祈りをささげるところというもの。聖地なんですね。
このユダヤ教を母体に作られたのがキリスト教です。キリスト教にとっての聖地がここ、

「聖墳墓教会」。この教会、どういうところなのかというと、

イエス・キリストが十字架ではりつけになったとされる場所に建ってる教会なので、キリスト教徒の人たちにとってもここは大事な聖地なわけです。
そして、イスラム教は、

「岩のドーム」というこの建物ですが、中に、岩があります。

イスラム教を作ったムハンマドがその岩に触れて、天に昇って神の言葉を聞いたという場所があるので、イスラム教にとっても大事な聖地と。
ユダヤ教、イスラム教、キリスト教って、世界の人口でいうと38億人ぐらいの人がいる。38億人の人たちにとって大事な場所がエルサレムなんですよ。

香坂 さん
なんでそんなちっちゃいとこに全部入ってるの?

田中 アナウンサー
ねえ。1キロ四方にぎゅっとあるんですが、でも、ここを、トランプさんだけじゃなくて、自分たちのものだと主張しているのがイスラエルという国なんです。イスラエルがなんでそこまで強い思いで、ここは自分たちのものなんだと言っているのかは、イスラエルという国の歴史を振り返る必要があります。
イスラエルっていう国って実はまだ新しい国なんです。第2次世界大戦のあとにできた国です。

首藤 アナウンサー
70年くらいっていうことですよね。

田中 アナウンサー
第2次世界大戦のあとですね。
さっきユダヤ教の人たちがね、追い出されちゃったっていう話ししましたけど、各地に暮らしていたユダヤの人たちが、迫害や差別を受けることになってしまいます。

大戦中にはナチスドイツによるユダヤ人の大量虐殺っていう、本当に悲しい歴史もありました。
なんで自分たちがそうやって差別や迫害を受けるのか。それは、自分たちの国がないからだという思いがあるんです。
ユダヤ教の教えの中に「約束の地」とされているのが、この聖地含めこの辺りと、彼らは考えていて、このところに自分たちの国を作ろうよというのが最初の始まりだったんです。

ただ、その時にはすでにアラブの人たちがその場所には住んでいた。アラブの人たちからとってみれば、急にユダヤの人たちが入ってきて、きょうからここは俺たちの国だよ、お前たちは外国人だって言われたら。

金子 さん
納得いかないですよね。

田中 アナウンサー
ああそうですかとはなりませんよね。当然、もめるわけです。紛争が起きる。にっちもさっちもいかなくなった時に、ここが名乗り出てきます。国連です。

国連が、そんなにもめるなら、例えばこういう案はどうですか? この場所2つに分けて、2つの国作ったらいかがですか? イスラエルは水色のところ、そして、もともと住んでたアラブの人たちは緑のところというふうに、2つの国作ったらどうですか?
そして、最大の懸案、エルサレム。みんなにとって大事なこの場所に関しては
国際管理にしましょうと。そういう案はいかがですか? と言いました。ところが、
「いい案。よし、納得。」とはならないわけです。
1日もこの案が実現したことはなく、絵に描いた餅になってしまって、ユダヤ人とアラブ人との中東戦争に入っていくわけです。
さあ、国際管理はいかがですか? と言っていたこのエルサレムは、2年後、どうなったか。

実は2つに分かれたんですよ。水色の部分がイスラエルが占領した地域です。国連は国際管理にしましょうと提案したんですけど、イスラエルは、武力でどんどんどんどん攻めて、ここまで来た。

香坂 さん
大事なとこが入ってないね。

田中 アナウンサー
香坂さんがおっしゃる、大事な部分が実はまだ取れてない。ここがアラブの人たちのものになっている。
納得できないということで大きなターニングポイントがこの18年後、第三次中東戦争がおこります。
エルサレムはどうなったか。

ついにイスラエルが武力で自分たちのものというふうにしたわけなんです。
これがそのあとの写真なんですけど、これ、嘆きの壁です。一時、自分たちのものじゃなくなっちゃった。また再びそこに集えたっていう喜びのシーンなんでしょうか。肩を組んだりして、よかったなと。

そして、こう宣言します。

「エルサレムは永遠の首都」。
さあ、国際社会はどう反応したでしょうか。

アメリカを含む安全保障理事会では、力で取った占領地からは撤退しなさい。

つまり、イスラエルの、エルサレムを首都とは認めないよというふうに言った。
ただ、イスラエルにとっては、いやいや、エルサレムっていうのは西や東に分かれてるものじゃない。全部がエルサレムだし、自分たちのものであるから、分ければいいって話じゃないでしょっていうことで、ずっとここは事実上イスラエルが実効支配をしていて、首都であるという主張は50年間変えていません。

香坂 さん
ただ、国連は認めてない。

田中 アナウンサー
国連は、ずっと認めていない。そして、アメリカですが、アメリカもずっと認めないという方針をとり続けてきました。
が、急に今回、いやいや、エルサレムはイスラエルの首都だとトランプさんが言ったもんだから、当然非難が起きるし、中東以外の、イスラムの国々でも抗議活動が行われています。
あちらの写真、ご覧ください。トランプ大統領に対する抗議活動。
けさのニュースでもありましたけど、きのう金曜礼拝だったんですけども、そこでも衝突が起きて、4人の方が亡くなっている。

トランプ大統領の発言のあと、8人の方が亡くなっているということなんですね。
なんでそんなこと言っちゃったのか。きょうは専門家の方いらっしゃいますので、そのあたりからじっくり話聞いていこうと思っております。よろしくお願いします。

首藤 アナウンサー
本当、なんでそんなことを言ったんですか?

香坂 さん
なんでこの発言なんですかね?

立山 さん
いちばん大きな原因は、トランプさんの支持率ってどんどん下がってきていますよね。特にロシア疑惑の問題なんかがあって、最近では40%を切っている。これって、まだ就任して1年たっていないアメリカの大統領としては非常に珍しいことなんです。
そのために、自分の国内での支持率を上げなければいけない。そのためには2つの大きな支持母体があるんですけども、

1つはよく聞かれると思うんですけども、ユダヤ系のロビーですね。イスラエルロビーといわれる。

金子 さん
ロビー団体というのがあるんですか?

立山 さん
ロビー団体というのは政治的な働きかけをして、例えばイスラエルロビーというのは、アメリカの歴代の政権に、エルサレムはイスラエルの首都であると認めろということを働きかけるわけです。働きかけたらば、それを言ってくれれば選挙で応援しますよという、大統領にしても、それから、アメリカの国会議員にしても、当選したければ、できるだけそういう。

香坂 さん
票の問題ですね。

立山 さん
言うことを聞こうということになるわけですね。それが1つ。
それからもう1つは、もっとはるかに人口では多いんですけども、アメリカにはキリスト教の福音派という人々がいます。これは、ほとんどがプロテスタントの人なんです。福音というのは神のよい知らせという意味で、神の子イエスが、自分が身代わりになって人々の罪を償ってくれる。これはよい知らせ。そのよい知らせを受け取って、それをより多くの人々に共有しましょうというふうに呼びかけていくのが福音派の人々なんですね。
この人たちっていうのは、

聖書の記述を重んじる、旧約聖書の中には、神がアブラハムにこの土地はお前たちに全部、お前とお前たちの子孫に与えようということを、約束をしたわけです。もちろん一方的な約束じゃなくて、その代わり、私を唯一の神様として信じなさい。ギブアンドテークですね。だからこそ約束の地っていうわけですけども。
そうすると、アメリカの福音派の人々は、これはユダヤ人のものじゃないか。あるいはユダヤ人が作った国・イスラエルのものではないか。だから、イスラエルの首都としてアメリカも認めるべきだろうということで、トランプ大統領だけじゃなくて、歴代の大統領にずっと働きかけをしてきたわけです。
でも、さっき申し上げたように、トランプ大統領の支持率がどんどん下がってきています。これ以上下がったら大変なことになるということで。

金子 さん
支持率下がってるっていって、こんだけ大問題になってたら、また支持率下がるんじゃないんですかね?

香坂 さん
上がる理由にならなそう。

立山 さん
ところが、福音派の人たちは、よくぞトランプさんやってくれました、だから、支持しましょうと考える。世界中では反対してますけども、別に世界中の人がトランプさんに投票するわけではないわけです。日本人だってトランプさんに投票する権利はないわけです。

香坂 さん
いちばん身近な投票してくれる人の数を集めるっていうことですね。

立山 さん
アメリカ国民だけしか投票する権利はないので、その中で非常に大きい母体を占めてるのがこの福音派の人々。

香坂 さん
じゃあ、パフォーマンスってこと?

立山 さん
パフォーマンスに近いですね。


グラフィックレコーディング

田中 アナウンサー
そのあたりは視聴者の方からも来ています。

グラフィックレコーダーの山田夏子さんです。

「トランプさん、本当、何考えてんのかよく分からないな」という意見がまず多くて、ただ、こうじゃないかという見立てをしている人たちもいて、例えば、「トランプさんって、お金とか、あとは選挙に勝つためなのか、ユダヤロビーの票しか考えていないんじゃないの?」。

あとは、ロシア疑惑ってありましたけれども、「そういうところに目を向けさせないためじゃないのかな」「それにしても、イスラム社会を敵に回していったい何がしたいんだろう? 全然分かりません」という、皆さんの意見ですね。

首藤 アナウンサー
出川さん、エルサレムの初代支局長でもあるんです。

出川 解説委員
イスラエルの首都と、アメリカが、トランプ大統領が認めたということは、大使館の問題があるんですよ。国際社会はイスラエルの主張を認めていないので、いま大使館をエルサレムに置いている国というのはアメリカを含めて1つもないんですね。日本のイスラエル大使館もテルアビブという都市にある。アメリカの大使館もテルアビブにある。
ところが、トランプさんは大使館をエルサレムに移しますということも今回発表したんですね。実はその前に、1995年、もう20年ぐらい前なんですけども、アメリカの議会がエルサレム大使館法というのを作っていて、大使館をエルサレムに移しますっていうことを議会で可決している。

香坂 さん
決まってるんですか?

出川 解説委員
そう。法律ができちゃってるんです。ところが、アメリカの歴代の大統領は、それをやっちゃうと大変なことが起きるからと、先送りしてきた。

何が大変かっていうと、アメリカ、これクリントン大統領ですけども、イスラエルとパレスチナの和平交渉を仲介してきたんですね。

首藤 アナウンサー
中立の立場。

出川 解説委員
そう。つまり、仲介をするということですから、将来パレスチナ国家を認めさせようではないか。そして、イスラエルとパレスチナ2つの国家が平和的に共存すれば、仲よくやっていけるんじゃないかと。それから、エルサレムの問題も和平交渉によってどうするか決めようと。その仲介をアメリカがやってきたと。
ところが、エルサレムに大使館を移しちゃうと、エルサレムの地位っていうのをアメリカが決めることになってしまいますね。だから、大使館を移すというのは、歴代大統領が半年ごとに先送り、先送りにしてきたんです。

香坂 さん
触れないできたんですね。

出川 解説委員
そうそうそう。それをここであえてトランプ大統領は、イスラエルの首都と認めて、しかも、大使館を移すと言っちゃった。

金子 さん
ちょっといいですか? ということは、トランプ大統領はイスラエルを支持してるみたいな感じにとられてるんですか?

出川 解説委員
そのとおりです。露骨にイスラエル支持というのが前面に出てきてしまった。そうすると、パレスチナ側は怒りますよね。

首藤 アナウンサー
そうですよね。

出川 解説委員
交渉がまとまる前に結論出してしまうと。だから、和平の仲介役として、もうアメリカは信用できないっていうことになってしまう。そうすると、和平交渉もこれから続けていくことはできなくなってしまうわけです。いま中断中なんですけど、再開の見通し立たなくなっちゃうわけですね。
そして、ちょっとおさらいになりますけれども、いまからちょうど50年前

1967年に第3次中東戦争というのが起きまして、いま問題になっているのは、エルサレムのうち、東半分なんですね。
赤で示したところですけども。
旧市街のあるところ、ここの帰属が問題になってまして、67年にイスラエルが占領したあと、一方的に併合を宣言する。つまり、これはもうイスラエルのものだと。占領地ではなくて、イスラエルのものだと言ってしまったわけですね。そして、イスラエルの主張は、エルサレムはもう東も西もないんだと。不可分の永遠の首都だと主張してるわけです。
これに対して、パレスチナ側の主張は、東についてはイスラエルが国際法に違反して占領を続けている土地だと。将来パレスチナは独立国家を作るんだけれども、その首都を東エルサレムにすると主張しているわけです。
エルサレムの問題というのは和平交渉の中でも最も解決が難しくて、そして、デリケートな問題。そこに手を触れてしまって、結論を出してしまったということなんですね。

香坂 さん
トランプさんが言ったことで結論になるんですか?

立山 さん
結論とは言えないと思いますね。別にアメリカがほかの国の首都を決めるっていうことはありえないわけですけども。
ただ、国連の安全保障理事会の常任理事国であって、最も大きい国であるし、いま出川さんが言われたように、長い間、中東和平交渉の仲介者の役割を果たしてきた。そのアメリカが、もうエルサレムはイスラエルの首都ですねと認めてしまった。つまり、イスラエルの主張をそのまんま受け入れてしまったということは、イスラエルの主張をこれから覆すにも、アメリカではもうありえないわけですね。
世界中はいろいろと批判をしていますけども、何年後かにはアメリカの大使館もテルアビブからエルサレムに移っていくでしょうし、既成事実化されていくということです。

金子 さん
票以外に、トランプさん、お金的なメリットっていうのは何かあるんですか? こうすることで。

立山 さん
お金のメリット、アメリカのユダヤ人が政治献金をして、選挙の時なんかにやるということも非常に大きいと思うんですけど、むしろ今回は票だと思いますね。
ですから、トランプさんはアメリカ・ファーストと言ってますけど、今回の措置はトランプ・ファーストということだと私は思っています。

首藤 アナウンサー
田中さん、視聴者の方から。

田中 アナウンサー
そうなんですよね。話を聞いていくうちに、皆さん、やっぱりちょっと難しいな、疑問だなと思うところ、寄せていただいています。

「困ったことだとは思うけど、遠いので実感がないですよ。どういうことなのか全然分かりません」という人ももちろんいますが、その一方で、「中東情勢の悪化とか、日本にも関係があるんじゃないかな」ということを考える人もいて、例えば、「原油価格、上がったりしませんか?」とか、あとは、「テロの確率ってありますか?」。

首藤 アナウンサー
テロの確率ってどうなんでしょうか?

出川 解説委員
特にイスラム過激派の人たちは、エルサレムの問題、トランプさんが宣言を出したことをものすごく怒ってるわけですよ。イスラエルに対してももちろん怒りがずっと続いてるんだけども、アメリカに対する怒りが非常にいま高まっていて、

世界中にイスラム教徒って16億人いるんですけども、その中で過激派のグループが。

首藤 アナウンサー
これがいま人口ですね。イスラム教徒の人口。16億。

出川 解説委員
攻撃を起こすという宣言を出したりしていて、テロが起きる可能性っていうのは残念ながら非常に高くなっていくおそれがありますね。

首藤 アナウンサー
今野さん、去年の1月までエルサレムに滞在して難民支援などを行っていらして、現地の人たちはどういうふうに受け止めているんですか?

今野 さん

私は東エルサレムで支援事業をしておりました。そのため、4年間、東エルサレムに住んで、現状を見ておりました。
やっぱりアメリカだなと。もともとアメリカが、特にトランプ大統領がイスラエル側についているということは選挙の段階から分かっていましたので、それについて驚きはないと思います。

香坂 さん
でも、住んでる方たちの中にいらっしゃったわけですよね。住んでる人たちはどう思ってるんですかね? 遠いどっかのおじさんが、君たちのとこは何とかだよって。
何言ってんの? っていう感じなんですかね?

今野 さん
悔しいと感じてると思います。先ほど地図にありましたが、西エルサレムにももともとパレスチナ人が2万人ほど住んでおりまして、イスラエルが建国される時に追い出されて、多くは難民になっています。
それで唯一残された東エルサレムに頑張って住んでいたのに、自分たちがイスラエルの占領下でひどい生活を強いられているのにもかかわらず、それに対して国際社会は何も言わない。自分たちの声を誰も聞いてくれない。その中で、突然アメリカのトランプ大統領が勝手な国内の事情で、ここは首都だっていう宣言をすることに対して、自分たちは何もできない。悔しいというふうに感じていると思います。

香坂 さん
でも、よく分かんないんですけど、君たちのとこじゃないよって言われた人たちを、ないよって言った人は、でも、じゃあ君たちはここに行きなさいっていう、その先どうしたらいいかはないんですか? ただ言うだけなの? みんな。

立山 さん
東エルサレムにはアラブ系のパレスチナ人が31万人ぐらい住んでおりますね。狭いところですけど。その人たちに出ていけとはもちろん言えないわけです。出ていけと言ってしまったら、それは、例えばかつてのユーゴスラビアで起こったような、民族浄化っていうような形になってしまうわけです。
でも、その一方で、全部、エルサレム全域はイスラエルの法律が支配してます。

香坂 さん
外国人として生活しろっていうことだ。

立山 さん
外国人ではないんですけれども

香坂 さん
分かんないなあ。

立山 さん
だけれど、イスラエルの居住権も持っているわけですから。国籍は持っていないんですね。選挙権も持っていない。イスラエルは与えると言ってるんですけれども、東エルサレムに住んでるパレスチナ人たちは、そんなものいらないと。自分たちで将来自分たちの国を作るんだから、ここは自分たちの首都になるんだから、自分たちの国ができればそこの国民になるんだからということですね。

視聴者の声

茨城県・30代・女性
「アメリカに反感を持つイスラム教国が増えると思う」。

京都府・40代・男性
「どちらかに肩入れすれば、より憎しみの連鎖が続くと思う」。

首藤 アナウンサー
これから本当に何が起きるのかっていうことを心配している人は多いんですけれど。

出川 解説委員
エルサレムの問題をめぐっては、いままでにもずいぶんいろんな衝突、流血、戦争の原因になってたんですね。
和平交渉をずっと続けてきたんだけど、西暦2000年に、この時に、和平交渉、エルサレムの問題をめぐっていったん決裂して、その直後にイスラエルの政治家が、イスラム教徒が聖地と見なしているところに足を踏み入れて、

それをきっかけに「インティファーダ」、つまり、パレスチナ住民の猛烈な攻撃。
民衆蜂起。抗議行動ですね。大きな衝突になって、テロも起きて、その時に、

5年間ぐらいで、パレスチナ人3000人以上、イスラエル人1000人以上、亡くなってるわけです。
これぐらい、人々が聖地の問題をめぐって命を捨てたり、相手を攻撃したり、流血の事態を招く。そういう取扱注意の問題なんですね、これは。

首藤 アナウンサー
その場所からさらに世界へ広がって、テロの可能性っていうのは、皆さんどういうふうに見てますか? 世界への。

立山 さん
テロの問題ももちろんあるわけですけども、例えば先ほどのこの地図もそうですけども、例えば日本があるアジアにも9億8600万人のイスラム教徒の人が住んでるわけですね。
例えばインドネシアは、人口だけでいえば世界で最大の、イスラム教徒が多い国であるわけです。ですから、トランプさんが12月6日にこの宣言をして以降、インドネシアとかマレーシアでもアメリカに対する抗議デモというのが続いている。ですから、中東だけ、あるいはパレスチナだけの問題ではなくて、非常に大きな問題ですね。
それから、ヨーロッパにも、この地図にあるとおり、4300万人のイスラム教徒が住んでいるわけです。いまもうすでに、例えばアルカイダとか、イスラム国、ISですね。そういう組織が、抗議行動を起こせ。彼らの言ってる抗議行動というのはテロ行動ですよね。そうすると、自分たちはISなりアルカイダに入ってなくても、ヨーロッパにいるイスラム教徒の中で、テロを起こしてやろうかと考える人も出てくるかもしれない。

もちろん、イスラム教徒がみんな過激派なんてとんでもない。ごく普通に生活をしている人々が圧倒的多数ですけども、でも、例えばヨーロッパにいるイスラム教徒は、例えばフランスとかでいろいろと差別を受けたりして、いつも不満がある。そこに、その不満の解消の、何とかしたいなと思っていたら、このエルサレムの問題が出てきたから、1つ自分もやってみるかっていう気になっていく可能性があるわけですね。

香坂 さん
もともと、こんなこと望んでないじゃないですか。もっと穏やかに。

首藤 アナウンサー
グラフィックレコーディングにも、下のところ、「私はキリスト教徒です。イスラム教も本来は同じ平和主義者です」って。
メールでも、千葉県60代の男性。「神聖な場所が争いの種になることが不思議です」と。
聖地エルサレムについて声が来てるんですけど。

出川 解説委員
聖地っていうのは、それ自体が信仰の対象になるわけです。だから、その人の神様を信じる心と聖地を思う心っていうのは一緒なんですね。そういう意味では、その民族とかその人のアイデンティティーに直接関わってくる問題。
私、かつてエルサレムで特派員やってた時に、イスラエルの知識人、有名な作家なんですけど、どうして聖地をほかの宗教の人と共有できないの? シェアできないの? ということを聞いてみた。これはこういうふうに答えてきました。
大切な恋人がいると思うでしょと。その恋人をほかの人と分け合いたいと思うかと。それと同じなんだと。

立山 さん
もう1つの問題っていうか、宗教だけの問題ではないんですね。例えば、エルサレムはイスラエルの首都であるというのは別に宗教の問題じゃなくて、政治の問題ですよね。イスラエルという国がある。いまの国家は必ず首都というのがあるわけです。領土というのがあるわけです。国境の中は領土ということです。
これは宗教とは何の関係もない問題ですけども、現在ではそういう国になってるわけですね。そうすると、政治と宗教が重なり合ってしまう。そうすると、より大きな問題になってしまう。
ですから、確かに宗教では平和を説いています。でも、一方で、政治の話が入ってくると、特に国と国との戦い、争いとか対立になると、武力闘争になったり、戦争になったりしていく可能性というのはあるわけですね。

首藤 アナウンサー
今野さん、住んでるユダヤ人の感覚ってどうなんでしょう?

今野 さん

いまエルサレムの問題は宗教問題じゃなくて政治問題であるということを立山先生がおっしゃいましたが、そのいちばんいい例が、ここに写っている黒服のユダヤ教徒たちです。彼らは、ここエルサレムはものすごく大切な聖地だと考えていて、嘆きの壁の前で毎日礼拝しています。だからといって、彼らは、このエルサレムという場所がイスラエルの首都である必要があるとは考えていません。

香坂 さん
お祈りできればいい?

今野 さん
毎日、お祈りできればいいと。特にイスラエルという国は、あの図だとちょっと誤解があるんですけども、ユダヤ教徒、黒服の人たちが作ったわけではなくて、イスラエルを作った人たちというのは、宗教を捨ててしまった世俗化したユダヤ人たちが作った国なんですね。
宗教的な理由でイスラエルという国を作ったわけではなくて、差別される中で、自分たちもほかのヨーロッパの人々と同じように対等な権利のある民族として認めてほしいと。そのためには国を作らなきゃいけないんだという考え方の中で、まず国ありきで活動を始めた人たち。

金子 さん
宗教が先じゃないっていうことですか。

今野 さん
先ではないです。

立山 さん
もうちょっと別の言い方を補足的に言えば、もちろんイスラエルの中にいるユダヤ人というのは基本的にユダヤ教徒なわけです。ユダヤ教徒が、近代になってきて、19世紀のヨーロッパで、自分たちは民族であるという意識を持ち始めたわけです。民族ならば国を持ちたい。
例えば、つい最近でも、イラクのクルド人が自分たちの国を持ちたいっていうことで住民投票をしたりしましたけれども、あるいはスペインでもカタルーニャ地方が独立をしたいという動きがありましたけれども、全く同じで、自分たちは民族なんだから国を持ちたい。
でも、国っていうのは宗教とは別なわけですね。宗教をいくら信仰したとしても、現代の国家っていうのはできないわけです。現代の国家を持つには武力が必要だし、政治的な組織が必要だし、政治活動が必要だし、そういう人々を集めてくるためにいろんな支持を集める必要もあるという、そういう動きがずっと出てきて、だから、宗教を重んじるよりはむしろ自分たち民族という概念を重んじる。でも、微妙にユダヤ教徒とユダヤ民族というのは重なり合っているわけです。

今野 さん
この敬けんなユダヤ教徒にとってみたら、ここはものすごく大切な聖地だと。だから、みんながこういう格好をして毎日祈らないといけない。でも、それを実際イスラエル人の多くはしてない。それのほうが問題だというふうに考えている人も少なくありません。

香坂 さん
この旧市街地の中に、いっぱいあったじゃないですか。嘆きの壁とか、岩のドームとか。いろんな人がそれぞれの場所でお祈りしたりするわけですよね。途中で顔を合わせることだってあるじゃないですか、その中で。その方たちはみんな仲悪いわけじゃないんですか? 別に。

今野 さん
普通に買い物、イスラム教徒のお店でユダヤ人が買い物をしたりとか、その逆もありますし、一緒に働いてるケースも。

香坂 さん
生活をしてるっていうことですよね、同じ。

金子 さん
ある意味、戦わなくても共存できるっていうことですか?

香坂 さん
その中はね。

出川 解説委員
でもね、イスラエル軍が、あるいはイスラエルの治安当局が完全にここをコントロールしてるわけ。だから、イスラム教徒の聖地にお祈り行くイスラム教徒も、セキュリティーチェックを受けたり、イスラエルが安全保障上問題があるとすれば、お祈りに行けなかったりするわけです。だから、その部分ではイスラエルは絶対に譲らないつもりなんですね。

香坂 さん
主導権をそこが握ってしまっている。

出川 解説委員
お祈りしに来るのはかまわないけども、治安を守るのは完全にイスラエルの手だよということを言ってるわけですね。

立山 さん
あと、エルサレムって、3000年の歴史っていう話がさっきありましたけども、実はもっと長くて、3000年というのはかつてのユダヤ教徒が神殿を作ってから3000年で、その前から多神教時代の神殿があったりして、聖地だったわけです。
ですから、おそらく5000年とか、そのくらいの長い歴史の間の聖地なわけです。いくつかの宗教が歴史の間に重なり合って、いまは3つの宗教が聖地であるっていうことで重なり合ってるわけですね。
でも、5000年の間にずっと戦争してるわけでも、けんかをしてるわけでもなくて、おそらく全部で、この5000年の間、トータルすれば100年も戦争してないと思うんですね。ということは、圧倒的に長い時間は、みんな普通に、いま今野さんが言われたように、お互いに買い物をしたり、すれ違ったりという。

香坂 さん
っていうことは、問題は外?

立山 さん
外に、さっき言ったように、政治の問題が絡んでくると、首都をほかの国と一緒に共有はしたくない。東京に別の国がやってきて、これは私たちの首都だから一緒にしましょうねと言われたら、それは受けられないだろうっていうところと同じなんですね。

首藤 アナウンサー
政治の問題でいうと、短い時の流れというか、第2次世界大戦後の話からこれも始めましたけど、でも、いまお話聞くと、1000年、2000年、3000年、4000年という、長い歴史の中で見る必要があるっていうこと。

立山 さん
いろんなところに聖地がありますけれども、結構聖地っていうのはいくつも宗教が重なり合ってるところっていうのが多いわけですね。例えばヨーロッパでキリスト教の聖地になってるところは、ヨーロッパでキリスト教が普及する前のケルト人の聖地だった場所がそのまんま、いま大聖堂が建っていたりするような場所があるわけです。
そういう中で、共存というか、違うものを一緒に受け入れてくる人間の知恵っていうのもあったと思うんですね。いつも戦争をしたり、けんかばっかりはしてられない。通常であれば普通に生活をしたい。そういう知恵というのはエルサレムの中にも歴史の中にあったし、いまもあると思いますね。

今野 さん
いまパレスチナ人がこのエルサレム問題で怒って抗議のデモをしていますが、その理由は、彼らがイスラム教徒で、ここの場所が聖地だからそれを守りたいっていうことよりも、自分たちがこれまでさんざん土地を取られ、家を取られ、家族を殺されってしてきた、ずっと長い歴史があるんですね。それに対して国際社会は何も言ってこなかった。
その中で、自分たちの失ったもの、奪われたものの象徴としてエルサレムがあるんです。宗教的な理由っていうよりも、自分たちがすべて失った、いろんなものを失って、ここしか守れないんだっていう中で、何としても守りたいというふうに考えている人が。

出川 解説委員
東エルサレムというところをイスラエルが占領して併合したという話ししましたよね。そこに、前はアラブ人が住んでたところに、いまイスラエル政府がユダヤ人の入植地をたくさん作っていっているわけです。
入植地が赤で示したところで、増えていってるわけですね。
そうすると、そこにユダヤ人が住みますから、東エルサレムの人口のバランスがどんどんユダヤ人が多くなってくる。いまだいたい50万人ぐらい東エルサレムに住んでるんですけど、30万人ぐらいがパレスチナ人で、ユダヤ人の人数がいま20万人ぐらいになってる。さらにどんどん増えていくと。
旧市街の中にもイスラエル、あるいはユダヤ人の入植住宅が増えてきてるということで、どんどんユダヤ化していくと。それが既成事実になっていく。

田中 アナウンサー
議論を聞いていくうちに、このエルサレムの問題ってどうしていけばこれからいいんだろうかって皆さんも考え始めてくれました。

「国連主導。これが最も有効な解決方法じゃないでしょうか」という話とか、

「とにかく当事者どうしで話し合ってください。アメリカが口出すべきではない」という意見もありました。
そして、この意見。「世界に影響があるなら、日本が仲介役になるっていう方法はありませんか?」。あとは、「和平の仲介は穏健な宗教者がやってくれたらいいな」。そして、こういう意見もありました。「東エルサレムをバチカンのような独立国にしてはどうでしょうか」。皆さん、いろいろ考えてます。

首藤 アナウンサー
解決の道、相当難しいとはもちろん思うんですけれども、何か。

立山 さん
例えば、いま国連が主導する解決策ということが出ましたし、昔からそう。

香坂 さん
でもね、トランプさんがね。

立山 さん
トランプさんが今回やったのでいちばん最大の問題は過去に、国連のたくさんの、決議があって、そこではエルサレムの問題は当事者どうしの交渉に任せましょう。その間は自分たち誰も一方的な措置を執るのはやめましょうという決議があったわけですね。アメリカもその決議を支持したりしてきたわけです。だから、アメリカのトランプ大統領が今回やったことは国連決議違反なんですね。国連決議に反することなんですね。
でも、アメリカは超大国ですから、国連決議に反しても何が悪いっていう雰囲気をいま出しているわけですね。でも、これは日本にとって大問題で、北朝鮮の問題ってあるわけですけれども、日本政府がずっと言ってるのは、北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁決議をみんな守りましょうというふうに言ってるわけですが、一緒になって言ってくれてるアメリカが、でも、エルサレム問題では安全保障理事会の決議に違反するような行動を今回とってしまった。これは日本にとっては非常にゆゆしき問題だと思いますね。

出川 解説委員
日本政府はね、今回のトランプ大統領の発言に対して、特に批判を加えることもなく、論評もしてないんですね。こういう大事なことが起きた時に国際社会に向けて意思表示をするっていうことはとても大事だと思うんですね。

首藤 アナウンサー
今野さん、現地の人たちの思い、残り20秒ですが。

今野 さん
常に見ていてほしい。いま起こった問題ではないです。ずっと起こり続けていて、苦しんでいる人たちが現地にはいます。そういう人たちのことを忘れずに、常に見ていてほしい。

首藤 アナウンサー
遠い場所のことじゃなくて、私たちもちゃんと関心を持たないといけないですね。ありがとうございました。

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