2017年09月09日放送放送内容まるわかり!

何に使ってるの? 備えは十分? 徹底解剖 ニッポンの防衛費

先週、防衛省は、来年度予算案の概算要求で、過去最大となる5兆2551億円を要求することを決定。北朝鮮の核・ミサイル技術が進展する中、ミサイル防衛強化のための経費などが盛り込まれています。 しかし、こうした装備は高額で、財政難の中で防衛費にどこまで予算を割くべきかといった声も上がっています。「専守防衛」の考え方のもと、防衛力は必要最小限としてきた戦後日本。これからの防衛力をどう整備していくべきか考えます。

今週の出演者

専門家

加藤 朗さん(桜美林大学 教授)
佐藤 丙午さん(拓殖大学 教授)
増田 剛(NHK 解説委員)

ゲスト

金子 貴俊さん(タレント)
香坂 みゆきさん(タレント)

今週のグラフィックレコーディング

グラフィックレコーダー
山田 夏子さん


首藤 アナウンサー
さあ、おふたりは、

PAC3の値段、当たりました?

香坂 さん
400億?

金子 さん
3億ぐらいだと思ってたんですよ。

香坂 さん
私、何千万かなと(笑)。

首藤 アナウンサー
一式にかかったお値段が400億円ということなんですけれども、街の人もぴんとこない数字でした。

香坂 さん
ぴんとこなさすぎですよね。

首藤 アナウンサー
そして、さらに、もっとぴんとこないかもしれません。

5兆2551億円。これが防衛省から出された来年度予算の概算要求なんですけれども、過去最高の額となりました。

香坂 さん
過去最高って言われても、いままでがどうだったのかがよく分かんない。

金子 さん
これ、高いのか安いのかっていうのも、判断しかねますよね。

首藤 アナウンサー
さあ、まず、どんなことにこのお金が使われるのか。田中アナウンサー、お願いします。


プレゼンテーション

田中 アナウンサー
はい、おはようございます。兆だとか億だとか言われると気が遠くなっちゃうぐらいの話ですが、よくよく考えると、私たちが一生懸命働いて納めた税金。私たちに関わる大事な問題です。

香坂 さん
そうですよね。

田中 アナウンサー
毎年このぐらいの時期に各省庁、国の役所は、来年度、自分たちの省庁ではこのぐらいのお金がかかりますということを、財務省に報告をします。財務省で検討して、のちに国会で正式に決まるんですが、まず財務省に出すたたき台、これが先ほど紹介した概算要求というものです。
そして、この5兆2551億円、来年度必要だと言っているのが、

ここ防衛省なんですよね。じゃあ、いったい防衛省はそのお金をどういうふうに使おうとしているのか。
外観は見たことありますが、中がどんなふうになっているのか。
正直、私も知らないんですが。
ちょっとね、妄想でこんなふうに作ってみました。

香坂 さん
妄想なんだ。

金子 さん
司令部みたいな感じになっちゃった。

増田 解説委員
普通の会社みたいな感じですよ、実際は。

田中 アナウンサー
官僚の人たちが、日夜、日本の安全を守るために、いま現在何が課題で、そして、何が必要なのかということを考えている。いま、この人たちが最も心配しているのが。

首藤 アナウンサー
確かにそうですね。空からというと、北朝鮮。

田中 アナウンサー

ことしに入ってだけでも、ミサイル発射13回。大陸間弾道ミサイル、アメリカまで届くとされるそのミサイル、北朝鮮はもうすでに完成しましたというふうに言ってたり、核実験を繰り返し、核開発も進めている。
万が一、ミサイルが日本に落ちてきた場合、なんとか対応しなければいけないと考えています。その時に頼るのが。

この国です。世界一の軍事大国、アメリカ。アメリカには高性能の武器がたくさんあります。ここから買おうということになるわけです。

香坂 さん
買うのね。

金子 さん
そのお金がかかるんだ。

田中 アナウンサー
例えば、これ。さっき出てきましたね。

地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」、一式400億です。いま日本にはこれ、34基あるんです。

香坂 さん
えっ。

金子 さん
じゃあ、×400?

田中 アナウンサー
さらに海からもあります。

これです。イージス艦って、これもニュースでよく聞きますね。イージス艦に「SM3」というミサイルを搭載して、24時間体制で迎撃ミサイルを撃てるようにしている。
このミサイルって、ものすごい高くまで上がるんです。なので、大気圏の外、宇宙空間でミサイルを撃ち落とすというものなんですね。これ、実はもう10年ぐらい前から日本は持っています。すでに。じゃあ来年何にお金かかるのかっていうと。
これ。このミサイルを、来年は新しく高性能のものにしようと考えているから。

香坂 さん
もう古いっていうこと?

田中 アナウンサー
というのは、北朝鮮、これだけミサイル発射を繰り返してますよね。
そのたびに精度が上がっているという見方もあります。なので、迎えるほうとしても最先端のものに。

金子 さん
新しいモデルに。

田中 アナウンサー
さらに、防衛省は、これまでなかったものも必要だと考えています。来年新しく導入しようと考えているのが。

首藤 アナウンサー
イージス・アショア。

金子 さん
はー、初めて聞いた。

田中 アナウンサー
イージス艦から撃つSM3のミサイルを、陸上からも撃てるようにしようというものです。これが日本に2基あれば日本中を守れると防衛省は考えている。ちなみに、ほかの国でこれを購入した事例があるが、1基800億円だったと言われています。ただ、日本で買う時に、これがいったいいくらになるかっていうのはまだ分かっていません。

金子 さん
値段変わるんですか?

香坂 さん
上がる?

田中 アナウンサー
可能性もあります。ただ、必要だということで、買うことは決めました。

香坂 さん
決めちゃったんだ。

田中 アナウンサー
そして。空からの脅威への備えだけあれば安心だというふうには、防衛省の人たちは考えていない。
まだ心配事があるんです。

いま日本の周辺の海では緊張感が高まっています。

中国の活動がいま活発になっています。日本の陸地のだいたい20キロぐらいの間を、日本の海、領海というふうにしている。それは日本のもの、日本の海なんですが、そこに勝手に入ってきちゃう。去年1年間だけで中国の船が121隻入ってきた。
さらに、沖縄本島と宮古島の間を空母、飛行機が離着陸できる大きな船が通ったというニュースもあった。こういうようなことにも対応していかなければいけないということで、

来年新たに島を守る専門の部隊、水陸機動団というものを新しく導入しようというふうに考えています。

さらに彼らには、この水陸両用車というものも使ってもらおうと考えてる。万が一島に上陸されてその島を奪われたとしても、奪い返すというための部隊を新たに作ろうと。このお金がかかると。
人を配置するということは、後方支援、バックアップで、人や食糧とか、そういったものを運ばなきゃいけない。輸送機が必要ですが、新型の輸送機、オスプレイを日本でも買おうとしています。

これ、形見ると、プロペラはついていますが、飛行機のような形もしています。まさにヘリコプターと飛行機の両方を兼ね備えている。滑走路がなくても、ヘリコプターのように着陸することができる。さらに、飛行機のように1度に多くの人やものを遠い距離まで運ぶことができる。
そして、これまで買った武器で支払いが残っている分とかメンテナンス費、さらにこれ。人件費。

香坂 さん
確かに、それはいるよね。

田中 アナウンサー
いま陸海空自衛隊員が24万人ほどいるんですが、その人たちのお給料も、この防衛費から出るということです。さらにこれです。

香坂 さん
確かにね。動かさなきゃいけないですからね。

田中 アナウンサー
戦闘機とか船って、当然動かすには燃料代がかかります。ちなみに、日本の海とか空で何かあったっていう時に緊急で駆けつける、「スクランブル」って聞いたことありますか。
F15という速い戦闘機。これね、1時間動かすにはどのぐらいの燃料代かかると思いますか?

金子 さん
何百万、500万とか。

田中 アナウンサー
ちょっとそれは高すぎます。

香坂 さん
1時間30万円?

金子 さん
どうしよう。さっきミサイルが400億って言われたもんだから、すごい安く感じちゃうんですよ。

田中 アナウンサー
ですよね。でも、現実問題、30万。2時間動かせば60万。これ、1回2回動かすんじゃないです。去年の稼働実績、1100回を超えています。

香坂 さん
えーっ。そんなにそれ飛ばしてるの?

田中 アナウンサー
1時間で終わらない時もありますよね。その分、燃料代もかかってくると。

香坂 さん
何してるの?

増田 解説委員
スクランブルっていうのがあって、領空侵犯されると。

田中 アナウンサー
そのような、とにかく国を守るためにもろもろいろんなお金がかかりまして、総額しめてこのくらい。5兆2551億円が必要なんだというふうに防衛省は言っている。
年々上がっていて、これまで過去最大なんですが、よくよく考えてみますと、これ、私たちの税金ですね。国の安全・財産を守るためのこのお金って、皆さんどういうふうにお感じですか?

香坂 さん
でも、どっちにしても大ざっぱにしか聞こえないですね。なんか、えーって。本当にそれだけいる?

金子 さん
結局、守られてるんであれば納得するけど。
これで守りきれるかって不安もありますし。

香坂 さん
そこがよく分かんないですよね。

首藤 アナウンサー
まさにきょう北朝鮮の建国記念日で、緊張感も高まってますけれども、こうした備えで日本を守れるんでしょうか?

増田 解説委員
まず、きょうまさに北朝鮮の建国記念日で、ICBM、大陸間弾道ミサイルを発射するんじゃないかって、日本政府、非常に警戒してるんです。ICBMが非常に最近注目集まってますが、実際北朝鮮は最近、これまでも、日本を射程に収めた中距離弾道ミサイル、スカッドERとかノドンとかいうんですけど、そういったミサイルを頻繁に発射してきてるんですね。5月にも発射されて、日本の排他的経済水域内に着弾してるんです。
北朝鮮はこれまでに6回核実験を行っていて、その間核技術を相当進めてると言われていて、実際核兵器を、スカッドとかノドンとか、そういったミサイルに搭載するための小型化・弾頭化、かなり実現に至ってるんじゃないかという、そういう可能性があるっていうふうに防衛省は分析してるんですね。つまり、日本全土を射程に収める核ミサイルの実戦配備が現実味を帯びてるわけです。
日本を狙ってなくても、日本の上空を飛び越えるようなミサイル、例えば、軌道を外れて部品や破片が落下する可能性もありますよね。これだけ北朝鮮の脅威がリアルになっているのに丸腰なんてありえないと。迎撃手段を確立しなきゃならない。そのためには、現時点ではミサイル防衛システムしかない。ですから、予算についても、そこに優先的に配分するしかないというのが日本政府のいまの考え方ですね。

金子 さん
いま紹介された武器とかミサイルとかっていうのは、あのぐらいは必要になってくるんですか?

増田 解説委員
例えば、まず直近のミサイル防衛について言うと、

日本のミサイル防衛システムっていうのは、基本的にイージス艦に搭載している海上配備型のSM3というミサイルが、大気圏の外で相手のミサイルを撃ち落とす。
ミサイルってこういう軌道を描いていくので、頂点に達した時いちばんスピードが遅くなるので、そこを狙って撃とうと。
そこで撃ち漏らした場合は、陸上配備型のPAC3で上空数十キロのところで撃ち落とすという二段構えのシステムなんですね。
今回の概算要求で最も注目されているのが、イージス・アショアという新装備なんですけど。

香坂 さん
陸地からってやつですね。

増田 解説委員
これ、簡単に言うと、SM3を陸上に配備して、SM3の迎撃態勢に厚みを持たせようというものなんですね。それと、イージス艦というのは、いま現在日本海で24時間体制で警戒監視に当たってるので、陸上に常時警戒するイージス・アショアを置けば、イージス艦の負担も軽減することができるというようにされてるんですね。

金子 さん
すごい確率で当たるんですか? ミサイルがぴゅーっと飛んできたら。

佐藤 さん
PAC3が当てるかどうかっていうのはいろいろな議論があるんですけど。
相手が理想的に撃ってきて理想的に落ちてくるんであれば、ほぼ100%。
相手しだいと、あと、天候、気象、いろんな部品の落下具合とか、そういう状況で。

首藤 アナウンサー
いろんなことが絡んでくるんですね。

香坂 さん
それ全部オッケーにならないと当たらないっていうのは、あんまり確率的に高い気がしない。

加藤 さん
でも、確率が高くなればなるほど、実は相手側も、果たして撃っていいかどうかということをちゅうちょするんですよね。

香坂 さん
確かにね。むだになるからね。

加藤 さん
5割しか、たとえ撃ち落とせなくても、自分のところの1発撃って、これが5割の確率で撃ち落とされたとすると、さあどうしようか、なけなしの1発を撃つかどうかというのも考えますでしょ。
これが7割、8割ぐらいまで確率が上がっていくと、これは簡単には撃てないぞというふうにいうことが、実はそれが抑止力と称していちばん重要なことなんですね。

金子 さん
イージス・アショアっていうのが日本に入ることで、北朝鮮としては、 むやみに撃てないっていうふうに。

佐藤 さん

それを、実は抑止力っていう考えで説明できるんですけれども、結局相手が撃ってきても、こちらが撃ち落とす能力がちょっとでもあるということを相手に示せるんであれば、相手はそもそも撃ってもむだなんじゃないかっていうことで撃たなくなる。それが今回のPAC3であり、イージス・アショアの大きな目的ってことなんですね。
ただ、相手が果たして、撃ってもむだかどうかって思うか思わないかっていうのは分からないので。
軍事力がどれだけ必要かどうかっていうのが分かんない。

金子 さん
世界的な防衛力として、いま日本の戦力のレベルは高いものなんですか?

佐藤 さん
ミサイル防衛のシステムとしては非常に高いものがあるというふうに言われますが、ただ、

先ほど、これだけ必要なんですか? 分かりませんって話、金子さんのほうからいただきましたけれども、国防費の世界でのGDPでの比率を見ると、日本はこの10年、20年ぐらいずっと1%を守ってまして、しかしながら、ほかの国は1%を超える額をずっと防衛費に費やしてますので、日本の場合はそれほど高くないお金で抑止力を維持してるというふうに考えることができるんだと思いますよ。

香坂 さん
率としてはいい感じなんですか? それは。

佐藤 さん
この率が十分かどうかっていうのはいろいろ議論があるんですけど、いまの脅威に対しては、とりあえず1%で十分だというのが防衛省の判断だということになると思います。

首藤 アナウンサー
視聴者の方も意見が割れてまして、

視聴者の声

東京都・50代・女性
「備えあれば憂いなしなので、平和な生活を維持するには必要です」。

岩手県・40代・女性
「ミサイルを撃ち落とすといって多額な費用で立派なものを備えているけど、いざという時に本当に使えるんでしょうか」。

滋賀県・30代・男性
「掛け捨て保険のようなものだと考えるべきなのだろうか。何を生み出すわけでもないのに投資するのは悲しい」。

首藤 アナウンサー
掛け捨て保険のようだという指摘もありますけれども。

増田 解説委員
武器っていうのは基本的に、使わないで済むなら使わないに越したことはないので、それがまさに抑止力なんですけれども、そういう意味では掛け捨ての保険というのと考え方が似てないとこもないわけではないですよね。

金子 さん
昔のシステムのものは、もう使わなくなるわけですよね。

首藤 アナウンサー
古いものはどうなんですか?

加藤 さん
基本的には使えなくなりますね。

香坂 さん
これは下取りとかはしてくれないの?

加藤 さん
残念ながらそれができないんですね。
日本の場合はこういった武器を基本的に売らないことにしてますので。
それから、SM3ってアメリカと共同で開発してますので、日本が勝手にどこかに売るというわけにもいかないんですよ。

金子 さん
技術がよその国に行っちゃう。

加藤 さん
技術的な問題もありますからですね。掛け捨て保険というふうに言われるかもしれませんけども、保険と若干違うのは、防衛って相手があるんですよね。だから、相手に対してどのように対応していくかということによってこちらの防衛力のレベルが決まっていくんで、何が十分なのか、1%で十分なのか、あるいはもっと増やすべきなのかという判断は。

香坂 さん
誰もできないってことですかね。相手が分かんないと。

加藤 さん
GDP比で日本よりも少ない防衛費を使ってるところはいくらでもあるんですけども、それは、例えば周りの状況がどうなのかっていう問題があるんですよね。
日本の場合は北朝鮮や、あるいは中国などの、若干敵対的な国が周りにあるという判断をすれば、それに対応して必要だということですけども、全然そういうこと必要のない国がありますよね。

香坂 さん
平和な国に囲まれてれば、別に。

首藤 アナウンサー
そうですよね。


グラフィックレコーディング

グラフィックレコーダー
山田 夏子さん

田中 アナウンサー
議論を聞いて、皆さんのツイッターもたくさん来ています。まず、5兆2000億円という防衛費というのが高いのか安いのか、それぞれの意見が来ていますね。
例えば、少ないんじゃないかという意見もあります。

「この先怖い世の中に突入する。ばかにできませんよね」「ほかの国、近隣の諸国は防衛費って増えていますよね。日本が増えないのは不安です」という声があったりします。

「国民の命と財産を守る費用です。全く足りません」というような声。
一方で、やっぱり多いよねという声があります。

「限度のない設備競争になっちゃうんじゃないか」「果たして効果って期待できるの? むだな予算じゃないの?」「見合うだけの有効性があるんだろうか」。
皆さん、この5兆2000億円ってどうするんだろうっていう、この判断にね、2つ意見が来てます。

首藤 アナウンサー
2つ分かれてますよね。まさに5兆2000億円、どう考えたらいいですか?

増田 解説委員
5兆2000億円という額でいうとぴんとこないと思うんですけども、考え方として、北朝鮮の核とミサイルの脅威がこれだけリアルになってる以上、政府がそれに対応するための防衛体制の構築を急いで、防衛装備を拡充、目指すっていうのは当然だと思うんですね。
そこはある程度理解はできるんですけど、ただ、だからといってやみくもに増やしていいっていうわけでもないと思うんですよ。全体の国家予算っていうのは財源が限られてるわけで、社会保障であるとか、教育であるとか、ほかの分野とのバランスも考えなきゃならないと思うんですね。
ですから、適正な、脅威の質、例えばミサイルならミサイル、脅威の質を冷静に認識した上で、それに対応するための適正な装備を、費用対効果というのを重視してきちんと選んでいく。
例えば、新しい装備を導入するなら、今回のイージス・アショアもそうですけれども、どのような能力を持って、どのような効果があるのかっていうのを国会できちんと説明するっていう謙虚な努力が、政府には求められてるんじゃないかなと思いますね。少なくとも。

香坂 さん
用意はしても、ちゃんと使えないんだったらっていうのもありますよね。

首藤 アナウンサー
ほかの国と、比べるとどうなんでしょうか?

佐藤 さん
ほかの国は軍事力は増やしてますので、防衛費を増やしてますので、世界的に見ても日本が1%にずっと抑え続けたっていうのは、非常に驚くべきことだというふうに受け止められているようです。
北朝鮮も中国も、何もきのうきょう、新しく軍事力をどーんと何百億円もかけてるわけではなくて、徐々に徐々に軍事力を増やしていってるわけですから、日本もそれに合わせて軍事力を徐々に徐々に増やすなり、もし必要じゃないんであれば減らすなり、柔軟に判断していくことが重要だというふうに言われます。

金子 さん
「ちょっと待った」で。北朝鮮はどのぐらい国家予算からお金かけて、開発とかしてるんですか?

香坂 さん
そこにないけど。

加藤 さん
基本的に分からないですね。いったい何をもって軍事費と言ってるのかがよく分からないということですので、例えば日本だと、ロケット開発っていうのは防衛省とは違うところで予算が組まれたりとかするんですけども、たぶん北朝鮮の場合は、何もかも軍事費なんだろうと思いますけどもね。

香坂 さん
あんだけ上げてたら、お金かかるだろうにって思ってしまいますよね。

増田 解説委員
先軍政治といって、北朝鮮、とにかく軍は優先するんだという政治のやり方を取ってますので、たぶんあらゆる資源をまず軍事に優先すると。特に最近は、核・ミサイルの開発に優先的に配分していて、どちらかというと、戦車とか、戦闘機とか、通常戦力っていうんですけど、そちらに対する配分っていうのはかなり抑えてるんじゃないかと。とにかく核やミサイルのほうでどんどんどんどん開発を進めて、周辺諸国、日本・アメリカ等を威嚇するという体制なんじゃないかなと。

佐藤 さん
軍事力のもう1つの役割っていうのは、外交政策の手段として使うってことなんですね。つまり、自分たちがどれだけの軍事力を持ってるかっていうのが、外交政策でどういう交渉ができるかっていうことを決めてくるんですね。
したがって、こちらが軍事力を持ってれば相手は妥協してくるでしょうし、持ってなければ相手は強く出てくるでしょうし、そこのバランスは常に見ていかなければいけないというのが、軍事力の非常に皮肉なところではあります。

香坂 さん
全世界でそれを絶たないことには、それが繰り返されていくしかないってことですよね。

佐藤 さん
おっしゃるとおりですね。

増田 解説委員
例えばね、ミサイル防衛システムっていうのは非常に大事なものではあるんですけれども、ある種ちょっときりがないところもあるんですよ。
例えば、さっき言ったイージス・アショアとかも、これ、誤解が多いんですけど、例えば二段構えの迎撃態勢を3段にするっていうものではなくて、同じSM3なので、基本的には二段構えのままで、SM3を、簡単に言うと数を増やすというものですし、もちろん大事なことではあるんですけど、そういった部分もあるし、実際予算要求したからといってすぐに導入されるわけじゃなくて、実際に稼働されるまでには、だいたい5年ぐらいはかかる。

香坂 さん
5年?

増田 解説委員
かかるだろうと言われています。かつ、イージス・アショアも含めてミサイル防衛システムっていうのは、例えば、相手がたくさんのミサイルを同時に発射するような場合に、すべて迎撃しきれるかというと、それは困難じゃないかって言われているんですね。
ですから、ミサイル防衛システムっていうのは限界があるんだっていう事実は冷静に認識する必要がある。それを踏まえて、まさに費用対効果といったことで軍備っていうのは考えていかなくちゃならないんじゃないかなと思いますね。

田中 アナウンサー
皆さんの議論を聞いていて、素朴な疑問も来るようになりました。その中で、これです。「そもそも兵器の金額ってなぜこんなに高いんでしょうか」。この疑問が来てます。

加藤 さん
兵器って基本的には1品物ですから、特注品で、それしか使いようのないもので作っていきますので、どんどんどんどん高くなるんですよね。市場原理が働きません。どこかの国と競争して、どこかの製品と、じゃあ、こちらは安くて性能がいいからこちらを買いましょうっていうのは、なかなかそういうわけにはいかないんですよね。
それから、日本の場合ですと特にそうなんですけど、日本の場合は本当に少ない数の兵器しか作りませんので、予算が少なくて。そうしますと、ほとんど手作りの世界になってくるんですね。部品なんかになると。

香坂 さん
特注品ってことですか?

加藤 さん
そうです。特注品をどんどんどんどん寄せ集めて作ったのが日本の兵器だとすると、本当に際限なく高くなるということと、それから、独特な計算のしかたをしてましてね、日本の場合ですと、利益率っていう、あなたの会社は、これだけこの兵器作ったらもうけていいですよという率が決められてるんですね。率が決められているということは、いくらそこで安くしようとしたところで、利益率が決まってるもんですから、安くしようというインセンティブっていうか、動機が働かないんですよ。

増田 解説委員

防衛装備で見ると、今回の概算要求でもいろいろ出てるんですけれども、アメリカ製の兵器を次々と導入してるという印象は否めないんですよね。SM3しかり、PAC3しかり、F35しかり、オスプレイしかり。無人偵察機のグローバルホークとか、そういったのもあるんですけれども。
1つは高性能の兵器というか、武器を製造してるのがアメリカの軍需産業しかないっていう部分もあるんですよね。例えばロッキード・マーティンとか、レイセオンとか。

香坂 さん
アメリカにただもうけさせてる感、多いですよね。
しょうがないんですね、もうね。

加藤 さん
残念ながら、私たちが、これが適正の価格かどうかということを判断する材料がないですよね。

金子 さん
専門家の方が見ても、これは高いとか安いとかっていうのは分かんないんですか? 妥当だなとか。

加藤 さん
ある程度は分かりますけれども、基本的に兵器って高くなる傾向にあるんですね。さすがにアメリカの国内でも、兵器が高すぎるんじゃないかという議論が過去何度も起きるんですね。いまから30年ぐらい前ですけども、実は海軍に納入していた灰皿、灰皿が当時1個900ドルしたんですよ。

金子 さん
えっ。

加藤 さん
なんでそんなばかなことになるんだっていう話になってきて、積み上げて、積み上げて、こうなりましたって、いくら何でもそれはないだろうという。

金子 さん
10万円ぐらいってことですか?

香坂 さん
灰皿じゃ戦えないよね。

加藤 さん
そういうばかげたことが起こったんですよね。さすがにいまはそういうことはないですけれども、基本的にそういうことになる。
そういう要因が働いてくるというのが兵器産業のある種の特殊性ですよね。

首藤 アナウンサー
値切ったりとか、そういうことももちろんできないんですか?

佐藤 さん
例えばいまのF35であれば、トランプ大統領自体、これ高すぎるんじゃないかというふうにクレームを出して、ちょっと値段を下げさせることもやってますし、競争させて下げさせることをやってますし、また、日本も常に、防衛省も常に、兵器がこれだけ高いのはなぜかっていうことを検証してますので、先ほどコストカットの話がありましたけど、コストをいかに下げるかっていう努力も防衛省もずっとやってます。
ただ、日本の大きな問題というのは、アメリカから兵器を買うことが続いてるっていう背景には、日本の国内で作れてないんですね、こういう兵器が。防衛省にとって。そこは日本のいま大きな課題で、防衛省が必要としてるものを日本の防衛企業が作れないっていうところに日本の大きな防衛問題の1つの課題があって、いまの状態が続けば、兵器が高性能になり、必要な兵器がどんどん増えていけば、アメリカから買わざるを得ないっていう構造が出てきちゃうと思うんです。

田中 アナウンサー
いまアメリカという話が出ましたけれども、視聴者の方からも疑問が来ています。

視聴者の声

「日本だけでは限界があるんじゃないか。アメリカとの協力が必要」

「そもそも安保条約でアメリカに日本って守られてるんじゃなかったっけ」

香坂 さん
オスプレイぐらい貸してくれてもいいのにねと思っちゃいますよね。

金子 さん
そうですね。リーズナブルに。

増田 解説委員
先月、ツープラスツーという会議が日本のアメリカの間であって、日本とアメリカの外務大臣と国防大臣、防衛大臣の会議だったんですけど、そこでアメリカが表明したのは、アメリカは核戦力を含むあらゆる戦力で日本を防衛すると。日本は自国防衛の役割を拡大していくと。

つまり、盾と矛の関係でいうと、簡単に言うと、アメリカ軍が矛の役割を担って、日本の自衛隊が盾の役割を担うと。
例えば、先ほど言ってたF35っていうステルスの最新鋭戦闘機があるんですけど、これ、今年から山口県の岩国基地にアメリカ軍が配備してるんです。F35がアメリカ国外以外で配備されてるというのは岩国だけなんですね。それだけ日本の防衛っていうのを重視しているんだろうと見てもいいと思います。
今週(9月6日)、小野寺防衛大臣とアメリカのマティス国防長官が電話会談して、北朝鮮に対して目に見える圧力をかけていこうということで一致したんですけど、目に見える圧力っていうと、例えばアメリカ軍と自衛隊の共同訓練。先週も九州周辺の上空で。
アメリカ軍のB1爆撃機とか、F35戦闘機と日本のF15戦闘機が共同で訓練するという、これは北朝鮮に対する威嚇だと思うんですけれどもね。そういった日米の共同行動、連携というのは非常に広がってるというところはありますよね。

香坂 さん
それが効いてくればいいですけどね。

首藤 アナウンサー
効いてくるんでしょうか? そこは。

佐藤 さん
もちろん、こういう防衛装備をアメリカが無条件にいろんな世界、どこの国にも売ってくれてるわけではなくて、同盟国にだけ売るという側面というのはあると思います。
だから、同盟国としてわれわれはこういう武器を買えることができるというのはある意味で日米安保のおかげという側面も確かにありますし、そうすることによってアメリカの軍事力と、これは非常に評価が分かれるところですけど、ある程度、一体化とは言いませんけど、共同作戦することで、アメリカと、ついている日本もそれなりに怖い相手だということで、先ほど申し上げた抑止力の実効性が高まるという側面があるということになります。

加藤 さん
いまアメリカと、どんどんどんどん一体化してるんではないかというふうには私は思ってます。海上自衛隊、それから、航空自衛隊というのは、情報がなければ戦闘機も艦船も動かせません。そうした情報のかなりの部分がアメリカから来てるわけですよね。
だから、アメリカと一体化していく、一体化というか、関係を強化していかないかぎり、実は日本の自衛隊の能力も維持できないっていう状況が、ますます強くなってきてるんじゃないかなという気はしてるんですね。

金子 さん
日本はどうしたら維持できるようになるんですか?

加藤 さん
兵器をどんどんどんどんアメリカから買うということは、実はアメリカとの、アメリカ軍とある意味では一体化していくということになっていくわけですね。それが北朝鮮に対する抑止力になるということにもなるかもしれませんが、逆に言うと、じゃあ日本はいったい自分たちの国を自分たちで守れないのかという、そういう話にもなってくるわけですね。

増田 解説委員
ミサイル防衛で言うとね、いまの例で言うと、ミサイル発射の第一報というのは、アメリカの早期警戒衛星が探知したものが日本の政府に送られるシステムになっていて、まさにアメリカなしでは日本の防衛っていうのは十分ではないと。

金子 さん
もし自国で防衛のシステムとか開発して、日本の自分の技術でいくようにするとしたら、もっと予算はかかってくるんですかね。

加藤 さん
たぶん何倍もかかると思いますけど。
おそらくGDPのどのぐらいでしょう、5%。ロシア並み。

香坂 さん
ロシアと同じ?

加藤 さん
なかなか難しい。衛星を打ち上げたりとか、システムを維持したりなんていう、そういう全部入れると。かなりのことになると思いますね。アメリカも実は日本の防衛費の議論ってよく見ていて、日本が何か使おうとすると、それはアメリカが協力するから、日本、買わなくていいんじゃないのとか、むしろこっちを買ったほうがもっと安くできるんじゃないのっていう話し合いもやってますので、アメリカから一方的に武器を買わされてるであるとか、アメリカの作戦の中に組み込まれてるってことはなくて、日本もアメリカの資源を利用しながら、日本の抑止力を高めているということになると思います。

香坂 さん
うーん。

増田 解説委員
防衛費っていう文脈で言えば、間違いなくアメリカとの同盟関係で、アメリカがある程度抑止力を持っているからこそ、日本の防衛費がある程度は軽減できる、その分。という側面があるのは事実ですね。
ただし、最近は、アメリカは、日本が自国防衛の役割を拡大することを求めてはいますけれどもね。

視聴者の声

「こういうのをまさにアメリカファーストっていうんじゃないの」

「どうせアメリカの武器商人がもうかるだけじゃないの」

田中 アナウンサー
っていう声も来てますね。

首藤 アナウンサー
佐藤さん、加藤さん、おふたりの見解は?

加藤 さん
アメリカファーストといえば、それはどこの国も自分の国の国益を優先するのは当然のことなんですね。そういう各国の思惑の中で日本が、それこそジャパンファーストでどれだけ自分たちの利益になることを日米同盟、アメリカとの関係の中で取ることができるか。それが政府、国民の英知だと思いますけれどもね。

首藤 アナウンサー
アメリカに強く言えますか?

加藤 さん
そこが要するに、国民の世論と、それに後押しされた政府の力だと思います。それこそ世論だと思いますね。

増田 解説委員
今回の防衛予算の中でも、概算要求の中でも1つ気になるところがあって、

アメリカの無人偵察機のグローバルホークというのを導入することに決めてるんですけど、当初、日本が導入を決めた時の当初の見積もりよりもいまの価格が23%高くなっている。

金子 さん
これ、大変ですよ。車とか家買う時、こんな値段上がったら。

香坂 さん
こんなに言われたらね、やめるってなるよね。

増田 解説委員
実際今回中止も含めて、防衛省内検討したようだったんですけども、最終的には要求することに決めました。取得することに決めたんですね。

香坂 さん
なんでこんな見積もりが甘いんですか? 23%もアップする。

加藤 さん
アメリカ側の生産コストがどんどん膨らんでしまったっていうのがアメリカ側の言い分なんですけれども、こういう大幅な経費の増加っていうのは透明性を欠きますし、少なくともアメリカ側の言い値にばかり従うのではなくて、今後も粘り強く経費圧縮の交渉っていうのは取り組むべきだと思いますけどね。

佐藤 さん
アメリカ国内でも、グローバルホークを含めた兵器が見積もり価格より高くなるってことについてはすごく大きな批判がありまして、ちゃんと見積価格どおり納入せよという圧力は、常に国防総省のほうから防衛産業のほうにかかってるみたいですね。
見積もり価格から上がる理由というのは、おそらく、中に搭載するセンサーであるとか、コンピューターであるとか、そういう性能を上げていかなきゃいけないことで、こういう見積もり価格が上がっていくんですけど、アメリカも日本も、おそらく世界どこの国も、なんとか防衛費を抑えようとする努力っていうのはどこもしているということです。

田中 アナウンサー
だんだん議論聞いていくうちに皆さんちょっとずつ気付いてくることがあって、例えば、

「防衛費の一部をほかの国と仲よくするために使ったほうがいいんじゃないの」とか、

「完全に防衛というのは無理です。外交で安全保障したほうがいいんじゃないでしょうか」というような声も出てます。

加藤 さん
軍事と外交というのは別物ではないんですね。これはある意味では一体化したものであって、軍事力が外交の力になるということもあるわけですね。軍事力なき外交力が本当にあるのはどこかといったら、それこそバチカン市国ぐらいしかない。カトリックの本山のバチカン市国ぐらいしかないっていう。多くの国が軍事力を背景に外交力を持つという、そういう外交のしかたをしてるもんですから。
でも、もちろん外交が第一です。外交が最優先して、そのあと、どうにもならなくなった時に初めて軍事力ということになるんですけども、それはどこの国でも避けようとする事態ですから。

首藤 アナウンサー
このあと予算が財務省を通って国会に最終的に行くわけですけど、私たちはどう考えればいいでしょうか?

増田 解説委員
私は、平和を語るためには、軍事や戦争の現実を知る必要があると思うんですよね。ですから、われわれも防衛予算とかそういったものを政府任せにするんじゃなくて、関心を持っていくべきじゃないかなと、少なくともそう思います。

佐藤 さん

ひと言、冷静に必要な軍事力を検証していって、むだなものは買わない、必要なものを買うという姿勢を貫くことじゃないかなと思います。

加藤 さん
何よりも、皆さんが安全保障、防衛に関心を持つことが何よりも重要だと思います。

首藤 アナウンサー
関心を、持ち続ける。そうですね。ありがとうございました。

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