2017年08月05日放送放送内容まるわかり!

なぜ広がる なぜなくせない "核兵器"ってなんだ!?

7月4日、北朝鮮が「ICBM=大陸間弾道ミサイルの発射実験に成功」と発表。核・ミサイル開発を加速させる姿勢を示し、核への脅威が高まっています。国際社会が核軍縮を求める一方で核保有国は増え、7月には国連で「核兵器禁止条約」が採択されましたが、アメリカの核の傘に守られている日本は条約に参加しない見通しです。 これから世界は核とどうつきあう?核の傘はどうなる?被爆国・日本が果たす役割は?広島・原爆の日を前に考えます。

今週の出演者

専門家

鈴木 達治郎さん(長崎大学 核兵器廃絶研究センター長)
神保 謙さん(慶應義塾大学 准教授)
津屋 尚(NHK 解説委員)

ゲスト

チャンカワイさん(お笑い芸人)
千秋さん(タレント)

今週のグラフィックレコーディング

グラフィックレコーダー
山田 夏子さん


首藤 アナウンサー
ことしも広島・長崎に原爆が落とされた日が近づいてきました。世界から核兵器がなくなることを祈る日。ところが、ことしは特にきな臭いニュースが入っています。世界はいまどんな事態になっているのか、徳永アナウンサー、お願いします。


プレゼンテーション

徳永 アナウンサー
おふたりに、クイズからまいります。いま世界に核弾頭って何発ぐらいあるかって考えたことあります?

千秋 さん
100?59個ぐらい?

チャンカワイ さん
何千発。もっとありますよね、確かね。

徳永 アナウンサー
じゃあ答えです。

千秋 さん
えーっ。

チャンカワイ さん
うわあーっ。

首藤 アナウンサー
およそ1万5000発。

チャンカワイ さん
思ってたより多いわ。

徳永 アナウンサー
なんでこんなに持つことになったんだろうっていろいろ調べてみました。
そもそもは72年前ですよね。

昭和20年、1945年の8月に日本に2発の原子爆弾が落とされました。この年だけで犠牲になった方は20万人をゆうに超えるぐらいなんです。
この段階で、人類は破滅が近づいていますよと警告する人たちがいたんです。アメリカの科学者などで作るグループの人たちです。その人たちが提唱したのが、こういう考え方。

「世界終末時計」。いま世界がどれぐらいピンチなのかを、時計で例えてみんなに伝えようというものです。12時ジャスト、長い針がてっぺんになったら、人類破滅。
原爆が落ちた翌々年、1947年。こうなりました。

いま人類滅亡7分前ぐらいのピンチなんですよ、そう思っといてくださいよ、っていうのを彼らは警告した。ところが、時代はどんどん核を増やし始めます。これです。

「東西冷戦」。西はアメリカ、東はソ連でした。お互いがにらみ合いをします。最初に核持ったのはアメリカです。そうすると、ソ連はすぐに核を開発して持つ。そうすると、アメリカはもっと持たなきゃって数を増やします。ソ連はそれよりも1発でも多くと数を増やします。

アメリカはもっと持って世界一にならなきゃ、

ソ連はもっともっと持ってと、どんどん数が増えます。
いちばん多い時で、核弾頭の数、6万とも7万とも言われてる。

千秋 さん
きりがないじゃないですか。

チャンカワイ さん
ぽんぽん作れるもんなの?そんな。

徳永 アナウンサー
こういう競争だけはやたらと早いわけですよ。競争はね、数だけじゃ終わらない。

より強く!威力の強い核兵器を作り始めます。いちばんひどいものだと、広島に実際に落ちた原爆の3300倍の力がある。

首藤 アナウンサー
えぇ?あの原爆の3300倍。

徳永 アナウンサー
1発で。

千秋 さん
地球がもう終わっちゃう。

徳永 アナウンサー
まだ続くんです。より小さく!という競争もします。こうすると、ミサイルの先に核兵器をつけて飛ばせば、相手の国に行かなくても核攻撃ができるようになっちゃってる。もっと言うと、潜水艦から撃てるようにもなってます。ってことは。

首藤 アナウンサー
広い海のどこからでも。

徳永 アナウンサー
そう。どこから撃ってくるか分からないぐらいになっちゃいました。本当にそんなことしたら人類破滅しちゃうって思いますよね。

千秋 さん
はい、思います。

徳永 アナウンサー
それぐらいまでいったら、ものすごい皮肉なことが起きました。それは、本当に使ったら破滅するから、お互い使えなくなっちゃったんです。

これを「核抑止力」っていう。
使えなくなっちゃったの。怖くて。だから、皮肉なんだけど、核があるから大きな戦争は起きてないって言う人までいる。

千秋 さん
あー、そういうことか。

チャンカワイ さん
まあそうか。否定はできないなあ。

徳永 アナウンサー
動きはどんどんエスカレートして、こんなことが起きます。

ほかの大国も自分で核を持ち始めます。
さらにはこんな動きも起きます。仲間増やしです。

ソ連もアメリカも呼びかけます。例えばソ連の仲間は東のヨーロッパやキューバの国々。

それから、アメリカの仲間というと、西ヨーロッパや韓国、そして、この日本も、被爆国ですが入ります。つまりですね、私たちの仲間に皆さん入りませんか。あなたたちの国が攻撃されたら、私たちが核を持って応戦しますからと言って、仲間をどんどん増やしていって、にらみ合いがさらに深刻になっていったんです。

首藤 アナウンサー
「核の傘」。

徳永 アナウンサー
はい。守られているのを「核の傘」と例えるようになりました。
さて、終末時計。1953年、冷戦がいちばん厳しいころ、ここまでいきます。

千秋 さん
あと2分?

徳永 アナウンサー
いまは破滅2分前ぐらいの深刻さですよと警告されるようになります。
これちょっと止めようっていう動きがようやく出てくるのが1970年を越えてからです。これです、まず。

ちょうど1970年にスタートした条約、「核拡散防止条約」。これは、いま持っている国はこれ以上増やさず、ちょっとずつ減らしていこうよ。いま持ってない国は今後も持たないようにしようよ。

千秋 さん
言いだしたのはどの辺の国なんですか?

徳永 アナウンサー
世界中集まって、国連を中心に。

千秋 さん
自分たちは作ってるけど、そういうことも言いだしてる。

首藤 アナウンサー
ですよね、皮肉な感じですけど。

徳永 アナウンサー
ただ、ないよりいいでしょってなって、これがまずはスタートします。
流れとしては、だんだん減らすほうにいきます。それは、冷戦が終わるんですね、90年代になって。

ソ連が壊れてロシアなどになります。ソ連が終わるってことは、ソ連の軍事チームもなくなっていきます。大国どうしも、持ってる核をちょっとずつ減らしていこうよって、話し合いが進みます。
さあ、1991年です。これどうなったか。

千秋 さん
命が延びてきた。

徳永 アナウンサー
破滅17分前になります。

チャンカワイ さん
最初の倍以上いった。

徳永 アナウンサー
17分で喜んでる自体、感覚がわれわれどうかしちゃってるんですよ。

チャンカワイ さん
確かに。

徳永 アナウンサー
このままいけばいいんですけど、いま思えばこの時がよかったなっていう感じです。

千秋 さん
えー、そうなんですか?

徳永 アナウンサー
冷戦って、大きい国どうしのにらみ合いですよね。それがなくなったってことは、それよりも小さな国どうしのいさかいも表面化してくる時代です。
こんなことが起きます。

インドとパキスタンっていう2つの国は隣り合っていて、ずっと仲が悪い国です。お互いのことを意識して、核兵器持っちゃったんです。核の脅威を使って、お互いを威嚇するように。

千秋 さん
1人が持ってたら、持ってたほうがいいってみんな思いますよね。

徳永 アナウンサー
仲悪い相手が持つっていうことは、うちもってなっちゃう。

首藤 アナウンサー
そういう連鎖がね。

徳永 アナウンサー
こんなことも起きます。

中東の国・イスラエル。よく周りのアラブの国々と何度も何度も戦争してきたってニュースで見ますよね。ある時、イスラエルさんって核持ってるんじゃないですかって話が起きます。イスラエルはいまもって、持ってるか持ってないかは明らかにしてません。"事実上の核保有国"ってニュースでは言われます。

千秋 さん
本人は認めていないけど、周りは持ってるんだって、ほぼ思ってる。

徳永 アナウンサー
そんな空気。

首藤 アナウンサー
専門家の皆さんがうなずいていらっしゃいます。

徳永 アナウンサー
で、こことライバルにある国も疑惑を持たれます。

中東のライバルの大国・イラン。イランさんも核開発ってもしかしてしてるんじゃないですかって世界から疑われます。アメリカなどが制裁をしたり、話し合いを何度も繰り返したりして、ようやく核合意って言って話し合いがまとまってきています。
でも、結局、核、広がってる。危ない、やっぱり。もうこういうのいいかげんにやめようよっていうのが、72年目のことしの大きなニュースなんです。これですよ。

新しい条約が採択されたのが先月です。今度は核兵器禁止です。だんだん減らすとか、ぬるいことは言ってんじゃない。もうだめ。全部だめ。

千秋 さん
1個もだめ。

徳永 アナウンサー
開発もだめ。持つのもだめ。当たり前だけど、使ってもだめ。核の脅威を使って相手を黙らせるとか、そういうことも、ぜーんぶだめっていうのを法的に禁止する初めての条約が、72年目になって、ようやくことし採択の運びになったんです。
ここだけ聞くとことし進歩したなと思うんですが、逆の動きもありまして、いまから2人の方をご紹介いたします。
ちょっと見えておりますが、この方です。

首藤 アナウンサー
あー、北朝鮮。

徳永 アナウンサー
北朝鮮、キム・ジョンウンさんのお父さんのころから核の開発をしてて、ミサイルの実験も繰り返してます。ってことは、さっき話したとおり、核兵器をもしミサイルの先につけて遠くに飛ばせるようになったら、核攻撃ができちゃうってわけです。本当にアメリカを核攻撃できるように、近いうちになっちゃうんじゃないのと最近よく言われ始めています。ニュースでもやってましたけど、アメリカを攻撃するような映像を出して、あおっているわけです。直接指名してるわけです。
一方のアメリカです。思いだしてください。去年のアメリカといえば、大統領が広島に来ました。そして、その大統領は、核なき世界を作ろうと世界に呼びかけていました。
それが、ことしはこうなりました。

首藤 アナウンサー
政権が変わって。

徳永 アナウンサー
その後、何言ったか、何したかは言っていくときりがないので、ご存じのとおりです。

首藤 アナウンサー
ツイッターでのつぶやきとか、いろいろ。

徳永 アナウンサー
はい。結局72年振り返ってみると、核は私たちを脅かしてきたの? 核のおかげで大きな戦争が防げてきたの? なんだかよく分からなくなってきたんです。

チャンカワイ さん
どっちなの?

徳永 アナウンサー
発表いたします。いまどこか。

千秋 さん
近づいてる。

チャンカワイ さん
あららららら、あららら。

首藤 アナウンサー
まだいく?

徳永 アナウンサー
いま滅亡2分半前と言われています。

チャンカワイ さん
えぇーっ。

徳永 アナウンサー
冷戦がいちばん厳しい時とほぼ同じだと警告されている始末です。

千秋 さん
大変だ。

首藤 アナウンサー
世界がそんなにいま危ない状態なんですか?
神保さん、世界の軍事パワーバランスにお詳しい。どうでしょう。

神保 さん
世界の核兵器を巡る情勢ってすごい複雑化していて、中小国家もまた核兵器を持つようになって、それに対抗する国も現れるとなると、実は問題は世界が終わるかどうかではなくて、「世界が終わらない核の使い方」さえできるということ。

千秋 さん
終わらないための?

神保 さん
つまり、アメリカとロシアで全面戦争したら、やっぱり世界って終わってしまうんですね。あれだけの数がある。だけれども、そんなに数を持ってない国もたくさんあって、しかも、彼らがまた生存戦略や安全保障戦略の延長線上に核兵器を位置づけていると。
それで世界が終わるというレベルまではいきませんけれども、でも、使用されるリスクっていうのは昔より高まったと。つまり、終末はしないんですけれども、核のリスクは高まったというのが正確な言い方じゃないかと思いますね。

首藤 アナウンサー
鈴木さんは、長崎から核の廃絶を訴えていらっしゃいます。いまの状況、どう見ますか。

鈴木 さん
複雑化してることは間違いないです。ただ、核兵器っていうのは通常兵器とまるっきり違って、いったん使われるとかなりの深刻な危害を与えますよね。
いま神保先生がおっしゃったみたいに、世界終末につながらないような核の使い方だったらいいじゃないかっていう考え方が出てきてると。逆に使いやすい核兵器の開発っていうのが進んできてる。核兵器が使いやすくなってしまうと。
いままでは、核の抑止っていうのは、核を使ったら世界終末につながるので使わないようにしましょう。ところが、最近は、限定的な影響しか与えない小型の核兵器であれば、使ってもいいんじゃないですかっていう人が出てきてると。

千秋 さん
被害が少なければいいんじゃないですかってこと?

鈴木 さん
実際は、使われると大変な被害を負いますし、広島・長崎でもああやって起きたわけですから、規模が大きいですからね。それと、本当にとどまるかどうかも保証がないわけですよね。インド・パキスタンの限定核戦争のシナリオというのができてまして、インド・パキスタンで何十発という核兵器が使われただけで、核の冬が起きるっていう研究もされています。
したがって、本当に地球終末につながらない保証もないと。

千秋 さん
それは、世界の人が核の怖さを本当に知らないってこともあるんですか?

鈴木 さん
だんだん知らない人が増えてきてる。だから、去年オバマ大統領が来ていただきましたけど、世界のリーダーに被爆地に来ていただいて、核を使ったらどんなひどいことが起きるかってことを学んでいただきたいと思いますね。

首藤 アナウンサー
もうすでにツイッターもいろいろ来ていて、徳永さん、お願いします。


グラフィックレコーディング

グラフィックレコーダー
山田 夏子さん

徳永 アナウンサー
皆さんのリアルタイムの声をここに、ひと目で分かるようにまとめてあります。
「怖い」っていう声と、「知りたい」っていう声、あと、広島・長崎から、いまドーッと来てます。

広島の方。「核の傘なんてありえない」とか、「すべての核兵器反対」っていう意見ももちろん来ています。
そして、いま増えてきてるのは、素朴な疑問。

例えば、「テロ組織に核売り渡されないか心配です」とか、「もし攻められたら日本って守ってもらえるんですか?」とか、根本的なことを教えてくださいっていう声がたくさん来てますね。

首藤 アナウンサー
そもそも核ミサイルってよく分からないですよね。北朝鮮がこの間も飛ばしたICBM、大陸間弾道ミサイル。それと核の違いが具体的には分からないという声、街でもありました。

津屋 解説委員
北朝鮮がICBM、大陸間弾道ミサイルというのを発射していますけど、あれって核弾頭を積んだまま撃ってるんですかっていうことを聞かれることがあるんですね。

北朝鮮が目指しているのは、ミサイル先端部分に、これ核弾頭なんですけど、これは核兵器ですね。これをつけてアメリカに飛ばせる能力の保有を目指してるんですね。でも、いま撃ってるのはミサイルそのものの実験であって、まだ核弾頭は搭載されていない状態。ですから、しょっちゅう北朝鮮が撃ちますけど、そこにはまだ核弾頭は積んでないという状況です。

首藤 アナウンサー
核ミサイルを発射する可能性ってどうなんですか?

津屋 解説委員
北朝鮮は、自分の国を守るために、アメリカから攻められないために核ミサイルの開発してるんですね。ですから、圧倒的な軍事力の差があるので、北朝鮮がみずから、最初から先制攻撃でアメリカに撃ってくる可能性は、常識的には低いと思います。
逆にアメリカがなんらかの形で先制攻撃を北朝鮮にしたら、もし北が核ミサイルを持っていれば、それに対する報復ということはありうるんではないかと思います。

千秋 さん
いままでの国のトップは、ちゃんと空気読める感じがするんですけど、いまトランプさんと北朝鮮の人は、ちょっと何するか分かんないみたいのあるじゃないですか。

チャンカワイ さん
その怖さありますよね。

神保 さん
抑止力って相手の理性とか合理性を前提にした概念なんですね。アメリカとソ連はたくさんのコミュニケーションを行って、どうやったら核兵器をお互い撃たないようにすればいいかということを協議しながら抑止力を形成してきたんですけど、北朝鮮とそんな理解ってできますかっていう問題はもちろんあるわけですよね。

チャンカワイ さん
すごく大勢の人を背負った抑止力なんだっていう理解ってされてるのでしょうか?すごくその不安がありますね。

首藤 アナウンサー
メールでもたくさんいただいてます。抑止力ってあるんですか?と。

視聴者の声

神奈川県・60代・男性
「核兵器は全廃したいが「核の抑止力」はあると思う。軍事パワーバランスが崩れると戦争が起きるのは歴史が物語っている」。

長野県・60代・男性
「核は持った国が力を持つだけです。抑止力なんてありません。力を持った国は使いたくなるのです」。

鈴木 さん
抑止力は考え方ですので、実際に機能したかしてないかっていう証明はなかなか難しいです。例えばキューバ危機。あれは核抑止力があったから核のボタンが押されなかったって言う人もいますし、いやいや、1つ間違えばどちらかが核のボタンを押してたんだと。だから、あの時点で核抑止力は機能してなかったって言う人もいます。
朝鮮戦争もそうですね。あの時すでにアメリカは核兵器を持ってましたけど、じゃあ朝鮮はなぜ戦争を起こしたのか。核抑止力は機能してなかったんだと言う人もいますし、結局あの時に核戦争は起きなかったので、抑止力は機能してたって言う人もいます。

神保 さん
ただ、おそらく北朝鮮自身は、核抑止力の最大の信奉者と言ってもいいほど核の恐ろしさを知ってるが故に、核兵器を大事にしてるというふうに言えると思うんですよね。
だから、抑止力が成立する見通しはもちろんあるんですが、他方で、抑止力が敗れる事態っていうのも考えなければいけなくて、もしアメリカが限定的にでも軍事オプションを取ったとしたら、北朝鮮は最終的に核兵器を使うかもしれないし、もう1つのシナリオは、長期的にキム・ジョンウン体制が揺らいで崩壊しそうになった時に、彼らはもう失うものがないという状態になるかもしれない。だったら核兵器を使って報復されても結果は同じ。だったら使ってもいいじゃないかというシナリオも。

千秋 さん
やけくそみたいなことですよね。

神保 さん
そうなんですよ。だから、核抑止っていうのは、政権が存続するっていうことを前提とした概念ですけど、存続しなくなっちゃったらどうなるのっていうことも考える必要はある。

チャンカワイ さん
置かれてる立場でこんなにも変わってしまったら怖いですよね。

徳永 アナウンサー
この質問も来てます。「そもそも核の傘に効力はあるんですか?」。

視聴者の声

東京都・10代・女性
「攻められた時、アメリカが本当に日本を守ってくれるのかが心配です」。

津屋 解説委員

核の傘、イメージ図ですけれども、万が一、例えば北朝鮮が日本に核攻撃をしてきたという時は、アメリカが代わりに核で北朝鮮を報復してあげますよと。だから、アメリカからの攻撃を恐れて、北朝鮮は核攻撃できない。それが核の傘と呼ばれているものですね。これによって日本は安全を保たれてると、そういう考え方なんですね。
ただ、もし北朝鮮が核ミサイル、アメリカ本土に直接届くものを持ってしまうと、アメリカは核でこれを攻撃すると、自分のとこも逆に報復でやられるかもしれない。アメリカ国民が死ぬというリスクを負ってまで日本を本当に守ってくれますかっていう、そういう信頼性がいま揺らいでいるというふうにも言われているんですね。

千秋 さん
揺らいじゃってるんですか?

津屋 解説委員
北朝鮮が、直接アメリカに撃つことができる核ミサイルを持った段階で、そうなるんじゃないかという心配がよく語られるんですよね。

神保 さん
これも抑止力の一端なんですけれども、抑止力は相手が思いとどまるという力なんですね。だから、もし悪いことをしたらこちらから反撃が確実にいく。相手にとってはそれが耐えがたい。だったら手を出すのをやめておこうという話なんですけれども、核の傘はそれを第三国に適用するということなんですね。
もし日本に手を出しても、アメリカはみずからが攻撃されたと同じような形で北朝鮮に報復をする。それを北朝鮮は耐えがたいと思うから、日本に手を出すのはやめておこうということになるんですが、ポイントは、アメリカがそのような日本を守るという姿勢をしっかりと提示しているか、そして、われわれ日本人がそれを疑いなく信じるかどうかというのが、核の傘を成立させるすごい重要なポイント。

千秋 さん
いま世界の人の印象では、核の傘は、日本はアメリカに守られてるっていうのはあるんですか?

神保 さん
それはかなりあると思います。常に歴代の大統領は、北朝鮮が何かミサイル、核実験をするたびに、すべての防衛を日本・韓国に提供するというふうに何度も言うというのは、核の傘はそこにありますよということを確認しているということなんですね。
ただ、いまちょっと状況が変わってきて、北朝鮮のミサイルたくさん増えてます。場合によってはアメリカ本土にまで届くものができるかもしれない。その時にアメリカは本当に自信を持って傘を差し出せるのか、そして、われわれは本当に疑いなくそれを信じられるのかというところがポイントになりますね。

千秋 さん
でも、守ってもらわなかったら、日本はどうにもできないですもんね。

首藤 アナウンサー
こちらは何も持ってないですね。

千秋 さん
日本は持ってないんですよね。

鈴木 さん
持ってないです。

津屋 解説委員
持ってないです。

首藤 アナウンサー
素朴な疑問がいっぱい来ているようです。徳永さん。

徳永 アナウンサー
多いのが、お金とか保管の話です。「核爆弾1つにどれぐらいお金かかっているんですか?」「本当に保存しておけるものなんですか?」「核でもうける会社や国ってあるんですか?」。

千秋 さん
よく映画とかだと、どっかの企業がもうかるから戦争するみたいのあるじゃないですか。

首藤 アナウンサー
実際あるんですか?もうける会社や国。

鈴木 さん
もうかります、必ず。軍需産業ですから。

チャンカワイ さん
作る会社があるからってことなんですか?

鈴木 さん
そうです。

津屋 解説委員
ただ、核兵器というのは普通の通常兵器と違って、それを作ったからといって外国にどんどん売ってもうけるっていうものじゃないですよね。1回作ったら、その国しか持てないし、時には削減しないといけないっていうことになるので、普通の通常の兵器とはちょっと違うと思うんですね。
少なくとも国がお金をもうけるためにやってるということではなくて、もっと別の、国の存続に関わる判断として、国が指揮をして、国の管理の下に一般の企業が協力して入るということなんですよね。だから、お金をもうけるために作ってるというわけではないけれど、結果的に、もちろんもうかる企業は出てくる。

鈴木 さん
ほかの軍需産業とは違いますけども、逆に言えば、価格も何もない。競争も何もないわけですから。かなりの価格でも作らなきゃいけないから作るわけですね。

千秋 さん
作れる会社みたいなのは少ないってことなんですか?

鈴木 さん
数は少ないです。

チャンカワイ さん
その中で、しっかりここまでの数ができちゃってるっていうのが怖いですよね。

鈴木 さん
核弾頭だけじゃなくて、ミサイルとか、そのためのコミュニケーションの施設とか、核兵器産業っていうのは広く広がってますので、それなりのビジネスとして必ず残ってます。

チャンカワイ さん
ビジネスになっちゃってるのか、怖いなあ。

鈴木 さん
メンテナンスも当然あるので。古くなってきたら。

首藤 アナウンサー
核兵器禁止条約についてもたくさんのメールが来ています。

視聴者の声

北海道・50代・男性
「核保有国が参加しないのは残念だが、条約が可決されたことは1歩前進したと考えていいと思う」。

長崎県・50代・女性
「日本は世界で唯一の被爆国なのに、アメリカの核の傘のもと守られているからと参加しないことに憤りを感じる」。


プレゼンテーション②

徳永 アナウンサー
こちらにも、

「被爆国のはずの日本が逆行してるんじゃないですか?」「日本ってどういうスタンスなんですか?」。
そこで、さっきの条約の話をもう1回整理します。

核兵器禁止条約というのは、さっきも言ったとおり、ちょっとずつ減らすとかではなくて、開発も保有も、もちろん使うことも、それを持って威嚇することも、全部法的に禁止しちゃおうっていう条約です。
賛成したのは122の国と地域。旗振った人たち、ここです。反対って言ったのはオランダ。棄権はシンガポール。

下にいる国々は何かというと、この話し合い自体に参加していない。出ていない。

千秋 さん
いちばん話し合いに参加したほうがいい人たちが参加してない。

徳永 アナウンサー
そう。持ってる国と、守られている国。

首藤 アナウンサー
大事なメンバーが参加しない。

千秋 さん
ね。当事者みたいな人たちがいないところで。

徳永 アナウンサー
という状態なんですね。

津屋 解説委員
日本が話し合いにすら参加しなかったってことで、国際的にも国内でも批判をされてるわけですよね。日本っていうのは、唯一の戦争被爆国としての責任があるんじゃないかっていうことなんですけども、禁止条約というのはある意味すごく理想的なものなんですよね。すべてを禁止する。ただ、保有国からすると、あまりにも厳しすぎて、すぐには入りづらい。
日本にとってみれば、威嚇の禁止ってありますよね。威嚇っていうのは、核の傘、これもだめよって言ってるわけですね。そうすると、日本はこれに立って一応生きてるというふうに政府は考えてますから。

千秋 さん
安全が守られなくなるから。

津屋 解説委員
そう。安全が守られないような条約にはすぐには参加できない。だから、話し合いに参加しなかったわけですけども、話し合いには参加してもよかったんじゃないかっていう議論はあります。

神保 さん
日本政府自身はずっと核廃絶、当然広島・長崎の経験もあることから、核廃絶を目指すという方針は変わりはないわけですね。
過去23年間、国連でも、核廃絶に関する決議というのは日本が主導して160か国以上の賛成を得て、その規範を作ろうということは頑張ってるわけなんですけれども、核廃絶というのはおそらく日本政府の立場からすると長い階段のようなもので、段階的に進んでいかなければいけないということなんですが、この核兵器禁止条約については、これはちょっと3段跳び、5段跳びぐらいの、かなり先のほうにあるもので、いまただちにこれに乗ってしまうと、北朝鮮とか、将来の中国とか含めて、核抑止力を安全保障の中で考えなければいけないにもかかわらず、その使用や威嚇も禁止されてしまうと、どうやって安全を担保すればいいんだという話になってしまうということで、ただちに参加はできないというのが政府の苦しい立場だったと思うんですね。

チャンカワイ さん
当然理想だけども、みんな少しずつ歩み寄らなきゃ、立場が違うからということですね。

鈴木 さん
今度の禁止条約の大事なところは、核兵器が普通の兵器と違って、人権にも関わる、非常に非人道的な兵器であるっていうことを強調してるんですね。絶対に使ってはならない兵器だということを国際規範にしましょうという意味での、いちばん強い条約になったわけです。
そういうことから考えますと、まず日本が言っている、世界のリーダーに被爆地に来てくださいっていう話とつながるものがあるはずですから、当然日本も、その趣旨には賛成できるはずなんですね。実際、中には被爆者の言葉も入ってますし、被爆者に言及してる言葉もありますし、それから、被害者への支援とか、日本がその立場でできることはいっぱい書いてあるので、参加できなくともオブザーバーで参加して、国際的に条約の趣旨には賛成するってことはできるんじゃないかと。
現実に、いますぐ参加するのは難しいので、私は、核兵器禁止条約とちょっと似てるんですけど、

「非核兵器地帯」というのをまず日本が参加、作ってはどうかと。
これは、北東アジアで核兵器を持ってない国・地域を作って、そこには核兵器国は攻撃をしないという約束をすると。こうすれば核の傘がいらなくなる。これを進めていくことによって、段階的に、これができれば核兵器禁止条約に日本も参加できるんではないかと。

千秋 さん
これは、持ってないところは撃たないでっていう国際的な決まり?

鈴木 さん
そうです。国際的な条約。南半球は全部核兵器禁止条約で囲われてます。

千秋 さん
もうすでにあるんですね。

鈴木 さん
ええ。核兵器禁止条約と非常に似てるんです。中身もですね。持ってはいけないし、威嚇もいけない。ただ、核兵器禁止条約とは違うのは、核兵器を持ってる国々はすぐに廃絶しなくてもいいけども、非核保有国に対しては攻撃しませんっていう約束をすると。そうすると、核の傘はいらなくなると、こういうことですね。

チャンカワイ さん
傘だって、もともとそういう約束だったのに、分からないってなったら、この約束だって結局・・・なんかね。悔しいですね。これだけ被害者がいる国なのに、なんで叫ぶことができないんだって腹立ちますね。

千秋 さん
日本は、本当に核が大変だってことを言ったほうがいいし、それを言うためには、こういう会議とかには参加をしていったほうがいいっていうことなんでしょうね。

鈴木 さん
実際に政府ではない被爆者の方々とか、NGOとか、研究者は行って、特に被爆者の方々が現地で演説をされて、それがこの核兵器禁止条約の採択に大きな影響を与えたと言われています。

徳永 アナウンサー
「日本はどうするべきですか?」が本当に増えてきました。「理想を掲げずに現実を変えることなどできません。被爆国の責任って何でしょうか」。
それから、「日本は核を落とされても決して作らない、落とさないと宣言すればいい。核が使われること自体終わり」。
それから、平和ボケだっていう指摘をしてきている人ももちろんいます。どうしたらいいんでしょう。戦争被爆国の"責任"って何か。

首藤 アナウンサー
本当に、唯一の戦争被爆国としてできることって何でしょうか?

津屋 解説委員
ゴールは果てしなく遠いってことをまず認識して、そこに至るプロセスをまずどう作るかっていうのがすごい大事なんですよね。核兵器禁止条約にしても、非核兵器地帯の構想にしても、構想としては目指すべきところなんですけど、いまの事態をどうやってそこまで持っていけるかっていう筋道がない。でも、ないからといって、日本はそれを諦めていいのか。
核軍縮って亀の歩みのようにすごくゆっくりとしか進まないっていうことを理解して、世代を越えての語り部をつないでいくとかですね。それを世界に発信できるのは日本だけなんだから、その自覚を持って、我慢強く、諦めずにやっていく。それしかないと思いますね。

鈴木 さん
核兵器は絶対使ってはいけないんだっていうことを説得力ある形で語れるのは、被爆国・日本なんですね。その国が黙ってしまったり、核兵器はいいものだ、使えるものだって言ってしまうと、核兵器禁止はなかなか難しいです。唯一の被爆国であるっていうことは、そういうことを言い続ける、世界に発信し続けることが大事で、そのためには被爆国に来てもらいたいっていうのがわれわれの希望ですね。

千秋 さん
そういう考えは日本の政府にはあるんですか?

鈴木 さん
一応日本政府は言ってます。被爆地にリーダー来てくださいと。オバマ大統領は来てくださいましたし、いまもそう言ってますね。そこは禁止条約とつながってるところなんですね。

神保 さん
1つの条約とか方程式ですべての問題を解くことはできない世の中だと思うんですね。アメリカとロシア、そして、中国とロシア、アメリカとの関係、インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエル、それぞれ固有の問題があるわけで。

首藤 アナウンサー
問題が別々なんですよね。

神保 さん
そうすると、これでいきましょうと言ったところで、私たちは状況が違いますということになると、1万5000発ある核兵器の中でもそれぞれの成り立ちが違うということは、われわれの責任とは何かというと、それぞれの問題に個別的・具体的なアプローチを取っていくこと。特にわれわれの周辺にある北朝鮮の非核化、ここから核のない世界をスタートしなければいけないということではないかと思います。

首藤 アナウンサー
本当に、72年もたってこの状況ってなんかもどかしいですね。

千秋 さん
でも、言い続けなきゃいけないっていうのは分かりました。

首藤 アナウンサー
そうですね。皆さん、きょうはどうもありがとうございました。

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