2017年07月22日放送放送内容まるわかり!

"伴侶の死"とどう向き合う? 「遺族外来」に集まる心の声

乳がんの闘病生活を続けていたフリーアナウンサーの小林麻央さんが、先月22日に亡くなりました。夫の市川海老蔵さんがブログにつづる悲しみは、多くの共感を呼んでいます。 がんで亡くなる人が増える今、「遺族の心のケア」も課題。特に配偶者の喪失感や責任感は大きなものです。そんななか残された家族のケアを行う遺族外来や、家族を亡くした人どうしの語り合いが広がっています。伴侶の死とどう向きあうか。周囲はどう支えるか。深読みします。

今週の出演者

専門家

大西 秀樹さん(埼玉医科大学国際医療センター 医師)
宮林 幸江さん(自治医科大学看護学部 教授)
堀家 春野(NHK 解説委員)

ゲスト

吉村 崇さん(平成ノブシコブシ)
大沢 あかねさん(タレント)

今週のグラフィックレコーディング

グラフィックレコーダー
山田 夏子さん


がんの相談窓口(患者の家族・遺族も含む)

※がんに限らず、大切な人を亡くして心身の不調を感じている方は、お近くの心療内科や精神科の医師に相談してみてください。


首藤 アナウンサー
「遺族外来」。聞き慣れない言葉だと思うんですが、大切な人を亡くした方が相談に来る医療機関ということなんですね。おふたりはつらい別れ、ご経験ありますか?

大沢 さん
私はですね、本当に大好きな祖父を亡くしてまして、正直、まだ実感が湧いてないんですね。
もう5、6年たつんですけど、実感がなくて、不思議なもので。でも、最近、おじいちゃんと行った場所に1人で行ったりすると、そっか、もういないんだ、ってなって。いまになって悲しみが来て、本当に愛する人を失った悲しみってなかなか消えるものじゃないんだなって、最近になってようやく実感しますね。

吉村 さん
僕、おばあちゃんに育ててもらったんですけど、東京を出る時にけんかしちゃって、仲直りすることなく、東京出てすぐ亡くなった。僕の場合は時間がなんとか解決してくれましたけど、それはいまだに後悔してますよね。

首藤 アナウンサー
本当に誰もが当事者になることですよね。残される家族の悲しみについて、まず徳永アナウンサーのプレゼンを聞いてみたいと思います。


プレゼンテーション

徳永 アナウンサー
大切な人の死ってできれば避けて考えたいと僕も取材前は思ってたんですが、いざ調べたら、いま知ってよかったって話がたくさんあります。本当、ぜひきょう質問してください。
まずこのデータからご紹介します。

いま日本で、がんで亡くなってる方は年間およそ37万人なんですね。そのうちの21万人近い方は、配偶者をこの世に残して旅立っていってる。
その数だけ残された伴侶というのがいらっしゃるわけで、海老蔵さんもそのおひとりですし、今週のニュースでいえば大山のぶ代さんもおひとりですよね。たくさんいらっしゃるわけです。もう1つ、こういう言葉があるのを知っていますか?

「がん患者のご家族は第2の患者」という言葉があります。つまり、患者を支えるのは身体的にも精神的にも本当に大変だから、世の中はご家族も患者だと思うぐらい支えるべきですよねっていう思いで、こういう名前がある。
もし亡くなったら、悲しいだけでは済まないことも分かってきてます。

寝られない。食べられない。それから、お酒に頼る方。体壊しちゃう方も出てくるし、うつ病になる方もいらっしゃって、場合によっては自分で命を絶とうと考えてしまう人も中にはいる。

これはなんとかしなきゃいけないと、きょうお越しの大西先生はちょうど10年前から、遺族外来というのをやっていらっしゃるんですね。
自分の経験は知ってても、他人の経験って意外と知らないじゃないですか、私たち。
年間200人以上の方が先生のところにご相談にいらっしゃるそうで、今回取材をすると、実は悲しみを持ってる方が共通した経験をしてることが見えてきました。主なものをこちらに挙げてみました。

これは伴侶を亡くされた直後の方のケースです。もちろん悲しいんですが、

追い打ちをかけるようにつらいことが続いたという話が少なくない。何だと思います?実はこれです。
親戚からお葬式のあと、「その花輪の順番は何なんだ」。

大沢 さん
そこ?

徳永 アナウンサー
「なぜ私は座る位置が後ろなのか説明しろ」。
こういったことで、さらに傷つくっていう方、少なくないんだそうです。そんなこと私言わないよと思うでしょ。
でも、こんな言葉で傷ついたという方もいます。

「検診ってどれぐらい行かせてたの?」「食事どれぐらい気遣ってらっしゃったの?」。

首藤 アナウンサー
なんかちょっと責められた気に。

吉村 さん
うーん、なりますね。

徳永 アナウンサー
ご当人にとっては責められてるように感じますよね。あと、これもあります。

吉村 さん
それね。ずーっと言われるんですよ、それを。だから、いつ明るくふるまっていいのか、ここから脱出していいのか、分かんなくなりますよね。

徳永 アナウンサー
とりわけ現役世代の方に多いのが、「子どもちっちゃいんだから、あんたが頑張んなきゃね」とか。言いがちじゃないです?励ます時。

大沢 さん
言葉が見つからないから、「元気出して」「頑張って」とかって言いがちですけど、そっか、実はそれは傷ついてたんだ。

徳永 アナウンサー
むしろかけないほうがいい言葉だったり、こういう接し方のほうがいいというのがある程度分かってきてるので、このあとぜひ聞いてください。

それから、実は、あかねさんみたいなケースがこちらにもありました。この方は妻をがんで亡くしてちょうど1年。

ある日突然、悲しみが強く押し寄せてきたとおっしゃるんです。なぜか。桜を見たから。夫婦で毎年お花見をするのが楽しみだったから。桜を見ると、孤独感・疎外感が急激に増すんですっていう方なんですって。名前もあるんです。

一緒に行った思い出の地に行くとっていうのは、近いのかもしれないですよね。
そして、この方、もう1つこんな話をされました。街で亡くなった妻を見た気がした。追いかけてみた。家まで行くと知らない人の家で、人違いでした。こんな私はどうかしてるんでしょうか。

でも、これ、よくあることなんですって。名前もあって、好きな人を強く思う気持ちを「思慕」というんですけど、愛し合っていた人ほど、街なかで似たような人を見間違えるというドラマみたいなことはよくあることだそうで、この方にも先生が伝えたら、気が楽になってらっしゃった。

吉村 さん
自分1人だけじゃないと思ったら多少楽になりますね。

徳永 アナウンサー
そして、こんなケースもあるんです。

7年たって初めて遺族外来にやってくる方。

吉村 さん
7年?

徳永 アナウンサー
この方は中学校の先生をしてらっしゃいました。ご覧のとおり、いままでの人形に比べて笑顔ですね。自分も周りも、なんとか乗り越えてたように思い込んでました。でも、とあるきっかけで、

急に寝られない、やる気が出ない、悲しくてしょうがないというのが押し寄せたそうです。
直接のきっかけは、教え子のやんちゃな子の何気ない反抗的な言葉で、ふだんは全く気にならないことだったそうです。それがとたんに、ズシンと来たそうです。

聞くと、3人お子さんがいるそうで、子育てと仕事に毎日必死で、ちょっとずつストレスが、悲しみが襲ってきてたことに気付かなかっただけで。
ちょっとしたことであふれかえるんですって。先生の外来では7年後でしたが、取材を進めると、15年後、20年後に初めてつらいという声を上げる方もいらっしゃる。
いろんな方がいらっしゃる。大西先生はおっしゃるんです。

「ちゃんとみんなでケアする社会にしなきゃいけない」。知るべきことがたくさんあるという話なんですね。

首藤 アナウンサー
本当に知らないことだらけで、どうしても死の話って。

大沢 さん
ちょっと触れちゃいけないとか。

首藤 アナウンサー
ねえ。避けて通ってしまったり。

大沢 さん
あんまり考えさせすぎちゃいけないのかなって思っちゃいますけどね。

視聴者の声

茨城県・50代・女性
「写真の主人にいくら話しかけても返事が返ってこない。毎日がつらい」。

神奈川県・30代・女性
「自分の気持ちを誰も分かってくれない孤独感。自分だけ別の空間にいるような気持ち。生きる意味が分からなくなった」。

大西 さん
私も外来をやってると、ご遺族と話してて、こういうふうに言っている方、多いですね。本当に毎日がつらい。それから、生きる意味が分からなくなってしまった。非常に混乱されてる方々の診察をよくやっています。

首藤 アナウンサー
医療が必要なケースが多いということですか?

大西 さん
そうですね。まず死別という現象を考えなきゃいけないんですけど、愛する人の別れというのは人生の中でいちばん大きなストレスなんです。私たちはストレスを受けると、心と体に変調を来すということも分かっています。
まず体の面なんですけど、心臓病の疾患で亡くなる方が多くなるんです。それから、心の面では、うつ病になる人が多くなります。

うつ病になる人の割合なんですけど、一般の方は、3~7%ぐらい。これはアメリカのデータなんですが、死別後7か月だと、100人中23人がうつ病の診断基準を満たす。それから、死別後13か月、一周忌が終わってからですね。それでもまだ16%。一般の方より非常に高い。それだけ心に影響があるということを示してるわけですね。

首藤 アナウンサー
宮林さんは、医療とはまた違って、ワークショップなどで、グループ形式で遺族の方の声に耳を傾けてらっしゃる活動されてるんですけれど。どういう声が届いてますかね?

宮林 さん
あそこに出してくださった8つの事例は、どれも何度もお聞きしてる訴えですね。

大沢 さん
そういう方って増えてるんですか?年々。

宮林 さん
増えていますね、年々。そして、少しずつ悲しみが深くなってきているかなっていうふうに、20年近くやっておりますが。
お話しする時に声にまずならなくて、涙、涙だったり、あと、どんなに生活がうまくいかないかというお話とか聞いてると、配偶者を亡くされた方、子どもさんを亡くされた方、親を亡くされた方に分けたとすると、以前は、配偶者とお子さんの方はそれなりに深かったんですが、いまは、親を亡くされた方も同じく深いという方がここ3~5年ぐらい、増えてきていますね。

視聴者の声

東京都・50代・女性
「抗がん剤治療をしないほうがよかったのかなと後悔することがある」。

神奈川県・50代・男性
「もっと優しい言葉をかければよかった。もっとありがとうを言えばよかった。後悔することばかり」。

吉村 さん
でも、後悔しますよね。

大西 さん
します。がん患者さんのご遺族では、後悔が実はいちばん多いんです。東京都の50代の女性も、神奈川県の50代の男性も、すごい優しい方だと思うんですね。実際、本当に一生懸命やってるんですよ。治療選択も一緒に考えて最善の選択をしてるんですけど、その結果、結局死が訪れますよね。だから、後悔する。治療をしないほうがよかったのかなと思ってしまってる。
神奈川県の50代の男性も、おそらく優しい方だと思います。優しい言葉をかけてるはずなんだけど、あとから考えると、あの場面でもできたんじゃないか、この場面でもできたんじゃないかと思って悲しんでるんですね。

吉村 さん
いいこともいっぱいしたんですけど、負をチョイスしちゃいますよね。

大沢 さん
先生は、後悔の言葉が患者さんから出てきた時に、どういう治療というか、どういう声がけをされるんですか?

大西 さん
まず、患者さんの話を聞きますね。それで、どのようなケアをしてきたか、それから、看病の時だけじゃなくてふだんの生活、知り合ってから結婚して、病気になって亡くなるまでの生活をずっと聞くと、ほとんどの方がすばらしい伴侶としての役割を果たしていらっしゃるわけですね。
ですから、それを聞いてから、「あなたはちゃんとしっかりやってきたじゃないですか」ってお互い確認するんです。それが私のやってる、いわゆる精神療法というんですけどね。その1点だけに集中しちゃうとうまくいかないこともあるんですけど、その1点じゃなくて全体像を見つめると、あなたは問題ないと僕は伝えてます。
皆さん一生懸命されてますし、優しいですもん。

大沢 さん
とにかく、患者さんの話をずっと聞いてあげるっていうことが大事なんですか。

大西 さん
そうですね。聞いてるうちに僕もだいたい分かってくるし、ご遺族自身も自分が何をしてたのかっていうことが理解できてくるんですね。

堀家 解説委員
いま大西さんがおっしゃっているのは、医療的なケアが必要なケース。あと、先ほど宮林さんがおっしゃった、経験者がいろいろ語り合う。

宮林さんがやってらっしゃるのが「がんのピアサポート」というものなんですけれども、「ピア」っていうのが仲間という意味で、患者さんや家族の悩みを共有して、体験者が支え合いましょうという取り組みです。 いろんな段階があると思うんですけれども、まずどうすればいいのと、きっと皆さんお思いになると思うんですけれども、

その時に、がんの相談支援センターというのがあります。

大沢 さん
そういうところがあるんですか?

堀家 解説委員
いま全国に(がん診療連携)拠点病院という病院があるんですけれども、その中に、何でも相談していいんですね。がん相談支援センターというのがあります。
まずはここに相談していただいて、そうすると、ピアサポート、経験者どうしが語り合う場、どこにありますよ。あと、患者会をやってらっしゃるケース、いろいろありますので、そのあたりをきっと紹介していただけると思います。
それでもどうしても医療的ケアが必要だということはありますので、その時には大西さんがやってらっしゃるような専門の医療機関があると。いろんなケースがあるんですが、この3つに分けて考えていただければいいのかなと思います。

大沢 さん
遺族外来というのは、どれぐらいいま広がってるものなんですか?

大西 さん
僕みたいに遺族外来って名付けて診療してるところは、そんなに多くはないんですけど、おそらく日本全国のがんに携わる精神科医とか、一般の精神科医、心療内科医は診察をしてると思いますね。実数はよく分かってないんですけどね。それが分かるようになればいいかもしれません。

吉村 さん
そうですよね。僕の勉強不足もそうですが、全く知らなかったですね。


グラフィックレコーディング

グラフィックレコーダー
山田 夏子さん

徳永 アナウンサー
視聴者の方の声を、ご遺族の体験談と周囲の方の声をこうやって分けて描いていこうと思ったら、経験者の方の声が圧倒的に多い。

視聴者の声

「かわいそうと思われたくないけど聞いてほしい」。

「いまだに友人に父の死を話せていません」。

「最後の望みを聞いてあげられず残念」。

徳永 アナウンサー
悔やまれる思いというのがやっぱり来てます。それから、

視聴者の声

「自分だけではないと分かると少し楽」。

「夫を亡くして6年たちました。自分は幸せになってはいけないと思うし、周りも本音はそんな感じです」。

大沢 さん
大切な人が亡くなったご遺族に、私たちができることって何かあるんですか?

大西 さん
あります。いちばんのケアを行うのは周りの人たちですよね。ですから、何らかの声かけとかしなければいけないなと思うんですけど、実は、大事なことは、いくつかポイントがあるんですけど、

まず、そばにいて誠実に話を聞くことなんですね。話すことじゃないんです。聞くことがいちばん大事です。
それから、声をかけるとすれば、例えば「元気?」なんて声かけられると、すごいつらくなっちゃうので。

大沢 さん
「元気?」、言っちゃいがちですけど。

吉村 さん
これ、ものすごい難しいですよ、入り口。

大西 さん
難しいと思います。

首藤 アナウンサー
最初に何て声かけるのか。

吉村 さん
「どうですか?」って聞いちゃいけないのかなとか、それ触れちゃだめなんだろうなとか、いろいろ考えての「元気?」っていう。

大沢 さん
私も祖父を亡くした時に、触れちゃだめなんだろうな感がすごくて、「大変だったわね」みたいな。でも、逆にちょっと聞いてほしいなっていう思いも、どっかにあったりするんですよね。

大西 さん

役に立たない援助というのがありまして、ご遺族を目の前にして、何て話していいか分かんなくなっちゃって、「あなたがしっかりしないとだめよ」とか言ってみたりとか、「あなたよりもっと苦しんでる人もいるんだから」と言ってみたりとかいう人がいますね。

大沢 さん
それはちょっと傷つくな。

大西 さん
それから、「あなたの気持ちは分かります」。

吉村 さん
これ、だめなんですか?

大西 さん
どうしてかっていうと、僕たちは他人ですから、ご本人の気持ちは分かんないんですよ。聞いたこと以外は分からないんです。本人の深い心の苦しみは分からないんですね。
ですから、私も実は、「先生、私の気持ち分かりますか?」って聞かれたこともあります。

首藤 アナウンサー
先生は?

大西 さん
「分かりません」って答えました。「分からないから聞いてるんです」って。
僕は正直に相対するのがいいと思ってるので、分かるかって言われれば分からないんだけど、聞くことによって近づくことができますとだけお伝えしています。それが大事なことかなと思っています。

大沢 さん
1回の診療で結構相当長くお話しするんですか?

大西 さん
そうですね。初診が30分か1時間以内で、2回目からは15分程度の診察になりますけど、大事なことは、継続的に。
だんだん変わってくるんです。最初のうちは本当につらい思いがあって、そのあと四十九日過ぎると周りの人がいなくなっていく。だんだんね。その時にまたさみしくなってきて、1年たつと、今度周りから「元気になった?」って聞かれたりね。そういう時の対処法をお伝えしたりしなきゃいけないので、継続的な援助が大事だなと思っています。

宮林 さん

例えば大事な方を亡くしてすぐに、4つの反応が私たち日本人にありまして、片方のてんびんのほうに頑張ろうという気持ちが載っかっていますので、頑張ろう、頑張ろうと思って頑張ってはいるのに、「あなたがしっかりしないとだめ」って言われると、こんなに頑張ってるのにあなたは分からないでしょとか、なっちゃうんですね。

大沢 さん
なっちゃいますね。

宮林 さん
それから、「あなたより苦しんでる人がいる」と言われても、私がいちばんつらいから、いまここにお話しに来てるのに、そんなこと言われたらもう来ませんみたいな気持ちになるし、あと、「あなたの気持ちは分かる」と言われても、「あなた死別経験してますか?」みたいにおっしゃられてしまう。

吉村 さん
死別経験された方だけじゃない、周りの方々もこれを知っとかないといけないってことですよね。

大西 さん
われわれみんなが知ってないといけないんです。

宮林 さん
常にどちらかが動いていて、こちらは頑張ろうというてんびんが上がっていて、でも、そうは言えども、時々思いだしてしまって、いとしい、恋しい思いが自分のコントロールに関係なく思いだしてしまって、はらはら涙が流れるというようなことがあったり、それから、大事な人を亡くしますと、自分から誰とも会いたくないとか、そんな気持ちになるのが特徴的ですね。
そのことと、もう1つは、すべてがうつとそっくりで、何をするにも相当自分で頑張らなきゃという、自分に言い聞かせないと動けないという、この2つがてんびんに載っかってて、1日のうちでてんびんが行ったり来たり。
こちらは現実志向、こちらは喪失志向で、それが行ったり来たりすることがあって、そんなに変わる自分もちょっとつらいということで、これでいいんでしょうかというお話はたくさんありますね。

大西 さん
僕たち考えなきゃいけないのはうつ病ですね。

例えば、死別で誰かを失ったから悲しい。周りの人もそれは当然よと思ってることが多いんですけど、実はうつ病にり患してることがあるんですね。
ちなみに私どもの外来では、つらいから話を聞いてほしいって言ってくる方がほとんどなんですけど、その中の4割はうつ病なんです。

吉村 さん
かなり高いですよね。

大西 さん
どうやって見分けるかっていうと、ここにうつ病の診断基準というのがあります。ここにある赤いマルが大症状というんですけど、このどちらかの1つがあって、9項目中の5項目が2週間続いた時はうつ病と診断します。われわれはこれを使って診断して、死別でつらくて来たんだけど、実はあなたはうつ病にかかってるから、抗うつ薬で治療しましょうねっていう話をしています。

大沢 さん
ちょっといいですか?話それちゃうかもしれないんですけど、例えば、仕事もできない、っていう人も多くなってきますよね。そういう時の支援ってまだ現実的にはないんですよね。

首藤 アナウンサー
大沢さんの質問と似たメールが来てるんですけど、

視聴者の声

東京都・80代・男性
「精神的なサポート体制も重要ですが、経済的なサポート体制も整えてほしい」。

千葉県・30代・男性
「幼い子どもが2人いるので金銭面が心配。サポートしてもらえる制度作りが必要だと思う」。

吉村 さん
難しいですよね、経済面は。

堀家 解説委員
すごく難しいんですけれども、例えばがん患者さんの場合でいうと、いま3分の1の方が働き盛りの方なんですね。なので、配偶者の方も、もちろん経済的な厳しさですとか、仕事を辞めざるを得ないっていうこともありうるでしょうし、あと、お子さんの教育費がかかると。いろんなことを不安に思ったり、相談したいって思ったりすることがあると思うんですけれども、実はさっき出しました、がん相談支援センターは、ご家族の方にとっても、就労の相談もできるという場面にもなってます。
ただ、いま実際これを利用したことがあるという患者さんって7.7%しかいなくて、あまり知られていないと。せっかく作っても使われないというのは意味がないので、がん相談支援センターに相談してみるというのがいいと思います。

大西 さん
がん拠点病院にはすべて備わってるんです。

大沢 さん
知っておくこと、大事ですね。

吉村 さん
友人が勧めて行くことも大丈夫なんですか? 周りの。

大西 さん
大丈夫です。例えば、私どもの病院にかかってなくても、かかることができます。

堀家 解説委員

ホームページですとか、電話番号もありますので。
まずはこちらで、自分の近くの拠点病院ってどこかしら、相談支援センターってどこかしらというのをまず調べていただいて、連絡を取るということがいいかなと思います。

大沢 さん
悩んでる方多いですよね、きっとね。

徳永 アナウンサー
ツイッターを整理していると、増えてきたのは、周囲の方で、なんとかしてあげたいという人の声です。いま言い方ってありましたけど、どうしたらいいんだろうと。難しいよねと。それを知りたいっていう方がどんどん増えてきてます。

首藤 アナウンサー
具体的な声のかけ方をぜひ教えていただきたいんですけれど。これから、お盆も前で、親族が集まる機会も増えるかと思うんですが、どういうサポートができるのか。

宮林 さん
遺族の方は頑張って、頑張って、頑張っていらっしゃるんですね。だから反対に、「頑張って」ではなくて、「頑張ってるんですよね」って、「あまり無理しちゃだめですよ」とか。
あとは、例えば奥さんを亡くされてれば、「ゴミは大丈夫ですか?」。奥様だったら、大きなものを運ぶとか、電球の取り替えとか、具体的に「こんなことできますか?」と言えたほうがいいですね。

大沢 さん
「おいしいもの買っていこうか?」とかはどうですか?一緒においしいものでも食べよう、みたいな。

宮林 さん
食べてないことが多いので、それはありがたいです。

大西 さん
煮物を持ってきてもらったらうれしかったとかね。

首藤 アナウンサー
ちょっとおせっかいすぎるかなって思っちゃったりするんですけど、そんなことないですか?

大西 さん
さり気なく持ってきたみたいな形。

吉村 さん
持ってきましたよ!っていうのはだめ?さり気なさが大事?

大西 さん
ちょっと作ったから食べてみたいなね。タッパーに入れて持ってきたみたいなね。

大沢 さん
おいしくできたからとか。そっか、さり気なさが大事なんですね。

宮林 さん

どんなサポートがあるかというのを、3つに分けて考えたら分かりやすいかなと思いました。情報的サポートは、いままで大西さんがおっしゃったように、私どものところにいらっしゃる方も同じなんですが、私って正常ですか?って。返事が返ってこないのが毎日つらくてつらくて、こんなことずっとやってていいんでしょうかとか、あとは、生きる意味がなくなったというのは、配偶者を亡くした方では本当に多いです。何が正常で何が正常じゃないかという情報ですね。

吉村 さん
情緒的なサポート。これ分かんないですね。

宮林 さん
遺族の方は、人に会いたくないっていう気持ちもあるし、心配してもらいたいという2つの心があるので。

大沢 さん
難しいなあ。そういう場合はどうすればいいんですか?

宮林 さん
どっちがいい?って言ってくれれば。
例えば私が行って、「きょうはいいって、断ってくれても全然かまわない」って言うと、結構揺れ動く気持ちがありますので、そこに合わせて、揺れ動くの分かるわって。だから、ちゃんと言ってもらったらいいなっていうふうに言って、つらいですよねっていうふうに、そうだと思うっていうのが情緒的サポート。
道具的サポートは、配偶者を亡くした方にとって、大事だと思います。手とか足とかの代わりになる。うつに近いですから、どこに行くにも勇気がいりまして、よっこいしょって、よし頑張るって自分で思わないとなかなかできないものなので、だから、「いまから何時間後に買い物行くけど一緒に行く?」とか。それは足ですよね。

大沢 さん
すてきなお店見つけたから一緒に行こっか、とか。

宮林 さん
そうそうそう。あと、ゴミはここに置いてくれれば、自分は何時に出すから一緒に出すよとかね。

吉村 さん
ちょっと変な世界じゃないですか、芸人の世界って。結構デリカシーない人がいっぱいいるんですよね。それで結構助かった時もあるんですよ。「お前、いつまで暗くやってるんだ、お前のせいだろ全部」みたいな。逆に言ってもらって、「いや、ちげえよ」みたいな。

大沢 さん
そっか、そっか。

吉村 さん
っていうのも、意外と心が楽になるっていうパターンもあるんだなっていうのが分かって。

宮林 さん
あります、あります。

大西 さん
かなり近しい関係の場合には、それは効果的な場合があります。
あとは、「あなたにかける言葉がないわ」って言ってもらったとかね。言葉がない時あるんですよ。僕も外来で話をしてて、ご遺族のあまりにもつらい状況を聞いて言葉にならない時があるんですけど、「いま言葉になりません」と私もお話ししますし。ご遺族も、「言葉にならないって言ってもらってよかった」とか、言葉じゃない、ただ抱きしめてもらってよかったっていう人も。

大沢 さん
先生も実際そういう、手を握ったりとか。

大西 さん
それはさすがにないですけど、私の場合は。

吉村 さん
そうですか?してたら、僕、これ上げる予定だったんですけど。「ちょっと待った!」ってなりましたけど、大丈夫ですね?

大西 さん
大丈夫です(笑)。

大沢 さん
でもね、本当にそういう感情になる気持ちはありますよね、きっと。こみ上げてきて。

徳永 アナウンサー
当事者の方の経験がいまも多いです。徐々に増えてきたのは、周りがどうするべきかを考える声。社会はもっとどう変わるべきか。
例えば、「遺族外来というのを6年前に知ってたら状況は違ったかもな」という、ご経験を基に言ってる方。それから、「10代で父をがんで亡くしました。遺族外来を受診してみたいですが、遠いです。増えてほしい」。
それから、「もっと体験した人が話せる場が必要じゃないでしょうか」。山梨の70代の方は、「私、ボランティアで傾聴しています」。聞く場が必要だっていう方も増えてます。
それから、「核家族化が進んで、親類がいないんですよ」。社会のいまのあり方を照らし合わせて、考え始めている視聴者の方、増えてきています。

首藤 アナウンサー
核家族、そういう社会の中で、私たちはどうすればいいのかを伺いたいんですけれど。

大西 さん
社会が持続的に発展していかなきゃいけないと思うんですけど、そのためには、ご遺族、つらい思いしてる人に対して援助を進めていかなきゃいけない。そのためにはどういう言葉かけがいいのかとか、どういう態度を取るのがいいかというのを、私たち1人1人がもっと勉強して、深めていかなきゃいけないなっていうふうに思っています。

大沢 さん
これから高齢化社会で、たぶん、もっとこういう機会って増えてしまうじゃないですか。そういう時に、制度みたいなものって、何か充実させたりする動きとかっていうのはあるんですか?

堀家 解説委員

全体的につながりがいま薄くなってるっていうことはあるんですが、まず遺族に対するケアについて言いますと、がんについて言うと、これまで診療体制、拠点病院を整備しましょうということを進めてきたんですけれども、ようやく今回、遺族のケアというのを初めて充実させていきましょうという文言が、計画に入っていますので、まだまだ不十分なんですけれども、これから進んでいくのではないかなというふうに思います。

宮林 さん

ちょっと前になりますが、私自身も遺族になったので、遺族ケアを経験しました。海外の遺族ケアも、気になりまして。
イギリスの場合をご紹介しますと、「クルーズ」という遺族ケアの組織が全土にあります。カウンセリング、ボランティアの紹介をしたり、ボランティアの育成をしたり、社会へのいろいろなキャンペーンもしているということで、国全体が取り組んでる。

吉村 さん
日本はちょっと後れてますか? 世界に比べて。ケアというのは。

宮林 さん
かなり後れてる。

大西 さん
まだこれからですね。

堀家 解説委員
ピアサポートというのが1つのきっかけかなと思います。宮林さん自身もやってらっしゃるように、皆さんこうなった時って、自分がおかしいのかしらとか、ほかの方はどうしてるのかしら、同じ経験者の方はどうしてるのかしらっていうのを知りたいっていう声がすごく多いんですね。このピアサポート事業っていうのを、これからもっと充実させていかなければならないというふうに思います。

大沢 さん
知っておくだけでもね。

首藤 アナウンサー
違いますね。なかなか知る機会を、自分から作らないといけないというのもあるかと思うんですけど。

大西 さん
私どもも発信していかなきゃいけないなと。

徳永 アナウンサー
首藤さん、当事者の方が、この言葉で助かったっていうツイートが増えてきました。

視聴者の声

「『グアム旅行に一緒に行こう』と言ってくれてうれしかった」

「『いつでも帰っておいで』という親戚のひと言がうれしかった」

「『頑張れ』と言われるより、『ごはん食べてる?』っていう言葉がうれしかった」

「ひよっこの鈴子さん、『大変でしたね』と深い声で言う。あれがすべてではないでしょうか」。

大西 さん
死別っていうのは人生でいちばんつらい現象だっていうことを、まずわれわれが知っておくことですね。そういうつらい人々に対してどのような援助をするのか、もっとみんなで考えていくようにしていかないといけないと思いますね。

大沢 さん
社会全体で。考えたくなかったですけど。

吉村 さん
ちょっと不謹慎なのかなとか、そういうのもあったんですけど、そこは結構考えないとだめですね。

大西 さん
毎日じゃなくてもいいけど、時々は考える。避けて通れないことですから。

宮林 さん
結構つらいことなので、いつもは考えなくてもいいんですけれども、そういう時がいつかは来るんだなと。誰にでも起こるっていうことはしっかりと。

首藤 アナウンサー
しっかりと受け止めて。ありがとうございました。

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