2017年06月24日放送放送内容まるわかり!

うちの娘がアダルトビデオに!? どうする"出演強要"問題

先月、48歳の男が女子高校生をアダルトビデオ(AV)に出演させる目的で勧誘したとして逮捕されました。男は5年間で200人の女性と契約を結んでおり、多くの女性がAV出演を強要されたと見られています。 いまこうしたAV出演強要の被害が相次いでおり、取材すると"ごく普通の"女性たちが望まないAV出演に追い込まれる実情が見えてきました。女性を追い詰める巧妙な手口とは?被害女性に周囲はどう向き合えばいいのか?深読みします。

今週の出演者

専門家

伊藤 和子さん(弁護士)
小西 聖子さん(武蔵野大学 教授)
森 達也さん(作家・映画監督)
増田 剛(NHK 解説委員)

ゲスト

林家 正蔵さん(落語家)
相田 翔子さん(歌手・女優)

今週のグラフィックレコーディング

グラフィックレコーダー
山田 夏子さん


AV出演強要被害・相談窓口

NPO法人 ライトハウス
ホームページ:http://lhj.jp
(NHKサイトを離れます)
メール:soudan@lhj.jp
電話:0120-879-871(月-金 午前10:00~午後7:00)
LINE:LH214(表示名:ライトハウス)
ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS)
ホームページ:https://paps-jp.org
(NHKサイトを離れます)
メール:paps@paps-jp.org
各地の警察署
警察相談専用電話:#9110
(月-金 午前8:30~午後5:15 ※各都道府県警察によって異なります)

首藤 アナウンサー
街で若い子に聞いてみると、スカウトが日常的だということに驚いたんですけれども、そこからアダルトビデオの出演強要につながるっていうのはどう思われましたか?

相田 さん
私も娘がいるので、夢を抱いて、そういうところにつけ込んで言われたら、行っちゃうんじゃないかなっていう不安はすごく、親としてもありますよね。

正蔵 さん
繁華街で信号待ちをしていると、それらしき男の人がよく女の子に声をかけているという光景を目にしますが、大概が素通りしたりとか断ったりしている。ただ、AV出演までっていうのは、どうしてそこに行き着いちゃうのか。断れないものなのかなと、その手前でって思いますけどもね。

首藤 アナウンサー
どうして最終的に脱ぐことになるのか。まずは徳永アナウンサーのプレゼンです。


プレゼンテーション

徳永 アナウンサー
おはようございます。何となくひとごとだと思いたい願望もあるんだと思うんですよね。でも、そうも言えないんじゃないかという実態も見えてきました。まず、これです。

アダルトビデオ業界って、分かっているだけで1年間に700億円のお金が行き来するぐらいの産業に、なっています。正蔵さん、これ。毎月2500タイトルが発売されています。

正蔵 さん
いまなんで「正蔵さん」って言ったの?(笑)

徳永 アナウンサー
いやいや。なんかびっくりしません?日割りにすると、単純計算80本近くです。分かっているだけで。新しく。きょうも80本、あしたも80本発売されている。

正蔵 さん
そんなにですか?

徳永 アナウンサー
そうなんです。ここまで多いと、悪質な業者というのも出てきているようで、被害の相談が急増しているんです。

実は、支援をしているNPOに寄せられている、意に反してAVへの出演を強いられたという相談は年々増えていて、去年は100件寄せられているんです。
手口を取材していくと、自分が二十歳のころに本当にだまされないか、自分の大切な家族は本当に大丈夫なのかと、私はちょっと不安になりました。その典型的な手口をこの模型でご説明していきます。
主人公はこの子です。

深読華ちゃん、20歳。地方からこの春上京したばかり。郊外のアパートに1人暮らしです。実は、上京したての女の子が狙われるというケースも多いんだそうです。
AV出演を強要するスカウトマンが、いきなり「AV出ませんか」とはさすがに言いません。どうやって声をかけるかと調べていくと、こんなのが多いそうです。

「君、かわいいからアイドルにならない?」。

首藤 アナウンサー
アイドル?ついていかないかな。

徳永 アナウンサー
「読者モデルになりませんか。写真を1枚撮って、それが雑誌に載るだけです」。

相田 さん
ちょっと気が楽ですよね。

首藤 アナウンサー
ちょっとハードルが下がる。

徳永 アナウンサー
「カットモデルをやってくれませんか。うちの美容室で、無料で髪を切らせてください。カタログに載るだけですから」。

正蔵 さん
カットモデルだったら、もしかしてね、気軽にいいですよって言っちゃうかもしれない。

相田 さん
えっ、これってちょっと。行ったことあります。

徳永 アナウンサー
取材をすると、渋谷だとアイドルと声をかけることが多いそうで、表参道へ行くとカットモデル、ギター持ってる子にはミュージシャン。いろいろスカウトマンは声のかけ方を変えているそうです。

首藤 アナウンサー
相手に合わせて。

正蔵 さん
スカウトでもって私アイドルになりましたっていう子も、結構いるじゃないですか。

徳永 アナウンサー
本当にちゃんとスカウトしてる事務所もあるわけですよ。
でも、強要するために誘ってるところもある。数字を見るとびっくりするのは、内閣府の調査です。

「モデルやタレントにスカウトされた経験がある」と答えた人のうち、詳しく話を聞いたことがある人がどれぐらいなのか。

首藤 アナウンサー
3割近い。

徳永 アナウンサー
みんな素通りしてるイメージがあるんですけど、4人に1人は話を聞いたことがあると答えている。

正蔵 さん
詳しく話を聞いちゃうんですか。

徳永 アナウンサー
いるんです。

読華ちゃんも、スーツ姿の男の話を何となく聞くことになり、行った先は聞いたことのない芸能事務所です。でも、芸能事務所自体が初めてな読華ちゃん。恐る恐る行ってみると、こんなのが待ってました。
きれいなオフィス。女性のスタッフ。手には知ってる雑誌。有名なモデルさん。

「あの子育てたのはうちなの」。うそです。

首藤 アナウンサー
女性スタッフもいるんですね。

徳永 アナウンサー
女性が巧みに声をかけます。そして、あなたはもっと輝けるから、うちの会社持つから、エステに行っておいで。美容室だってうちの会社で持つから。

デビューの準備をしよう。どんどんたたみかけてきます。

相田 さん
怖い。

徳永 アナウンサー
宣伝用だから。プロを用意したから、写真を撮っておこう。プレゼン用だから、社内の。水着の写真を撮る子も中にはいるそうです。
読華ちゃんもだんだんと警戒心が和らいできて、話を聞くことになったんですが、詳しく話を聞き始めたら、なかなか抜け出せない現実が見えてきます。
この先何が待っているか。一気に契約の交渉です。

あなたのことを知らないで契約するのは申し訳ない。ちゃんとしたいから個人情報を教えてください。学生証をコピーさせてください。
契約を結びましょう。

この契約書を読んでサインしてください。

正蔵 さん
上京したてのお嬢さんがそこまでの契約書をよく読んでっていうのは、なかなか理解するのも大変でしょ。

徳永 アナウンサー
事務所の人は言います。ざっと読んでおけばいいから。困ったことがあったら、あとでもいくらでも相談して。仕事は選べるから、原則って言ってきます。そして、ここに。

首藤 アナウンサー
「成人向けである場合も含め」。

徳永 アナウンサー
男性誌のグラビアとかも広い意味では成人向けだからさ、などと言葉巧みに説得をしてきます。
さすがの読華ちゃんも、これはとちゅうちょをするんですが、スカウトマンたちはとにかくサインするまでなかなか帰してくれない。熱意を持って説得をしてくる。昼が夜になり、夜が深夜になり、終電近くになってきた読華ちゃんはこれがよぎります。

サインすれば帰れるからと言われて、ここにサインをします。

この日は夜遅くにおうちに帰ります。 数日後、「仕事が決まった」と連絡が入り、現場に来てくださいと言われます。ここで行かなきゃいいんじゃないかって僕は思ったんですけど、全員が拒むわけではないそうです。

実は責任感の強い子ほど、親に心配をかけたくない。友だちに恥ずかしくて言えない。だから、自分で現場に行って、嫌な仕事だったら相談して断ればいいと思って。

首藤 アナウンサー
真面目ですね、読華ちゃん。

徳永 アナウンサー
現場に行くのですが、行ったら最後です。最も悪質なケースでは、こんな現場が待っています。

いきなりです。「さあ、服を脱いで」と言われます。当然読華ちゃんは拒みます。事務所の人に相談をします。すると、事務所の人の態度ががらっと変わります。
「これだけのスタッフが君のために朝から働いているんだ。当日キャンセルをするって、それは人としていいのかい?この人たちがごはん食べられなくなってもいいのかい?」

首藤 アナウンサー
胸が苦しくなりますね。

相田 さん
ねえ、そんなこと言われたら。

正蔵 さん
だってそれはエッチなことをするわけでしょ。

徳永 アナウンサー
強要されます。

正蔵 さん
でも、嫌だって言えば。仕事を選べると。

徳永 アナウンサー
言いましたよね。「言ったけど、読んだよね。『契約違反を起こし、損害を与えた場合は、損害賠償を請求できる』と書いてある契約書に、君はサインをしたよね。」
実例では、事務所というところから、本当に2400万円近く裁判を起こされた女性もいます。
それでも拒む読華ちゃんに事務所は言います。「親に請求したっていいんだよ。君の個人情報を全部把握してるからね。」把握してるといえば、こんなものもあった。

「あの時、水着の写真を撮ったよね。データはうちが持っているよ。」「さあ、脱ぐの? 脱がないの?」
読華ちゃんは、1度だけならと撮影に臨みました。でも、1度だけと思って臨んでも、同じパターンで2度、3度強要されるケースもあるそうです。
相談の件数は去年100件です。でも、声を上げた人だけで100件です。実態は分かっていません。

正蔵 さん
微妙な問題ですもんね。もしかして、今後の人生でうまくいかなくなってしまうことがたくさんあるから、ここは1つ黙ってようかなってことになっちゃうんですか?

伊藤 さん

私も2013年ぐらいから関わるようになって、撮影断れるの?っていうご相談が最初に来ました。そこから、私も非常におかしいなと。違約金を払えと言われて、無理やり出させられてしまうっていう被害が非常に問題だと思いましたので、相談を始めるようになって、それで増えてきたっていうことですね。
昔はそういう被害あったと思うんですけれども、たぶん泣き寝入りして、どこにも相談できないから、何ともならないっていう方が多かったんじゃないかと思うんですね。最近こういった政府の対策も進んできたので、ご相談に来られる方が増えた。

相田 さん
どちらに相談したらいいんですか?そういう時。

伊藤 さん

相談窓口、こういうところがありますね。私は弁護士なんですけども、法律事務所に直接来られる方もいらっしゃいます。弁護士に相談すると、比較的いま、撮影の前だったら待ったをかけるっていうことができやすくなってはきたんですね。

正蔵 さん
撮影してしまったら?

伊藤 さん
なかなか難しいです。
撮影したあとってものすごく難しくて、撮影したんだけれども販売してほしくないっていうのが、なかなか認められないことが多いですね。

正蔵 さん
もう撮影してしまったから。

伊藤 さん
はい。無理やり撮影させられたって言っても、なかなか止めてもらえないっていうことが多いんですよね。そうすると、ずっとビデオが出回ってしまいますから、2次使用、3次使用、いくらでもできるので、5年前、10年前のがいまだにっていうような方も結構いらっしゃって、すごく大変な被害ですよね。

正蔵 さん
彼女の人生で、恋愛とか結婚とか育児とか、いろんなことでいろんな問題も起きてきますよね。

伊藤 さん
そうですね。結婚相手に知られたらどうしようとか、子どもが知ったらどうしようって、本当におびえて、何もできないで引きこもってらっしゃる方とか、それから、自殺された方もいらっしゃるんですね。被害を苦にして。

相田 さん
ずっとドキドキを背負って。

伊藤 さん
そうですね。

首藤 アナウンサー
でも、契約って断れないものなんでしょうか?

小西 さん
若い女の子が何人もの男の人に取り囲まれて、あんたのせいでみんなが大損害だ、そういうこと考えないのかみたいに言われた時に、ノーと言えばいいって皆さんおっしゃるんだけど、そういう時にノーってとても言いにくいですよ。本当に真面目で、責任取らなくちゃっていう気持ちにさせられてますから、ますます言えない。

正蔵 さん
でも、何となくその気持ちは分かるんですよ。っていうのは、撮影の現場だと、通常の撮影でも、自分が迷惑かけてるんじゃないか、自分の芝居ができないからとか、自分の何かでほかのスタッフに迷惑をかけてしまうのはっていう気持ちが起きてしまう。

小西 さん
でも、そこにいくまでも、本当にマインドコントロールに近いような形で、時間をかけてもっていくというケースもあります。
例えば、最初にアイドルっていうのが出てましたけれど、こうやってみんな女優さんは有名になっていったんだよっていうのを、それだけ聞いたら、皆さん非現実的だって思われますよね。だけど、親とか友だちとかの関係を断たれてしまって、事務所に入ったことも言えなくなってるし、相談できない。そこで、繰り返し繰り返しそういうことを言われると、だんだん本当にその道しかないっていう気持ちに人はなっていく。そういうのには結構人間は弱いです。

増田 解説委員
私、政治が専門なんで、政治の立場からお話ししますけれども、本当にこの被害の深刻さ、問題の実態が広く知られるようになって、1、2年なんですけれども、政治の世界でもこれはなんとかしなくちゃならないという動きがいま出てきてる状況なんです。
ことし3月、政府は関係省庁の局長級による対策会議を設置して、先月になって政府としての今後の対策を取りまとめました。

まず、各都道府県の警察にAV出演強要問題を担当する専門官、これを初めて設置しました。それと、警察・検察は非常に積極的かつ厳格な取り締まりを推進すると。要は出演強要を犯罪行為と見なして、悪質な業者はどんどん摘発していこうということですね。
もう1つ、被害を未然に防止する対策も重要だということで、毎年4月、地方から上京する学生が多い季節ですけれども、4月をAV出演強要被害防止月間に位置づけて、この期間に広報啓発活動を集中的に実施するということになってます。
もちろんこれらの対策だけで十分とは言えないのかもしれないし、実効性もまだいろいろ問題あるかと思うんですけれども、曲がりなりにも一応政府、政治の世界も、ようやくこの問題に真剣に向き合おうとし始めてるっていう段階ではあるんですね。

首藤 アナウンサー
ツイッターでもいまいろいろ来ているようなんですけど。徳永さん。

徳永 アナウンサー
来てる中で意外と多いのが、「自己責任」っていうキーワードがすごく、正直多いです。

視聴者の声

「うまい話には必ず裏がある。常識ですよ。平和ボケしている世間知らずの子が多すぎる」

「普通の人はモデルなんかなれるわけないでしょ。だまされるほうが頭悪いの」

「よく考えろ。スカウトなどありえない」

東京都・20代・女性
「卑劣だと思うが、その手のスカウトにまんまと乗せられた被害者の危機意識にも問題がある」

50代・男性
「二十歳以上は成人としての思慮分別を持って行動すべき。自己責任ですね」

増田 解説委員
興味本位でスカウトについていってしまったのが悪いとか、契約書にサインしてしまったのが悪いとか、はっきり断れなかったのが悪いっていう指摘は確かにあると思うんですね。
ただ、百歩譲って被害に遭った彼女たちに一定の責任があるとしても、非があるとしても、その結果として彼女たちが支払わなければならない代償が大きすぎると思います。
結果として彼女たちは人間としての尊厳を無視されたような行為を強要されて、それを撮影されて、商品として不特定多数の方に販売されて、閲覧されて、ネットでいま世界中に拡散されて、その映像が半永久的に残されるわけです。それを苦にして精神的に追い込まれる方もいらっしゃるということですから、いくらなんでも代償が大きすぎると思うんですね。

小西 さん
例えば家に泥棒に入られたとか、強盗に遭ったっていう時に、当然戸締まりもっとすればよかったのにとか、気をつけてればよかったのにというのはあるけど、誰がいちばん悪いと思います?っていったら、当然加害者が悪いってみんな言うし、どうして強盗犯が起きたのかっていうところに関心がいくのに、こういう話だと、なぜ被害に遭ったかっていうところにいってしまって、被害に遭うのは本人の責任というところにばっかりいってしまいますよね。

森 さん
極論すれば、ほとんどの事件とか事故って自己責任って言えちゃうわけですよね。よほどの天変地異的なものじゃないかぎりは、何らかのミスがあったり、落ち度があったり、油断があったりするわけで、でも、いま小西さんがおっしゃったように、ふだんはそういうことなかなか言わないのに、時として一極集中に、これは自己責任だっていう、そういった声が上がる時がある。
自分たちは我慢してるのにとか、要するにあれですね。同調圧力ですよ。自分たちと同じことをやらない。一部のやつがこういうことをやったという時に、「自己責任」って言葉を使います。だから、これね、学校のいじめと極めて近い。
「自己責任」という言葉は、そうしたとても下劣な、あえて言います。下劣な、そうした心情をオブラートして言いかえた語彙だと思いますね。「自己責任」という言葉にすると正当性があるかのように思われてしまうけれど、とても僕は下劣な感情の回路がそこに表れてるという気がします。

小西 さん
たぶんそういうふうに言う方は、自分の家族や自分は被害に遭うことはないと思ってらっしゃるんだと思いますけれども。

首藤 アナウンサー
自分に限ってとか、娘に限ってっていう。

小西 さん
そんなこと全然ないです。ごく普通の思春期のお子さんでも、親に隠れて何か1つぐらいのことを持ってない人っていないですよね。親とみんな仲がいいかって、そんなことないし、学校でいじめがあったり、嫌なことがあって街に出てる時もあるかもしれないし、そういうさまざまな状況の中で、たまたますごく弱い状況にあった時に言われると、人ってそういう時、断る力ってなかなか出ないですよね。

相田 さん
自己責任って言われちゃいますけれども、モデルとか、自分が目指していたもの、憧れていたもののことを羅列されると、わあってなって、そこにつけ込んでっていうことですよね。

森 さん
もし僕も、渋谷辺りを歩いていて、スカウトの人からモデルになりませんか、アイドルになりませんかって声かけられたら、なろうかなと思いますよ。いままで1度もそういう機会がないだけで。誰も声かけてくれないけれど、かけられたらやっちゃうかもしれない。

正蔵 さん
そこにね、きな臭いとか、ちょっと怪しいなって匂いは感じるような気はするんですけれどもね。

森 さん
感じても、ぱっと口にできないとか、当然だますほうもいろいろテクニックはあるでしょうし、これはあとから言おうかなとか、ここを確認してからにしようかなとか思ってるうちにどんどんどんどん追いつめられてしまう、そうしたことはあると思います。

伊藤 さん
みんな、自分自身こんなことに出ちゃって、親からも責められるっていうことで、被害があったっていうことも言えない。自分で自分を責めて死んじゃう人とかもいるっていう状況ですから。

増田 解説委員
責められるべきは加害者であって、業者であって、被害者ではないはずなんですよね。すごく精神を追い込まれたり、自殺に追い込まれた方もいらっしゃるっていう現状がある一方で、そうした状況に追い込んだ悪質な業者が何の罪にも問われずにいまも利益を上げているっていう現状があるわけです。
こうした不条理がまかり通る社会を是正する努力をすることが、私は政治の役割だと思っていて、被害者の声を拾って、そういった実態を広く報道することで、世論を喚起して、政治を後押しするっていうのがジャーナリズムの役割じゃないかなと思ってます。何かっこつけてんだって話かもしれませんけど。

森 さん
1点だけ言いたいんだけど、確かに悪辣です。悪質です。でも、先ほどイラストがあったけど、現場でね、とても凶暴そうなディレクターとかカメラマンが描かれていたけれど、彼らだってもしかしたら現場に来て、あれ、何だよこれ、話が違うじゃないかと思ってるかもしれないし、でも、いまさら帰るに帰れないとかね。
スカウトの方もそうですよね。きっと毎日ルーティーンでやってるうちにどんどんまひしてしまうっていうこともあるわけだし、どちらもある意味で自分たちをマインドコントロールしてるみたいな、そうした中でとても取り返しのつかないようなことが起きてしまう、悲劇が起きてしまうと。だから、構造的な問題なんですよ。誰かが悪いじゃなくて。

視聴者の声

10代・男性
「成人は自己責任って言うけど、そういう意見のせいでよけいに相談しづらい環境が作られてしまう」。

小西 さん
むしろ被害を受けた人がいちばん自分で自己責任だと思ってるから言えないんであって、それを彼女たちは思ってないわけでは全くないですよね。
スカウトマンの人形の顔がね、すごく悪人面になってるんだけど、決してそうではないです。私たちは、偽のスカウトだったっていうことを知って話をしてるけれども、最初に会った時には、相手の方もだいたいすごい感じがよかったり、女性だったり、そんなことが分かるような形では来ないんですね。
例えば成人向けの映画の出演っていって、AVに出演するっていう行動を実際にやるっていうことがどれくらい人を傷つけるのか、大変なことなのか、どういう労働なのかっていうことは当然見えてないんですよ。
見えてないところで受けてしまって、実際にそういう場に行ってからは、そのことの傷でうまくできないっていうだけじゃなく、本当に精神も傷ついてしまう。それも結構大きいですよね。

首藤 アナウンサー
ツイッターもたくさん来ているようです。徳永さん。

徳永 アナウンサー
最初は「自己責任」っていうキーワードが多かったんですが、だんだん社会そのもののありようっていうのを考える人が増えてきている気がします。

視聴者の声

「子どもを搾取する大人がいるのがいちばんの恥で社会問題。大人が教えていかなきゃいけない」

「AV強要もブラックバイトもなんで断れないの? っていう人たちは、この国の本質が見えていない」。

「AVって低コストでもうかるから犯罪のような行為をするのではないか」

「『早く帰りたいからサインする』と、『痴漢のえん罪ふっかけられて認めたらすぐ帰す』ってなんか似てるよね」

首藤 アナウンサー
1日80本って聞いて本当に驚かれたと思うんですけれど、こういう若い女性の性を大量に消費するというか、こういう社会って、どういうふうに考えたらいいんですかね。

伊藤 さん
だんだん、タレントさんでも、脱げば話題になるとか、性をどんどん消費していく方向になっているような気がしますよね。だから、スカウトされても、脱げば有名になれるよみたいなことを言われて、脱いで勝負をするみたいな形になってる傾向がないかなというふうに思いますね。

森 さん
よくね、若い世代が変わったとか、そうした声をよく耳にするんですけど、そんな簡単に人間なんて変わんないですよ。もし仮に変わったんであれば、変わる要素があるわけで、僕はメディア環境だと思いますね。ネットですね。SNSであったりとか。
つまり、かつてであれば、メディアっていうのは既成メディアしかなかったわけですよね。でも、いまやもう誰もがSNSで、自分も発信できるようになってしまった。自分の写真もアップできる。不特定多数の人がそれを見てくれる。場合によっては反響が来る。
そうした日常にひたってるうちに、メディアと自分とのハードル、個と公共との垣根みたいなものがどんどん下がってしまった。本来下がってないんですよ。でも、下がったような感覚になってしまって、ついつい簡単に、以前だったら思わずたじろぐところでも足をぽっと踏み出してしまうみたいな、そうした状況になってきてるっていうことは確かなんじゃないかなとは思いますよね。

相田 さん
危険を察知して、自己表示というか、興味ありませんときっぱり言うこと、あれ、これちょっと違うかなって思った時に、そこから立ち去る強さというか。

森 さん
ですね。その強さをみんなが持てればいいんだけど、強さを持てというのは酷ですよね。

正蔵 さん
強さって持てないですよね、そんなにね。人間、弱いとこがあるから。

小西 さん
前だったら家から出られなくて、例えばちょっと不登校で引きこもり気味っていうような子も、いまはネットで社会とつながれるんですよね。そこで、今度ネットで、例えばライブチャットとか、性を売っていくようなこともできるようになってるんです。そういう危険性は増えてると思うんですね。だから、ネットは大きな要因だと思っています。

首藤 アナウンサー
ちょっとここでこれまでの議論を振り返ってみたいと思います。お願いします。


グラフィックレコーディング

グラフィックレコーダー
山田 夏子さん

徳永 アナウンサー
グラフィックレコーダーです。皆さんの議論や発言をそのままイラストや文字にしております。
議論を聞いている人の中で、ツイッターの傾向でこれを知った上で、「解決策どうしたらいいんでしょう社会はっ」ていうのが多いです。

視聴者の声

「制度として相談できる駆け込み寺増えてほしいです」

「処罰が弱いから横行するのではないか。関係者全員を裁かないとだめでしょう」

「小学校から子ども向けに教育、親向けにも手紙を配布するなど警鐘を鳴らしてほしい」

「中高生が被害に遭わないための対策法を教えてほしい」

相田 さん
実際被害に遭われた方の駆け込み寺っていうのはあるんですか?

伊藤 さん

相談窓口ができていますし、警察も態勢を変えて頑張っていきますということになっていますので、ぜひ相談をしてほしいと思います。
先ほど2400万違約金を請求されたという事件、実際私が担当したケースなんですけれども、最終的にはこの件は出ませんというふうに言ったら、その時で、もう契約は解除されたというふうに裁判所は認定してくれて、その翌日以降にかかった違約金は全額請求することは許されませんという裁判が、東京地裁で2015年に出ています。
ですから、強要されるのであれば、本当に嫌であれば、解除しますということを撮影の前日までにきちんと言えば、断れるということにいまなっています。そこをぜひやってほしいし、それから、未成年の方であれば、出てしまったあとでも、未成年者の契約ということで取り消すことができますから、発売前に契約を解除するということですけど、まず相談窓口に行かないと、自分では難しいと思いますから、相談窓口に行ってほしい。

視聴者の声

「正しくスカウトしている方の妨げにもなるので、契約への流れを決めることが必要なのではないでしょうか」。

正蔵 さん
いまAVに対してのルールはないんですか? 法的な。

増田 解説委員
例えば政府でいうと、AVに対する監督官庁というのはありません。実は。AV出演強要被害というのを、直接それについて取り締まるような法律も特にないですね。ただ、私、被害の実態を正確に把握した上で、悪質な行為は厳格に取り締まることが最大の抑止効果になると思 うんですね。

政府は男女共同参画基本計画っていうのを制定していて、その中でAV出演強要っていうのは女性に対する暴力であるというふうに認定したんです。政府はいま女性が輝く社会っていうのをすごく標ぼうしているんですけれども、女性に対する暴力をなくすことっていうのはその大前提だと思うんですよ。
例えば先の通常国会で成立した改正刑法なんかも、性犯罪の厳罰化を定める内容で、すごくいま政治の流れっていうのは、女性に対する暴力に厳格に対応していこうという流れにはなってるんですね。今後もこの流れを着実に推し進めていくことが重要だと思いますし、もしかしたら、より出演強要被害に特化した特別法の制定なども検討していいんじゃないかと、私は思いますね。

伊藤 さん
どこの官庁も取り組んでくれるところがないので、労働問題なのか消費者問題なのか、それすらも分からない。ブラックバイトと同じように労働問題であれば労働法の適用があるんですけれども、これについては適用される法律が明らかじゃないんですよね。ですから、きちんとした法整備をしてほしいと思いますし、こういった悪質なスカウトであるとか、出演強要っていうことについてきちんとした処罰を導入するっていうことが大事だと思います。
それから、最終的にビデオ出てしまったあとでも、早めに取り消せる制度。これは本当に必要だと思いますので、こういった性的なビデオに関して、意に反したと思ったら早く取り消せる。そういった制度を作ってほしいなというふうに思います。

森 さん
まず、とても単純なことですけど、みんなが知ることですよね。だから、こうした情報、知識をみんなが共有すること、それはとても大事なことなんだけど、僕は今回この番組の出演依頼来た時に、土曜日の朝にこんなことやるの、大丈夫かよって一瞬思ったのね。それはどこかでこうしたものはあんまり目を向けるべきじゃないと、目をそらしたいって気持ちがどっかに働くわけです。

首藤 アナウンサー
自分の中でも確かにありますね。

森 さん
僕もそうです。たぶん多くの人はそのはずなんですよ。こういったものは知りたくない、見たくないと。もちろん、見たいけど同時に見たくないっていう、そういう意識になっちゃうわけで、だから、結局光が当たらないままでどんどん肥大してしまうっていうことになっちゃう。これは事件ですから、実際たくさんの方がつらい思いしてるわけですから、しっかり知りましょう、見ましょうというね、そうした意識をみんなが持てば、状況なんかあっという間に変わるんじゃないでしょうかね。

正蔵 さん
家族どうしではなかなかこういう話はできないですよ。娘を持つ父親としてはね。AVってさって、なかなか娘には言えないかもしれない。

森 さん
目を見ないようにしてしゃべれば、なんとか。

正蔵 さん
分かりました。

小西 さん

これ、私、驚いてて、ぜひ見てもらいたいんだけど、こんな初歩的なことさえ知らない子がたくさんいるっていうのが現状。だって、10代じゃ3分の2が知らないんですよね。やっぱり知ることですね。

正蔵 さん
私の予想では、知ってる・知らないが逆だと思ってました。ほとんどの人が、スカウトだと危ない目に遭うよっていうようなことを思ってると思いました。

小西 さん
契約の話も同じなんですけれど、知らないです。

相田 さん
そこに乗っかって巧妙な言葉を言われたら、乗っかってしまいますよね。

伊藤 さん
疑うことを知らない若い世代がこういう被害に遭ってるということなので、そういった若い世代を本当に守るっていう必要があると思うんですよね。
あと、AVっていうこと自体見たこともない子がAV出演強要されて出ている。その前にきちんと教育をするっていうことがまずは大事だと思うので、学校の中でもきちんと教育をしてほしいなっていうふうに願ってますね。

首藤 アナウンサー
でも、女性はAVをほとんど見ない気がするんです。タブーみたいになってることが、危ないというか。

森 さん
僕のいま教えてる大学では1日に1回、悪質な宗教カルトに気をつけましょうっていうアナウンスが流れるんですけど、それだけですね。だから、やっぱり言いづらい、言葉にしづらいっていうかね。恥じらいとかはもちろん必要です。必要だけれど、でも、こうした状況になってる以上はね、そうした環境にいる人に対しての何らかのメッセージは常に発信するべきだし、情報は共有されるべきですね。

伊藤 さん
もう少しきちんと、性教育できちんと教えてほしいなっていうふうに思いますよね。

正蔵 さん
性教育というよりは犯罪ですよね。

伊藤 さん
そうですね。あと、ブラックバイトとかとも似ていて、みんな、おかしなことがあっても断れない。それを断るすべっていうか、権利意識を持って、嫌なことはノーと言っていいんだって、そういった教育もしてほしいなと思うんですよね。

首藤 アナウンサー
いろんな方向からの教育ですとか、知ることですとか、そういうことが本当に大事なんですね。被害者が苦しみ続ける社会というのは本当におかしいし、なんとかしたいと思います。きょうは、どうもありがとうございました。

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