2017年06月10日放送放送内容まるわかり!

日本は世界最低レベル!? どうする"受動喫煙"対策

たばこを巡る議論が活発化しています。厚生労働省は「受動喫煙」を防ぐため、飲食店など人が集まる建物では「原則 屋内禁煙」とする法案を今国会に提出することを検討。 しかし飲食業界やたばこ産業、自民党内からの反対で調整は難航しています。厚労省は"受動喫煙死"は年間1万5千人と推計。日本の受動喫煙対策は"世界最低レベル"と国際機関にも指摘されています。どこまで禁煙を進めるのか?個人の好みをどこまで制限するのか?深読みします。

今週の出演者

専門家

中村 正和さん(地域医療振興協会 医師)
岸 博幸さん(慶應義塾大学大学院 教授)
土屋 敏之(NHK 解説委員)

ゲスト

木本 武宏さん(タレント)
村上 知子さん(タレント)

今週のグラフィックレコーディング

グラフィックレコーダー
山田 夏子さん


首藤 アナウンサー
きょうはスタジオの皆さんにも、吸うか吸わないのマークをつけてもらいました。

スタッフもつけています。ちなみに4カメさんは吸います。

木本 さん
あの方とさっき喫煙室一緒でした。

首藤 アナウンサー
木本さん、吸われるんですよね。いま肩身狭い感じあります?

木本 さん
肩身狭いと十分感じながらも、それなりに吸える場所があるので、全然大丈夫かなと思ってるんですけど、これから減っていくんじゃないかという不安にはおののいてますね。

村上 さん
さらに減ると、ちょっと厳しいですか?

木本 さん
そりゃあ厳しいでしょ。ひたすら禁煙だって言われたら、どうしていこうかなって。それを人に言うと、「やめりゃいいやん」になるんですけど、そういう簡単な話でもない。

首藤 アナウンサー
どうしていまたばこの規制を考えないといけないのか。徳永アナウンサーのプレゼンです。


プレゼンテーション

徳永 アナウンサー
ハーイ、ナンシー。ノースモンキング。ソーリー、ソーリー。ウエイトアミニッツ。ジャストアモーメント。ソーリー、ソーリー。

いやいやいや、お久しぶりでございます。たまにこの番組に出てくる、私、日本を代表する旅行会社・深読ツーリストのベテラン添乗員でございます。
私どもは外国人観光客の方に日本のいいところをご案内するのが専業でございますが、1つ困っておりましてね。いまもあったんですが、お客様から日本のたばこのルールへの苦情がめっぽう多いんですよ。どうなってるんだ、ジャパンはと。アンビリバボーだと。
すごいんですよ。その悩みを相談しに参りました。というのも、こんなひどいことまで言われるんですよ。

木本 さん
そんな自覚なかったですよね。

徳永 アナウンサー
そうでしょ。私、印象も操作してませんよ、これ。これね、れっきと言われちゃってるんです。

なんとお客様だけではなくて、WHO・世界保健機関、つまり、世界中の人の健康を守る組織から、日本最低とまで言われる始末なんです。
何か違うような気が私はしたんです、最初。でも、何が最低かって聞いていくと、具体的にはこれなんです。

そう。他人が吸ったたばこで吐いた煙や、そのたばこから出る煙をほかの人が吸い込んじゃうという受動喫煙。いま、WHOはさまざまなデータを出して警告をしています。

例えば、自分が吸っていなくても、肺がんだとか、小さい子が突然亡くなるリスクは増えるんですよ。計算上は、世界中で1年間に89万人もの人が受動喫煙が原因で命を落としているんですよと。
こう言われると、お母さんである村上さんは?

村上 さん
結構、ニュースとかでも見るんですけど、その影響がどのぐらいあるのかっていうのは、なんか怖いですね。

徳永 アナウンサー
そして、木本さんが所在なさげな。

木本 さん
それでもマシにはなってきている、ひと昔前はがんがんあちこちで吸ってたわけじゃないですか。

徳永 アナウンサー
そこなんですよ。私もね、海外から来るお客様に一応説明はする。日本だって、吸う人だいぶ我慢してもらってやってきてるはずなんですって言うんです。ちょっと数字で見てみましょうか。

まずね、喫煙率っていうのがあります。大人のうち何割が吸っているか。男女別の数値があって、かつてといまを比べます。まず、昔。男性は高度経済成長のころ、83%もの人が吸ってたんですよ。

木本 さん
すごい。ほとんどの人ですね。

徳永 アナウンサー
朝ドラの「ひよっこ」のころです。だから、みね子ちゃんの周りの男の人は、映ってないとこでぷかぷか吸ってるんですよ。

木本 さん
カメラ回ってるから吸ってないけど(笑)。

徳永 アナウンサー
そうなんです。で、これいまどうなってるかというと。

木本 さん
うぉー。

徳永 アナウンサー
木本さんは3割のほうになってしまいました。吸ってる人も減ってきた。吸える場所も減ってきましたよね。特に2000年を越えて、21世紀はそういうところが出てきた気がします。
背景にあるのはこれ

「たばこ規制枠組み条約」。2005年にスタートして、世界中の国々が、たばこの害も明らかになっているのでなんとかしていきましょう、対策を打ちましょうねというふうになっています。
で、こんな動きもありました。

ポイ捨て禁止、歩きたばこ禁止っていうのが始まって、こんなとこまで出てきました。

覚えてますか?路上喫煙するだけで罰金。2002年から各地で始まってきた条例です。

たばこ吸う方は外のこういうスペース探して吸うわけです。ところが、こういうスペースも減っていきます。駅の周りのちょっとだけ。その駅も減り、新幹線もだめ、タクシーもだめ、どんどん減っていきました。
じゃあ屋内は?吸いたくない人がいっぱいいます。吸いたい人と吸いたくない人を分けましょう。

スペースを作りました。そのスペースもだめということになって・・・

密閉。

木本 さん
そうそう、そうなんですよ。

徳永 アナウンサー
いま都会で吸いたい人は、中の中に入って吸う。ここまでやっているのに、なぜ最低レベルと言われなければならないのか。

木本 さん
動物園の動物みたいな気持ちになりますよ。

徳永 アナウンサー
WHOがなぜここまで言うのか。するとね、これなんですって。これこそが世界の人から言うとアンビリバボー。

木本 さん
えぇー。

徳永 アナウンサー
というのも、お客様に聞くと、世界はこうですよ。

室内・屋内は基本完全禁煙なんですよ、常識はって言うんです。WHOからも、これだけでは受動喫煙の対策としては不十分だと言われちゃう始末です。木本さん、こんなに密閉してるのにって思うでしょ?

木本 さん
僕、めっちゃ聞かれますよね、やっぱりね(笑)。

徳永 アナウンサー
でもね、WHOは言ってるんです。いいですか。木本さんはどうやってここに入るんですか?

木本 さん
扉を開けて入りますね。

徳永 アナウンサー
何て言いました? いま。

木本 さん
扉を開けて入りますよ。

徳永 アナウンサー
扉が開くと、空気は?

木本 さん
出ていきますよね。

徳永 アナウンサー
不十分なんですって。

村上 さん
だめなんだ、その漏れも。

徳永 アナウンサー
しかも、この人。お客さんじゃなくて、

ウエイトレスさんやウエイターさん。従業員の誰かはここの掃除をしたり、料理を持っていったりして、吸いたくないのに煙を吸わざるを得ない環境でしょ。これは受動喫煙対策としては不十分だと、世界中から私、苦情をいつも、私も聞いております。

木本 さん
きょう、僕、怒られる回なんですか(笑)?

徳永 アナウンサー
手前ども深読ツーリストも、この苦情で本当につらいんでございます。

村上 さん
屋内に作ると、そういう問題がどうしても出てきちゃう。逃げ場がない。

徳永 アナウンサー
そこで、日本。いまニュースになってるのはこれです。

はい。東京オリンピック・パラリンピック、「たばこのないオリンピック」というのをIOCは主張しておりまして、開催国に屋内基本禁煙、徹底してくださいと呼びかけております。日本でもこの法律を国会に出す出さないでもめているんです。
でも、待ってくれという声もあります。こちらです。

飲食業界が、客が離れる、店が潰れる。 いま政治家ももめにもめて、まだ法案が出るめどは立っておりません。私どもにまた苦情が来るのか。たばこを吸う人はどうなるのか。日本のルールはどうなるのか。
煙だけに、見通せなくなってまいりました。さあ、どうしましょう。

木本 さん
どこに時間かけてるんですか(笑)。

首藤 アナウンサー
屋内の中のこういう状態、海外と比べると、日本ってそんなにだめなんですか?

中村 さん
日本は罰則つきの法律がないんですね。
WHOの評価は4段階のいちばん最低レベルなんです。日本は、病院とか学校とか行政とか職場とか、8つの場所についていずれも罰則つきの法律がないということで、4段階評価の最低レベルと。

岸 さん
私、たばこを吸う人間なんですけども、それ以前に政策ずっとやってきた人間として思うことは、この議論はいつも偏ってしまってるよなという気はするんですよね。
つまり、日本はWHOも世界最低レベルと言ってますけども、例えば欧米はどうなんだろうねって考えると、屋外は基本的に自由なんです。で、屋内は完全な禁煙なんです。
欧米はどうしても自分の健康を考えようってなるんですよね。日本は、ほかの、周りの人をちゃんと考えようよという、考え方が反対なもんでして、だから日本は屋外でもこれだけ喫煙に対する規制があるわけです。
どうしてもいまの議論というのは、屋内、まさにああいうお店の中の議論ばっかりですよね。屋外は世界がどうかっていうことを無視して屋内だけで議論してますので、これは政策の議論としては若干偏ってしまってるなという気がしますね。

木本 さん
確かに海外って、建物の中では絶対的に吸えないんですけど、外出るとポイ捨て意外に多いですもんね。

岸 さん
そう。あれもあれで僕はよくないと思ってまして、だから、僕もたばこを吸う人間だけど、別に無理やり吸う権利を主張する気はないんですね。
でも、結局分煙もだめですよといった場合に、屋内を全面禁煙にするしかなくなっちゃうじゃないかと。その分、屋外はせめてもうちょっと自由にしようよって議論になるはずですし、そこのバランスを考えないとおかしいよなと思ってますね。

中村 さん
海外では屋外は自由に吸えるっていう国が多いんですけれども、どうして屋内で禁煙にするかっていう、そのいちばんの根拠としては、

受動喫煙が、いろんな有害物質が、例えば化学物質では5000種類、発がん物質でも70種類含まれていて、去年、厚労省が判定をしたんですけど、脳卒中と虚血性心疾患と肺がんと乳幼児突然症候群、この4つが確実な関係があると。これだけで1万5000人が年間亡くなってる。
ぴんとこないですけど、この45分の深読みコーナーで、日本で1人亡くなってるという勘定なんですよ。これぐらい健康被害がいまなお出ている。しかも、それは他者危害だと。
ですから、喫煙する権利もあるんですけれども、他人の健康まで危害を与えるっていう形での権利はないということで、いちばん受動喫煙にさらされるのは屋内なんですね。外は、煙たいですけれども、避けることもできるし。

首藤 アナウンサー
逃げ場がある。

中村 さん
日本は逆に外から始まってしまった。それは受動喫煙の防止というよりは、環境美化とか、子どものやけどとか、そちらの観点なんですよね。だから、受動喫煙の防止という観点からは、国際標準の屋内の禁煙化をきちんとやっていくっていうことが、国民の健康を守る、命を守るっていう観点から大切なんですね。

岸 さん
データも解釈のしかたですごい変わるわけですね。よく言われるのが、WHOが言ってるデータで、たばこを吸ってますと肺がんになる確率がどんどん高まりますということを言ってるんですけども、実際日本では、喫煙者の比率はさっきのグラフにあったようにずっと下がってますけども、肺がんで死ぬ人の数は逆にずっと右肩上がりっていうのもありますので。
もちろんいま中村先生がおっしゃったように、害は必ずあります。だからといって、本当にそれだけの人が肺がんにかかる、亡くなってるのかっていうとこから疑問と思ってますから、だから、あまりこれを額面通り受け取りすぎるのもどうかなと。もちろん禁煙は絶対必要なんですけども。

土屋 解説委員
確かにデータの見方って結構難しいところがあって、いまの、吸う人が減ってるのに肺がんで死亡する人が増えてるというのはよく出てくる話なんですけど、これはかなり誤解されている部分がある。まず、肺がんで亡くなる人が増えているのは高齢化による、年齢調整でいうと実は肺がんで死亡する人は減り始めていて、しかもその減り方というのは、たばこの喫煙率が下がってきたのと20~30年のタイムラグがあると。つまり、これって、がんになるのは遺伝子の変異が重なって、それによって、時間がたってがんで亡くなる方が増えていくっていうことからいうと、これはかなりきれいに説明できる。ただ、こういうこともちゃんと理解した上で議論しないといけないということで、まさにデータの読み方っていうのは重要だと思います。
補足をしますと、確かに日本って、1700ぐらいの市町村のうちでおよそ200の市町村が、何らかの屋外での喫煙の規制を持ってるんですね、条例で。実はこれって自治体の数で言うと1、2割。外のどこでも吸えないっていうのは特に都会の方で多い。そこも、全国でそうなってるかっていうと少し違う。そもそも日本の屋外でのたばこの条例というのは、ポイ捨ての禁止であったり、美観であったり、火事であったり、あるいはたばこで、人に触ってしまって害がある。そういうことから規制が進んできた面があって、受動喫煙対策とはちょっと違うっていうところがあるんですね。
WHOの最低レベルというのは、受動喫煙による害のレベルということで、日本は学校なり病院なり、屋内の施設については何も法的な強制力がないということで最低レベルになっているので、これがたばこのすべてというわけではもちろんないということは理解しておく必要がある。

首藤 アナウンサー
いま、ツイッターがたくさん来てるんですね。

徳永 アナウンサー
きょうの話題はすごい多いですね。喫煙してる人からも、「岸さん頑張れ」とか来てますけど、やっぱり吸わない人のほうが多いですね。飲食店に勤めているという方。

視聴者の声

「喫煙席の煙を毎日吸って、私、病気になれば労災だと思う」

「居酒屋のみでなく、ベランダ喫煙による被害も深刻です。いままさに隣のベランダから煙が。洗濯物が干せません」

「仕事でお客さんがたばこを吸う場合、断れません。屋内での禁煙を勧めてください」

岸 さん
問題なのは、いま提示されてる日本の受動喫煙対策、厚生労働省案と自民党案がありますけども、どっちもいろんな意味で中途半端になっちゃってると思います。

厚生労働省案は、屋内は原則禁煙で喫煙所可。小規模なバーなどは喫煙可。自民党案になるとさらに、屋内は一定規模以下は「喫煙可」と表示と。これはたぶん、いろんな忖度をした結果こういうことになってると思いますけども、残念ながら政策をやってた人間から見ますと、理屈がない忖度が多いよなという気がするんですよね。

首藤 アナウンサー
マナーや分煙に気をつけているという、吸う方から。

視聴者の声

東京都・60代・男性
「吸わないと思われる客や子どもの近くでは吸わないようにしています。席も換気扇がある隅を選んでいます」。

北海道・50代・男性
「分煙対策はしっかりしている。最低とは言いすぎだ」。

首藤 アナウンサー
逆に吸わない人から。

視聴者の声

「板1枚で仕切るだけのような中途半端な分煙が横行しているので、分煙の定義を厳密に決める必要があると思う」。

30代・男性
「日本の分煙っていうのは、これ、だめなんですか?」

中村 さん

分煙もレベルがありまして、エリアで分けるというのはほとんど意味がないんですね。海外でのメディアですごくうけた例えは、プールでトイレをしていい場所を設けても、結局みんな拡散してしまうっていうのと全く同じで、全然意味がないと。喫煙専用室を設けるというのが今回厚労省案にも、飲食店については可になってますけれども、エリアで分けるよりは分煙の効果はありますけれども、ドアの開け閉めの中で外へ漏れる。
よりきちんとした分煙するんだったら、基準をいまよりも厳しくする。フランスとかイタリアは実は法規制で喫煙専用室を認めてるんですけど、それはかなり厳しい基準なので、結局は飲食店は禁煙にしてしまうっていうことが起こっているんですね。

岸 さん
大事な点を忘れてほしくないのが、分煙というのは、僕はある意味で日本の文化の延長、ちゃんとほかの人にも気を遣う、いろんな人の権利を尊重するっていう日本的な文化、いい部分の延長で、そういう意味では日本的な価値観だと思うんですね。これをいかに、しっかり徹底するかっていうことが大事だと思ってるんですよね。

木本 さん
たばこ吸う人間の中にはピンキリで、本当にマナー悪い人も多いですから。

村上 さん
子どもと一緒にいると、歩きたばこがすごい怖くて。ルールをちゃんと分かって吸ってくれる方が増えれば、たぶんみんながいいというか。

岸 さん
私、日本は喫煙のマナー非常に悪いと思うんですよ。喫茶店でも、たばこ自由に吸えるところあるじゃないですか。そういうところでいちばん嫌なのが、たばこに火をつけて、灰皿に置きっぱなしにするんですよね。煙がどういう方向へ行って周りの人に迷惑かけるかっていうことを全く考えてない。こういうマナーを変えないと無理です。

木本 さん
あと、中途半端に消して出ていっちゃう人ね。結構僕、それをあとから消してますからね。

岸 さん
だから、吸う側もマナーをしっかりしなきゃいけない。その前提で、分煙もどういう形がいいのかっていうのを考える必要があって、僕は個人的には、解は簡単で、いまの日本がやってる、屋外のたばこ吸える場所を限定する。これも当然必要です。
それに加えて、それを前提で屋内をどうしようかって考えた場合には、原則禁煙にすべきなんですね。ただ、当然お店によっては、たばこを吸うスペースを作りたいという人はいるはずだから、それは例外として認めてあげると。それも中村先生から言わせれば、いくらやっても不十分という声はあるでしょうけども、それなりに徹底して、いま技術もだいぶよくなってますから、そういう分煙をしっかりやると。
お店に関しては、たばこを吸える分煙スペースがあるところはそれを明確に表示させるとか、それぐらいやる必要があって、例外的に何平方メーター以下は自由とか、こういうのは絶対だめだと思います。

土屋 解説委員
欧米で喫煙室が普及しなかったり、分煙が普及しない1つの理屈として、それは不公平だと。日本でも出てるんですけど、喫煙室設置可にすると、面積が狭いお店やお金をあまり持っていないような小さなお店は作れない。それで差がついてしまうのは不公平じゃないかと。

首藤 アナウンサー
そこにすごいお金がかかるわけですね、作るのに。

土屋 解説委員
そうなんです。それでまた補助金として税金使うのかっていう話もあって、つまり、そこにお金をかけるのはそもそも不公平で、禁煙にするんだったら屋内禁煙のほうが公平だし、お店にとっても、お客が逃げる、取られた取ったっていう話にならないじゃないかという考え方もあるんです。

木本 さん
うちはたばこ吸えるお店なんだって割りきって、たばこ吸わない人は来てくれなくていいですよっていうスタイルでやるのはどうなんですか?

土屋 解説委員
これは意見がいろいろあるところで、国際的に言うと、それはだめだという判断なんです。

木本 さん
国際的な問題でしょ。放っといてくれっていう話(笑)。

岸 さん
僕もそこは同意です。国際基準に従う必要はないんです。

土屋 解説委員
ちょっと考えてみてください。例えば、完全にこの店は禁煙です。あるいはもっと厳格に、この建物は禁煙で、この建物は喫煙可のビルにします。でも、例えば職場の上司、あるいは取引先に、きょう飲みに行こうって言われて、その人はたばこ吸う人です。断れますか?これを「いやいや受動喫煙」っていうんです。さらに、従業員はどうですか?「君、今度転勤だ。そこは喫煙可の店だけど」「転勤したくない。嫌です」って、仕事辞められますか?こういう従業員の受動喫煙もあって、基本的には分煙ではだめだというのは、2005年のたばこ規制枠組み条約、これは当然日本も批准していますが、この条約のガイドラインに、「分煙では受動喫煙は防げない。全面屋内禁煙しかない」ということが明示されていて、合意済みだったりするんです。

岸 さん
私は全面喫煙オーケーはだめだと思うんですね。ただ、原則禁煙の中で分煙スペースを設けると。これは認めてあげていいと思うんです。その場合は当然従業員に関しても、たばこの害が少しでも嫌な人はそこに働かなくていいというのを明確にしないといけませんから、そういう雇用の契約条件を含め、しっかりすることで対応は可能と思っています。

たばこが吸えないとお客さんが減るって言いますけども、これはイギリスで実際調べたデータで、屋内の禁煙、規制を導入したあとにパブに行く回数が減ったかっていうと、変わらないという人が多いわけですので、たばこを吸えないからお客さんが減るっていうのは、これも短絡的な議論の可能性はあるんですよね。

中村 さん
飲食店の禁煙化ではお客さんと売上のことが常に考えられるんですけど、そこで働く従業員の命・健康を守るっていう視点が、日本はどうしてもその議論があまりない。
実際に屋外よりも屋内、特に職場、家庭で受動喫煙の被害が出てるわけで、家庭を法律で規制するのは難しいですけれども、せめて職場は罰則つきの法規制の対象にすべきだと。家庭においても、特に自動車の中でたばこの煙を吸うと、子どもが高濃度の暴露をするんですね。それはまずいということで、例えばカナダ、オーストラリア、フランスなどは法律を作って、自動車内は禁止するというような国がある。アメリカでもいくつかの州で。

木本 さん
ただ、車の中でたばこを吸わないっていう意識はかなりいま高くなってきてて、その途中だと思うんですね。でも、そこも全部問題にするじゃないですか。すると、カチンってくるんですよ。いま変わろうとしてるんです。

岸 さん
たぶん木本さんも僕も、いちばんたばこを吸う権利を主張できない場所は家庭の中だと思うんですよ。

木本 さん
確かに。

岸 さん
いま家庭はだいぶそうなってるはずで、それをどう普通のパブリックな空間に広げていくかっていう問題だと思いますけどね。

中村 さん
調査をしますと、所得が少ない、経済的に弱者の方がより受動喫煙にさらされてるという実態が明らかになってて、なかなか健康に注意を払う余裕のない方が、受動喫煙によって被害が生じている。そういう人の健康を守ろうと思ったら法律で規制をして、受動喫煙をなくすということが重要になってくると思うんですね。
あと、がん患者さんなんかでも、いま治療が進んで、就労を続けるという中で再発を心配する方がいらっしゃるんですけど、職場がそういうことになっていると、より再発する危険が高まるんじゃないかと。そういう気持ちに寄り添うっていうことも、そここそ忖度、僕はするべきじゃないかなと。

岸 さん
逆に言えば、嫌な人はそういうとこに近寄んない場所で働けるように明示すると、それを義務づける手もあるわけですから、何でもかんでも罰則づきで禁止するのがいいとはならないわけです。

首藤 アナウンサー
ちなみに、もし法律で、たばこ吸うのを禁止って言っちゃうと、どういうことが起きちゃうんですか?

岸 さん
闇での使用が広がるだけです。

首藤 アナウンサー
闇?闇か(笑)。

岸 さん
よく言われるのが、日本は後れてると。だから、世界基準に合わそう、屋内全面禁煙しようと。全然いいです。なら、その分せめて屋外はもっと自由にしてよと。そこは議論が偏りすぎてるんですね。

中村 さん
日本は屋外から始まっちゃったので、屋内の規制が全然進まない。ただ、地方に行けば、屋外吸える場所はいっぱいありますし、都市部においては、僕は公衆喫煙所をですね。

岸 さん
でもね、公衆喫煙所だけじゃ弱いです。私、結構海外行ってますけども、海外、当然アメリカもヨーロッパも屋内は全面禁煙です。でも、困んないのは、1歩出れば吸えますから。

中村 さん
そこは緩めてもいいと思います。全体の。

土屋 解説委員
法律と条例の話を組み合わせて考えていくんですね。ある意味、今回の屋内禁煙みたいな法律を作る時に、併せて厳しい条例があるようなところについては施行規則などの部分で配慮していったり、あるいは、住民の方たちの総意でその条例を変えるということは当然ありうるわけですし、逆に言うと、屋外で条例を持っているところがあるから、屋内の規制をしなくていいという代わりにはならないんですね。
つまり、屋外を規制していても、より煙がこもる屋内が野放しだと、健康被害が防げないというのは明確なことなので、これは本来切り分けて考えなきゃいけないけども、制度としては、外に先に厳しいものがあるところについては、それを配慮した形で調整が利くようにしていく必要がある。

徳永 アナウンサー
きょうは多いですね。「吸う人・吸わない人」両方から来ています。「海外のほうが外のマナー悪いよ」っていう声も来てますね。それから、吸ってない人からも来てますね。「たばこを買う時に、『マナーを守り、他人に迷惑をかけません』と毎回言わさせよう」。

岸 さん
それ、おもしろいかもしれない。

視聴者の声

「ガムやチョコじゃだめか」。

岸 さん
だめなんです。

首藤 アナウンサー
ここまでの議論を振り返ってみたいと思います。徳永さん、お願いします。


グラフィックレコーディング

徳永 アナウンサー
このグラフィックレコーダーは、皆さんの議論をそのまま書き上げていって議論の経過を見せるもので、担当の山田さんです。

吸わない山田さんと吸うプロデューサーがやっていますけども。
最初はね、吸う人と吸わない人の対立構図かと思い込んでいたんです。すると、岸さんの話や皆さんの話を聞いていくと、吸う人が一枚岩でもないし、対立だけじゃ何も生まれないよねっていう。
例えば、「禁煙側の主張は正論だが、喫煙者はすでに中毒であるということの思いやりがないのではないか」
という人もいるし、これ、僕、ご紹介したいんです。岡山県の40代の方。
「結婚と一緒。いきなり正論でぶつかってはだめ。いままでどおりお互い気を遣いながら折り合いをつけるほうが賢い」。

村上 さん
確かにね。

首藤 アナウンサー
まさに対立だけでは、ずっと平行線のままになっちゃうので、具体的な解決策をなんとか見いだしたいと思うんですけど。

岸 さん
僕は、基本的にお店とか屋内は原則禁煙を徹底すべきだと思います。ただ、例外的に分煙スペースを設けたりっていうところは、それを認めてあげる。ただ、それは明確にお店に入る前の段階で表示して分かるようにして、入る人が選べるようにすると。当然そういう店では雇用契約上も、害が気になる人は近寄んなくていいっていう形でも明示すると。

中村 さん
雇用契約を結ぶといっても、すでに働いている方がいらっしゃるので、なかなかそれは難しい問題があると思うんですね。

岸 さん
難しいといっても無理はありません。不可能ではありません。

中村 さん
厚労省案というのは、実行可能性を考えて、現実的なソリューションとしての案なんです。その中で飲食店について、バーとかスナックという、お酒を提供して喫煙が多い、そこだけは例外として認めようというのが厚労省案で、飲食店は従業員の健康を第一に考える。
結局、経済、売り上げ、そういったものを第一にするのか、それとも、健康を第一にするのか、どちらに価値観を置くかっていうことなんですね。

岸 さん
どっちが第一ってことはないです。いかに両方を両立するかの問題で、禁煙をよく言う人を、禁煙原理主義と私は思ってるんですけども、それがすべて最優先するっていうのはおかしいです。

中村 さん
私は現実論者なんですけど、要はリスクマネージメントなんです。リスク評価としては、受動喫煙の害はありということがはっきりしたわけです。ただ、社会として、たばこが売られてきて、それで生活してる人もいる。そこに利権もある。そういう中で、社会としてリスクのあるものをどうかじ取りして今後管理をしていくかっていう、そこなんですね。最終的には政治の、日本の力が問われてるんじゃないかなと僕は考えています。

土屋 解説委員

政治が問われてるというのはまさにそうで、原則屋内禁煙にすることというのはかなり広い支持があって、これは先月、NHKが電話世論調査を行ったものなんですけれども、屋内原則禁煙のような、厚労省が主張しているような案がよいという支持をする方が44%。
そして、自民党の中で検討されているような、例えば一定規模以下の飲食店はすべて表示をすれば喫煙可の店もできる。そういった、例外を広げていくようなことを支持する方が24%と、屋内原則禁煙の方向に向かうことを支持する人が多いと。
いま成人が、8割の方は吸わなくなっていますので、より厳しい受動喫煙対策を求める声が多いというのは確かにあると思います。

岸 さん
僕は分煙は日本のいい価値観だと思ってますから、それは認める必要があって、ただ、当然ちっちゃいお店なんかは分煙スペースを設置するお金もありませんから、そこは政府はしっかり補助金を用意して、困らないようにするっていうのをやることは必要と思いますね。

土屋 解説委員
まさにそこの、屋内禁煙に向かうか、分煙という日本独自の方法を取るのかっていうのが、言ってみれば厚労省案と自民党案の大きな線で。

岸 さん
でも、そこは逆にお店に選ばしてあげればいいと思うんですね。

土屋 解説委員
そこもまた議論が先ほどからあるところで、お店に選ばせる、従業員に選ばせるというのが、実際にそれによって働いている人の権利を守れるのか。

岸 さん
そこはまず第一に雇用契約でやればいいし、第二に、それで辞めた場合でも、いま日本はこれだけ人手不足の社会ですから、ほかの仕事は十分見つかりますから、その問題をもって全部だめだというのはおかしいと思います。

土屋 解説委員
一方でまたお店の側にとっても、本当に売り上げが減るのか。それで経営が立ちゆかなくなるのかというと、そこはまた議論があるところですね。

首藤 アナウンサー
こういうメールも来ています。神奈川県40代の男性、吸わない方。
「たばこの収入をあてにしすぎ。本当に体に悪いならいますぐ禁止すべき」。

岸 さん
僕は規制でもう1個必要と思うのは、たばこの値段はもっと上げていいと思います。欧米なんかでは、ひと箱1000円ぐらいするのは当たり前で、日本はまだまだ正直言って安い。害があるのは事実なわけですから、そう考えると、そこはもうちょっと上げてもいいのかなっていうのは個人的には思ってます。

視聴者の声

「たばこ税を増税し、それを財源にして分煙室、禁煙室設置するための補助費とすればいいんじゃないですか」

村上 さん
お店に入るのはお客さんの自由じゃないですか。吸ってる人がいるところに近寄らない。けど、外での喫煙は、もうちょっとルールを増やしてもらわないと、結構厳しいかなと思うんです。

木本 さん
単純に法律とか条令とか、上からぎゅってしても、吸う人の数は減らないんですよ。ぎゅってしたら、吸う人はむにゅってあふれるんですよ。あふれた人は何するかっていうと、マナー違反をするんです。法律とか条令とかばっかりじゃなくて、まず吸う人がどう変わるかっていうことを考える段階かなと思うんですよね。

土屋 解説委員
確かに吸う人をどうするっていうこともすごく重要な話で、この手の議論で絶対忘れちゃいけないのは、喫煙者の中でかなりの割合の方は、きっかけがあればやめたいと思ってらっしゃる。でも、禁煙しようと思ってもうまくいかない、挫折される方いるじゃないですか。
私は、補助金という意味でいうと、例えば禁煙外来のようなところでは完全に公費で、やめたいと思ってる人はやめることができるような支援も必要だと思います。

木本 さん
分かりました。たばこ税を上げて、財源作って、たばこやめた人に賞金を与えるようにしましょうか(笑)。

首藤 アナウンサー
そしたら、やめるかもしれないですね。
「マナーを守ります」って宣言してたばこを買うっていうツイッターが私は響いたんですけど(笑)。きょうはどうもありがとうございました。

寄せられたご意見・ご感想はこちら

■番組では随時ご意見を受け付けています。現在募集中のテーマはこちらから。

ページの先頭へ戻る