2016年10月08日放送放送内容まるわかり!

ローカル線が消える!? どうする"地域の足"

いま、鉄道のローカル線を廃止する動きが相次いでいます。9月、JR西日本は広島県と島根県を結ぶ「三江線」の全線廃止を表明。 赤字路線を数多く抱えるJR北海道でも、この秋「JR単独では維持できない路線」を公表する予定です。 人口減少時代に入り、地方ローカル線の維持がますます難しくなる一方で、公共物として鉄道はなくてはならないものという声も根強くあります。これからの公共交通のあるべき姿とは?深読みします。

今週の出演者

専門家

加藤 博和さん(名古屋大学大学院 准教授)
齊藤 康則さん(東北学院大学 准教授)
田中 輝美さん(ローカル・ジャーナリスト)
松本 浩司(NHK 解説委員)

 

ゲスト

蛭子 能収さん(漫画家)
香坂 みゆきさん(タレント)


小野 アナウンサー
蛭子さんはバスがお好きなんでしたっけ?

蛭子 さん
鉄道も好きですよ。バスは、好きっていうわけじゃないですけど、仕事でしかたなく。

香坂 さん
しかたないんだ(笑)。

小野 アナウンサー
列車はお好きな方多いですよ。

視聴者の声

京都府・50代・女性
「学生時代に東北や山陰を旅行し、行商らしいおばさんや学生さんたちが乗っているのを眺めて、ほのぼのとした気持ちになったのを思いだします」。

和歌山県・50代・女性
「通学のために利用していました。遅刻しそうになって大声で叫びながら駅に行くと、友だちが車掌さんの手を引っ張って懇願して、待ってもらってました。すみませんでした」。

小野 アナウンサー
日本の原風景には列車があります。駅があります。そして...高倉健さんがいます。
きょうは偽物でお届けしております。


プレゼンテーション①

徳永 アナウンサー
いまニュースになっているのは中国地方と北海道なんですけれども、この流れ、全国に広まるんじゃないかと心配する専門家もいるんです。国全体が人口減少に入っていますからね。そこで、最も厳しいと言われている北海道の事例をもとに考えていただきたいという話でございます。じゃあ、いつもの模型に出発進行。

北海道って全国の中でも、鉄道が敷かれるの、早いほうだったんです。もう1880年にはレールが敷かれ始めました。

理由はね、これです。

香坂 さん
石炭を運ぶためにね。

徳永 アナウンサー
そう。資源を運ぶため。産業があったので、レールがたくさん敷かれました。

レールが敷かれれば、大量のお客さんも行ったり来たりして、町が繁栄していくというわけです。

このころは、直接、国が支えてました。長いこと国鉄といっていたぐらいですもんね。レールが敷かれれば町が繁栄する。"おらが町にも鉄道を"と、地元の方はもちろん、いろんな政治家や行政の人が動いたりして、路線網が拡大していきました。
しかし、そのあとのことは、皆さんご存じのとおり。エネルギーも石炭から石油へ変わりますね。産業がなくなると仕事求めて都会にみんな行かざるを得なくなり、

どんどんお客さんは地方から減っていきます。国鉄といえば、このイメージないですか?

ちなみに全国の国鉄、赤字に陥ったのって何年ぐらいからだと思います?

小野 アナウンサー
民営化されたのが1987年?絶対それより前ですよね。

香坂 さん
80年代なのかな。

蛭子 さん
1940年ぐらい。

徳永 アナウンサー
実は、これぐらい。

小野 アナウンサー
え、そんな前から? 1964年って、思いっきり右肩上がり、日本、高度経済成長期じゃないですか。

徳永 アナウンサー
前の東京オリンピックの年です。東海道新幹線が通った年。そこからもう国鉄は赤字。80年代には、全国で年間1兆円、毎年赤字だった。つまり、私たちが乗ってきた国鉄、本当はガタガタの状態。

香坂 さん
元気なイメージでしたけどね。

徳永 アナウンサー
本当頑張ってくれてたわけです、鉄道マンの人は。

ただ、さすがに経営的にはまずいよねと、1987年に分割民営化。

JR北海道として生まれ変わります。民間の会社になりますから、赤字路線はある程度廃止しなきゃいけなくなります。 実はこの時、大なたが振るわれました。北海道だけで路線にして22、線路の長さにして1500キロ近くが廃止になった。

小野 アナウンサー
その時は、JR西日本とか四国とか、そういうところも廃止の路線はあったんですか?

徳永 アナウンサー
結構、廃止になりました。ただ、ずば抜けて北海道が多かった。でも、これでもまだ赤字。採算だけ考えたら、廃止にならざるを得ない路線、もっとあったんですが、そうもいかなかった。まだ道路ができていなかったり、雪深いところがあったり、何よりも地元が、なんとかJRさん、とどまってくれませんかと。
ただ、もう国はいません。財政的に何とかしなきゃいけません。そこで、国やJR、すごい秘策を考えだします。ジャンジャジャーン。

「経営安定基金」。

香坂 さん
初めて聞いた。

徳永 アナウンサー
実は民営化の時に赤字が見込まれていた北海道と四国と九州に、それぞれ国が大量のお金を用意してくれたんです。これをうまいこと増やして、毎年赤字を補ってくださいっていうルールです。

香坂 さん
増やせた?

徳永 アナウンサー
増やせました。競艇ではなくて、ちゃんと運用しました。

香坂 さん
地道にね。地道に(笑)。

蛭子 さん
競艇じゃなく(笑)。

徳永 アナウンサー
いろんな国の債券だとか、それから、安定した会社の株を売ったり買ったりして。当時はバブル華やかなりしころ。

なんと1年で、ジャーン。

小野 アナウンサー
1年で500億近くも増えちゃう?

徳永 アナウンサー
いけたんですよ、当時は。ということで、ここにぴったりなんですな。
これでオッケー。これでしばらくいこう。JR出発進行!赤字、補てん、出発、赤字、補てんで毎年やってきました。でも、これでうまくいかないのはご存じのとおり。これでございます。

北海道もどんどん交通網が便利になりまして、特に高速道路や自動車専用道路、この30年で6.5倍の距離まで増えました。そうなると、免許がある方は車にどんどん行きます。飛行機も便利になります。残ったのは、免許を取りたくても取れない、年配の方や高校生。運賃収入がどーんと落ちます。
じゃあ、これだ。運用をもっと頑張ろう。でも、金融に頼ると長いこともたないのは、いつもそうかもしれません。

小野 アナウンサー
崩壊しちゃった、バブルが。

香坂 さん
あー、ちょっとになっちゃった。

徳永 アナウンサー
いま、これぐらい。これをあてがいますよ。

はい。足りない。 そこで、JR北海道、人件費を削ってぎりぎりのところで、なんとかしのいできたんです。でも、最近追い打ちをかける出来事が襲います。

まず「修繕費用」。国鉄のころからのレールを大切にしてきたんですけど、やっぱり限界で、直すの、お金かかるんですって。

さらに「災害」。北海道に台風ってイメージ、なかったですよね。大災害が起きるたびに、修繕にめちゃくちゃお金かかる。

そして残念ながら「人口減少」は止まっておりません。
ついにJR北海道は

「もう、ごめん、自分たちだけじゃ無理だー」って言い始めているということです。
もしかしたら将来、北海道だけでなく、全国でこの問題に向き合わねばならないかもしれません。そろそろ本気で考えるべきではありませんか? 人口減少日本。出発進行。

小野 アナウンサー
えっ、司会進行?それは荷が重いぞ(笑)。何から話しますかね。だけど、どのぐらい、危ない路線があるんですかね?

蛭子 さん
都会のほうは当然もうかってるんでしょ?

松本 解説委員

JR北海道は、札幌周辺はすごくもうかってるんです。ところが、それ以外のところですね、ものすごく利用者が少なくて、極端なんですね。
それで、JR北海道は近く、単独では維持できません、そういう線区を発表して、沿線の自治体、あるいは道と話し合いをしたいと言っていて、近く公表する予定なんですけれども、NHKが独自に案を入手したところ、これが結構衝撃的な内容なんですね。

検討の対象になっているのが2020キロ余り。ほぼ全部ですけれどもね。そのうち、単独で維持が困難とされるのが6割。維持可能は4割ですね。

小野 アナウンサー
もう無理って言われちゃったんですか?

松本 解説委員
JR北海道がこういうふうに考えていて、これからご相談をしたいと。地元と話し合いを、提案をしたいと。理解してくださいっていうことですね。
そのうち、特に厳しいところですね、極めて利用者が少なくて、ほかの交通機関のほうが適しているんではないかという線区が、だいたい15%ぐらいですね。これはバス転換などを提案する可能性があると思います。
それから、安全に鉄道サービスを続けるための費用を確保できない。そのために、線路や施設を自治体に一部持ってもらうとか、地域と共同で提案していくという案を提案するだろうとみられる部分がこれだけある。ただ、こちらの維持可能というのも、実は条件つきのものも含まれていて、非常に厳しい状況にあるということなんですね。

小野 アナウンサー
さっき蛭子さんが、都会はどうなの?っておっしゃったのは、東京や、ほかの地域も含めてですよね。

蛭子 さん
そうです。

松本 解説委員
厳しいのは北海道だけではなくて、先ほど経営安定基金という話がありましたけれども、それを受けているJR四国は北海道以上に厳しいと言われているんですね。
それから、JR東日本が只見線(福島・会津若松市~新潟・魚沼市)の問題を地元と話し合ってるところですし、さらに中小の地域の鉄道が全国96ぐらいあるんですけれども、その8割は赤字と言われていて、北海道だけの問題ではない。JR北海道の動きを各鉄道会社がすごく注目していると思います。

視聴者の声

北海道・70代・男性
「いまは車を利用してますので影響は考えられませんが、近い将来免許を返納したら、大きく影響があると思います」。

北海道・60代・男性
「地域の鉄道は廃線になり、高校生は多額な交通費でバス通学しています。経済的な負担が大変です」

小野 アナウンサー
地方行くと、電車代高いの、びっくりしますもんね。ちょっと乗っただけで、え、1000円、みたいなことありますよね。

加藤 さん
いまJR北海道の話が出てますが、30年前に民営化した時に比べて、いま問題になってる6割の路線は、その時から1桁ぐらい利用が落ち込んでしまってるんです。もしそれを運賃だけで維持しようとすれば、ものすごく高い額にしないといけない。でも、そうしたら、誰も乗らなくなってしまう。となると、地域で支えるか、バスとかに変えていかないといけないのが現実なんですね。大半の方は、車を自分で運転できるとか、家族に車を使える人がいるので、乗せてもらうことができるわけですが、一部の方はそれができないと。もう1つ大事なのは、車社会に合った町にどんどん変わってしまっていて、駅の近くに病院や高校がないことが多いので、鉄道が残っていても、なかなか使っていただけない。

田中 さん
そうですね。乗らないからダイヤも不便になったりして、だから、また乗らなくなって。どんどん悪循環に入っていく。

香坂 さん
それをいい循環に回す手立ては全くないんですかね?

視聴者の声

「郵便局とかと同様に、国のサービスの1つとして考えるなら、どうなのか。赤字でもやむなしなのではないかなと思う。何のための税金なのだろう」

「もう1回国鉄に戻したらどうか」

香坂 さん
国鉄に戻すんだ(笑)。もうかってるとこと、大変なとこと、足して割ったら何とかなんないんですかね?

加藤 さん
国鉄も、いまのJRも、そういう考え方なんですがね。しかし最近は、都市部でも人口減少であるとか、少子化。これで、高校生の利用が少なくなってきた。あるいは病院とかが駅の近くにないので、高齢者の方も利用が決して増えていないってことで、もうかるところが、あまりもうからなくなりつつあるというのもあるんです。

小野 アナウンサー
山手線なんか、ものすごい人、乗ってるじゃありませんか。そういうところのもうけで、地方の路線を維持するみたいなことってないんですか?

齊藤 さん
その仕組みが2000年に入るころから変わってしまって、規制緩和って90年代ぐらいからありましたよね。そういう流れの中で、もともとは国が許認可といってそういう権限を持ってたんですけれども、それがだいぶ変わって、自由に、届け出だけで、2~3年で廃止ができてしまうようになった。これが大きな要因としてある。そのことによって、ちょうど10年前ぐらいですね、いろんなところで廃線が出てきてしまったという現象がありますね。

小野 アナウンサー
でも、このままいくと、経営安定基金を食いつぶして終わりみたいな感じもしますもんね。どうしたものか。

加藤 さん
通常は、先ほど申したように地域で支える。地域にとって必要な鉄道、公共交通は地域で支えるということが原則であると。

香坂 さん
でも、その地域が寂しくなってる感じですもんね。

加藤 さん
そうなんです。JRの場合はすごく路線が多かったので、経営安定基金の考え方ができたということですが、利用がすごく少なくなってしまったいまになってみると、地域がかなり頑張っていかないといけないっていうふうに変わってきたということです。

小野 アナウンサー
考え方に限界が来たんですね。経営安定基金で利益を生んでという。

松本 解説委員
JRができて30年になるんですけれども、すごく大きな分かれ目というか、分岐点に来ていると思うんですね。JR九州は、経営安定基金をもらっているんですけれども、今月上場が予定されている。つまり、これが1つ国鉄民営化の目的だったわけで、これでJR東日本などに続いて、九州はなんとかここまで来たと。一方で、北海道と四国はものすごく厳しい状況になっていて、事実上、北海道はギブアップですよね。

香坂 さん
九州はおもしろい電車がいっぱいありますよね。びっくりするぐらい。

小野 アナウンサー
でも、北海道だって、電車走ったらすごく魅力的な感じしますよね。それこそ、「ななつ星」みたいな列車が北海道をぐるっと走ってくれたら、乗りたい人、いっぱいいるんじゃないかと思いますけど。

加藤 さん
九州は北海道よりも人口がずっと多いのと、大きな都市が散らばってありますので、その近くで魅力的な列車を走らせれば、それなりに人が来ていただける。ただ、北海道は非常に広いですし、札幌に集中してますし、東京からも時間がかかるってことで、観光向けの列車を走らせてもたくさん来ていただけるかどうかは分からない。そちらも結構大変なことです。

小野 アナウンサー
田中さんは島根でお仕事なさってて、JR三江線(島根県・江津市~広島県・三次市)が今度なくなるんですよね。

田中 さん

はい、そうなんです。地元です。本当に大好きな鉄道でもあったので、残念というか、悔しいというか。ですけど、利用者がどんどん減ってきて、というか、全国最先端で人口が減っていて、そういう中で、鉄道事業者と地域が手を携えて努力をしないと、人口減少の波には勝てない。住民も努力したり、JRも別になくしたいと思ってたわけではないと思うんですけども、かなり力を入れて、工夫なり努力していかないと、鉄道は守れない、残せない。それが1つの教訓というか、すごく感じたところです。

視聴者の声

東京都・50代・女性
「国も自治体も大幅な赤字を抱えて、人口が減少していく中で、すべてのインフラを維持し続けることは不可能だ」。

大阪府・60代・男性
「公共交通機関は、食、水道や電気と同じ社会生活を支えるインフラです。その維持・管理には公費の投入、つまり、税金からっていうことは当然だと考えます」

東京都・60代・男性
「税金を投入すればするほど、鉄道会社は努力しなくなるように思います」

香坂 さん
でも、すごい速く走る電車に、お金かけたりしてるじゃないですか。その分そっちに向けるとか、何かうまいこと、なんないんですかね?

松本 解説委員
JR東海はすごくもうかっていて、超優良企業ですよね。JR東日本もそうですけど。単独でリニア新幹線を作ろうと言っているくらいですよね。だから、北海道の人は、そんなに余裕があるんだったら、こっち回してくれよっていう思いはありますよね。

小野 アナウンサー
できないんですか?

松本 解説委員
結局、国鉄がなんで超赤字になったか、37兆円もの赤字になったか。経営がまずいところもあったんですけど、無理して採算の悪いところをたくさん抱えて込んでしまったわけですよね。それをどうしても切れないというか、見切りがつけられないと。
で、JRを分けて、不採算の路線は整理をして、それから、厳しいところは経営安定基金を入れて、これでなんとかリセットしましょうと。その代わり、株式会社にして、経営をきちっと考える、っていうのが30年前の改革だったわけです。
ところが、いま北海道と四国についてはものすごく厳しくなってしまって、元に戻したらいいんじゃないかって議論がある。そういう気持ちは分かるんですが、ルール上、法律の上では、それは無理なわけなんです。

小野 アナウンサー
1回民営化したんだから。

松本 解説委員
その趣旨と逆方向になってしまう。

齊藤 さん

仕組みとしては「上下分離方式」っていう考え方があります。鉄道会社って、線路も持ってて、電車も走らせるっていうのが基本的な形だと思うんですけれども、レール(下部)の部分に税金を入れる。それで、運行(上部)を鉄道会社がやる。でも、自治体は地方に行けば行くほど、財政力が疲弊をしてますので、下部のインフラの部分を持てるんだろうか。モータリゼーションが進んで、人が乗らなくなっている中で、インフラの維持に住民の支持が得られるかどうかっていうところが、問われてくるのかなと思います。

加藤 さん
例えばバスを考えたら、下部は道路ですね。これは国とか自治体が作っている。上部はバス会社がやっている。これは飛行機でも、船でも、同じような考え方。でも、鉄道だけが両方とも一体で持つということだから、下部を自治体や国が整備するのはありうる。ただし、すごく鉄道ってお金がかかるんですよね。維持する気になるような魅力的な鉄道にして、たくさんの方に乗っていただかないと、税金を払っていただくのは難しい。

視聴者の声

「バス転換が進むのかな。道路整備のコスト、利便性を犠牲にしたり、失敗するところもありそうだけど」

「列車ばかりが注目されますが、バスも一緒です。1日に1往復しかないバス停なんてざらですよ」。

蛭子 さん
俺、バス旅、よくやってるんですけど。本当1日1本しかないバス停、結構あるんですよ。

小野 アナウンサー
でも、その1往復がライフラインっていう人も、きっといらっしゃるでしょうね。

香坂 さん
これから年配の方が増えていくってことは、免許も持ってたけど、使わなくなる、使えなくなる方が増える国になるわけでしょ。そしたら、どこも行けなくなっちゃいますよね。

齊藤 さん
乗り物がどんどん小さくなっていくっていうんですか。鉄道が走ってるところが、バスに代わりますよね。これも数人しか乗ってないってなると、今度コミュニティーバスとか、乗り合いタクシーとか、乗せる箱っていったらいいでしょうか、どんどん小さくなっていく。その小さいものをどう維持してくかっていうことも問われてくるのかなと思いますね。

小野 アナウンサー
列車を何としても維持していこうとするのか、上下分離方式を使って維持しようとするのか、バスに変えていくのか。いろんなことが考えられると思うんですが、その際に参考になるかなというプレゼンです。


プレゼンテーション②

徳永 アナウンサー
電車残すか、鉄道残すか、バスにするか、いろいろ議論ありますよね。いつも私たち、ハードのほうを気にするんですが、本当にそれだけかなっていう問いかけをしてくれている事例があるので、ご紹介します。

長野電鉄の屋代線。長野市の郊外を走っている私鉄だったんです。本当に努力してきたんですが、赤字は何ともならず、

残念ながら2012年の廃線になり、代わりにバスになることが決まった。その時の話をいたします。

廃線が決まった当時、地元は相当なショックでした。怒る人もいました。

そこで、きょうお越しの加藤さん、登場でございます。
各地の廃線になった地域にアドバイスしていらっしゃるんですけども、問いかけます。「住民の皆さんの声を、とにかくいま聞こうじゃありませんか」と。いまこの時代に、「声を聞こう」というのは誰のことを言っているんですか?もう1回考えてみましょう。
車を自分で運転できない、公共交通に頼ってるのは、お年寄りと高校生。この人たちにとって使い勝手のいい交通ならば、バスでもなんとかなりませんか。さあ、これで、自治体も考えてみようかってなったそうです。
本当に徹底して聞いた。

まず、4000人にアンケート採ります。病院と高校に絞って、ピンポイントで。

「バスになったら何が嫌?」「何が不安なの?」って聞くと、結構意見が出るんです、具体的に。「バスって渋滞するでしょ。学校遅刻するよ」「運賃が分かんないんだよ」「そもそも乗り方知らないんだよ」などなど。
さらに、ワークショップ

これから時刻表とかコースを決めるにあたって、自治体や、バス会社だけじゃなくて、住民の人に、直接入って、話し合って、決めてもらおうと。ここまで徹底いたしました。できた路線は、かゆいところに手が届く路線になったような気がいたします。ちょっと見てみますか。

この黄色い点線が廃線になった、電鉄の線。そして並走して走ってる、これが幹線道路。ここにバスを走らせるのが常識です。そうすると、それぞれの不安があるので、これを解消しようと。
まず、高校生。言ってましたね。「渋滞したら遅刻しちゃうじゃん」。実はこの路線の北の端にみんなが通う高校があります。電鉄で通ってました。ところが、車になると、渋滞しちゃって遅刻しちゃうよ。分かった。じゃあ、特別だよ。

朝だけ、渋滞区間ワープ作戦!南から走ってきたバスが、インターで高速道路に乗って、高校に遅れずに行きましょう。こういう朝だけの特別コースにしました。
そしてお年寄りの声を思いだしてください。「駅より遠い停留所はつらい」。実は、真ん中の辺に、病院がある。この南側の住宅街に住む方が、この駅で電鉄に乗って病院に行ってたんです。でも、バスが走るとなると、このさらに向こうにある幹線道路に渡ってバスに乗らなきゃいけないっていうのが、もう足腰しんどいと。バスになるんだったら、行くのおっくうだなっていう。

香坂 さん
そのちょっとが大変なんですね。

徳永 アナウンサー
そこで、自宅の前にバス停が来る、超遠回り作戦!お昼と夜の便の限定です。こうやって回ってきますでしょ。よいしょと、住宅街の中を遠回り。バス停たくさんあるんです、ここ。

香坂 さん
本当だ、細かい。

徳永 アナウンサー
で、お年寄りが病院に楽に着けるようにした。
さあ、やってみて、いいことも悪いこともあったそうです。赤字の額は、鉄道のころよりも縮小。ただ、乗る人の数も実は減ってしまっていて、議論や試行錯誤はいまでも続いています。バスだろうが、電車だろうが、この「住民の声をとにかく聞こう」というメッセージ、どう受け止めますか。

蛭子 さん
それは大事だと思いますよ。

加藤 さん
結局、どうして廃線に至ったかっていえば、利用される方のニーズと、線路の方向やダイヤとかが合わないということなんで、この場合は、病院の近くにも停留所がなかった。だったら、病院の玄関までバスが行き、自宅の近くからも乗れるようにしたほうが、いまの鉄道よりも高齢者にとっては便利じゃないですかと。ただ、私がそうしましょうって言うだけでは納得していただけないんで、皆さんとお話をして、直していくという、そういうことをやったということなんですね。

齊藤 さん
「地域公共交通」みたいな考え方って最近あるんです。昔、「公共交通」とだけ言われてたんですけど、最近「地域」がくっついてきて、まさに住民参加。この場合だと、すごくストレートに早く行けるものと、ぐるっと回っていて、きめ細かく回るものと組み合わせる。そういうことを住民参加で話し合いながら工夫して、試行錯誤だと思うんですね。これが完成形ではないと思いますので。

香坂 さん
乗せるほうも、乗るほうも、話し合う。一緒に。

視聴者の声

「日本全国に電車が走っていることは、社会の豊かさ、人に優しい社会の象徴だと思います。なくなった時に存在の重要さに気付くと思う」

「鉄道がなくなれば、道路は渋滞するでしょうし、観光地も廃れてしまいます。鉄道会社の赤字だけでなく、地域社会に及ぼす影響もしっかり考慮したほうがいいと思います」

田中 さん
私は「乗り鉄」っていう、乗るのが好きな鉄道オタクなんですけども、ほかにも写真撮るのが好きな方とか、時刻表が好きだったり、車両が好きだったり、すごくファンのすそ野が広いので、鉄道があるだけで人がやってくる効果は絶対にありますが、鉄道を"残す"というよりも、鉄道をどう"生かす"か、そういう視点がないと、残っていかないと思います。

肥薩おれんじ鉄道というところがレストラン列車を走らせていまして、鉄道の中なんですけども、温かい料理、コース料理を出して、コーヒー以外は100%地元産ですと。地元のシェフに監修してもらって、地元の食材を提供して、海外からも、国内からも、たくさん人がやってくるんですね。こうやって、鉄道があるからこそ人が来る。それをどうやって地域に還元して生かしていくかが、これからは大事じゃないかなと思います。

松本 解説委員
肥薩おれんじ鉄道って、利用率がものすごい低い、厳しい鉄道ですよね。だから、もう鉄道っていう概念じゃなくて地域の資産なんで、それを生かしてお客さんを呼び込もうと。テーマパークじゃないですけども。

田中 さん
そうです。人を呼び込むインフラというか、地域を活性化させるインフラとして、鉄道も、これからはどうやって地域と鉄道会社と住民と一緒になって生かしていくか。

齊藤 さん
まちづくりですよね。基本的には鉄道ってどっか行くために乗るんですけども、乗る目的がここにある、みたいな感じを作りだしていくことは、大事だと思います。バスでも鉄道でも一緒ですけれども、沿線にどういうものがあるのか、住民自身が歩いてみて、発見して、小さな観光、例えば地域史であったり、郷土史であったり、ある種「ブラタモリ」的な感じでやっていければ、結構乗る目的ができてきますから。

香坂 さん
毎日ここを学校行くために乗ってる人って、この景色がどんだけすごいのかとか、あまり感じてないから、外の人が行って。

田中 さん
そうなんですよ。ここすてきだねって言われることで地域の人も、誇りが持てると思います。

加藤 さん
こうやってほかからお客さんを呼び込むっていうのはすごくいいし、こういう形でやると、1人が払ってくれる額も大きいので、収入にも貢献できる。ですが、注意しなきゃいけないのは、こればっかりに頼ると、地域の皆さんが、これでもうかってるから、われわれは何もやらなくていいと。そう思ってしまうとまた問題でして。
ですから、1つは、こういうことに地域の皆さんが参加する。新しい料理を考えようとか、新しい企画を俺たちもやろうとか。それから、高齢者とか高校生の皆さんは日常的に乗るので、1回に払うお金は少なくても、年間にすれば結構な額を払っていただける。そういう常連さんをたくさん作っていく。この2つを並行してやることが鉄道を残す鍵になる。

田中 さん

住民の力ってすごく大事で、5年連続乗客数が増えている北条鉄道(兵庫県)では、トイレがきれいじゃないといけないと、一生懸命寄付を募りまして、3000万円ぐらい市民の方から寄付を集めて、ボランティアで工事をして、その方々の名前を銅板で掲示して。そうすることで、ふだん乗らなかったけども、自分がちょっとお金出したり、工事に関わったり、名前が載ったりして、自分とも関係あるんだなって思える。結局乗る人が少ないから、地方では鉄道が自分事ではなくなってるんですね。だけど、こうやってちょっと、お金だけでもいいんですけども...

香坂 さん
関わる。

田中 さん
そういうことです。そうするとぐっと自分事になって、じゃあ1回乗ってみようかなとか、鉄道のこと気になったりとか、やっぱりあったほうがいいんじゃないとか。これで意識がすごく変わって、この地域で鉄道なくせっていう声はほとんどないんですね。

加藤 さん
自分事ってすごく大事です。鉄道を残すにしても、誰かが助けてくれるからではなくて、自分たちでどうやって生かしていくかを考えなきゃいけないし、逆になくす時も、バスとかほかに公共交通のやり方はたくさんあるわけだから、地域に合うやり方、自分たちが支えられる方法を考えてやっていく。そうでないと、ますます減ってしまう。

齊藤 さん
廃線の危機から、地域を捉え返すってことが大事っていうことでしょうね。自分たちの問題としてね。

小野 アナウンサー
そうか。「まずは乗ることだ」という声が来ています。どうもありがとうございました。

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