2016年02月13日放送放送内容まるわかり!

子どもは欲しいけれど...不妊治療 理想と現実

今、不妊治療を行う夫婦が増加、生まれてくる子供の24人に1人は体外受精によるといいます。 一方、高齢出産は母子にかかるリスクが高いことから、不妊治療に頼り過ぎることに否定的な考えもあります。 実際、体外受精の成功率は40歳で8.3%。進む医療技術と現実のはざまで、多くの夫婦が悩んでいるのです。 不妊治療をいつまで続ける?どうすれば悩みが軽くなる? ご意見を寄せてください。

不妊治療に悩む人のサポート団体
NPO法人 Fine(ファイン)
http://j-fine.jp/

今週の出演者

専門家

吉村泰典さん(元日本生殖医学会理事長)
小倉智子さん(NPO法人Fineカウンセリングスーパーバイザー)
堀田あきお さん(漫画家)
堀田かよ さん(漫画原作者)
村田英明(NHK 解説委員)

 

ゲスト

田村 亮さん(タレント)
早見 優さん(歌手)


プレゼンテーション①

中山 アナウンサー
そもそも「不妊」には定義があります。

1年間、男女が子作りをし続けても妊娠に至らないと、不妊。日本産科婦人科学会がそう定めているんです。

検査や治療の経験がある方が6組に1組。年々増え続けております。

そうした皆さんが直面している現実を、今日は、深読和さんと読子さん、40代のご夫婦で見ていただきます。
この夫婦も不妊に悩んでいて、検査を受けるべきかどうしようと思っていた。そんなときにテレビを見てみますと、いろんな情報が、いま入ってきます。

あぁ、あの芸能人が不妊治療で高齢出産したんだ、あの人も、あの人もだ。
治療費については、どうも国が助成金出してくれるらしいよ。
特集番組でやっていたけど、卵子も年とともに老化していくんだ...。
というような情報に接しているうちに、今しかない、今ならまだ可能性がある、と病院を目指します。

不妊治療をしている皆さんにとって希望をつなぐ場であるこの病院。

多くの女性が待合室におります。読子さんと同じような世代の方も多いです。
待ち時間がずいぶん長いものになるそうなんですけれども、ここで待って、診察となります。
「では、読子さん、この治療法でいきましょう」と最初に医師から言われるのが。

「タイミング法」。
毎日の体温を測るだけでなく、血液検査や尿検査、超音波検査などを使って、いつが排卵日なのかを正確に見極める。

医師が「このタイミングだと妊娠しやすいですよ」と指導をしてくれて、読子さんはおうちに帰って、「この日です」という日に子作りをする。
最初はなるべく自然な形での妊娠を目指すんです。
2週間後、結果が判明します。お二人、どうでしたでしょうか?

タイミング法を何度か続けてもうまくいかないと、次にする治療法が「人工授精」。

これは、先ほどと同じように「このタイミングが妊娠しやすいですよ」となると、今度はおうちに帰るのではなくて、旦那さんに病院に来てもらいます。

そして、旦那さんの精子を採取します。

この採取した精子を、細い管を使って子宮の中に入れる。おなかの中で受精するのを待つ。
で、結果はどうか。2週間後。

人工授精の1回あたりの成功率って調べてみると...。

これぐらいなんですって。なかなかうまく受精卵にならないことがある。
人工授精でもなかなかうまくいかない、となると、医師からは次にこう言われます。
「高度な医療技術を使った治療法を進めましょう。」

これが「体外受精」と呼ばれるものなんですね。
今度はおなかの中で受精卵になるのを待つんじゃないんです。外で受精卵にしちゃいます。

読子さんの卵巣に針を刺して卵子を採り、これを受精させます。
時には卵子に直接、精子を入れることもあって(=顕微授精)、確実に受精卵にする。

この受精卵をおなかに戻すと。
体外受精は高度な医療技術となりますので、お金は1回あたりのサイクルですと、これぐらいかかると言われているものなんです。

それで、結果がどうか。2週間後。

読子さんはまたチャレンジしていくわけなんですけれども。
そのチャレンジの中では、お金の負担だけじゃなくて、体への負担もあるんです。卵子を確実に取り出すために薬を使う。

これ、おなかが痛くなったりとか、めまいがしたりと、副作用があるんですって。
そうしたことをして、また結果はどうか。

実は体外受精で子どもが生まれる成功率って、読子さんのような40歳では8.3%。45歳にいたっては、0.8%なんです。

どうしてこれほど成功しないのか。その根本にあるのがこのお話。

やはり、年とともにどうしても卵子が老化していく。
高度な医療技術を駆使しても、老化という部分に対してはなかなかかなわないというのが現状なんだそうです。

早見 さん
20代の時に、卵子って老化するって、そういう知識もなかったですね。

小野 アナウンサー
なかったですよね。

中山 アナウンサー
でも、体外受精の治療件数は、40歳以上の方々が41%を占めている。
治療を続ければ続けるほど、時間もどんどん過ぎていく。

早見 さん
夫婦間のストレスもありますよね。

中山 アナウンサー
そういったことも抱えながら、時間を重ね、年齢を重ねていくと、妊娠の可能性はさらに遠のいていきます。でも、ここ見てください。ゼロじゃない。

可能性はゼロじゃないから諦められない。
この不妊治療の現実に挑む夫婦が、増えているんです。

早見 さん
タイミング法の確率は、人工授精以下なんですね?

吉村 さん
それはもちろんそうですね。
35歳から急激に、体外受精や顕微授精をしても、妊娠率は下がってくる。
タイミング法とか人工授精とかいう方法ではほとんど妊娠できなくなるから、皆さん、体外受精を受けられるわけですよね。
現実はデータとしては突きつけられるわけだけれども、おふたりの気持ちに寄り添うということが治療の根本になると、僕は思うんですね。
そのおふたりがどのようなお考え方をされているのかということが、いちばん大切なんじゃないかなというふうに思います。

小野 アナウンサー
卵子が老化するって知らなかったと早見さんもおっしゃいまして、最近の話ですよね?

吉村 さん
「卵子の老化」という言葉は4年ほど前にNHKの番組が報道したもので、 私たちは医学的には「卵子のクオリティーの低下」というような言い方をしていたんですけれど。
「老化」という言葉がいまや普通の言葉になって、われわれも「老化」という言葉を使うようになりましたね。

田村 さん
それは卵子のほうなんですか?着床しづらくなるというのは、あまり関係がない?

吉村 さん
そういうことではなくて、卵子自体のクオリティーが低下するということですね。
受精ができなくなるとか、そういうことですね。

早見 さん
男性側の精子はどうなんですか? 老化はしないんですか?

吉村 さん
男性の精子は老化はしないというふうに言われていたんですけど、最近は、精子に関してもいろいろな問題点があるというデータが最近出つつあります。

小野 アナウンサー
しかし、つらいでしょうね。東京都の40代の女性から、こんなメール来てます。

それから、ツイートでも、いろいろ来ています。
「夫婦ともに原因不明の不妊。体外受精で息子を授かりましたが、精神・肉体・金銭的負担がのしかかるので、せめて治療が保険適用になることをせつに願います。」
「かみさんの話だと、子どもができないで産婦人科に通うと、おめでた妊婦さんと一緒にいるだけで精神的につらいとのこと」。
こんなに険しい道が待っていると知っていたら、治療に進まないという人もいるかもしれませんよね。

田村 さん
僕は、産婦人科で妊婦さんと同じところに並ぶって今知りました。
違うところやったらまだ...。大変ですね。

小野 アナウンサー
今日は、実体験をされた漫画家の堀田さんご夫妻にも来ていただいてまして、漫画からご紹介しますね。




...というような、迷ったり、でもやっぱりもう1回挑戦しようというような繰り返しの中で10年間。
苦しかったですよね、きっとこれは。

堀田かよ さん
10年間ずっと続けていたわけじゃなくて、くじけてもうやめようと思ってしばらくやめて。
でもそうすると、やっぱり欲しいなと思って、また病院を変えて。
別の病院でまた1からやり直しみたいなことを何度も何度も繰り返して、気がついたら10年たってました。

田村 さん
漫画にされたタイミングはいつやったんですか?治療の途中で?

堀田かよ さん
これは、もうずいぶんあとになってなんですけれども、実は不妊治療をやっていたのはもう25年前から15年前までで。
漫画を描き始めたのが10年くらいなので、気持ちも落ち着いてすっかり抜け落ちてから、思い出して描いたような形です。

早見 さん
きっと読まれる方も共感できる部分があったり、すごく助けられたと思うんですけれども。
堀田さんご夫妻みたいに表現できる場があるというのは、ある意味、すごく精神的な支えになったのではないでしょうか?

堀田かよ さん
そうですね。勝手なことを描いてこんなつらかったんですよっていうのを作品で描くことができて、 それをみんなに分かってもらえるっていうのは、とても自分の中でも気が楽になりましたし、 ほかの方に共感してもらえるところでそれが喜びにもなって、描いてよかったなと。

小野 アナウンサー
不妊治療をやめる時の場面がこちらで。


諦めるという決断をされたのはどうしてだったんですか?

堀田かよ さん
諦めるというよりは、本当にその漫画に描いたとおりに、 気持ちがぷっつり切れたっていうのがいちばん近いんですけれども。
ある種、気が済んだっていうのもあるんです。うちは体外受精まではいかなかったんですけれども。
10年間いろんなことをやってきて、2人でいろんなことを話し合って考えてきて、 もういいかもしれないねっていうところで気が済んで納得して。あとは疲れ切ったというのもあるんですけれども。
諦めたというよりは、気持ちがそこでふっと切れたという感じです。

小野 アナウンサー
こんな状況の中で、夫という存在として、あきおさんはどんな日々を過ごされたんですか?

堀田あきお さん
自宅で仕事も一緒にやっているので。
治療する時も一緒に行ったりするんですけど、疲れて病院から帰ってきたり、それから、治療自体もしんどかったりするのを見ているので。
会社で働いていればそういうのがないかもしれないですけど。
僕の場合は一緒だったので、彼女の姿をよく見ていたので、つらさはよく分かっていたんですね。

小野 アナウンサー
この声についてはどう考えたらいいのか、国の助成金についてのお話かもしれません。

視聴者の声

東京都・20代・女性
「そこまでして子どもが欲しかったのなら、早めに結婚したらいいのにと思う。そこで税金が使われるのはむだだと思う。生まれない子どもに税金を使わないで、生まれてくる子ども、赤ちゃんに税金を使ってほしい」。

村田 解説委員
よく聞くご意見ではあるんですけども、この問題をどう考えるかという視点が大切だと思います。これは個人の問題だけではないと思うんです。
つまり、社会的に高齢になって出産せざるを得ない状況というのが今あるわけですよね。
日本で体外受精が初めて成功したのが1983年。その3年後には男女雇用機会均等法ができます。
そこから女性の社会進出がものすごく一気に進むわけですけども、そういう中で晩婚化・晩産化が進んで、高齢になって産みにくくなる、妊娠しにくくなる人が圧倒的に増えてきているわけですね。
一方で、生殖医療の技術は進んでいますから、そうしますと、だんだん高齢でも産めるんだというような状況になってくる。
ニーズがある中で技術が進んでいるところで、どんどんどんどん高齢出産が増えていく。
そういう状況が現実で、男社会の中で一生懸命頑張って働いてこられて、産みたくても産めないような状況にある方々が今たくさんいて苦しんでいる。
これが現実だと思うんですよ。これを「社会的な不妊」といいますけども、そこに焦点を当ててどうしたらいいのかを考えることが大切だと思います。

早見 さん
卵子が老化することが一番の原因だとしたら、卵子の凍結とか、そういう技術は発達しているんですよね?
その知識をもう少し普及して...。でも、凍結するのもお金かかるんですか?

吉村 さん
それはかなりのお金がかかります。
医学的な適応じゃなくて、社会的な適応っていうんですけれど、若い女性が、将来自分が妊娠するために卵子を凍結しておくということも、選択肢の1つとしては今あると思うんですよね。海外では十分に行われています。
だけど、今のデータからしますと、凍結した卵子で必ずしも妊娠できるわけではないということと、それから、卵子のクオリティーがよければ、理論的には高齢になっても妊娠できる。
45歳、46歳になっても妊娠できるということになりますね。そうすると、高齢妊娠、高齢出産ということになると、母児に対するリスクも高くなる。
そういうことを知った上で、社会的な卵子の凍結ということを考えていただきたいというふうに思います。

田村 さん
お医者さん的な感覚でいうと、全体的にはもうちょっと早めに、結婚してほしいってことですよね?
今バリバリ仕事をしてて、そこで地位を確立してからじゃないと結婚できないという人は多いと思いますけど、だけど、知識的なこと、自然なことでいうとそうやから、雰囲気をそっち側にするしかないんですよね?

吉村 さん
今おっしゃったような、若い女性が卵子を凍結しなくても子どもが生み育てられるような社会をどうかして早く作っていく必要があります。

村田 解説委員
そういう中で今新しい動きがありまして。

国は体外受精、顕微授精に助成金を出していますけれども、これまでは年齢制限がなかったんですが、この4月から42歳までというふうな1つの線引きをしようと。
あくまで助成金なので、43歳になっても治療を受けたい方は受けられる。
だけれども、これをどう考えたらよいのか。
いろいろ意見があると思うんですが、私が思うには、どこまで治療を続けるんだろうかと悩んでいる方がたくさんいらっしゃるわけですから、立ち止まって考えるきっかけがどこか必要だと思うんですよ。
そういう意味では42歳、助成がここで打ち切られるというところで、私たちはこれからどうするんだろうと考えることを、そこから始めなきゃいけないのかなというふうに思うんです。

小野 アナウンサー
でも、可能性はゼロじゃないんですから、そこにかけたいと思う気持ちは、誰かが勝手にやめなさいよっていう権利も、またないんじゃないですかね?

吉村 さん
国の助成は平成16年から始まっているんです。
今年の4月からどうして43歳未満と切るの?という言い方をよく私たちも受けますけれど、これまでの助成金を見てみますと、ほとんどの方が42歳までで、妊娠される方は42歳までだったということがあるんですね。
それから、助成金は10回までだったんです。それも6回に減らされた。
これはどういうことかというと、妊娠している方は、6回までの治療でほとんどの方が妊娠されているというようなデータから、こういうことになったということですけど、小倉さんなどはどういう時に患者さんが治療をやめたらいいのかとか、助成金に対してもお考えがあると思うんですけどね。

小野 アナウンサー
いろんな体験談の、おつらい声、来ています。
「離島に住んでいます。治療も高額ですが、プラス交通費、本当に大変でした」。
「結婚して『子どもまだ?』。子どもできたら『2人目まだ?』。この攻撃はつらいですね。そっと見守ってほしいです。それだけでも精神的に負担になります。」
「不妊治療をしていますがなかなか授からず、心も体も財布もぼろぼろです。次回こそはとの期待から、やめどきも分からない」。
小倉さんのところにも、そういうお悩み多いですか?

小倉 さん
はい、すごく多いですね。やめどきが分からない。
頭では、妊娠にいたる確率をよくご存じなので、私よりも詳しい方がたくさんいらっしゃるんですけれども、頭では分かっている、でも、気持ちは子どもが欲しいという願いがある。
しかも、可能性が0%ではないとなると、やめどきが難しいというふうによくおっしゃいます。

視聴者の声

「40代は子どもを産むなといっているようなものですね。この世代の不妊治療をもっと手厚くしないと、少子化は止まらないんじゃないですか。」

小野 アナウンサー
私も40代なので、確かに20代のころは高齢出産のニュースを見ると、50歳ぐらいまでに産めばいいのかなって正直思っているうちに、手遅れになりました。
でも、ちょっとでも希望があるならと希望をつなぐ人たちの気持ちは、痛いほど共感できますし、そこに手を差し伸べないのは何か無念というか、20代30代で、今もうちょっと仕事頑張らないと、という時に産めるような社会でもなかったですよね、という。甘えているかもしれないですけど、でも、そんな状況じゃなかったんですけど、というつらさをどこに振り向けたらいいのかなと。

吉村 さん
いや、そうではないです。甘えていないです。

早見 さん
特に今、女性の社会進出を応援している中、すごく難しい選択ですよね。社会全体が変わらなければいけないなとも思いますし、私も42歳なんだってちょっと驚きました。まだまだいけるんじゃないかなって思うくらいなんですけど。

吉村 さん
早見さんのような方でも、卵子の老化っていうことはご存じなかったと。
そういうことは教育されてこなかったというふうに思うんですけど、われわれ医療者側がそういった教育をちゃんと若い男女に、女性のみならず男性にも教えるということは、私は極めて大事なことなんじゃないかなというふうに思います。

小野 アナウンサー
男性に関するメールはたくさん来ていますね。
「不妊って女性だけが原因じゃないよね。」

吉村 さん
そうですね。カップルの4割は男性に原因がありますね。

視聴者の声

「さすがに40代の不妊治療は不毛すぎる。晩婚化の対策をするほうが現実的だ。」

「子どもが欲しい人は35歳までの人生設計を考える必要がありますよ。」

村田 解説委員
最初に不妊治療に行くのは女性だけで行くようなケースが圧倒的に多くて、本来であれば、夫婦でそろって行って、そこでやらなきゃいけない問題だと思うんです。
ところが、女性任せになっている現実があるんですよね。そこから変えていかなきゃいけない。
今、吉村先生から、教育の中でもしっかり男女ともに教えなければというお話がありましたけど、まさに大切で、産みにくい世の中になっているのは、男社会だからなんですよ。
企業もそうですし、小野さんの話の中にもあったけれども。妊娠・出産は女性の役割だというふうに私たちは思っているところがあるので、そこから変えなきゃいけない。
そのために教育は非常に大切で、男性・女性がそろってともに、不妊を含めて妊娠・出産を考える、そういうふうにしていかないと何も始まらないような感じがします。

早見 さん
メールを拝見していると、「夫に申し訳なかった」とか、1人ですごく抱えてらっしゃる方が多いなっていう印象なんですけど。

小野 アナウンサー
ですよね。この世の中がどうしたらもっとよくなるのか、そこにちょっと無念のエネルギーを注ぎたい気持ちにもなってきました。

田村 さん
僕は、知り合いのディレクターの女性で男社会で思いっきりやっている子たちが30代真ん中ぐらいの時には、なるべく俺は「絶対に仕事は離れられる、大丈夫やから」となるべく言うようにはしていました。
その時はやっぱり本人たちは本気で「絶対無理です。絶対無理です」と言うけれど、「それよりも今、つきあっている人とかを探したりするほうが、絶対大事やと思う。ディレクターとして仕事はちゃんとできてるから」って。

小野 アナウンサー
そういう周りの支えというのも大きいですよね。


プレゼンテーション①

中山 アナウンサー
今日お越しの小倉さん。不妊治療中の方のカウンセリングをしていらっしゃる。
その中で、患者さんのつらさを解消する取り組みをされているということなので、そこに何かヒントがあるんじゃないかっていうことで、カウンセリングの様子をボードにまとめてみました。
題して...。

小倉さんのもとにも、子どもができずに苦しい、治療を続けているけどなかなか終わりが見えない、という方が多くいらっしゃるんだそうです。

こうした皆さんに対して、小倉さんはこういった言葉をかけていくんです。

「どうしてあなたは子どもが欲しいんですか?」
「子どもができたらどんな生活をしたいんですか?」。
こう問いかけますと、淡く抱いていた思いが、こういった形でしょうかと、いろんなことをお話ししてくれるそうなんです。

「子どもを持ったらこうなりたいなぁ。」
そして、小倉さんは「そうですか。それがあなたたちの"幸せ"なんですね。

その"幸せ"が手に入らないから、苦しく思っていらっしゃるんですね。」とお話をするんだそうです。
そこで、さらに問いかけます。

「夫婦2人の生活って"不幸せ"なんでしょうか?」
すると、「幸せの形ってこれ1つじゃないな。いろんな形があるのかも。

新しい幸せの形を2人で探そうかな。」と変わる人もいらっしゃるんだそうです。
思いが変わっていくというのは、どういうことなんですか?

小倉 さん
「どうして子どもが欲しいのですか?」という問いは、実は皆さんどの方にも"生殖物語"という、自分の理想の家族とか人生のストーリーがあるんですね。
それは結婚してからできあがるものではなくて、生まれて2、3年のころ、特に女性はおままごととか、ごっこ遊びの中からすでに始まっているんです。
女性だと、中高生ぐらいになると「子どもの名前は何にする?」といったいろんなお話があったり、それをすごく明確に持って生きているわけではないんですが、そのストーリーを結婚したら実現できそうかなと思っていたところで不妊を経験すると、いきなりそのストーリーが続かなくなってしまうというところで、苦しみが始まるんです。
不妊治療が始まると、最初は「子どもができたらいいな、幸せになれるな」と思っていたところが、だんだん子どもを授かることが目的になって、幸せの部分が置き去りにされてしまうので、カウンセリングにいらした方には、「どうして子どもが欲しいのですか?」という形で、もう1回生殖物語というものを思い出していただき、できれば夫婦でのカウンセリングが望ましいんですが。
やはり女性の方が多いので、「まずあなたの生殖物語を、その先にもし可能ならご主人様の生殖物語を伺ってみてください」と。
そこで、「2人の幸せは何ですか?」という現状を伺った上で、いま中山アナウンサーがおっしゃったように「願い、つまりは、幸せが手に入らないから苦しいんですよね?ただ、幸せは本当に1つですか?」「あなたの生殖物語が完成することだけが必要なんですか?」という問いかけで、「夫婦2人という生き方についてはいかがですか?」という発想の転換の作業を行っています。

吉村 さん
こういったカウンセリングは、小倉さんのような臨床心理士のような方々じゃないとできないんです。
われわれ医療サイドはデータを示すことはできますし、リスクを示すことはできるんですけど、こういった心に寄り添うというか、カウンセリングというのは、不妊治療には極めて重要な要素だと僕は思います。

田村 さん
これ、夫婦で「どうして子ども欲しいの?」とかなったら、けんかにもなる可能性もあるぐらいやから、落ち着いて聞けるプロの人とか、同じような経験をした人とかのほうが、良かったりもするのかもしれないですよね?

小倉 さん
そういう意味では、堀田さんご夫妻の漫画が、まさに生殖物語の"書き換え"というんですけれども。
書き換えをなさっていて、それを皆さんに提示なさっています。
カウンセリングに来ることも最近だいぶ利用してくださるようになりましたけど、やはりまだちょっと敷居が高いとか、うさんくさいとかがあるんですが。
漫画のように手に取りやすくて、しかも当事者の本当の気持ちが分かるというのはすごくいいサポートになっていると思います。

堀田かよ さん
ありがとうございます。

小野 アナウンサー
堀田さんたちも、価値観の転換みたいなことを経験なさったんですか?

堀田かよ さん
いま正直、はっきり言って、幸せなんです。
2人きりの生活で子どもはいないんですけど、幸せなんですね。
ただ、子どもをすぐに授かって、何の疑問もなく苦労もなく家庭生活が続いていたら、果たしてそんなふうな気持ちになったのかならないのかは分からない。
ただ、うちの場合は、幸いなことに夫がいつもそばにいたというのもあるんですけれども。2人でいろんなことを話してきたんですね。
なかなか夫婦では聞けないということをさっきおっしゃっていましたけど、実は私たちは「本当はどうしたいの?」とか「どんなふうになっていきたいの?」という話から、もっとささいな話から、いろんなことを話して10年間治療を続けたからこそ、今こんなふうに幸せな気持ちを実感できるんじゃないかなというふうには思ってます。作り上げてきたなという感じです。

田村 さん
穏やかに、話し合いがちょっとずつ進んでいったっていうのが大事ですよね。

堀田かよ さん
けんかもしましたけれども、そのけんかも大切な要素だった。
お互いの気持ちがよく分かることになりますから、けんかでも何でも。

吉村 さん
お話をお聞きしていても、"終わり"というよりは"卒業"という感じがしましたね。よく立派に卒業されたという。

早見 さん
夫婦間のサポートって本当に必要なんですね。
お互いに子どもが欲しいという同じ目的に向かっているんだけど、実は夫婦間で話していないからすれ違いが起きたりすることも多いのかななんて思ったんですけど。

村田 解説委員
今、不妊治療のクリニックの中には、カウンセリングの重要性というのが分かって、最初からきちんとカウンセリングもしながら治療をされているとこもありますけど、なかなか増えないですよね。どうしたらいいんでしょう?

吉村 さん
チーム医療であるということをわれわれ医療者側も認識すべきですし、医療的なことをデータだけ示して治療だけしていくということでは、不妊治療というのはできないのではないかなと私は思いますから。
小倉さんのような方々に一緒に加わっていただくということは極めてこの治療には大事だと思いますし、こういったものに対して、国や社会も目を向けていただけるとありがたいというふうに思います。

視聴者の声

「若い頃は『子どもを作らないの?』と聞かれ、欲しいのになと思い心が痛み、少し年齢がいくと『子どもがいなくて楽ね』と言われ、子どもがいない心の痛みもあります。」

小野 アナウンサー
子どもがいるという幸せは、幸せの形として否定することなんか絶対できないものですから、苦しいんですよね。
でも、確かに周りのサポートということに呼応してか、こんな声がたくさん来ています。

視聴者の声

「不妊治療中です。会社で、部下や後輩には話をしています。先輩・上司・男性がもっと声を上げていかないといけないと思っています。同じ思いをさせたくないんです。」

「幸せの形は人それぞれだが、諦めたり、無理に方向性を決める必要性はないと思う。」

「夫婦2人きりの生活は全然悪いことじゃない。こんなこと言いたくないけど、でも、世間体はやっぱり気になる。」

小野 アナウンサー
迷いの中にあって、実はこの番組を作ったディレクターも、ちょうど私と同じぐらいの世代で、まさに気がついたらタイミングがとっくに過ぎてましたという。
「私たちは捨て石だと思うんですよ」と言うんです。「でも、小野さん、いい捨て石になりましょうよ」と。「この無念をいいエネルギーにして、世の中に貢献できること探しましょうよ」と言うんですね。
いい捨て石になるには、どうしたらいいというふうに思われますか?

田村 さん
捨て石になるって、いま初めてやけどそんなこと言う人。ドキッとしますよね。

早見 さん
あんまりいないですよね。

小野 アナウンサー
本当ですか。ですけどまず最初は、若い男性たちが育休が取れるような職場の雰囲気を作るとか、いろいろできることあるんだろうなと思ったりして。

村田 解説委員
たぶんタブーなんですよ、まだまだ不妊そのものが。
だから、何となく恥ずかしいとか、もしくは女性のほうは産めないのは自分に責任があるのかとか、いろんなこと考えてしまうから。
また、親にも言っていないという人もいますよね、不妊治療やるのに親にも言いにくいとかね。
企業の中でも最近、育休とかいろんな休暇制度を作る中で、不妊治療も休暇制度に入れているとこも出てはきてるんですが、言いづらさがあるのでなかなか取りにくい。
例えばですけど、「なぜ休みますか?」というところに、「レジャー」だとかいろんな選択肢がありますね。
そこを「不妊治療」に丸をつけなくても休みを取らせるんですよ。言いにくいだろうから。
職場の中でも不妊治療で私たちは休むんですということを認めてあげられるような環境にもうちょっと持っていかないと。
そのための議論があまりされてないという。

吉村 さん
いま国でも、企業に対して不妊治療に対して、例えば有休を取るとか、そういった制度を要求するというようなことが、運動が出ていますからね。もう少し社会も変わってくるだろうと僕は思いますけどね。

小野 アナウンサー
まず議論をする。不妊治療についてオープンに話せるように。

堀田かよ さん
そうですね。やはり知らないと分からないですよね。
どうしていいのかも分からないでしょうし、不妊の当事者は、もうちょっと分かってほしいとか、寄り添ってほしいみたいな気持ちはあるんですけれども、それでも、知らないとそんなこともできないでしょうから、まずは知ることだと思うんですね。
でも、そのためには不妊の当事者たちが声を上げるしかないんじゃないかなと思って。

小野 アナウンサー
それをきっかけに、みんなでちょっとずつ理解を広げていくということですね。どうもありがとうございました。

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