2016年01月23日放送放送内容まるわかり!

損得だけじゃない!? 電力自由化で何が変わる?

今年4月から始まる電力小売りの全面自由化。 8兆円あると言われる電力市場の自由化にともない、すでに200社以上の会社が名乗りをあげ、様々なサービスや料金プランの発表が始まっています。 でも、そもそも"電力自由化"って一体どんな仕組みなの?電気料金は安くなるの?高くなるの? 電力自由化をテーマに、私たちの暮らしはどう変わるのか、これからどんな未来が待っているのか、深読みします。

今週の出演者

専門家

高橋 洋さん(都留文科大学社会学科 教授)
竹内 純子さん(NPO法人 国際環境経済研究所 主席研究員)
関口 博之(NHK 解説委員)

 

ゲスト

カンニング竹山さん(タレント)
優木 まおみ さん(タレント)


小野 アナウンサー

もうすでに、自由化で電気会社を「変える」って決めてらっしゃる方が16%、「変えない」っていう方、33%、「分からない」という方が51%。 レベルの高い質問から低い質問まで、いろいろ出そうです。徳永アナウンサー、これからお願いします。


プレゼンテーション①

徳永 アナウンサー
今回、何が変わるか。ひと口に電力会社さんといっても、仕事は大きく分けて3つに分かれます。

まず、電気を作る仕事です。つまり、発電所を回して、電気を作る仕事です。

2つ目。それを送る仕事。電線や変電所を使って、おたくまで電気を確実に届ける。これが送る仕事。

3つ目。それだけだと1円ももうかりませんから、売る仕事をしなきゃいけません。
つまり、契約をちゃんと結んで、料金プランを決めて、ほら、おうちの前にいまでも来るでしょ、検針の人が。
電気を実際に契約してお金を集める作業のことを、「売る」とよく言っております。
で、ピンと来ないのは、戦後ずっと、基本的には1つの電力会社、東京なら東京電力、大阪なら関西電力というふうに、地域の名前が入った電力会社1社がすべてやるのが当たり前って感覚がすごく強いので、ほかの会社が急にと言われてもピンと来ないっていうことなんですね。
何が今回変わるのかを端的に申し上げますと、3つある中のここが変わります。

売るとこです。
電力会社じゃなくても、国がオッケーをした会社であれば、お客さんを自分で開拓して、自分で料金プランを作って、集金をして、もうけることをしていいですよっていう、これが電力自由化です。

いまやもうセールス始まっておりまして、街に出れば、あんな会社、こんな会社がうちの電気買ってくださいといまセールストークの真っ最中です。
奥様のこの財布を狙っての争奪戦が始まっております。
さあ、実際奥様が街へ出ます。そうすると、まず声をかけてきたのはガス会社です。

「はい、奥さん、ガス会社だよ。安い電気入ったよ。うちね、春から電気も売ることにしたの。うちの電気買ってかない? 安いよ。いい電気だよ」。
「ガス会社だから電気どうすんのって? 野暮な質問するんじゃないよ、奥さん。ちょっと考えたら分かる話だよ。見て見て。

大手の電力会社さんって、いちばん多いの、火力発電所でしょ。火力発電所ってどうやって電気を起こしてるんだっけ? 何か燃やしてるわけでしょ。何燃やしてるか? 奥さん」。

小野 アナウンサー
石油。あと、ガス。ガス?

徳永 アナウンサー
「ガスといえばうちだよね。こんな日も来るかと思って、われわれはね、用意しておいたの。はい。

ガスを燃やして電気を起こす火力発電所を、いま至るところにもう作ってあるの」。
「電線はね、電力会社にお金を払って、ここを通させてもらって仕入れてるわけよ。だけどね、1から自分で電線作るほうが高くつくわけよ。使わせてもらっているから、安くあげることだってできるわけ。同じ燃料なんだから。しかも、安く仕上がるってわけよ」。
「いまより年間5000円安くなるプランっていうのも用意したから、はい、奥さん。契約してくれるね」。
まあ、奥様もですね、1つ聞いて、すぐは契約しません、やはり。で、次のところに行くと、また声かけられます。

「お客様。いつもお世話になってます。携帯電話の会社でございます。私どももね、春から電気を売ることにしたので、うちと契約していただけませんか? お安くしときますよ。同じように」。

小野 アナウンサー
おたくも発電なさってるの?

徳永 アナウンサー
「弊社としては発電所は持っておりませんが、知恵で勝負しております」。
持ってないのに、どうして電気を売れるのか、そこでございます。こういう仕組みでございますよ。

いま新幹線に乗ってても、車窓から見えませんか? 太陽光の広い発電所。メガソーラーっていうでしょ」。
発電所っていっぱいあるんですよ。電力会社さん以外も。実は奥さん、東京湾の近く、大規模な工場っていうのは、昔から電気を節約するために、自分のところで自家発電所を作って、電気を起こしてたんです。 われわれはそこと契約を結んで、お金を払って、電気を仕入れることに成功いたしました。」
「そして、電力会社さんの電線をお借りして、お安く仕入れて、お求めやすいお値段でご用意いたしましょう。ガス会社とほぼ変わりませんよ」。

小野 アナウンサー
いや、どうして安くなるの?

徳永 アナウンサー
「あら。そこまでお詳しく聞きたくなります? それはわれわれの得意技です。ふだんから、まとめてお安くと言ってるじゃありませんか。家族でまとめたら安くなりますよ、家の通信と一緒ならお安くしますよ。われわれ、競争が激しいので、安くするのは得意でございます」。

小野 アナウンサー
よく、まとめてまとめてと言われますけど、どうしてまとめてやると、お安くおできになるの?

徳永 アナウンサー
「そこまでお知りになりたい? じゃあ、きょうここだけの話ですよ。われわれは競争が激しくて、乗り換えといって、丸ごとライバル会社にお客さんを取られることもしょっちゅうでございます。何とかお客様に長く契約をしていただきたい。生活の根元、礎である電気を一緒にセットで契約していただければ、あんまり逃げることはなくなるんじゃないか、少々もうけが下がっても、お客さんを離さず、数を増やしたいっていうのが本心でございます。ここだけの話ですよ」。
やりくり上手な奥様は、すぐには契約せず、さらに歩いていくと、全く違う会社がまた声をかけてまいります。

「お客様、先ほどから聞こえておりました。お金の話しかしておりませんね」。
「世の中、お金ですか? 大事なことをお忘れではありませんか? うちは確かにちょっと高いかもしれませんが」。
「いえいえ。世の中お金ですか? われわれは環境に優しい再生可能エネルギーです。よくご覧ください。はい、どうぞ。 」

「風力、太陽光、100%でいっております。われわれ、火力に頼りませんから、CO2も出しません。福島の事故を忘れたわけないですよね? 未来のために、ちょっとコストを払ってでも、未来のために、この電気を買いませんか?」。
「私ね、あなたの財布にしゃべってるんじゃない。あなたのハートにしゃべってる。どうですか?」
黙っちゃいないのがですね、老舗の電力会社さんですよ。

「お客様、先ほどから聞いておりまして、聞き捨てならない言葉がたくさん出てまいりました。われわれにも言わせてください。戦後ずっと、この60年~70年にかけて、ほとんど停電もせず、いや、停電をしても、すぐに復旧してきたのは誰のおかげか? われわれ老舗の電力会社があの送電網をしっかり守ってきたからです。安定といえば、われわれ老舗。もちはもち屋。電力は電力会社。引き続きご契約をお願いしたいと思っております」。
われわれもね、でも、料金のこと、いっぱいライバルに言われましたんで、黙ってはおりません。
「進化します!」。そう。生まれ変わる挑戦者でございます。料金だって頑張ります。はい、こちら。

プランも作りました。たくさん使うおたくは、なんと2年ずっといていただけると、お約束いただければ、1万円ほどお得になるという新しいプランも用意いたしました」。

小野 アナウンサー
あら? できるんだったら、もっと前におやりになればよかったのでは?

徳永 アナウンサー
「過去を見ずに未来を見ましょう。もう1つありますよ。はい、こちら。 」

「ポイントもおつけします。使った料金に応じて、コンビニなどで使えるあのおなじみのポイントもつけます。実質的に値下げでございますよね。そう、われわれ、進化したんです。どうかご契約を」。
というわけで、賢い奥様、やっぱり迷って家に帰ったわけですよね。
帰ったらびっくり、チラシの山。

こんなに来ておりました。実は、いま国から売ってオッケーですよと言われた会社は130社もあります。全国で。
中にはいろんな会社がありまして、例えばここ。旅行会社です。

「お早めにご契約いただいた方には旅行代金も値引きいたします。ハワイだって安く行けますよ」。
スーパーも入ってきました。

「いまご契約いただければ、奥様、卵、差し上げます。12パックも差し上げます」。
1度ではなく、分散して。卵欲しいでしょ。
というように、いろんな特典をつけて、うちと契約してくださいっていうのが始まってます。
血眼になるのは、この数字見れば分かるわけで、いまわれわれが、ご家庭やお店などが払っている電気代は1年間に8兆円。

うまくいけばこのビジネスチャンス、がっぽりいけるわけです。奥様、どういうふうにしますか? 
困っちゃうわっていう話ですね。

優木 さん
これだけいっぱい増えるって聞くと、逆に、安定供給がすごく心配になって、さっき老舗の電力会社さんが安定供給を売りにしてたけど、ほかの電力会社に例えば浮気してて、ちょっとほかを使ってたから、そこがだめになって戻りたいって言ったら、今度は戻らせてくれなくなったらどうしようとか、考えちゃうんですけど。

高橋 さん
安定供給っていう意味では、先ほどご説明があったとおり、ネットワークはみんなで使うというのが基本になります。
電気が送られてくるっていうところはネットワークそのものに依存しますので、別にコンセントの位置を変えるとか、配電網を取っ替えるとか、そういう話ではないので、供給会社を変えたからといって停電がすごく増えるとか、そういうことにはならない。

優木 さん
例えば、先ほど、再生可能エネルギーのところを自分が選んでたとして、でも、すごくずっと曇りが続いたりすると、電気の供給がないってなると、その家だけ止まっちゃうってことは?

竹内 さん
ないです。電気は結局電線で混ざってしまうので、その家だけ止まるっていうことはない。逆に言うと。

小野 アナウンサー
1つの電線通って来るからですか?

竹内 さん
そういうことなんですね。なので、再生可能エネルギー100%の電気って言っていても、電気に色はついていないので、結局その分のコストを払っているっていう感覚で、思っていただいたほうが。

優木 さん
そういう人が増えれば、再生可能エネルギーを作ろうっていうところがどんどん増えていくだろうっていうことですかね?

竹山 さん
送電が、いろんな電気がいっぱいたまっちゃって、ショートするってないんですか? 
もともと余りがあったんですか?

関口 解説委員
いやいや、もともと電力っていうのは発電した量と使う量が同時・同量っていって、バランス取れるように、そのコントロールを送電会社がしてくれてたわけ。
だから、余るとか足りなくなるということはないように、それは送電会社の責任としてやるので、停電もしないし、電圧とか周波数が変わったりすることもない。
届けられる電気っていう商品は、どこの小売り会社から買っても一緒。
それから、混ざっちゃうっていうのもそのとおりなんだけど、そこは、だけど、再生可能エネルギーを買ってるつもりになる、そう考えるという関係だということですね。

視聴者の声

神奈川県・50代・男性
「料金が安いほうがいいに越したことはないが、何かリスクが伴うような気がしてならない。」

「新しく出てきた会社は停電とかにちゃんと対応できるのかな。」

「そのままでいいと思う。むやみに変えると、何かあった時、不安。」

小野 アナウンサー
私たちがいままだ気づいていない、何かこの自由化に伴うリスクっていうのはあるんでしょうか?

高橋 さん
送配電網については、先ほどの説明のとおり、今後も地域の電力会社がやると。いま議論になっている停電するんじゃないかっていう話は、基本的には送配電のシステムによるものですので、例えば台風が来た時に送電線が切れちゃったとか、そういうことですよね。
それは引き続き、送配電の会社といいますか、電力会社の送配電部門が責任を持ちますので、それは関係ない。
ただ、あえて言えば、例えば新しい小売りの会社であれば、もしかしたら倒産しやすいとか、そういう可能性はあります。
ただ、倒産したから、その日から停電するって話でもないので、あくまで消費者が自分の考えで選ぶというのが基本になります。

小野 アナウンサー
「最初だけ安くしておいて、徐々に値上げして、結果的にいまより高くなるのが怖い」っていう声は?

竹内 さん
それはそうですね。欧米の自由化した諸国などでも、最初の数年は競争が盛り上がる。
それまで法律で電気を安定的に供給しなさいねという義務のもとでは、事業者さんは設備なんかも余裕を持って作っておこうというマインドになるので、電力会社は設備がだぶついてくるようなところまで作ってしまって、電気料金が高くなってしまう。
こうしたメタボリックになっている状態をスリムにするために自由化をやる。
なので、最初の数年は下がるんですけど、そのうちに上がってしまった例というのがかなり多いんです。
長い目で見ると、自由化をして電気料金が引き下げられましたって明確に言える例っていうのは、ほとんどない。

小野 アナウンサー
じゃあ、何のためにやるのですか?

竹山 さん
送電の部分はほかの会社も借りるから、そのお金を老舗に払うわけでしょ。
ということは、普通に考えたら老舗の電力会社がもうかるし、その分老舗がもっと下げることができるっていうか、老舗が得するっていうシステムになるってことじゃないんですか?

竹内 さん
そこは分離をされます。競争が公正にされるように、送るというシステムについては分離をして、作る部分、売る部分での競争が活発になるようにするために、ここはある意味公共財的に使えるようになる。

関口 解説委員
託送料っていいますけど、送電のために送電会社がお金をいただくわけですけど、その料金はちゃんと国がチェックをして、よけいなもうけがそこで発生しないようにして、みんなが同じ値段で共通に使えるようにして、ここは公共的なもの、競争を支えるためのものにするという考え方ですね。

優木 さん
ほかの会社からすれば、初期投資が全然いらなくて入れるから、その分が安く参入できるっていうことですもんね。

小野 アナウンサー
なんかちょっと、だんだんだんだん、この仕組みがしっかり頭に入っていないと、ついていけないぐらいの難しさになってきました。

視聴者の声

「契約するのが太陽エネルギーの電力会社だとしても、うちに来る電気は何だから分からないんだね。」

「基本的にお金の流れが自由化するだけで、電気の産地は変わらないわけですよね。」

「どう選べばいいの? 携帯もそうだけど、プランがありすぎて、結局何が自分に合っててお得なのか、いつもよく分からない。」

関口 解説委員
4月までは、そこをすごくみんな悩むと思いますよ。
4月過ぎても今のままでも大丈夫なのは覚えておいていただいて、それでもこれだけいま話題になってるし、そういうセールスも入ってくるから、気になると思いますが、まずいちばん大事なことは、新しく入ってくる会社の供給してるエリアがどこかということ。
自分のところがそのエリアに入ってなかったら、いくら130社入ってきても、自分のとこに届けてくれるとこは限られてるわけだから。
まず、皆さんお住まいのところで、供給してる会社、どこがあるかっていうとこから調べないとだめですよね。
それと、さっきの説明でも、ざっくり5000円安いですとか、1万円安いですとかって言ってますけど、あんまりその数字だけにびゃっと飛びつかないようにしたほうがいい。
なぜかっていうと、新規参入してくるところも、いろんなモデルプランをまちまちに設定して、自分のとこはこの人たちには得ですよっていうのを出してますから、その条件の設定、単純に言えば、使ってる電気の量が多いところは得だけど、電気の使用量が少ない人はかえって損になっちゃうっていうメニューもあるから、そこも単純に数字だけで飛びつかないようにしてもらいたいなと思います。

高橋 さん
今回この機会が、自分たちの家がどうやって電気を使ってるのかとか、エネルギーを使ってるかっていうのを見直す機会になるといいと思うんですよね。
これまで電力会社さんも複数のメニューを用意はしてたんですけども、ほとんどの方が、時間帯に関わらず料金単価が同じというメニューをおそらく選んできたんじゃないかと。標準的なものですよね。
実際には、ご家庭によっては、夜に非常に使っていて、昼間はあんまり使っていないだとかっていう家庭もあると。
そうすると、夜間はすごい安いんだけども、昼間はすごく高くても、むしろそっちのほうが得をするかもしれないわけですよね。
あるいは、ちょっとここを変えればものすごい安くなるとか。

竹山 さん
携帯電話と同じ仕組みですよね。

関口 解説委員

スマートメーターというものがある。今度電力会社を切り替える時には必ずつけることになるんですが、これは、30分ごとの電気の使用量を測って、電力会社に通信する機能を持ってる。これを使うと、いま高橋さんがおっしゃった、どういうふうに使ってるか、使い方も分かるし。
料金も、夜だけ使えば安くなるっていう料金設定もできるようになる。

小野 アナウンサー
これが、もし電力会社を変えた場合、うちに来ることになる? いまあるこれの代わりに?

関口 解説委員
そうです。これ、電力会社が取り替えてくれるんで、利用者の費用負担はありません。

徳永 アナウンサー
これが、基本的には直接の負担はない。

こっちは家電メーカーが出しているものの1つで、これは有料になってくる。最低でも4万ぐらいかかる。
これは、だいたいどうしてかかるかっていうと、新築の家の柱とかに入ってるんですよね、こういうのがね。一緒にやるケースが多い。
中には、これをスマートホンとかパソコンの画面で簡単に電気の使用量を見られるようにするっていうサービスをうたってる会社もいま出てきています。
こういうふうに、一日でどれくらい使ったかをグラフにしたり。

竹内 さん
私なんかは、いまでも時間帯別によって電気料金が違う契約にしているんですね。
夜は安くて、朝と夕方はちょっと高くて、昼間はいちばん高いみたいな、そういう契約はいままでもあったので、私はもうそれにしていたんですけれども、そういうのが増えるということは、自由化とかスマートメーターの導入によって期待されるところではあるんです。
しかし、先ほど出たリスクのところを、ちょっとだけ追加をしておくと、何年縛りとか、そういうのがあったり、あるいは海外でもあったんですけれども、前払いで2年間ぐらいとか1年間ぐらい、前払いすると安くしますよと言った事業者さんが倒産をしてしまったりっていうことがあるので、ちょっと慎重に選んでいただいたほうがいいかなと思います。

優木 さん
そうですよね。石油とかも、世界情勢によってどんどん値段が変わるじゃないですか。
燃料の値段が変わった時に対応できなくなるんじゃないかと思っちゃうんです。

竹内 さん
そういうことも起こりえるので、契約の中でどういうふうに書いてあるかっていうのをよく確認する。また、メニューがどんどん増えていくと、消費者にとって分かりやすさはどう確保されるのか。
イギリスなどではメニューが増えすぎて、政府がメニューを絞りなさいと電力事業者に指令を出すっていうこともあった。

竹山 さん
そもそも欧米とかでは、ずっとこれは始まってたじゃないですか。
これは、正直に言うと、成功してるんですか? 消費者にとって、みんな、うれしいことになってるんですか? 自由化っていうのは。

高橋 さん
先ほどお話があったとおり、電気料金っていう観点からすると、基本的に上がってきているっていうことなんです。
それにはいろいろな理由があって、例えば、いまちょっと石油下がってますが、化石燃料費が2000年代ずっと上がってきただとか、あるいは、日本でも消費税の議論がありますけども、消費税も上がってる国が多いだとか、再生可能エネルギーの固定価格買い取りっていう付加金を消費者が負担しなきゃならないだとか、競争以外の要因もたくさんあり、上がってきている。
他方で、選択肢が増えたっていうのは非常に大きなポイントで、先ほどの、再生可能エネルギーの電気を選びたいだとか、料金メニューがいろいろと選べるだとか、ガスと電気のセット割が選べるだとか、そういうのはかなり評価を得ている。

関口 解説委員
メニューがややこしくなるのは、セット割とかってどんどん組むからなんですよ。
ただ、いまのところでいうと、ざっくり言うと、セット割を含めても、年間最大で値引きされるのは5%~10%ぐらい。そのぐらいのレベルです。

視聴者の声

長野県・50代・男性
「結局大企業がもうかるだけで、庶民には何のメリットもないというのが現実ではないのか?」

東京都・50代・女性
「利用方法が複雑で、高齢者はますます取り残されそうですね。」

小野 アナウンサー
なんか、選べるっていうことが、まるでとてもありがたいことのように思えと言われている感じがして、こっちは面倒くさいっていう思いも正直あるんですね。
どうすればそれが面倒くさくなく聞こえるかっていうことを、徳永アナウンサーが考えてプレゼンしてくれるんですか?


プレゼンテーション②

徳永 アナウンサー
実は、電力自由化を先にやったところを取材すると、お財布だけじゃないんですね。

未来がどうやら変わってくるんじゃないかっていうのが見えてまいりました。
これを見て、ちょっと考えてみてください。

国内で注目されてるのが、福岡県のみやま市というところ。
実は、5年前の原発事故を受けて東京を中心に電力が不安定になった時に、これは何かしなきゃいけないと、いち早くあることをした。それが、これです。

市が中心になってお金を出して、地元に電力を売り買いする会社を新しく設立したという話。

ここは、ずばり「電力版の地産地消」というのがモットーです。
その仕組みです。みやま市は気候が温暖で、太陽がとてもさんさんと輝くとことろ。

みやま市の全世帯の1割に、もう屋根に太陽光パネルはすでにあります。
この会社、そこに営業をかけてます。

その電気、うちに売っていただけませんかと。
しかも、こういう天気のいいところですから、市内にも3か所、大規模な太陽光の発電所があります。
そこにいま話をしている最中です。

それも売っていただけませんかと。
この買った電気を、お客さんにも地元の人にもセールスかけます。

みやま市にお住まいの皆さん、うちと契約をして、うちの電気を買いませんかと。
考え方としては、地元の電気を発電して、地元で消費しようというのがこの会社の考え方。
曇りとか、夜どうするんだって思うかもしれませんが、もしもの時は九州電力から電気を融通してもらう約束も、もう話が進んでいるということで、停電の心配もない。

大手に融通してもらうなら、メリットは何かというとまず「安い」ということ。
だって、設備投資、ほとんどいらない。もうあるんです。しかも、社員の数、いま少ないです。
人件費も大手に比べたら全然かかっていません。だから、いまよりもお安く提供できますよとうたってるんです。
さらに地元ならではの小回りの利くサービスも始めようとしてます。これ。

さっきメーター出ましたが、逐一その家が使ってる電気の上がり下がり、増え減りが分かるようになる。
いつも動いてるおたくが急に同じになったら、何か住んでる人にあったんじゃないかと、場合によっちゃ、連絡を入れてくれる。
離れた家族に一報を入れてくれるサービスも考えますよと、いまうたっているんです。
実はみやま市は、3世帯に1世帯に高齢者の方がお住まいという地域的な条件もあります。
これ、よく考えていくとね、もう1つ見えてくるものがあります。
電気も地元で回りますが、お金も地元で回り始めます。九州電力に払うってことは、1回博多の本店に行くわけですよね。
でも、ここに契約すると、それもいいんですけど、地元でお金が回る。ここが大きくなると、雇用も増える。地域が豊かになるかもしれない。

小野 アナウンサー
でも、停電したりした時は結局同じっていうか、いざっていう時には大手の電力会社に頼らざるを得ないっていう状況は変わらないんじゃないんですか?

徳永 アナウンサー
でも、例えば昼間とか、それから、大規模な災害が起きた時は、晴れていれば、何とか電気まかなえますよね。
もし、九州全域が停電するっていうような、大きな事故が起きた時でも、この町だけは、昼間は発電できる。

優木 さん
何があった時に急にしょうがなく高くなるっていうことはあるけど、そうじゃない、何もない時はこれでやっていけるから、ふだんは安くなるっていうことですもんね。
それに、見守りサービス、いいですよね。高齢者の方が置いてきぼりなんじゃないかっていうさっきの質問とかを考えると。

徳永 アナウンサー
つまり、電力会社のかたちがいまとはだいぶ変わってくる可能性も秘めてる。

小野 アナウンサー
確かに確かに。そうですね。次、行ってみましょうか。

徳永 アナウンサー
これ見ると、もっと知りたいことが広がるような気がして、こっち行きますね。

国のかたちも変わるという話です。
ドイツは先駆けて18年前に電力の自由化をした。さっきの奥様は130社で悩んでたんですが、その10倍近い1000社以上の会社がいまも参入しています。でもね、これがルールとしてあるんです。

「電気の成分を見える化する」。つまり、ドイツっていうのは、明細というか、領収書に必ず書かなきゃいけないってルールがあります。

うちが調達してる電気はどうやって発電したか。比率も含めてちゃんと記しなさい、伝えなさいっていうルールが義務づけられてます。
だから、うちが契約してる○×電力会社は原発から6割、火力が3割、水力が1割っていう考え方でまかなってますよとか、そういったものを明示して、これも選択肢の参考にしてもらうというやり方をしてます。
日本の場合はやったほうがいいですよって進めてますけど、絶対っていうわけではないというルールなんですって、いま。これからですけどね。
で、どうなったか。大きく影響を与えたのはやっぱりこれです。

2度の原発事故です。自由化する前の1986年、チェルノブイリの原発事故がありました。ドイツは比較的近いんですよね。
ドイツの南部は放射性物質で実際に汚染された経験もあって、ドイツの方はとても原発に敏感でした。その上、同じ最悪レベルのレベル7の事故がまた日本で起きました。
これを受けてドイツでは、ご存じの方も多いと思いますが、期限を区切って、原発はやめましょうっていうルールが議会を通って、進むことになってます。

こういうこともあってか、消費者の選択ははっきりしてます。再生可能エネルギーを選ぶっていう人がどんどんいま増えてきているんですね。
こういう会社もありました。

脱原発をうたって、風力1割、水力9割。色合いをはっきりしているところもあります。
ここ、最初はお客さん、200世帯しかなかったんですが、いまや11万世帯を超える大会社になって、売り上げは年間130億円にもなる規模に成長したんです。

ちなみに再生可能エネルギーに頼るってことは、みんなの電気代はかなり上がる計算なんですが、自由化導入前は再生可能エネルギーのシェアは5%しかなかったものが、いまや26%にまで上がってきています。

選択によっては国のかたちも変えることができるのが電力自由化だっていうのが見えてきます。

竹山 さん
意識の違いですよね、ドイツ国民の。

優木 さん
変わる可能性があるっていうことで、その小さな1歩がどんどんムーブメントになっていくかもと思うと、やろうっていう気になりますよね。

視聴者の声

神奈川県・50代・女性
「自由化で料金の安さにのみ注目がいき、原発での供給が増えることがないように考えてほしい。」

兵庫県・50代・男性
「原子力発電推進によって、安価で良質な電力を供給することを望まれる。」

小野 アナウンサー
自由化と原発って、どう関係する? 電力を自由化すると、原発にはどんな影響が出るんですか?

竹内 さん
いま既存の原子力発電所が再稼働を始めれば、それはもう圧倒的に安い電気を供給することができるので、電気料金を安くするというドライブはかかってくると思います。
ただし、自由化をすると、原子力発電所の新設とか、そういったものは非常に難しくなるんです。
というのは、原子力発電所っていうのは建設コストが、ほかの火力発電所に比べても格段に高いということと、建設の期間がとても長く、10年後、20年後、30年後に、電気料金っていくらで、電気っていくらで売れるんだろうというのが分からない世の中になる。
これが自由化なので、そういう世の中では、10年かけて原子力発電所を建てるよりは、5年や10年で石炭火力発電所を建てて、早く商売を始めたほうが安心、ということになって、原子力発電所が建たなくなってくる。
そうすると、古い原子力発電所を使っていこうということになると、それがいいのかっていうことは、これはこれで別に議論をしなければ、本当はいけない話。
ただ、原子力にはコストの点と、あとは環境性、CO2という点ではメリットがあるっていうところ。
そういうところも含めて、バランスを考えないといけないっていうことですね。

小野 アナウンサー
考えておかないとっていうのは誰がですか?

関口 解説委員

要するに、国のエネルギーミックスのバランスなんですよね。
原子力を長期的には減らしていくっていう方針だけれども、2030年ぐらいではこのぐらいのバランス取って、比率はいるよねって言ってる。
そこで、いまお話にあったように、古い原発を少し使用期間を延ばして使うのかっていう話もあるけれども、それくらいだったら、むしろきちっと安全性も高い原発に作り替えたほうがいいんじゃないかっていう議論もある。

竹山 さん
ドイツの場合は、言っても、フランスとかから原発で作った電気を入れるじゃないですか。陸続きだから。
でも島国の日本はそうはいかないから、原発に頼らない電気の世の中がいいと思うんだけど、それじゃ実際はうまくいかないっていうのが実情だから。

高橋 さん
ただ、日本っていっても、ドイツの1.5倍ぐらいの電力の規模がありますので、国内だけで、いろいろなプレーヤーが入ってきて、例えば天然ガス発電所を作ったりだとか、再生可能エネルギーの発電所を作ったりだとか、切磋琢磨が起きるっていうことは非常に大事だと思うんですね。
私が、大学が都留市にあるんですけれども、山梨県の都留市も、以前から小水力発電に積極的に関わっている。
あと、市民からもお金を出してもらって作っていくという動きもあります。
みやま市のような動きもあるし、山形県が電力の小売り事業に参入するとか、市民とか地域とか自治体が関わっていくとが増えている。
こうしたことがドイツでは自由化を契機に起きているんですが、その出発点っていう意味でも、自由化っていうのはおもしろいと思うんです。

視聴者の声

「有利・不利で語るんじゃなくて、われわれがこの先どのような発電方法に投票するかということだと捉えるべき。」

竹内 さん
それは確かにそうですね。ただ、ちょっと先ほどのドイツのところで補足をしておきたいんですけれども、自由化を契機に再生可能エネルギーが増えたということですが、再生可能エネルギーを増やしたのは、自由化とは別の、全量固定価格買い取り制度という別の補助金のルールなんですよね。
それによって再生可能エネルギーを増やしてきて、2000年当時ですと6%ぐらいだった電気が、いまや3割ぐらいまでまかなえるようになってきている。
これは自由化でみんなが選択したからではなくて、固定価格買い取り制度というかたちで、電気料金に乗せて、選ぶと選ばざるとに関わらず、付加金という補助金をやって、再生可能エネルギーで発電した事業者は必ず投資が回収できるように、いわゆる総括原価主義的なものですね。

竹山 さん
難しいですね。
どうしたらいいんですか? 値段ですか? 値段で決めたほうがいいですか? どうすりゃいいんだろう?

小野 アナウンサー
何かかんか選ばないかん世の中になってきた。

関口 解説委員
かえって面倒くさい、自由化って何のメリットがあるのっていう人がいると思うの。
ちょっと前向きに考えてもらいたいので少し別の話をします。

節電所っていう、1つ考え方があって、これは、消費者がこれから電力を選ぶんだけど、それと同時に、さっきのスマートメーターみたいなもので、自分で節電できたり、電気の使い方を考えられるようになる。
そしたら、1人1人だったら少しずつしかできないけれども、それが集まれば「節電所」という発電所1個の代わりになるかもしれない。
こういうかたちで消費者が参加できる制度だと思ってほしい。ぜひ前向きに。

小野 アナウンサー
これ、私たちのうち1つ1つが集まれば、1個大きな節電所ができる。なるほど。
皆さん、どうもありがとうございました。

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