2015年11月28日放送放送内容まるわかり!

どうする?"マタハラ" あなたのホンネは?

「マタハラ」と呼ばれる、妊娠、出産や育児を理由とした解雇や降格、職場のいじめが、深刻化しています。 12日に公表された厚生労働省による「マタハラ調査」では、正社員の2割強、派遣社員の5割近くが被害を受けたと回答。 また、男性ばかりでなく、女性の上司や同僚によるマタハラも目立つことが浮き彫りになりました。 マタハラはなぜ起こるのか? 被害を防ぐにはどのような対策が必要か、深読みします。

今週の出演者

専門家

岩田 喜美枝さん(公益財団法人 21世紀職業財団 会長)
小酒部 さやか さん(NPO法人 マタハラNet 代表理事)
白河 桃子さん(少子化ジャーナリスト)
寒川 由美子(NHK 解説委員)

 

ゲスト

増田 英彦さん(ますだおかだ)
相田 翔子さん(歌手・女優)


小野 アナウンサー

「マタハラ」には、妊娠中の人だけじゃなくて、育児をしている人に対するものも含まれる。相手が嫌だと思えば嫌がらせになる。 「マタハラ」とはいったいどういうものなのか、徳永アナウンサーがご説明します。


プレゼンテーション①

徳永 アナウンサー
ハラスメントですから、「困った」「傷ついた」という声が上がっている以上は、重く受け止めるべき問題です。
実際、相談も増えています。取材やアンケートをもとに模型を作りました。

深読商事入社7年目、仕事をバリバリこなしている深読菜さん。このたび妊娠しました。

職場の反応は「おめでとう。」「よかったね。」「サポートするよ。」
その中で、1人、まだこう言う人がいました。

取材して見えてきたのは、こういう人はまだ結構いらっしゃる。

でも、これはもう100%アウトです。法律上アウトだから。
読菜さんのように仕事と育児を両立したい人たちのために、国は法律を作ってサポートしてきたんです。

妊娠・出産を理由にして、クビだと言ったり、格下げをしたり、給料を減らすなどの不当なことをするのはアウトですよと、はっきり書いてあります。

それから、最近当たり前のようになってきた「育児休業」とか「短時間勤務」という言葉。これも、国が法律で保障してくれた権利なんです。
ですから、この人は経営者失格。アウトです。

増田 さん
でも、現に今まだ、いてはるわけですよね?

徳永 アナウンサー
実は、こういった人たち、行政から厳しく指摘を受けていますが、それでも言うことを聞かない場合、その企業の名前を公表しちゃうぞというのが始まっています。
裁判を起こされて、賠償金を払うことになったりもしています。
ただ、これだけだったら、マタハラの構図はシンプルです。
でも、そうじゃないからこの問題は根深いというのが取材で見えてまいりました。
実は、この深読商事の「おめでとう」と言っていたすべての人が、いつ加害者になってもおかしくないんです。
読菜さんの上司も、マタハラの加害者になってしまいました。
というのは、この上司、初めての部下の妊娠にどうしていいやら分からず、おろおろします。
不用意なことを言ってセクハラになってもいけない。でも、働かせすぎて体に何かあってもいけない。

だから、「あなたの体が心配だから、仕事を減らしたよ。あなたはもう補助的な仕事だけでいいから。」と、あっという間に仕事を減らしてしまいました。

でも、こうした言動に傷ついているという声も多いんです。
ポイントはコミュニケーションです。これをやりすぎると、ここにつながるでしょう。

勝手に仕事を引きはがすということは人を傷つけることにもなる。
だから、ちゃんとコミュニケーションをとって業務量を考えましょうということ。

小酒部 さん
日本の会社の人事ってわりとトップだけで決めてしまって、「はい、君はこういうふうになったよ」と命令するかたちが多いんですね。
そうではなくて、まずは「どうしたい?」「いまどんな状況なの?」っていうふうに女性に聞いてもらいたいですね。

増田 さん
命令ではなく、相談の結果、仕事が減るのはまだ問題がないということ?

小酒部 さん
そうですね。双方向のコミュニケーションが必要だと思います。

徳永 アナウンサー
続いて、応援をしていたはずの同僚・後輩までもがマタハラの加害者になりかねないというお話です。
最初は「読菜さん、困った時はいつでも私たちがサポートするから言ってね。」と言っていたのですが、実際、読菜さんは検診も増えます。体調を崩すことも出てきます。
同僚や後輩は、急な仕事を請け負っていきます。
窓の外を見てください。

夜です。請け負う前から長時間労働。疲れもピークに達します。分かっちゃいるけどイライラしてきます。
そんな時に定時で帰る読菜さんに、1人の後輩が思わず言ってしまいました。

でも、この言葉こそが傷つけてしまうわけですね。
今の職場を取り巻く状況を取材していくと、こんな難しい問題も見えてきます。

働く人の4割が非正規雇用という状況。そうすると、この人たちも最初は協力して、仕事を分担して請け負ってきたんですが、こんな言葉が出てしまいます。

「読菜さんはいいわよね、正社員で。当たり前のように休んで」という、ねたみの言葉が出てしまう。
実は条件さえ整っていれば、正社員であろうと非正規であろうと、育休や短時間勤務は取れるんですが。

現実的には正社員に比べて、非正規の人は妊娠した時に退職する率が高くなっているし、育休の取得率も低いという状態が分かってきました。だから、ねたみが生まれる。

小野 アナウンサー
つまり、同じ職場の中でも、読菜さんは恵まれているように見えるということですね。

小酒部 さん
企業側も、正社員には制度を利用させてあげるけれども、非正規にまでその制度を利用してもらいたくないというような意向が見えますね。

白河 さん
そのへん、いま職場の中がすごく複雑になっていて、一見同じ仕事をしている同じ女子社員でも、正規雇用だったり、派遣だったり、それから、非正規でもいろんな種類があって、その人個人によって全然条件も違うんですね。
なので、不公平感がすごく生まれてきやすいという土壌があるんですね。
80年代はみんなが正社員だったんです。みんなが短く働いて、結婚を期にやめると決まっていたんですね。
今はそうではなくなりましたから。

徳永 アナウンサー
白河さんが複雑っておっしゃいましたが、もう1つにはこの存在もあるんです。

先輩の女性社員。子育てと仕事を両立してきた先駆者。
この人に、読菜さんみたいな人がよく相談に行くんです。でも、熱くなって思わず言ってしまう。

「私のころより恵まれてる。甘えるんじゃない」。
でも、この言葉こそが...。

この人たちが頑張ってきたころは、今ほど法律がなかった。勝ち抜いてきたという自負があっても当然です。
でも、その熱い指導がより傷つけることもあるんだという声も聞こえてきました。

結局この深読商事、全員が加害者になってしまいました。
積もり積もって、読菜さん、職場に居場所がなくなっていきます。
読菜さん、育児と仕事の両立、できそう?

岩田 さん
まず上司との関係ですけど、管理職のマネージメント能力が不十分だと思うんですね。
妊娠中や育児中の女性に配慮をすることは必要なんですけど、その配慮はジャストフィットじゃないといけないんですよ。
配慮が小さすぎると、女性は仕事が続かなくなる。
でも、配慮が大きければ大きいほどいいというものではない。
配慮が大きすぎるということは、いろんな仕事を免除する、大変だろうからと仕事を取り上げるとか、責任のある仕事を与えない。
こういうことになると、仕事は続くかもしれないけど、そこでキャリアが停滞してしまうんです。
女性が成長できなくなるというのがあるので、配慮は大きすぎてもいけないし、小さいのはもちろんいけないという。ここがマネージメントの難しいところです。

小酒部 さん
先ほどのプレゼンに2点補足させてください。
企業名を公表するペナルティーは平成11年度からあったんですけども、今年9月にようやく1社のみ公表されているような状況です。
それから賠償金については、日本には懲罰的な慰謝料というのがないんですね。
なので、女性が頑張って声を上げて司法の場に行ったとしても、巨額な慰謝料はもらえない。不利益扱いというだけの金額しか手に入らないです。

増田 さん
この会社の社長の権限があまりにも強すぎると、途中で上司も、言いすぎると今度は自分が社長から嫌われるとか、立場が悪くなると、止まっちゃうところもあるのかなと?

小酒部 さん
そうですね。日本は制度や法律は充実しているんですけども、それよりも今までこうやってきたという慣例のほうが強いんですよね。

白河 さん
風土みたいなものですね。やっぱりそこには、女は育児や家事がメイン、そして、男性は仕事という性別役割分業というものがあるんですけれども、いちばん大事なのは、もう男の人が一家を養えない時代なんです。
男の人も仕事が不安定ですし、年収もお父さんの時代ほどはもう高くない。
だから、これからの女子大生には「もうあなたたち、仕事しないという選択肢はないよ」というふうに言っています。

小野 アナウンサー
企業にとっても女性は貴重な戦力になっていますよね。
それなのに、女性どうしがいがみ合っているっていうのは、なんかこう...。

白河 さん
もったいないですね。

岩田 さん
同僚も非正規の方も先輩もああいうリアクションをするっていう背景には、職場にゆとりがないということがあるんです。残業が当たり前でみんな忙しくしている。
その中で妊娠中、子育て中の方というのは、突然休んだり、短時間勤務します、となる。
そうすると、放っておくとそのしわ寄せが周りに行ってしまうんですね。
だから会社は、例えば代替要員をちゃんと配置するとか、そもそもいまの長時間労働の実態をどうやって解決するか考えて、しわ寄せが行かないようにしなければいけない。
根源的な理由は、伝統的な役割分担意識と、長時間労働が当たり前という日本の実態だと思います。

視聴者の声

千葉県・40代・女性
「「つわりは病気じゃないのよ」「妊娠は病気じゃないのよ」とさんざん言われ、夜勤も普通にこなしてきました。」

愛知県・30代・女性
「未婚の後輩女性から、「ほかの人と同じように働けないんだったら、私だったら仕事やめますね」と心ないことを言われ続けていました。保育園のお迎えも無視され、どうしろというの? という感じでした。」

埼玉県・40代・女性
「時短で帰る人の残した仕事を処理するのは、未婚・子なしの女性社員です。お互いさまとはとても思えません。」

埼玉県・50代・女性
「「家庭や子どものいない人には分からない」と、さも自分だけが大変のように言われる「逆マタハラ」場面もある。そうなると、文句を言いたくなってしまった。」

小酒部 さん
今いいキーワードが出てきたんですけど、「逆マタハラ」という言葉があるんですね。 これがマタハラ問題の特徴で、「マタハラ」という言葉が広まったのがここ1、2年なんですけども、それと同時に上がってきたのが「逆マタハラ」という言葉で、結局フォローする同僚の怒りの矛先が、本来は会社や経営者に疑問を呈さなければならないんですけども、妊婦さんに向かってしまうということが起こっておます。

寒川 解説委員

これは国の調査なんですけれども、周りの人にしわ寄せがいかないように人的サポートをちゃんとしている企業では、マタハラの起こる率が少なくなっているんですよね。
研修をしたりだとか、相談窓口を設けるよりも、ほかの人に業務のしわ寄せがいかないようなサポートのしかたというのが、いちばんマタハラを防ぐことにはなっているんですね。

岩田 さん
「お互いさま」という感情を持ちにくくなっているんじゃないかと思うんです。
1つは、仕事の忙しさ。それからもう1つは、就業形態が多様化していること。
昔は正社員だけだったのでおのずと職場に一体感があったのですが。

寒川 解説委員
しかも、今の女性管理職層だと、結婚していない人が4割で、子どもがいない人が6割なんですね。
管理職層に達している世代は、仕事と家庭との両立が厳しく、二者択一を迫られてきた。
そういう中で、ゆがんだ形で叱咤(しった)してしまうと。
「甘えるんじゃないわよ」というようなことにつながってしまうというのはあると思います。

増田 さん
「お互いさま」という心を持っていても、一方で結婚していない、彼氏がいない方の残業が増えると、出会いのきっかけが減っていくんじゃないかなという考えにもなるのかなと。

白河 さん
そもそも、独身の人とか、子どものいない人とか、男性は無制限に働ける、という考え方自体がもうだめなんです。
独身の方にもプライベートがあるし。だから、「お互いさま」だけではなくて、価値観の転換もすごく必要だということですね。

視聴者の声

「妊娠中だからといって、気遣ってもらって当たり前ではありません。周りの社員に感謝を伝え、細かい仕事をしました。」

「職場で2人妊娠してます。仕事量も半分以下となり、周りの負担がかなり増加してます。言葉にはしませんが、迷惑と周りは感じてます。金融機関勤務です。」

小酒部 さん
この解決策っていちばんのポイントなんですよね。フォローする同僚の方々の働き方を見直してあげることによって、マタハラ解決がすべての労働者の労働環境の見直しにつながっていく。
なので私は、ぜひフォローする同僚の方々に、評価制度の見直しとか、産休・育休で浮いた1人分の賃金を分配するというような対価の見直し。
それから、いまは結婚や妊娠を望まない方もたくさん増えているので、そういう方々も長期休暇を取れるような制度の導入が必要になってくるのではないかと思っています。


プレゼンテーション②

徳永 アナウンサー
実は私たちも取材をして、マタハラを本気で解決しようとすれば、働き方そのものを見直すしかないというところにたどり着きました。2つの事例をご紹介します。

東京・新宿にあるレーザー機器を扱う商社です。
営業の仕事も多いんですが、社長さんは実は悩んでいたんです。

営業職ですから、相手の顔がしっかり分かっていないと商売ができない。
1人の社員が取引先1社を専属で受け持つ。みんながそれぞれ取引先を別々に持っていて、他の人の担当の取引先がよく分からないという状況になっていたんです。
ただ、もちろん営業職にも女性の人が増えてきた。妊娠・出産もある。突然帰らなきゃいけない時もある。
そのときにもし退職、なんてことになると、取引先ごと失って大損失にもなってしまう。
だから、持続可能な仕組みにしなきゃいけない、と変えました。

もう1人1社担当をやめよう。担当の会社は決めておくけれど、妊娠したAさんが突然休んだり、短時間勤務になってもいいように、フルタイムで働けるBさんのような、ほかの会社を担当している人が何かあったらAさんの取引先にも応援に行くシステムにしました。

小野 アナウンサー
いやいや、その作戦だとBさんに仕事のしわ寄せが行って、Bさんに不満がたまると思うんですけど。

徳永 アナウンサー
先ほど小酒部さんが「評価」っておっしゃったでしょう? だから、この会社はこうしました。

ご褒美をあげよう。 もちろんお金だけではなくて、処遇や人事の面でも、フォローをした人には目に見えるかたちで評価をするシステムを作って、不公平感を少しでも減らしましょうというのをやった。

小野 アナウンサー
でも、そうすると、企業はいままで出さなくてよかった賞金を余分に出さなきゃいけなくなる。
「Aさんさえ妊娠しなければこのお金は出さずに済んだのに...」って会社はならないんですか?

徳永 アナウンサー
Aさんが、育休とかで休んでいる時のお金って、健康保険とか雇用保険とかで手当をしているので、会社が持ち出してるわけではないんですよね。
だから、ちょっと賞金を積もうが、持ち出す人件費が急に増えるわけでも何でもないんです。
そもそも中小企業では、有能な社員に抜けられて、また採用して一から教育していく損失を考えると、手厚くみんなで支え合うのがよっぽどいいわけです。

寒川 解説委員

産休を取ると、健康保険から賃金の3分の2が本人に支払われるし、それから、育児休業の場合は半年間67%、それ以降も50%が雇用保険から本人に支払われるので、会社側がその間の賃金を支払ってるわけではないんですよね。
それから、中小企業の場合には、例えば一時的に代替の人を補充した場合の助成金も国から出ますので、企業にとって金銭的に負担が多くなるわけではない。

徳永 アナウンサー
ちなみにこの会社、業績は伸びているそうです。

増田 さん
例えばAさんが職場に戻ってきました。
でも取引先が、「いや、Bさんのままでお願いします」言うて、Aさんのところに仕事が戻ってこない可能性はないんですか?

白河 さん
いま、2人営業体制にしているところが結構あります。
2人営業体制にしておくと、どっちかが休んでもフォローできますよね。
もう1人の方も、病気になったりする可能性もあるわけじゃないですか。
だから、子育てだけじゃなくて、いろんなことに対処できるようにしている。

小酒部 さん
代替要員の育成期間ということでとらえていただくと、ドミノ人事なんですよね。Aさんができていた仕事が、今度Bさんもできるようになる。
で、Aさんが戻ってきたら、Aさんはもっとスキルの高い仕事をやればいいわけで、そうやって回していくと。
いつ誰が抜けてもいい職場体制というのができていくということですね。

増田 さん
人材が豊富な会社は2人体制ができるイメージがありますけど、必ずしもできる余裕がある会社ばかりではないのでは?

岩田 さん
この会社は100人未満の小さい会社なんですよ。それでもできるんですね。

増田 さん
じゃあ、経営者の考え方しだいで変えられるってことですか?

岩田 さん
そうです。変えられる。

相田 さん
でも、もし妊婦側だとしたら、産休中に不安感もありますよね。仕事が大好きですごく復帰したいと思っている方は、その間に自分を超えてしまう人材がいっぱい出てきて、戻る場所がないんじゃないかという不安はあると思います。

岩田 さん
そういう意味では、なるべく早く復帰したほうがいいんです。
1年、2年、3年も休んで戻ってきて、Bさんが事実上その担当をやっているのに、そこにまたAさんが戻るというのは確かに難しさがあると思いますので。
これまで子育て支援というのは、育児休業は長ければ長いほどいいんじゃないかとか、短時間勤務できる年数も長いほうがいいんじゃないかというので、会社は両立支援策を充実してきたんです。
ですけど、本人がまた戻ってきて、そのあとキャリアアップをする、キャリアをしっかり作るという観点からは、できるだけ短いほうがいい。
早く普通の状態に戻って、普通の状態で戻っても、子育てをちゃんとしながら働くことができるという、そちらの環境をどう作るかということのほうが大事なんです。
そのために残業はなくていいという会社にするとか。

白河 さん
いま改革が進んでいて、それは長時間労働をまずやめる。そこがいちばんです。
女性が活躍するにも。男性も働きやすくなるんですね。
早く帰って育児や家事もできるようになりますし。

岩田 さん
あとはフレキシビリティーといって、いつ働くかとか、どこ働くかっていうことについて個人の自由度が高まれば、子育てと両立しやすくなるんですね。
だから、在宅労働とか、フレックスタイムとか、そういうのがどのぐらい広げられるか。

小野 アナウンサー
非正規の方々の不公平感を解消する手だてはないのですか?

小酒部 さん
いま非正規の産休においては、正社員と同じように非正規も取れるんですね。
ところが、育休においては、非正規は3つの要件をこなさないと育休にたどり着けないんですね。
つまり、要件があることによって、企業側は非正規は育休は取れない、もしくは育休なんていう制度はないというふうに言ってしまっている。
私たちがとった調査では、非正規の6割が産休さえ取れていないというデータも出たんです。

寒川 解説委員
いま小酒部さんたちの活動によって、国も育休法の改正に乗り出していて、要件を緩和しようというふうにはなっているんです。

岩田 さん
働く女性の半分以上が非正規なんですけども、非正規でいいと選択している人もいれば、本当は正規で働きたいんだけどそのチャンスがないという方もいるわけですね。
後者については、業種によっては今、人手不足感が強くなっているようなところもありますので、非正規から正規にどんどん転換してもらう。
正規も、総合職的な正規だけではなくて、地域限定とか職務限定とか、いろんな正規がありうると思うので、1つはそれをどこまで進められるかっていうことだと思います。

白河 さん
この間、一億総活躍国民会議があったんですけども、政府も非正規の人が就業継続できるようにとか、育休・産休が取れるようにとか、あと、マタハラについても提言としてしっかり入っているんですね。
これはなぜかというと、少子化対策なんです。
出産したら収入0円になってしまうってすごい恐怖で、それが若い方が子ども持つことに希望を持てないことにつながっています。

小野 アナウンサー
「100人くらいの会社でもできるとおっしゃいますが、それにも満たない零細企業はどうしたらいいんでしょうか。机上の空論に聞こえます」というご指摘が来ています。

小酒部 さん
そこでいうと、私たちのNPO法人では、できている会社に取材に行って、どういうふうな解決策を持ってやっているのかを調べています。
そうすると、従業員5人くらいの本当に小さな会社でも、ペア制度の導入などをして、うまく回すようにサイクルを作るんですね。
そうやって人が働きやすい環境を整えてあげることによって、今いる優秀な人材を流出させない。
それから、働き続けやすい環境を整えることによって、リクルーティングにもつなげられるんですね。
いま学生さんたちは企業のネームバリューや収入よりは、いかにワークライフバランスが取れる会社かというところで選んでいるところがあるので。

徳永 アナウンサー
もう1つ、北九州市にある病院のお話です。
ここも困っている方がいました。部局長さんが頭を悩ませていました。

病院って女性の方もよく働いているんですね。この病院も育休とか短時間勤務を取り入れていきました。
で、「時短勤務もやりますよ。4時半であがれます。やりたい人は手を挙げてください。」と言ったら、どんどん増えていきました。
ただ、病院は夕方から夜にかけてがそもそも激務。フルタイムで働ける人の負担がどんどん増えていったのです。
早く帰る人は当たり前のように帰っていくような空気になりかねないところまでいったんです。
そこで部局長さん、あることをしたんです。何だと思います?単純明快です。

時短勤務の人たちに聞きました。「本当に毎日4時半までしか働けないですか?」
いろんなケースが見えてきました。

例えば、「実は、私は夫が水曜日がいつもお休みなので、水曜日だけならフルタイムいけます」とか。

「うちは親に相談したら、少し子育てを協力してくれることになったので、週3でフルタイムいけそうです。」とか。

これを聞いたフルタイムの人は、「じゃあ、私たちもシフトを細かくして協力するわ」。
勤務表を細かくパズルのようにしていって回るようにしていきました。
つまり、キーワードは「歩み寄り」。

いまこれが進んでいって、56パターンのシフトになったそうです。
何時から何時という勤務が56パターンもできて、これをうまく使いながら、人繰りをし始めたそうです。

白河 さん
今スケジュールはコンピューターで入れて共有できますよね、独身の人も、プライベートがあるからここはだめですって、ブロックできる。
それだけでうまくいくようになったっていう例もあるんです。

小野 アナウンサー
ただもう1つ、このプレゼンの中から感じたことは、いくつかツイートでも来ているのですけど、妊婦さんや子育てをしてる側の、制度への甘え、甘えと言ったら怒られそうな気がするんですけど。

小酒部 さん
今これから、少子高齢化で労働人口が激減していきます。45年後の2060年には労働人口が2分の1に、人口が3分の2になると言われています。
その中で育児や介護、これからは介護休職を上司たちが取る時代にもなっていきますから、このような条件を抱える人たちを排除していては、じゃあ、誰が働くの?ということになるんですね。
なので、妊娠している女性だけを守ってほしいわけでは決してなくて、あらゆる条件を抱えた人が働けるような社会にしていかなければ、これからは企業が立ちゆかなくなるんですよという視点で見ていただきたいなと思います。

増田 さん

でも、例えば、さっきの深読商事の社長さんみたいな社長さんばかりになったら、女性を雇ってしまうといろんなことが起きてややこしいからっていうので、女性を採用する人数が減ってしまう危険性はないんですか?

寒川 解説委員
介護の話でいうと、今、年間10万人ぐらい、この5年間で40万人が介護のために仕事を辞めているんです。
高齢化でこれからどんどん要介護の方は増えていきますから、そうすると、女性の問題だとか男性の問題だとか言っていられなくなる。
男性も、今、国も介護休業を取りやすくするという方向で改正を進めていますので、介護休業取る人は今3%ぐらいしかいないんですけれども、今後かなり増やそうとしているんですよね。
そうすると、労働力として、しっかりと女性にも働いてもらわなければならないという企業が多くなる。

増田 さん
女性を雇わないとやっていけなくなる時代が来ると。

小酒部 さん
そうですね。来ますね。

岩田 さん
甘えるなという趣旨のことについてですが、子育て中の人は時間制約があるのは避けられないので、だから、残業ができないということで後ろめたく思ったり、周りの人がそのことをすごくネガティブに考えたりはちょっと間違ってるんじゃないかと思います。
だから私は、時間あたりの生産性で評価をするということが、周辺の方も含めてすごく納得感があるんじゃないかなと。
時間制約のある育児中の女性は残業する必要は全くないんですけども、1時間あたりどれだけ成果を出して会社に貢献できるかという、そういう気概を持って働きていただきたいというふうに私は思っています。
それから、もう1つは、100人未満の会社のことをお話しした時に、もっと零細はどうするんだという意見。
そこにはちょっと思い込みがあると思うんですね。子育て支援をしようと思うとよけいなお金がかかるとか、そういう思い込みが経営者とか一般にあって、でも、何にも会社は持ち出すものはないんですよ。
育児でお休みの方は会社が年間の給与を払う必要はない。短時間勤務の方は、短い時間分は賃金カットしていますから、よけいなお金はかからないんですね。
だから、経営の方針と、女性が活躍するような仕組みを作ろうという意志があれば、いろんなところにいろんな見本はありますから、どんなに小さい会社もできると思います。

寒川 解説委員
あとは、男性の家事・育児の参加をもうちょっとお願いしたいなという気がします。
共働き世帯で、女性の家事・育児時間が4時間なのに対して、男性24分。そして、育休の取得率のこの低さ。
政府は2020年にこれを13%に引き上げようとしてますけれども、女性だけの問題だというふうにとらえないでほしいなと思います。

白河 さん
そうですね。お母さんを雇っている企業だけがいっぱい不利益を被っていると。
お父さんは何をやっているんだって、中小企業の経営者はみんな言うんですね。
なので、みんなで一斉に、みんながつらい働き方から、みんなが楽しく働ける働き方に変えていかないと。
なかなかこれは一斉にやらないと難しいことなんですね。

相田 さん
会社だけじゃなくて、家族での話し合いもね。

白河 さん
そうですね。全部の会社がやらないと、会社どうしの不公平感が出てくるんですよね。

小酒部 さん
あと、男性の育児参加率が高ければ高いほど、第2子、第3子につながりやすいんですね。少子化改善にもなっていく。

小野 アナウンサー
男性は育児休業を取りにくい状況に今あると思ったほうがいいんですか?

小酒部 さん
そうですね。マタハラの仲間で、「パタハラ」っていうのがある。

「パタニティーハラスメント」。男性の父性に対するハラスメントで、出産は女性しかできないので、女性しか産休は取れないんですけど、育休は男性でも取れるんですね。

相田 さん
最近よく聞きますよね、男性の育休。

小酒部 さん
そうですね。でも、まだまだ日本は少なくて、男性の育休が進んでいない。
男性が育休取りたい時に、「なんだ、出世は諦めたのか?」とか「なんだ、お前の家は奥さんがいないのか?」なんて言ってしまうのが「パタニティー・ハラスメント」というものなんです。
つまり、マタハラを解決しなければ、次なるハラスメントとして、「パタハラ」。それから「ケア・ハラメント」。
介護休をこれから上司が取る時代になっていくと、次なるハラスメントに連鎖していってしまう。
これを全部合わせて「ファミリー・ハラスメント」と呼ばれている方がいらっしゃるんですけども、この3つは何かというと、働き方のハラスメントなんですよね。
働き方の違いに対するハラスメントだというふうに私は呼んでいて、長時間労働がスタンダートで、産休・育休の休暇を取る、残業せずに時短勤務をするという働き方の違いに対するハラスメントだと思っています。

白河 さん
プレーヤーが変わってきているんですね。
いままでは24時間働けて、いつでも転勤できる男の人だけが企業で働けるメンバーだったんですけども、今はもう育休を取る人もいるし、介護のある方もいるし、本当にみんな変わってきている。
だから全員が働けるように、プレーヤーが変わったらゲームのルールも変わっていかなきゃいけない、働き方全体が変わっていかなきゃいけないっていうことです。

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