2015年09月12日放送放送内容まるわかり!

どう決める? "愛される"五輪エンブレム

今月1日、佐野研二郎氏デザインの五輪エンブレムの使用中止が決定。 組織委員会は「国民の理解が得られない」ことを理由に挙げ、再公募することで「国民に広く愛され支持されるエンブレム」を目指すとしています。 しかし"国民の理解"とは何を指すのでしょう。パクリじゃないこと?審査の透明性?それとも...。 今回の騒動を振り返り、問題点は何か、ネット時代に多くの人の理解や合意をどう得ていけばいいのか、深読みします。

今週の出演者

専門家

百武 ひろ子さん(NPO法人 合意形成マネジメント協会 理事長)
田代 光輝さん(慶応義塾大学大学院 特任准教授)
中谷 日出(NHK 解説委員)

 

ゲスト

レッド吉田さん(タレント)
SHELLYさん(タレント)


小野 アナウンサー
シドニー、ソルトレーク、アテネ、トリノ、北京、バンクーバー、ロンドン、ソチ、リオデジャネイロ、ピョンチャン。そして、東京は白紙。
でも、もうこのひと月あまりずーっと、パクリだの盗作だの、ちょっとうんざりするぐらい聞いちゃったかなっていう感じありませんか?
またエンブレムの話? とお思いかもしれませんが、徳永アナウンサー。


プレゼンテーション①

徳永 アナウンサー
もうほかのチャンネルや番組で、怪しいんじゃないか、パクリなんじゃないかってさんざん比べてたので、きょうは一切その話ないです。
大事なのは、これからまたエンブレム決めなきゃいけない。で、マスコットも決めなきゃいけない。どんどん決めることがあるわけです。
今回のトラブルの理由をちゃんと考えないと、また繰り返すはめになりかねないので、ちょっとここで1回整理をしようと思っています。

はい、模型にしてみました。オリンピックの準備ってやることいっぱいあるんですけども、例えて言うならば列車なのかなと。

なぜならば、だいたいこういう偉い人たちが先頭車両に乗っていて、物事を決めます。
で、客車に乗っている国民の皆さんに、「決まりましたからみんなついてきてください」。
最近、偉い方は「国民運動」っていう言葉が大変お好きなんですが、皆さんついてきてください、これはオリンピックですよ。こうやって、出発進行!

こういうふうに組織委員会の人たちが行くわけです。
準備すること、決めることって実は調べてみると本当に多いんですね。

鉄道の始発駅がこの「おもてなし」だったとすれば、このころはまだよかった。

新国立競技場決定駅、通過したのかという議論はありますが、一応この位置。

いまだいたいこの公式エンブレム決定駅。決まってないので、これ、戻します。

実は、問題はそのエンブレムを世界にお披露目するのが、このリオデジャネイロオリンピックの閉会式での引き継ぎ。これ、どうするの。

で、次の年マスコットの発表。大丈夫かな。

そして、聖火リレーのルートもこれから決めなきゃいけないんですね。

で、終点はもう山のてっぺんだというわけです。
で、ちょうど開催5年前のことし7月24日、この駅にさしかかったわけです。

出てまいりました。突然これが出てまいりました。
「こういうふうになりましたんでよろしく」という、いつもの、いわゆるオリンピックの決め方のいつものパターンでございます。
組織委員会の人はたぶん思ってたと思います。はい、急ぐから出発進行、ついてきて。

まあ、いま、こうですよね、どちらかっていうと。
で、何がこの溝になっているのかっていうのを検証してみたいと思いますが、2両目はなんでついてきていないか。
「国民のみなさんどうしたんですか?」って言うと、いやいやいや、怒っております。

それが、さんざんワイドショーや報道でもご存じのとおり、まねなんじゃないの?

あのマーク。 実はですね、調べてみると、国際的な大会、オリンピックとか万博のロゴマークって、発表すると世界中のデザイナーの誰かが、いや、僕のに似てるってトラブルになるのは、割とよくあることなんですって。
ただ、今回大きく違ったのは、やっぱり現代の特徴です。

ご存じのとおり、みんなが発信できる時代になったわけですね。

そうなるとですよ、「勝手に写真使ったんじゃないの?」となります。
これはデザイナーさんだけじゃなくて、きのうニュースで組織委員会も勝手に使ってたことが分かってしまいました。

どんどん明らかになっていって、そして、ひぼう中傷まで、あることないことまでがメラメラメラッとなっていきます。

日に日にこの国民の不信感は募るばかり。
じゃあ何をしてたんだ組織委員会は、って話ですよね。でもね、あまりこれ、報道されておりませんが、今回のエンブレムの決め方にあたっては、組織委員会はこんなモットーを掲げてはいたんです。

いままでの決め方と比べると、本当にフェアでオープンなんですって。

公募したんです、限定的だけど。
ちなみにいままでのよくあるパターだと、指名して選ぶから指名コンペっていうのが多いんですって。
例えば、デザインに詳しい小野さん、SHELLYさん、レッドさん、ご指名しますから描いて。で、いくつか寄せてもらってその中から決めますっていう決め方。
今回は、有名なデザインコンテストで2回以上賞を取っていれば参加できますよと。
で、去年の9月から募集はその業界にはかけていて、104作品が来てた。

それで、組織委員会が頼んだ審査員8人の美術に詳しい方が中心となって、基本選んでもらって、このエンブレム決定ってなって、それがこのマークだった。
このエンブレムっていうのは、名だたる駅の中でも特に重要な駅でございます。急行が止まるぐらいの駅だと思います。なぜかといいますと、すごい大事なの。

エンブレムっていうのは街のあちこちに使われます。
メダルにも印字されます。これ、ロンドンオリンピックのメダルです。
そして、ただシンボルというわけではありません。お金の面でも大事です。
このエンブレムを使ってグッズを作れば、当然広告効果もあり、ものが売れます。
でも、これを使うには、大会運営のためにお金を払わなければいけません。スポンサー料だと思ってください。このスポンサー料が、エンブレムに入るお金が全体の運営費の4割。
このお金、もちろん選手強化にも回るんですが、基本オリンピックのために使われるという意味では、駅の中でも極めて重要な駅なんですが、その駅で1両目と2両目の間が離れちゃったということなんです。

で、ご存じのとおり、9月1日。1か月あまりのつかの間で、さようならとなっちゃった。
つまりですね、言うならばこの公式エンブレム、決定駅ならぬ、いまは未定駅ですね。

そういうことでいいますと、もう1つ通過してない駅がありますね。

新国立競技場未定駅になってしまいました。
このままいきますと何が恐ろしいかというと、1度はかなりの方が乗ったはずのこの客車、いま降りたいという方が増えかねない状態です。
国立競技場で怒った方、途中下車をする方も出てきます。このまま暴走するとですね、もしかしたらこの招致からさかのぼって。

小野 アナウンサー
そこ白紙撤回しちゃう?

徳永 アナウンサー
復興とか汚染水とか言ってたじゃないか。
ここからもう乗る気なかったんだっていう人が続出したら、この列車大変でございます。
でも、止まってるわけにはいきません。ご存じのとおり、ほら、さっき言ったとおり、リオ五輪の閉会式、逃げられません。マスコットの発表がございます。聖火リレーのルートもあります。東京オリンピックのゴールもあります。どうするの?
いまですね、組織委員会はこう言ってます。
次のエンブレムを決めるにあたっていろいろ言ったんですが、私たちが注目したのはこのせりふです。

「やめた理由はパクリかどうかではなく、パクってはおりませんが、国民の理解が得られない。やめます。次のエンブレムは国民に愛されるものにします」と言いました。

さあ、この溝を埋めるすべ、考えなきゃいけないと。
どうしたらいいですかね?というのを深読みしてもらいたいと。

吉田 さん
やっぱ新国立競技場から始まってここですから、不信感は募るばっかりですよね。
どう埋めていくのかなと思いますけど。

中谷 解説委員
国民の理解が得られない最大のポイント、キーワードは「分からない」なんですよ。
つまり、不透明感と説明不足なんです。
不透明感っていうのは、まず、そもそも審査委員会が作品を選びました。

最初、これを選んだんですよね。これで商標登録するために、組織委員会はこれに調査をかけました。
そしたら似たものが出てきたんです。普通の場合、似たものが出てきた段階でこれは使わない。2番手、3番手の作品を当然使うはず。
ところがそうせず、なんと審査委員会には言わずに、組織委員会がデザイナーと相談をして、こういう展開案を作っていくんですね。

まず、ここが不透明。
それでなおかつ、このマークって、エレメント、要素が少ないから、世界的にリサーチかけたら似たものは出るだろう。容易に想像できますよね。その段階でもう新たな展開をしたほうがよかった。
そうすれば今回の問題は基本的にはなかったといってもいい。

小野 アナウンサー
なるほど、なるほど。でも、そこに何が起きたかをオープンにされてないから。

中谷 解説委員
そう。そもそもこのエンブレムのデザインを応募する、公募する時に、このような、いわゆるデザインのコンセプトですね。

ここにうたわれてる「オリジナリティーにあふれ」。
オリジナリティーっていうのは、似たものがないということですよね。
これを選んだ段階で、組織委員会の考えの中に、この「オリジナリティー」っていう言葉がなかったんじゃないかという感じがする。

小野 アナウンサー
よく聞くんですけど、最近。「イノベーティブ」って何ですか?

中谷 解説委員
これは新しい世界を追求する、革新するっていう意味なんですけど。

小野 アナウンサー
革新的な。 その下の「コミュニケーションのシステムを構築する起点となる」っていうのはどういう意味ですか?

中谷 解説委員
あらゆる展開に対して、デザインっていうのは最終的に、使う人や展開する人たちが、みんなが、国民が共感を得られるようなものにしていかなきゃいけない。
要するに、コミュニケーションのツールとして。

小野 アナウンサー
じゃあ、それはデザインのいわば定義ですね。
でも、これ、「オリジナリティーにあふれ、革新的なデザイン」って、それは新しいデザインっていう以外に何も言ってないんじゃないですか?
デザインを募集しますって言ってるだけみたいに見えるんですけど。

中谷 解説委員
そう。だから、こういうところに関しても、分からないわけじゃないですか。
国民もこれを見て、どんなものができるんだろうっていうのは分からない。
だから、コミュニケーション、説明する説明力というか、説明不足ってことは言えると思うんです。

吉田 さん
でも、われわれデザイナーでなくても、新しいものを作らなきゃいけないっていうのは分かりますよ、絶対に。
オリンピックですから、少なくとも。

中谷 解説委員
審査委員会から組織委員会を受けてその展開をしたっていうことも、うまく説明ができてないんですよ。
だから、それも理解されていないので、結局、みんな分からなかった。

小野 アナウンサー
今日お越しの専門家の皆さん、名札の代わりに専門分野を書かせていただきました、胸に。
合意形成の専門家っていう方もいらっしゃるんですよ。
ご専門の立場から見たら、今回は何が問題なんですか。

百武 さん
見えないところで何かが決まっていくというのが、国民側から見ると不信感につながる、ということだと思います。
先ほどのプレゼンの中でもあったとおり、組織委員会としてはフェアでオープンだと思っていた。
ちゃんとした専門家がちゃんと決めてるんだから間違いない、だから、ご理解ください。
ご理解が得られるはずだ、と。受け止める側はそういうふうに思ってないわけですよね。
いつも誰か知らないところで決めていて、それをご理解させられているっていう感じが多いと思うんです。
別にこの問題に限らず、いろんなところでそういうふうに、誰かが決めたことを、なんで理解しなきゃいけないのって。
そこの部分の納得っていうのをどう作るかというのが、いままでできてなかったんじゃないかな、と思います。

吉田 さん
ただ、でも、2回信用してたものが裏切られてるんで、国民の信頼ってなかなか返ってこないですよね。
そこ、どうすればいいんですかね。じゃあ。

百武 さん
理解をしてもらう、理解をするっていう関係性じゃなくて、やっぱり一緒に考えていくっていうことだと思います。
誰かが来て決めてもらうっていうと、何か陰でこそこそやってるんじゃないかとかって、不信感が出てきますよね。
そこでオープンにするっていうところがとても大事だと思うんです。
やっぱり中途半端なオープンだったんじゃないかな。

吉田 さん
上からじゃなくて、下から来てもらわないと、国民はもう納得できないですよね。
ただ僕はそう思っても、ほかの国民の方が、いろんな意見があると思うんですね。
それでまた、ネットでこういうふうな感じでかぶせられると、いい方向にいかないように思うんですよね。

視聴者の声

東京都・30代・男性
「ネットはマスコミ以上に力を発揮できる市民の目。」

群馬県・40代・男性
「行き過ぎたネット社会に怒りを感じます。匿名をいいことにやりすぎだ。」

東京都・60代・女性
「国家プロジェクトについて一般庶民が個人で意見を述べる場はネットのほかにありません。」

田代 さん
今回、ネットが起点となって、これだけ大きなプロジェクトがひっくり返ったっていうのは初めてのことなんです。
去年の小保方さんの論文の事件では、論文の盗用が次々とネットでばれていって最終的には、なんかこの人ちょっと違うんじゃないということになりましたが、これだけの国家プロジェクトがネットの意見が中心になってひっくり返ったというのは初めてですね。
やはり、いちばん最初にエンブレムがポコンと出てきた時に、みんなやっぱり違和感を覚えたんだと思うんですよね。
いままで、何かものを与えられた時に違和感を覚えても、自分と同じ考えがいるんだっていうのを探すの難しかった。
特に、テレビでワーッと言われて、普通に暮らしてる分には、自分と同じ考えの人いるのかなって探すの難しいんですけど、インターネットで皆さんが声を発するようになってから、あれ、僕と同じ意見の人たくさんいるんじゃない?
というかたちでどんどん広がっていって、組織委員会が国民の理解を得られないと言ってましたけど、やはり理解をした国民というか、このエンブレムがいいと思った人が少なかったというところが、今回の大きな騒動かなと思います。

小野 アナウンサー
ただ、どっちかっていうと破壊的な方向にエネルギーが向いてないですか?

SHELLY さん
そうなんですよね。自分が感じたことを発信できる場っていうのはすばらしいと思いますし、それで世の中が動くっていうのはすごいことだなって思う反面、その気持ちが強くなりすぎちゃって、罰するのは俺だみたいな。

吉田 さん
ちょっと魔女狩り的なね。

SHELLY さん
そうです。相手のこと、個人情報を勝手に出しちゃったりとか、家族のことだったり、いろんな、今回問題があって、それはちょっと怖いなっていう。

田代 さん
そうですね。人間、怒りの感情のほうが行動に結びつきやすいので、やっぱ怒った時って行動的になるんですよね。うれしい時は、わあ、うれしいってなるんですけど。
インターネットは負の、怒りの感情を促進する面があるので、特に佐野さんのプライベートの部分がすごく出ちゃった。
それはマイナス部分だとは思うんですが、ただ、今回の特徴は、いわゆる普通の炎上とは違って、東京オリンピックをよくしたいんだと。
このエンブレムじゃなくて、もっと華やかで明るいものにしたいんだと。

吉田 さん
自分たちで作るんだと。

田代 さん
そうですね。参加したいんだって意見があったので、比較的ポジティブな騒動といいますか、ポジティブな動きが多かったなっていうのは感じましたね。

吉田 さん
だから、クレームが来た時に、いちばん上の長がどうしっかりするかってことですよね、基本的には。
軸がぶれずに、いや、これでいくんだとか、いや、ごめんなさい、じゃあ変えましょうとかっていうのを敏速にやってくれれば、それはそれで、信用問題としては解決できたのかなと思うんですけども。

田代 さん
東京オリンピックで何をするんだっていうのが決まってないというか、コンセプトがよく分からないまま、エンブレムだ、国立競技場だ、出てきちゃったので、何を基準に考えていいか、われわれ分かんないですよね。

視聴者の声

「コンセプトがないね、オリンピックの。そこが問題。」

「「フェアでオープン」と検索しても、五輪組織委員会にはヒットしませんでした。」

「エンブレム、何を伝えたい、何をアピールしたいのか分かりませんでした。コンセプトがすごくぼやけていると思います。」

小野 アナウンサー
コンセプトって、そういえば今回のオリンピックのコンセプトって何でしたっけ?

田代 さん
招致の時は「復興」とかいう言葉が出てきたので。

中谷 解説委員
うん、ビジョンは出てますよね。

百武 さん

「全員が自己ベスト」と、「多様性と調和」、「未来への継承」。
これがビジョンですけど、ご存じでしたか?

吉田 さん
知らないですね。

小野 アナウンサー
しかも、それを基にして、これからコンセプトを考えて、そのコンセプトを基にデザインはできるんですね。

吉田 さん
なるほどね。デザインも自己ベストでなきゃいけなかったものが、自己ベストじゃなかったってことですもんね、極端に言えば。

視聴者の声

「国民と一緒に作り上げるというのは難しそうに思える。でも、随時情報公開していくことができるんじゃないか。」

「組織委員会が言う「国民の理解」の国民は、国民の代表者、国会議員のことじゃありませんか。」

「「国民の理解を得られない」という言葉が、何かあってもすべては分かってくれなかったあなたたち国民のせいだからねと言っているようにしか聞こえない。」

吉田 さん
確かにそこなんだよなー。

SHELLY さん
あー、そうかもしれないですね。

小野 アナウンサー
一方で、「オリンピックのエンブレムを決めるのに、事前に広く国民の了解を取る必要があるのか疑問です」。

中谷 解説委員
こういうエンブレムなどの審査の場合、明らかに全部オープンっていうのはなかなか難しいんですよね。
商標登録しなければいけないので、オープンにしてしまうと、先にそれをまねして登録されたりするんですよ。
だから、審査委員会を、全部そこでカメラ入れて、中継入れて、誰が何言ったっていうのはできないんですけど、ただ、審査員がちゃんとどういう思いで、どういう経緯でこういうものを選んだかっていう、最後に審査評を書くとかですね、全員の思いをちゃんとみんなが分かるようにすることは大事なんですよね。

小野 アナウンサー
「オープンっていうならもうネット投票にすればいいじゃん」っていう声が来てますけど、それは無理?

中谷 解説委員
それも同じことで、全部商標登録を最初にしておかないといけないんで、ものすごくコストがかかると思います。

SHELLY さん
お金も時間もかかりますよね。

百武 さん
ある程度絞って、それを商標登録したものを、じゃあどこに決めるかっていった時に、公開で討論するっていうことはありえますし、それならどういう意見が出たのかっていうのは分かりますよね。その中で何かが本当に決まったら、すごいなって思うんですけど。
例えば、いまもツイッターでも、たくさんのご意見、たぶん来てると思うんですけども、そういったものもうまく選考の中に入れていったら、すごいイノベーティブなんじゃないかなって思うんです。

吉田 さん
でも、いろんな意見聞きすぎると、やっぱり迷走してしまうと思うんですよね。
だから、ある意味オピニオンリーダーじゃないですけど、そういう人が1人いて、こうするんだっていうふうに強く推してくれるリーダーがいれば、そこについていけるとは思うんですけども、なんとなく組織委員会って、そういう先導がいるような、いないような、そんな感じがするから。

中谷 解説委員
みんなそれぞれ専門性があって、組織委員会は委員会の専門性があるじゃないですか。
審査委員会は審査委員会の専門性、それをお互いに大事にしていく。
でも、何をやってるかをちゃんと明確にしていくってことがすごく大事なんで、それを分かりやすく伝えたいんです。

小野 アナウンサー
組織委員会と審査委員会は違ってて、8人のデザインのプロが入っているのは審査委員会のほうなんですね。

中谷 解説委員
審査委員会。プロがやっぱり選ばなきゃいけないっていうのは、絶対選ばなきゃいけないんですよ。
その展開をするのがデザイナーとディレクターの役割なんで、非常にそれが見えているのは、やっぱりプロなわけですよね。

小野 アナウンサー
じゃあ、ものの決め方みたいなところに話が進んだところで、ご覧いただきたいプレゼンがあります。


プレゼンテーション②

徳永 アナウンサー
大変なことをどうやって決めてるんだろう、ほかの国ではって、われわれ調べました。
すると、大層な選択をおもしろいやり方で決めてる例って、いくつもあったんです。
ちょっと考える参考になると思ってご用意しました。

国民の理解や納得を得るためにどうしているか。2つご紹介します。

まず1つ目はニュージーランドです。
ご存じですか?いまにわかに注目され始めている。

ニュージーランドは、なんとこの国旗を変えるか変えないか話というのが始まっております。
これはね、一目で分かる理由があります。

ニュージーランドの首相は、結構国際的な場で間違えられたこともあるって言ってました。ちょっと気の毒ですよね。
なので、ちょっと変えてみます?って言って、いま大論争が起きております。
これを決めるにあたってモットーとしてるのが、何度も何度も国民の声を偉い人は聞くというわけなんです。

まずキャッチコピーがございまして、「Your chance to decide」。あなたに決めるチャンスあり。
ニュージーランド、だいたい国民の数が400万人ちょっとですが、みんなチャンスありですよと。

みんなに応募してもらおうということで、車座になった集会で、どういうコンセプトかっていうのを国の人が説明します。
手順も言います。ホームページなどを使って日程も全部、国民にオープンにします、全部。
さあ皆さん、ニュージーランド国民であれば老若男女、子どもも大人もみんな応募していいです。
で、募集かけました。みんな国旗描いて送ってください。

来た作品、なんと1万点。
さすがにこれ全部国民投票にすると大変なことになりますんで、審査委員会というのがこちらもあって、ある程度に絞りました。その一覧をご覧いただきます。こちら。

39に絞りました、まず。
このシダのマークとか、うずまきもこれ、シダの一部なんですけど、先住民のマオリ族の皆さんが大切にしているものなんです。
それから、この黒い色もそうらしいんですよね。ですから、こういうのが多く、やっぱり南十字星は大事なんだなとかね。
ここまで、いろんな、皆さんこれ見てお好みあると思いますが、このあとまた国民の意見を見ます。
ネットなどで、あれがいい、これがいい、あれはダサい、絶対あれは嫌だとか、いろんなのが出て、審査員の皆さんがその声を参考にして、いまここまで絞っております。

ベスト4です。
で、このあと国民投票します。まず当然、4つの中からお好きなものを1つ選んでください。

選挙の投票行ける有権者全員で投票します。で、1個絞ります。
で、終わると思うでしょ? まだあるんです。

もう1回聞きます。大事なので、本当に変えていいですか。
これでもいいんですよ、これでもいいんですよっていうのを、いわば決勝戦を、もう1回国民投票します。決まるのは、来年の3月です。
変わるか変わらないか、いまにわかに注目されておりますが、大事なことは国民に何度もちゃんと聞く。これがニュージーランド流です。
批判もすごくある。税金も相当投入している。多少批判もあるんですが、それも含めて、いま大論争になっているということなんですね。

もう1個あります。デンマークは、ひと事じゃありません、私たちも。
かつて、これで大きな選択をしました。

原発作ります? 作りません? っていうのを国民とともに考えました。
実はですね、これ1970年代から80年代のことだったんですが、デンマークっていうのは原発がそもそもなかったんです。
火力発電がほとんどだったんですが、オイルショックがあって大ピンチになりました。
その時国は、「うちも原発作るか」って言いました。反対運動も起こります。
大騒ぎになったので、その時政府がとった作戦はこれです。

「分かった。焦らないから、国民に3年考える時間を作りますから、自由に話し合って、あちこちで議論してくださいな。3年たった時の世の中の空気を議会で議員たちが見て、それで皆さんの意見をくんで、イエスかノーかを決めますから」って言ったんです。

さあ、いろんな意見が出ました。実は原子力の専門家たちやいろんな人が中心になって、原発を作るメリットとデメリットを同じ数だけ情報を羅列したものを配ったりした。
平等に。で、中立公正を守りながら議論をしてもらって、実は3年待たずして、2年で議会は結論を出しました。ほぼもう国民はこっちだなっていう空気になったそうです。
答えはこっちでした。

やめとこうとなりました。
実はこの時の選択がいまも続いていて、デンマークは昔もいまも原発はありません。

風力などの自然エネルギーに力を入れるっていう選択をして、実はいまもそのベクトルは進んでいて、2050年にはこの風力などの自然エネルギーの割合をどんどん増やして、火力発電もやめたいねって言って、いま目指しているということです。

大事な国の方向性は、時間をかけて結論を急がない。これがデンマーク流です。

吉田 さん
で、国民に選ばせるということですよね。いいよね、これね。

SHELLY さん
こうい大きな問題っていうのはみんなで考えたいし、みんな意見したいですけどね。

小野 アナウンサー
こういうふうに大事なことを決めるのに、手間とお金、お金も税金ばかりじゃなくて、手間と時間をちゃんとかけられる国と、そうじゃない国があるんだなって思ってしまうのですが、何でしょう、その違いは。

吉田 さん
結構ピラミッドが大きいじゃないですか。
底辺のほうに意見を聞くっていうのは、なかなか難しいんじゃないですかね。

百武 さん
その時、ネットっていうのはすごく、今後活用できるソースじゃないかなと思うんですね。

田代 さん
そうですね。今回のオリンピックのエンブレムに関しては、やっぱり国民というか、特に皆さんの関心が非常に高いと思うんですよね。
オリンピックのエンブレムにしても、これから出るマスコットにしても、ある程度みんなが参加できて、いろんな意見を集約できる。
僕たちもオリンピックに関わったんだよと思えるような仕組みっていうのは必要だと思いますし、特にインターネットっていうのは、それが簡単ですのでね。
いままで紙で書き取りやって、対面で調査してっていうプロセスよりも、ネットを使えば比較的容易に分かりますので、そういうところで活用してもらえればいいなっていうふうに思いますね。

小野 アナウンサー
まとまるもんなんですかね?

吉田 さん
本当、そうですね。俺、まとまらないと思うなぁ。

小野 アナウンサー
デザインだって、一生懸命考えた人が、1つ選ばれるってことは、あとは落ちるっていうことですよね。
あっちのほうがよかったよとか、あとからずっとグジグジ言われたりとか。

SHELLY さん
デザインとかアートって、それこそ本当に好きか嫌いか。いいか悪いかじゃないじゃないですか。
だから、そうなってくると本当に好みなんで、それを国民投票で決めるっていうのも難しいなって思うんですよね。
もっと言うと、デザインって長年親しむことによってどんどんなじんでいったりとか。最初はなんか、これどう? と思ってても。

吉田 さん
うん、違和感あったとしてもね。

中谷 解説委員
デザインの使命って、みんなにその機能や美しさを分かってもらうって共感を得ることなんだよね。
それをリーダーシップのある人がちゃんとみんなに説得していくっていうことが、いま求められてるんです。

小野 アナウンサー
でも、一方で、百武さんがおっしゃってるのは、賛否両論あっても、一方的に決まったよと言われるのとは全然意味が違うってことですよね。

百武 さん
そうだと思う。日本でも、いまコミュニティー、ローカルのレベルでは、ものすごくたくさんのケースとして、市民参加っていうのが図られているんです。

河川改修を巡って意見がなかなかまとまらなかったケースなんですが、「憩いの場にしたいね、緑があるのでそれをうまく活用したいね」という人たちと、「そもそもそういうことをしなくてもいい」っていう反対の人がいた。
反対の人って、すごく強い意見を言う場合ってあるじゃないですか。それまで、ああ、またかっていう目で見られていて、いつも、あんまりちゃんと聞いてもらえなかったと思うんです。
その場合、「なんでそういうふうに思うんですか」って聞くと、「実は子どもの安全面が不安なんだ」とおっしゃった。憩いの場っていうのは大事だけども、確かに子どもの安全っていうことを考えたらどうしたらいいだろう、という賛否を超えた次のステップにいけるわけです。

転落防止の柵はどうだろう、それも自然になじむ、そこで遊んでいる子どもたちも見えるものがいいんじゃないか、そういうような次のステップにいくわけです。
だから、賛成か反対かで、一方を全部切りますっていうんじゃなくて、反対の意見の中に、賛成意見を強いものにするためのいろんな視点や示唆があって、第3の案を作っていくっていうのがいちばんいい合意形成の形だと思います。

吉田 さん
なるほどね。時間はかかるかも分かんないけど、そういうことをやっていかないとね。

中谷 解説委員
エンブレムでも、こういうものは必要ですよね。

小野 アナウンサー
そして、いろんな場でその考え方って大事な気がしますね。 マンションの自治会とか。

百武 さん
そうなんですよ。PTAとかありますよね。
なので、いま特に、意見が違う人がいる。ネットもそうだと思うんですけども、それを乗り越えて次の案を出すっていうところがなかなか、放っとくと、お互いにディベートのようにけんかになってしまうっていうことは多いんですけど。

中谷 解説委員

これ、みんな知ってると思うんですけど。これ、せんとくん。奈良県のマスコット。
せんとくんが最初発表された時に、とんでもない批判を結構受けたんですよ。それも、ネット上でね。
でも、この作者は彫刻家の方なんですけど、本当にその批判に対してちゃんと応えていったということで、いまやもう、本当に奈良県のマスコットとしてすごく人気があるという。
やっぱり説明の力というか、地道にやっていくってことがすごく大事なんですよね。

視聴者の声

「最終的に責任が取れる人に判断してもらえば納得できるんじゃないかな。」

「一緒に選びたい。」

「日本だとニュージーランドの30倍の規模になってしまう。ということは、単純に考えれば30倍の費用がかかる可能性も考えなければ。」

「国が本気で国民参加型のオリンピックにしたいと考えるなら、400万も1億2000万も同じじゃないでしょうか。」

「東京五輪のエンブレムで国民投票されてもな。」

田代 さん
そのとおりで、国旗っていうのはその後ずっと使われるものなので、ニュージーランドみたいに大規模に、より多くの人が納得できるプロセスでやっていくことが必要だと思うんですね。
ただ、五輪は、ある程度参加感を持たせつつ、最終的にはこれでいくんだっていうのは、誰かが決めなきゃいけないですね。
次のデザイン、コンペする時に、デザイナーの方、戦々恐々とされてるかもしれませんが、デザイナーとしてプロの仕事をしていただいて、東京の皆さん、日本の国民の皆さんの気持ちを表すようなエンブレム、世界に対してこういうオリンピックやるんだっていうのが一目で分かるようなものが出てくれば、みんな納得すると思いますし、あと、その過程が分かっていけば、これってわれわれ、私たちのエンブレムだよねということになっていくので、騒動自体は収束していくと思います。

吉田 さん
ただ、次のエンブレムはハードル上がってますからね。なかなか難しそうですね。

中谷 解説委員
僕の友人のデザイナーたちも今回の1件で、これ本当に出せるのか、かなり消極的になってる人もいるんですよ。
その風潮は非常によくないと思うので、ぜひチャレンジしてほしいなと思いますよね。

小野 アナウンサー
でも、それはチャレンジもしてほしいですけど、ネットの人たちも少しお考えになったほうがいいってことはないんですか。

SHELLY さん
見る側もオープンな気持ちで見ないといけないですよね。

吉田 さん
でも、批判の声は絶対にありますもんね。
どれだけ正解を出したとしても、批判する人は結構いると思うし。

小野 アナウンサー
中傷みたいなことが、たぶんいちばん恐れられていることですよね。
これからデザインを出していこうという人たちからしてみたら。

吉田 さん
そうですよね。多少似ててもよかったりとかもするんですけどね。
あまり、また次エンブレム発表した時に、絶対誰か探すじゃないですか。
なんか似てるものがあったみたいなことでなると、また同じことの繰り返しになるから、その辺は、多少はゆるく見てあげないと。

中谷 解説委員
その展開にオリジナリティーがあればいい。
だから、それをちゃんと説明できるかどうかですよね。

田代 さん
あと、ネットを僕見てますけど、これ、パクリだから嫌だっていうような意見はほとんどないんですよね。
やっぱり、東京のいまの気分を表してないんじゃないかっていう意見だったので、パクリというのは後付けだし、国民の意見聞いてないっていうのも後付けで、どうしてもエンブレムに違和感がみんなある。

百武 さん
最後にひと言、提言です。コンセプト作りっていうとこに国民が参加する。
それから、プロセスをオープンにする。決める人もその中に入ってもらう。
最初から入ってるとそのプロセスを、どうなったか、どうやって決まったかっていうのが分かるかというふうに思います。

小野 アナウンサー
「成熟した先進国のオリンピックを」という声が来ています。ありがとうございました。

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