2015年02月14日放送放送内容まるわかり!

水素社会元年 日本は世界に勝てるか?

今回のテーマは「水素」。エネルギーの9割を輸入に頼る日本が"エネルギー大国"になれるかもしれない!? 燃料電池車やエネファームなど、水素の技術で日本はぶっちぎり。 しかも今年は「水素社会元年」と位置づけられ、新年度の水素関連予算は700億円にも...。 しかし、水素エネルギーの普及には、安全性やコスト、海外展開など課題が山積み。 日本は"水素社会"を実現し、世界をリードすることができるのか? 深読みします。

今週の出演者

専門家

佐々木 一成さん(九州大学 教授)
町田 尚さん(芝浦工業大学 教授)
片岡 利文(NHK解説委員)

 

ゲスト

レッド吉田さん(タレント)
大林 素子さん(タレント)


小野 アナウンサー

今日の主役、水素。理科の実験用に売っているんです。すごく軽い。
これで車を走らせ、そして世界に打って出て、世界をリードしちゃおうって言うんですけど、そんなうまい話はあるんでしょうか?


プレゼンテーション①

徳永 アナウンサー
夢を持ちましょうよ。今日は夢のある話を一気にやります。
なんで水素で車が走るのか?っていう原理からいきます。

理科に詳しくない人にも分かりやすくするために、ざっくりとご説明するのをお許しください。簡単に言います。
水素というのは酸素と合わせて反応させると水になります。水になったとき、実は電気も発生するんです。
で、この電気を使って車を走らせている、エネルギーにしているということなんです。
ただ水素と酸素を近づけるだけで反応するのであれば、さっきのスプレーをシュッと吹けばバチバチってなるはずですからそんなわけはなくて、ちゃんと装置が必要です。

それが、「燃料電池」。電気をためるわけではなくて、電気を発生させてくれるしかけだと思って下さい。

中には黒いカーボン紙みたいな膜が幾重にもありまして、ここに水素を通すと近くの空気中にある酸素と反応して電気を作ってくれるスグレモノ。
これと同じ仕組みが車の中に入っていて、水素を送り込んで電気を作って動いてると思ってください。

吉田 さん
水素を使うことによって電気を生むシステムを開発できた、ということですね。

徳永 アナウンサー
そのとおりです。今、技術開発が盛んに行われています。
これが全部うまくいくとどんないいことがあるのか、未来を見てみようじゃありませんか!

ここは架空のまち、NH県深読み市。
いち早く2015年に水素社会に取り組みまして、2030年には水素の町が出来上がりました。さあ、何が変わっていくかを見てみましょう。

まず、電柱、電線がなくなります。

おうちにある灯油タンクもなくなります。

代わりに、燃料電池が庭につく。

つまり、水素で電気を起こして家庭の電気をまかなえる時代がくると思われます。
ちなみにこれ、電気を発生させる時に熱も出ます。
これであったかいお湯だとか暖房をまかなう。光熱費もおトクになるはず。

小野 アナウンサー
その水素はどこから持ってくるんですか?

徳永 アナウンサー
水素っていうのはそれ単体で自然界にあるっていうのは原則ほとんどないんですよね。
何かとくっついて存在してる、水だとかの形で。炭素とか酸素とかとくっついているので、それ単独で取り出すのはけっこう技術が要って、今いろいろ研究が進んでますが、深読み市はクリアしています。
意外なところから、水素が取れるんです。

例えば、海辺にある製鉄所。鉄を精錬する過程で今でも水素が出ています。
ちゃんと回収すれば、ここから水素を取れます。
さらにこんな所からも水素が取れます。

下水処理場の汚泥。田んぼの稲わら、動物のふんだとか肥料。メタンガスが出るんです。そのメタンガスの中に水素があります。
今の研究でもそこから純粋な水素を取り出す技術がかなり進んでいます。

今までやっかい者と言われていたところが突如としてエネルギー源になり、ここを管でつなげば水素を貯めておける水素基地なんていうのが深読み市にはもうできていて。

このままこれをハイヨッと配達が来るかもしれませんが、はいH₂!って水素を買って家で発電する。
だから、送電網とか、自分で灯油を買いに行って重たいのを持って帰って、とかいうのはなくなるかもしれない。

片岡 解説委員
あるいはガス管みたいなものでつなぐかもしれませんよね。

徳永 アナウンサー
こういうことまでなくなる。

ガソリンスタンドがなくなり水素ステーションに。

深読み市は、車が水素で動く燃料電池車に一挙に変わっているんです。
これはクリーンなんです。なぜかというと、さっきの式をもう一回見て下さい。

水素と酸素を反応させて水と電気。このどこにも二酸化炭素(CO₂)という文字がありません。
出るものは二酸化炭素じゃなくて水です。ちょっとぽたぽた水が落ちるだけです、この車。
ですから、排気ガス、CO₂どうするの?っていう話、深読み市では過去の話になっています。

吉田 さん
でも、安全性はどうなんですか?
水素って聞くと、爆発というイメージがものすごいあるんですけど。

佐々木 さん
燃料というのは当然燃えるものですから、それをきっちり安全に使いこなすことが大事になるんですよね。
その時に大事なのが、いくつかコツがあってそれをきっちり守ればちゃんと使いこなせるというものなんです。

5つぐらいコツがあるんですけども、そのうち「漏らさない」っていうのと「大量に空気と混ぜてためない」っていうこと、少なくともその2つをきっちり守れば、十分安全に使いこなせるものですし、車や水素ステーションもそういう安全対策がきっちりされておりますので、安心して使っていただけると。

徳永 アナウンサー
取材で練馬の水素ステーションの方に聞いたんですが、濃度がキュッと濃くなっているときに火がつくと危ないわけで、何かあったときには水素をぱっと逃がして空気に拡散させれば安全だから、そのためにいつでも水素を逃がせられるように工夫しています、とおっしゃっていました。

それをクリアさえすればクリーンですから、深読み市は自家用車に限らず、路線バス、電車が水素で走る時代。

大林 さん
水素を作る時にCO2は発生しないの?

徳永 アナウンサー
実際は今、まさにそれが発生しているんです。(現在は石油、天然ガスなどの化石燃料から水素を取っていることが多い)でも今度は自然界から取れるというものだから、この技術が発達するとCO₂をいっさい途中でも出さず、ほんとにクリーンなものが実現できると、今研究が進んでいるんです。

2030年の深読み市は、外国から燃料を買うための船もなくなります。
全て水素でまかなえているからです。原油や天然ガスを買わなくてもよくなります。

今、日本全体が一年間に買っている燃料代、外国にいくらお金を払っているかというと、28兆円。
究極の夢をお話させて下さい。水素社会が現実のものになった深読み市は、再生可能エネルギーの発電所がどんどん増えていきます。

小野 アナウンサー
どうして燃料電池で発電ができるのに、なぜさらに再生可能エネルギーが増えるんですか?

徳永 アナウンサー
原発事故の後からずっと、この再生可能エネルギーになんとかもっとシフトできないかな、これが増えればいいなっていう話がありましたよね。
ただ、電気ってためておけない。だから、風がやんだらどうするの?曇ったらどうするの?その時電気が止まって大丈夫ですか?という再生可能エネルギーの弱点がよく言われてきたんです。
でも、よく考えて下さい。これをもう一回見てほしいんです。

さっき、水素から電気ができると言いましたが、逆もいけます。
電気に水を近づけて反応させると、水素に戻すこともできます。
電気はためておけないからネックだと言われていたんですよね。
ってことは、発電できる時にいっぱい発電しておいて、水素に変えればためておける。
電気が足りないっていうときに、ためた水素で電気を起こして使えばいいわけでしょ?

ひとつ言えるのは、再生可能エネルギーの発電所の弱点は、水素で突破できる。
つまりエネルギーの自給自足ができる町がより可能ですよっていうのが、水素社会のすばらしいポイントではあります。
もう一個だけ夢のある話をすると、こうした技術、日本が世界をかなりリードしています。
とりわけ燃料電池に関しては、日本の企業がとってる特許の数が世界で群を抜いて多いんです。うまくビジネスすれば大きな商売にもなります。

小野 アナウンサー
今ものすごく「すごーい!」って言いそうですけど、自分を抑えています。
絵に描いた餅は食べられない。口のうまい男には気をつけろ。絶対なんかあるはずですよ。

片岡 解説委員

絵に描いた餅を現実にして日本の産業の柱にしようということで、国も本気になって2015年、まさに今年こそ水素社会元年だと、来年度1年だけで440億円の予算をつけたんです。本気です。
ただ一点、心配なことがあるんです。とても心配なことが。

小野 アナウンサー
やっぱり、ほらきた。

片岡 解説委員

これなんですよね、「ガラパゴス化」。
絶海の孤島ガラパゴス諸島って、この島にしかいない独自の生物が生息しているんですね。
それになぞらえて、日本では世界的にももうすごくリードしている技術ができているにも関わらず、なぜか世界では受け入れられず日本でしかその技術や製品が普及しないっていう問題が、ある種の"負けパターン"みたいなものがあるんですね。
例えば、携帯電話。「ガラケー」とか「ガラパゴス携帯」とか言われますね。
iモードとか写メールとかおサイフケータイとか、すごい機能を持っていながらも世界ではほとんど使われていません。
意外なのがこれ、非接触型のICカード。電車に乗るとき、買い物をするとき、便利ですよね。
こんなに便利だから世界中の人たちも日本のこのカードを使ってるに違いないと思うんですが、実は日本のカードが使われているのは世界でもごく一部。
ほとんどは欧米のメーカーが作ったカードが主流になっているんですね。

小野 アナウンサー
売り出そうとしたけどダメだったんですか?

片岡 解説委員
今一生懸命売ろうとしてるんですが、欧米が国際規格をとって先に広がって...

小野 アナウンサー
出遅れちゃった。

片岡 解説委員
人の話ばかりだと恐縮なんで、われわれの話をしたいと思います。

ハイビジョン。これ、今あるハイビジョンと違うんですね、アナログ伝送方式のハイビジョン。開発指導したのはNHKです。
当時非常に優れた技術だったので、これを世界の標準にしようとまさに私たちの先輩方が頑張ったんですけども、ヨーロッパからは受け入れられず、そうこうしているうちにアメリカでデジタル式のテレビができて、その流れの中で2007年に市場から消えてしまったんです。

さて今、徳永アナウンサーが夢の世界を語ってくれた水素の技術。
これがこの島を出て、"負けパターン"を克服して、世界に広げることができるのかどうか?
まさにこの水素は、それを試される舞台なんです。

大林 さん
外国でやっていないから、日本の技術そのものを持っていっても他の国では使えない、通用しないってこと?

片岡 解説委員
ということもあるかもしれませんし、日本の技術が進んでいるわけですよね?
そうすると、日本の技術を受け入れるとまた日本にやられてしまいそうだから、というのもある。

小野 アナウンサー
なんでこんな風にいつもいつもガラパゴス化してきてしまったのか。
町田さんはどうご覧になっていますか?

町田 さん
日本企業はどちらかというと日本国内を見ちゃうんですね。
国内市場における日本企業の競争を考えて、そこでまず勝とうとするんですね。そして特許をいっぱい出して独占しようと。
今回すばらしいのは、燃料電池車でトヨタが5680件の特許を開放すると言ったことです。

私、実は昔、自動車用の無段変速機を開発していたんですけれど、部品会社がこういうものをやりましたから、ともかく技術を独占しようと特許をいっぱい出したんですよ。
ところが私が開発したのは変速機の心臓部であって、トランスミッション(変速機)そのものじゃないんですね。
だから、ミッションメーカーがいて、自動車メーカーがいて、初めて成立する。
ところがこれを独占しちゃったがために、なかなかみんなが相手にしてくれなくなって、この会社でしかできないものだったら、そりゃ困ると。
外国の会社が自分たちにも特許を開放しろと言ったんですけど、われわれ守りきったんですね。
ところが自己完結できないものを守りきるってことは、非常に普及しにくいんですよ。それが今まで日本がやってきたパターンだったんですね。
だから今度はトヨタは、やっぱり燃料電池車だけではダメだと。
要するに、水素ステーションをやる、町やインフラが全部そろったところでいけるんだということを考えて、特許開放しましょう、みんなでやりましょうとした。
ここが違うんですね、今までのやり方と。

小野 アナウンサー
町田さんは自分の失敗を、そうやってちゃんと話して、みんなに役立てようとしておられるところがすごいですね。

町田 さん
反省がある。反省が。

片岡 解説委員
町田さんの開発は、21年7ヶ月かかったんですよね。
それはやっぱり手放したくないっていう思いがあると思うんですけどね。

町田 さん
そうですね。やっぱり会社をもうけさせたいとかそういう思いはありますよね。

だから、今回5680件も特許を出された方も、やっぱり独占したいという思いはあったと思いますね。
だけど普及させるためには広めるんだ、みんなに開放して使わせるんだって思いが出てきたんですね。

片岡 解説委員
特許の世界も非常に戦略的にやっていかなきゃならない時代が来ていて。
今、町田さんがおっしゃったように市場を広げるためには自分たちが持っている特許が壁になるかもしれないからそれを取り払おうっていうのがあるんですが、実はボランティアで特許を開放したわけじゃなくて、戦略的に言うとトヨタが持っているこの特許を使うためにはいちいちトヨタと契約しなきゃならないんですよ。
契約をするということは、他の会社がどういう技術を開発してるのか分かりますよね。
あと、トヨタも技術が進んでるとはいえ、他の会社が持っている特許が自分たちにとって邪魔になる場合があるんですよ。

小野 アナウンサー
というと?

片岡 解説委員
例えばダイムラーとか、ドイツの燃料電池の開発に着手したようなメーカーがあるわけですよ。
そういうところが先に出している特許もあるわけです。
そうすると、そこの特許が自分たちにとって邪魔になるから、自分たちが特許開放することで、そっちも開放して下さい、そういう契約を結びましょう、という風なことを考えての戦略だとトヨタの方が言っていました。

視聴者の声

「水素社会の仕組みがガラパゴス化したって別にいいじゃない。世界でもうけなくたって日本が豊かでエコロジーな美しい国になれば、それで幸せ。」

小野 アナウンサー
実際そんな気もするんですよね。世界に売らなきゃいけないんですか?

片岡 解説委員
これだけの深読み市みたいなものを作るためには、全体的にコストを下げないといけない。
コストを下げるためには、日本だけじゃコストが下がらない可能性があるんですよ。
つまり、世界に売っていかないと量がはけないですよね。

小野 アナウンサー
ICカードなんかは日本国内の利用だけでちゃんと回っているから、今も私たちがみんな使っているんじゃないですか?

片岡 解説委員
どんどん人口が減っていきますから、これから日本は。

町田 さん
それともうひとつ大切なことは、これから水素のようなエネルギーが必要なのは、新興国なんですよね。
例えば中国の排気ガスの問題とかありますね。ああいうところこそ、水素を使って排気ガスを抑えてほしい。
そういうところにはやっぱり日本から輸出して広げてあげないことには。ほんとに時間がかかりますから。

小野 アナウンサー
でも、実際に研究開発に携わっていらっしゃる佐々木さんのようなお立場の人は、外に打って出るときに、自分たちが作ってきたものを守りたいという思いもおありじゃないですか?

佐々木 さん
新しい技術を出す時に、日本だけで使っていただくよりは世界中の人に使ってもらって喜んでいただけることが大事だと思いますので、やはり日本の中で成功するだけじゃなくて、海外でこの技術が役に立つということをしたいっていうのはみんなの思いじゃないかなぁと思います。
その中で特許を開放することによってもっと普及すれば、最終的にその技術が社会に世界に生かされる。
それがまさにわれわれが目指すものですから、特許を開放するとか、オープンに技術開発していきましょう、というのはこれから大事になってくるんじゃないかなと。

小野 アナウンサー
ただ作り手側からすると、本当に魅力的なものを作っているのであれば、絶対に人が欲しがるはず、そのとき特許を取っていればたくさんの実入りが自分のところにある、そんな考え方にならないんですか?

佐々木 さん
これはよく言うんですけれども、例えばスポーツでも、いつも誰かが強くて絶対勝てないということになると、なんか一緒にテニスしたくないですね〜とかですね。

吉田 さん
盛り上がらないですよね。

佐々木 さん
そうですね。やっぱりわれわれがハッピーになるだけじゃなくて、相手の国の皆さんもハッピーになる。
だから、10回やれば6回は勝ってもいいけど4回ぐらいは負けて、お互いに楽しかったですね、っていうことになればいい。

大林 さん
えーっ!?イヤです!絶対負けないです!そういう技術も教えないから(笑)

小野 アナウンサー
大きな発想の転換が今、起きようとしているということでしょうか?

片岡 解説委員
そうですね。日本はある程度の特許を無償提供しても"ノウハウ"を持ってるんですよ、各企業が。
自分たちの会社の中だけに持っている、外に出していないモノの作り方とか、例えば燃料電池をどう作ると効率的に出来るかとか、そこで実は勝負できるという計算をしてるんですよ。
トヨタの方がおっしゃっていました。ウチが技術を全部開放するっていう風に誤解されて困っているんです、と。

小野 アナウンサー
いずれにしても、世界に売ることが大事なんですよね?
じゃあ、誰に売るのかというところで、徳永アナウンサーのプレゼンです。


プレゼンテーション②

徳永 アナウンサー
世界に打って出る話になると、視聴者の方からも現実を直視した声がたくさん来ております。

最近、世界ではエネルギーのニュースがたくさんありますね。ちょっと整理します。

まずアメリカ。一番エネルギーを使っていた側の国。
足元を掘ったらエネルギーが出てきて好景気に。

受けて立つのはこの古くからの産油国の皆さん。
負けていられないので、掘る量を減らさないと言って、今これが原油安につながっているという話。

そして、世界で一番燃料を生産する国になっているのは、実は今、大国ロシアなんですね。
次世代のエネルギーの覇権はいったいどこが握るんだろう?っていうのが、今の世界のニュースの大きな注目ポイント。

隣の中国。さっき排気ガスという話がありましたけれども、原発をもっと増やしてこの技術をさらに近隣の国に売っていこうという話も、よく中国からは聞こえて来ます。
どう見ても水素の"す"の字も出てこないわけであります。

逆にヨーロッパ。再生可能エネルギーについては、よくドイツのリポートを耳にすると思いますが、実は発電量の24%がもう再生可能エネルギーと、大変進んでいます。
実はドイツは、もう深読み市のように、余った電気を水素に変えてためておく技術がスタートしています。先に始まっちゃった。
さぁ日本のすばらしい水素技術、どうやってどこにどう売るんですか?どうしましょうか?

視聴者の声

「日本は技術面はすごいと思うけど、普及させるのは下手そう。だから、日本は世界をリードできないと思う。」

「日本が先行することを欧米が許すとは思えない。別の規格で対抗するはずで、結局、欧米のリードを許すのではないか。」

町田 さん
自動車という製品はもうグローバルですよね。日本の自動車会社が世界中で売っています。
で、ヨーロッパの自動車会社も世界中で売っています。アメリカの自動車会社も売っている。
先進国の自動車会社は、全く違う基準で水素の問題をやることはできないんですよ。
たぶん、一緒にやらなきゃならなくなってくる。
そのときにやっぱり水素の全体のシステム、この深読み市のようなものを持っている国が、一番発言力、説得力がありますよね。
うちはこういう町を作ってやっていますよ、これを皆さんのところでやりましょうよ、ということをするためには、できるだけ早い時点で深読み市が必要なんです。

吉田 さん
でもやっぱり世界的に影響力のある国を巻き込むのが一番いいのかなって思うんですけど、そうなってくるとやっぱりアメリカになってくるのかなと思うんですね。
でも、シェールガス、シェールオイル。うわー・・・。

片岡 解説委員
要は、われわれこんなすごい技術を持っているんですよっていうことをアピールするだけじゃなくて、相手の都合に合わせた提案をできるかどうかがポイントだと思うんですね。
例えば、エネルギー大国に向けての提案があるんですよ。シェールガスから水素を作ることができるんです。
あなた方のシェールガスで水素を一緒に作ってやりましょう、そうしたらわれわれ水素を買いますよ、と。そうすればのってくるかもしれない。
それから、オーストラリアは石炭大国なんですが、埋蔵されている石炭の半分くらいが、"褐炭"と呼ばれる、あまり使いものにならない質が悪い石炭なんです。

ところがそこから水素とれる。実際に日本のメーカーがオーストラリアと一緒になって、この褐炭から水素を取って日本に持って来る、というプロジェクトを始めようとしています。
オーストラリアの褐炭を使うと、日本の送電力の何年分をまかなえると思いますか?

大林 さん
1年分くらい?

片岡 解説委員
240年分です。これまで使いものにならなかったもの、値段もつかなかったものをそう使うことができる。相手の国にとってもハッピーなんですよね。
ドイツは水素でやる気になっているんですよ。やる気になっている国には、足りない技術を提案してあげればいい。
先ほど深読み市であった家庭用の燃料電池。これは日本のオリジナル技術です。
これを今、実際にメーカーの東芝が現地のボイラーメーカーと一緒になってドイツに普及させようとしています。
それから、エネルギーのない発展途上国にはエネルギープラント。例えば再生可能エネルギーを生み出す風車、水車、太陽光発電と、それを水素に変えるシステムと、その水素を使って燃料電池で発電するシステム。トータルで提供をしていくことができますね。
これを買えるようにするためにも、広げて、コストを下げたい。これのすごいのが、人口が少ない発展途上国は水素が余るんですよ。
そうしたらエネルギー需要を水素でまかなえるだけじゃなくて、水素をその国が売ることができる。
つまりエネルギー輸出国になれる可能性がありますよっていう提案をすれば、喜んで受け入れてくれるんじゃないか。
つまり、日本は技術はたくさんあるんですよ。だからその技術を買って下さい!買って下さい!じゃなくて、相手側の都合を見抜いてわれわれの技術でその問題をどう解決できるかを提案していく。

まさに "技術立国"から "営業立国"へというのが、実はすごく重要なポイントじゃないかなと思うんですね。

視聴者の声

「世界と戦える日本を目指してほしい。」

「価格も考えて受け入れられなきゃ戦えない。」

「水素技術が進んでいる日本はそれを安く外国に売るべきだ。絶対、売れる。」

「ガラパゴス化なんて絶対ダメだー。」

小野 アナウンサー
という前向きな声も届いています。

大林 さん
これを聞くと、一家に一台、あの燃料電池がほしくなってきました。

片岡 解説委員
世界の人たちをそういう気持ちにさせるような営業立国になれるかどうか。

小野 アナウンサー
技術立国から営業立国になることは、実際できると思いますか?

佐々木 さん
やっぱり日本の技術ってすごく進んでいるんですよね。
エネファームという家庭での発電ができる技術を持っているのは日本ですから、その技術は他の国では圧倒的な競争力を持っているんですよね。
その次に今、車っていうのが出てきて、これも日本の企業が世界の最先端を走っているということですから、まさに海外に売り込んでいくときに日本しか持っていないカードが今どんどん増えていると。
ですから、水素エネルギー分野では日本しか持っていない技術を使って、十分海外で戦っていけるんじゃないかなと思います。

小野 アナウンサー
でも、技術をものすごくよくわかっている営業さんが必要だし、営業トークもできる技術者が必要なような感じもするんですが?

佐々木 さん
そこは一般の方々にも分かりやすいようにするのも大事ですし、それ以上にまず日本の中でいろんな成功事例を作っていくのも大事なのかなと思います。
ですから、今、日本にたくさんの人達が来ていますけど、実際こんな技術が進んでますよと、例えば東京オリンピック、パラリンピックに向けて日本の得意なエネルギー力を世界に発信していこうという試みも進んでますけど、そういうことはきっちりやっていくのが大事かなと思います。

吉田 さん
でも、営業マンを育てないともうダメなんじゃないかなと思うんですよね。

佐々木 さん
日本にそのショールームがあれば、そちらに来ていただければ、みんなに見てもらえるということですから、営業マンもはるかに楽になるのかなと。

町田 さん
営業マンを作るということよりも、深読み市を作ればいいんですよ。
そんなに大きな組織じゃなくていいから、小さな地方に水素社会を作って、そこに海外の人を呼んで、ほらこういう風にわれわれはやっていますよと見せてあげれば。

佐々木 さん
そうですよね。例えば北九州市もまさに水素を使った社会を形にされていますし。

小野 アナウンサー
もうやってらっしゃるんですか?

佐々木 さん
はい。あと、九州大学の中でもだいたい2030年ぐらいの、まさに深読み市の想定をしているようなものをもう形にして、未来社会にしようと。
大学のキャンパスを未来のエネルギー社会にして、それをいろんな人に見てもらう。
学生さんには、未来の社会がこうなるのかということを見ていただけますし、海外から留学生が来たり、著名な海外の先生方が来ますので、そういう方に見ていただいて、ああ日本はすばらしいね、自分の国でも普及させたいなと思っていただければ、日本の優れた技術が少しずつ社会に広まっていくんじゃないかなと。

町田 さん
水素社会のいいところは、小さい単位で始められるんですね。
小さい単位で始めて少しずつ大きくしていく。
昔アメリカが電話で成功したのがそうなんです。電話って遠くまでいかなかったんですよ。小さい所でしかつながらないものをやっている。
そこ以外は、電信っていう信号をやってたんですね。小さい単位の電話がだんだんつながって、そのうち全部電話がつながって。
でも将来それを立派にするためには、国が補助金を出して、みんなで応援して、小さいものをどんどん広げていくということにすべきだと思うんですよ。

大林 さん
アスリート側からいくと、水素水とか、違った水素ものはすごく興味があるんですよ。
なので、そのあとのエネルギーっていうのをどんどん打ち出していくと、みんなたぶん飛びつくのかなって。

佐々木 さん
もちろん、まだまだ技術開発する課題は多いんですよね。
水素で動く車が出たからといって技術が完成したわけではなくて、車を出すときに、実はこんなこともできればよかった、あんなこともできればよかった、っていうのはあるんですよね。
ですからこれからまず東京オリンピック、パラリンピックに向けてもっといい次の燃料電池を作っていくことが大事ですし、それが日本が世界に追いつかれるか、もしくは日本がやっぱり世界をリードし続けるかっていう試金石になるかなと。

片岡 解説委員
技術があるからこそ"営業立国"になると思うんですけど、この"営業"という言葉のもつ響きをわれわれもうちょっと考え直さないといけないんじゃないか。
なんとなく営業っていうと、ごめんなさい、営業をやっている方には申し訳ないですけど、「今月のノルマは...」とか「技術はいいですから買って下さい、ちょっとまけときますから」っていうイメージを持ちがちなんですけど、営業っていうのは、相手が持っている問題点、弱点を見抜いて、それに対して自分たちが持っている技術をどう使えるかっていうことを計算して提案していくっていう、実は非常に高度テクニックがいるんですね。
この営業っていうものに対する考え方を変えていく。

吉田 さん
勝てばいいんじゃなくて、買ってくれる側にもメリットがないとダメなんですね?

片岡 解説委員
そうです。"win-win(ウィン・ウィン)"とか"どっちも勝つ"という言い方をするんですけども、これまで日本が世界でなかなか企画が取れなかったことの背景には、「日本の技術がすごいから使って下さい」っていう形で持っていくというのが結構多いんですよ。
これで実はけっこう失敗してきてるんです。

視聴者の声

「もはや開発して特許を取るだけじゃダメだなぁ、世界中の人に届ける力の方が大事だなぁ」

町田 さん
そうですね。水素ビジネスっていうのはものすごく裾野が広いんですね。
あらゆるものが何十兆円、百兆円というビジネスとなる可能性がある。
そうなってくると大企業だけじゃなくて、中小企業とか今まで活躍してきた人達がもう一回活躍できるチャンスがあるわけです。
これだけ大きな夢のテーマっていうのは今ないんですね、日本に。世界にもないかもしれない。
だから、夢のテーマとしてみんなで大きく広げるべきなんですね。

小野 アナウンサー
ただ、私たち消費者にできることって?とりあえず今、値段が高いじゃないですか。

大林 さん
買えない。何か出来ることってあるんですか?

佐々木 さん
もちろん国の方にも補助金をつけたりということで支援をいただいていますし、われわれは技術開発で何をやってるかというと、いかに安くいいものを作れるかっていうことをやっていますので、やっぱり車が売れ出す、エネファームが売れ出す、あともうちょっと大きな燃料電池が売れ出せばもっと安くいいものが買えるようになる。

片岡 解説委員
28兆円の化石燃料を外国から買っている状況は解消しないと危ないですよね。
水素はエネルギーの貴重な選択肢です。

佐々木 さん
1割でも2割でも減らせれば、そのお金でもっといいことができる、教育とか福祉とか。

町田 さん
われわれ消費者全員で応援していくっていうのが、まず最初でしょうね。

小野 アナウンサー
買えないまでも知ることということですね。ありがとうございました。

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