2012年11月17日放送放送内容まるわかり!

増えすぎ!? 日本の大学でいま何が?

今月初め、田中文部科学大臣の発言から大学設置許可をめぐって起きた騒動。その一方で、「大学が多すぎて質が低下している」「大学同士の競争の激化で大学運営に支障が出ている」「大学の設置を認めた審議会の委員が大学関係者ばかりで厳正さに欠ける」などの問題点も提起されました。 少子化のいまなぜ大学を作るのか、量より質という背景には何があるのかなど、日本の大学をめぐる問題について深読みしました。

今週の出演者

専門家
諸星裕さん(桜美林大学教授)
石渡嶺司さん(ライター・大学ジャーナリスト)
早川信夫(NHK解説委員)
ゲスト
増田英彦さん(ますだおかだ)
藤本美貴さん

〈小野アナウンサー〉まずは、今の大学がどんな状況にあるのかというところからお聞きいただきす。徳永アナウンサーのプレゼンです。

プレゼンテーション①
質の低下って何?今、大学で何が起きてるの?

〈徳永アナウンサー〉はい。おはようございます。この問題に注目するきっかけになったのが、この方のこの言葉ですね。田中文部科学大臣が、「大学の量より質」と言いました。

量、これ、具体的にみてみましょう。今、大学どれくらいあるのか。都道府県別グラフにしてみました。棒が長いほどたくさんある所。ちなみに、この20年で1.5倍。で、増田さんの地元の大阪が56、藤本さんの地元の北海道は35あります。
じつは、大都市だけじゃなくて、地方でもどんどん増えているってのは、自転車で大学を取材して回っている石渡さん、地方でも増えているんですか。

〈石渡さん〉増えてますね。町おこしのためにどんどん増やそうということで、地方自治体が積極的に増やす方向にあります。

〈徳永アナウンサー〉増えてるのには背景があって、小泉さんが総理大臣のとき、よく規制緩和、規制緩和ってよく言ってたんですけど、ルールを緩くしたんです。つまり、大学つくるときに、最初からダメダメって言うんじゃなくて、とりあえずはいっぱい、基準満たしたものはOKにして、自由に競争してもらいましょうよって考え方にしたんで、増えてきていると。 そうなると、競争が激しくなると、やっぱり厳しいところも出てくるわけです。

典型的な敗れし大学のパターンをここに作ってみました。ちょっと見ててください。ここ、深読短大。短期大学でした。ちょっとへんな名前ですけども。困ってるんです、ほら、大学さん顔がほら。眉が垂れております。なぜ困ってるかというと、今、日本の企業、短大出る人あまりとってくれなくなりました。
今ね、なかなか採用してもらえないから学生からも短大人気がなくなりつつあるんで、深読短大も考えました。ルールが変わったんだったら、うちも大学にしちゃえ。つまり今、増えてる大学1.5倍って、多くのケースは短大が大学に衣替えして生き残りを図ろうっていうケースが多いんです。 深読短大も、大学になりました。さあ、表情が...とうとう変わりません。じつは今、大学を取り巻く環境、大変厳しいです。二つ見せます。

まず、こんな言葉がよく言われます。「大学全入時代」っていうんですけど、肝心の若い人が、少子化っていってどんどん減っているんです、毎年毎年。ということは、競争率は下がる、入りやすくなって、大学短大進学率グーンと上がっていきます。つまり、数の上ではみんな入れる時代です。ほうっておいても学生が来てくれるっていう時代じゃなくなったんで、人探すのがもう大変。これが一つ目の話。

そして、こんなことも今起きている。「定員割れ」といって、募集した数だけ来てくれない、そんな大学が私立大学の今、半数近くにのぼっている。つまり経営も大変。深読大学も大変です。困った深読大学は、こんな作戦に出ました。

高校が出てまいりました。ここに人の影が。教授だ。 じつは今、教授が高校をまわって、お願いですからうちの大学、おたくの高校生に受験させていただけませんか、営業をかけているケースが。本当にこれ、石渡さんの情報ですけど、あるんですか。

〈石渡さん〉はい、非常に多いですね。大学の先生が高校を1校1校まわってですね、いかがですか、と。あんまりにも多すぎるので、高校の先生も高校の先生で、一人ひとり対応してると大変なので、ある高校では「アポイントメントのない大学の先生の訪問はお断りします」と張り紙を出したりするくらいなんですよ。
深読大学は若者を集めることしか考えなかったんです、余裕がなくて。そしたらどんなことが起きるか。こんな作戦をしちゃうんですね。大学名変えちゃおっかな、と。そしたら入るかな、と。
なぜこういうケースがあるかっていうと、たとえば、なんとか工業大学とかなんとか経済大学、それ自体は立派な名前なんですが、誤解されると。それしか勉強できないと勘違いされちゃうんじゃないかと思って、じゃ、この名前から工業とか経済を取っちゃおうってケースもあります。そのケースが全部、競争に負けている大学ってわけではありませんが、こういうことに行っちゃうケースも出てきちゃってる。
そしてもう一つ。新しい学部をつくっちゃおう、聞いたことない学部がいっぱい出てきているケースもあるんですね。 ビジョンがあればいいんですけどね、社会人に広げるとか、それがない大学はけっきょく競争に敗れて、こんなケースになっちゃっていると。もう立ち行かなくなって、募集停止、果てには廃校と。実際、今年になって、あなたたちも大学やめてくださいって国から言われている学校がもう登場しているんです。実際にもう募集を取りやめた学校は、8の大学、8つの大学にもうのぼっていると。

〈諸星さん〉会社と違って、はい倒産って、それで終わりじゃないんですよ。学生入れちゃったら、もしかしたらその学生は8年間いるかもしれないじゃないですか。卒業させるまで面倒見なきゃいけないわけです。ですから、大学問題を考えるときには、今だけの状態じゃなくて、ここから先のこと、数年先のことまで考えてやってかなくちゃいけないんですね。僕なんか、ずいぶんいろんな大学、日本中、行くんですけども、もう立ち行かないから、一日も早く門戸を閉ざしたほうがいいですよ、と。でも、この先まだ5年ぐらいは続けていかなくちゃいけないんだから。というのは、基準教員という文科省から言われた教員の数、ずっとメンテしてかなくちゃならないんですよ。

〈小野アナウンサー〉そういえば、電車の広告によくオープンキャンパスっていう文字を見るようになった気がしますよね。

〈石渡さん〉そうです。ええと、オープンキャンパスとはですね、大学の説明会なんですが、受験生、高校生だけでなく、今は、親御さんですとか、社会人であっても別に参加してもまったく問題ないっていうことになっています。それで、いろんな物を配っていて、たとえばよくあるのが、こういう、これ、タオルですね。
いや別にこれで、応援でワーッてやるためではなくてですね、これ、これをもらう、くれる、というですね。それから別の大学なんですけど、これ、ちょっと分かりづらいですけど、ドライバーセットです、こういうふうに簡単に。 ものづくりの大学なので、単に文房具を配るよりは、こういうドライバーを配って、ちょっとものづくり考えてください、と。

〈増田さん〉だから、その大学に興味がなくてもなんかもらえるんやったら行こう、みたいな感じになってたり。

〈諸星さん〉大学人として、これ言ったら、本当に日本中の大学人から本当に怒られるかもしれないけども、オープンキャンパスには行っちゃダメです。

〈藤本さん〉なんでですか?

〈諸星さん〉だって、オープンキャンパスってお見合いの日じゃないですか。一番キレイにお化粧して、最高のところを見せるわけですよ。そんな日に行っても絶対ダメ。受験生は、普通の日に、そこの大学にそっと行って、そしてアドミッション・オフィス、入学事務の所とか、インフォメーション・オフィスとかに行って、僕はなんとか高校の3年生なんですけど、学校を見せてくれますかって言ったら、あ、きょうオープンキャンパスじゃないですからダメですっていうような学校は行っちゃダメです。オープンキャンパスっていうからには、大学は普通はクローズのところなんだっていう概念があるからなんです。ですから、そういう日、普段の日に行って、普通の授業の、でっかい授業をやっている所の一番後ろにすっと座って、いかに教員の声が空虚に響いてて、半分ぐらい学生が寝ている、そして食堂に行って、学生と食べて、どうですか、この学校、普段の生のところを見るのが、受験生の責任でもあると思います。

〈石渡さん〉ただ、普通の日だとなかなかやはり一般の高校生ですとか、親御さん、親御さんだったらまだしもですね、一般の高校生ってなかなか参加できないので。 それから、お見合いの日といえどもですね、やはりボロが出るときはけっこうボロが出るんですよ。

〈小野アナウンサー〉どこを見たらいいんですか。

〈石渡さん〉たとえばですね、学生のマナーがあんまりひどい大学でしたら、学生食堂に張り紙が貼ってあります。「学生食堂はファミリーレストランではありません。お願いだからお盆を元に戻してください」と。食堂のおばちゃんの怒りの声が貼ってあるわけですよ。
なんとなく分かりますね。それから、学生のスタッフをつかまえてですね、この大学どうですか、と聞いたら、ま、大概はいいことしか言わないんですけど、中にはボソッとですね、いやあ、うちの大学じつはね、入ってまずかったんですよ、っていう本音を語るっていうときもありますので。

〈小野アナウンサー〉いやあ、そこまで聞くと、正直やっぱり大学をつくりすぎたんじゃないですかって、言いたくなるんですが、どうなんでしょう。

〈早川解説委員〉それは事情があるんですね。時代の流れが早くなっているので、大学もそれに合わせなくちゃいけないっていう事情があるわけです。だから世の中で足りない分野、たとえばIT化が進んだりとか、国際化が進む、グローバル化が進んでるというと、そういうのに合わせて大学もつくっていかなくちゃいけない。旧来の大学の枠組みだと、そういった新しい分野に対応できないんで、新しい学部をつくったり新しい大学をつくったりってことが進んできたっていうのが今なんですね。だから、そのために、規制緩和があったってことなんですね。たとえば...

〈小野アナウンサー〉じゃ、必要だからできたんだ。

〈早川解説委員〉という部分があるわけです。

〈諸星さん〉それで、必要でないものを、じつは壊すことができないんですよ、日本の文化ってのは。よく英語で「スクラップ・アンド・ビルド」って言葉がありますよね。日本の場合、なかなかスクラップできないんです。雇用をずっと守らなくちゃいけないとかですね、いろんなことがあります、この教授会が強いとかね。ですから「ビルド・アンド・ビルド・アンド・ビルド」になっちゃうんですよ。新しくしようと思うと、新しい学部をどんどんどんどんつくってかなくちゃいけない、これが致命的なあれでしたよね。

〈石渡さん〉どんどんできていった結果ですね、さっきのオープンキャンパスだと、一番すごいところだと、行くだけで交通費くれます。

〈諸星さん〉そういうことでね、つられて来る学生は、正直言ってそれはダメです。

〈増田さん〉でも、それにつられて来る学生を、大学が望んじゃってるってことですよね。

〈諸星さん〉必ずしもそんなことはないですよ、やっぱり。

〈増田さん〉でも、そこまでしないと来ないわけですもんね。

〈藤本さん〉これだけ数があって、選べるんだったら、それくらいしてもいいんじゃないかなって思いますよね。

〈諸星さん〉先ほどの石渡さんの話でね、高校生が普段の日に来るのが大変だってのはね、午前中ね、半日間、高校を休めない高校生っていないんですよ、絶対に。自分の一生がかかっていることですから、そんなもの休んで来れば構わないです。担任にホッて言えばいいんです、きょうは行ってきますからって。オープンキャンパスに日じゃないよって、いや、クローズキャンパスを見たいんですって言えば、それで済んじゃうんです。

〈藤本さん〉そこまででも...最近、行動力のある若者、ちょっと減ってきてますからね。

〈徳永アナウンサー〉ちょっとよろしいですか。あの、このニュースってやっぱり、大学の数とか大学側でよく見るんですよ、今みたいに。でも、番組でいろいろ話を聞いていくと、さっきのVTRにもありましたけど、学生のほうの問題とか質の問題ってあるんじゃないのっていうのも見えてきました。ちょっと深読みします。

この若者をご紹介します。18歳の深読太、高校3年生。正直言って、あんまり勉強得意ではありません。でも、就職も興味ないから大学でも行こうかな、と思っていたら、うちの近所によく似た名前の深読大学ができたじゃないか。さあ、行こう、朗報だ。

試験はどうだろう。これまた朗報。こういう入試をするんだ、というんですね。「AO入試」。アドミッション・オフィス、その略なんです。要はですね、テスト普通しますよね、学力テスト。それよりも、たとえば自分がどんな部活動やってきたかとか、志望動機は何ですか、と書類を書いたり、面接をしてもらったりして、これで合否を決める、就職活動に近いような試験です。もちろん、いい人材をとりたいためにこれ始まったもので、厳しいところもいっぱいありますが、喉から手が出るほど学生が欲しい深読大学にとっては、とにかく入れたいからこういうのをやっているっていう事情もあります。そういう私立大学も残念ながらあります。

深読太くんは入れちゃいました。やった!と。来年春まで遊んで暮らそう、そう思っていたら、今、こういうものが届くんだそうです。「入学前教育」。さあ、書類を開けて見てみよう。課題がありました。読書感想文を書きなさい、ドリルをしなさい。開けてみると、be動詞の使い方、方程式の解き方なんぞもあるところもあるそうで、じつは、文部科学省がこういうのやったほうがいいですよ、と今言ってて、全体の7割近くの大学で、入学前に基礎の基礎を送って、勉強しといてね、って今やってる状態なんです。

まだあるんですよ。まだある。読太くんが大学に入ったら、こんな授業が待っていました。これ本当にやっているところはあるそうで、補習をしたり、初年次教育といって、大学の授業かなっていうのを教えているところ、今あるそうで。 これは極端な例ですけれども、基礎を1年生のときに教えるような初年次教育っていうのは、いまや全体の大学の8割ぐらいでもうやっているぐらいなんです。

つまりですね、大学ってね、本当は高い教育や研究をして、社会に貢献するっていうイメージがあった方いませんか。でも、こういうところもありますけど、中には、えっ!?っていう状態に今なっているのでは、という指摘もあると、こういうことなんですね。

〈石渡さん〉たしかに、教育・研究・社会貢献、たとえばノーベル賞をとった山中教授がやっているような高度な研究をやる大学もあります。ただ、そういったところはむしろ、私は少数派だと思います。それよりは、もう基礎的なことが分からない状態で残念ながら大学に入学できてしまう。そのためにはどうしたらいいかと、いろいろ苦しむ大学のほうが私は多いと思います。

〈小野アナウンサー〉でも、be動詞、それからアルファベットなんて聞くと、明らかに小学校、中学校、高校の教育が十分じゃなかったんじゃないかと思うのは間違っていますか。

〈諸星さん〉たしかにそうなんですよね。そして、田中文科大臣のですね、あの発言がですね、その、大学の質が下がったって、そんなことないんですよ。それは学生の一部の質が下がったかもしれない、学力が下がってるだけのことであって、そういう学生を入れて、そして日夜奮闘している日本中の多くの大学の教員に対して、非常に失礼です。大学の質は下がってないです。そういう連中が入ってきちゃうんです。それに対して、入ってきちゃうんですから、それはそれなりのことやらなくちゃいけないじゃないですか。これ大変なことなんですよ、こちらとしては。

〈早川解説委員〉それね、ちょっと背景的なことを説明しますと、18歳人口っていう、大学を受験する年齢の子どもたちが減ってるってことなんですよね。昔は200万ぐらいいたんですけれども、そのうちの、200万人のうちの60万人が進学した。今はその半分に近いと、120万人のうちの、おおざっぱに言って60万人が進学しているっていう状況なんですね。
ということで、子どもの数が減っているけれども、大学に入る人は変わらない。だから全体的に見ると、質が落ちたように見えるっていうことなんですね。だから、これまでだったら大学に入らなかったような子たちが大学に入るようになってきている。それが一見したところ、学力が下がったように見えるっていうことなんですね。

〈藤本さん〉でも、私、大学に行ってないんですけど、なんかこう、大学ってちょっと頭のいい人が行くイメージがすごくあって、だからこう勉強が苦手な人でも入れるっていうのはすごい嬉しいなと思います。その4年間の中で、やりたいことも見つけられるかもしれないし、学力もちょっとはね、自分で頑張ったら上がるかもしれないし、時間かけて見つけられるチャンスにもなるのかな、とは思います。

〈石渡さん〉よくこの大学の問題のときに、学生の質の低下というのが取り上げられます。で、大学が悪いと、取り上げられるんですが、私は「知識の赤字国債化」って勝手に呼んでいることがありまして、要は、小学校でできないものが中学校になんとなくあがってしまう。中学校が高校に、で、高校でできなかった状態のままで、大学に入れてしまう。要は、先送り先送りでいっちゃってるわけですよ。で、結果、大学に集まってしまう。大学としては、卒業させないと、卒業させて就職させないと、この大学何やってるんだって叩かれるし、中退したら中退したで、当然その収入、学費の収入っていうのはなくなっちゃいますから、だからもう、研究、いや、教育をやりたい半面、いや、ちゃんとやりたいと考えているんですけれども、一方で、どうしようもない学生に対して、どう、こう、あげていくかというのを考えなきゃいけないってのは、ちょっとかわいそうなところですね。

〈増田さん〉この日本の、日本の大学の卒業の基準って、海外に比べたらどうなんですか。

〈諸星さん〉ものすごく楽です。なぜかっていうと、じつはたとえば"諸星大学"、学生1000人文科省から定員を頂いています。これが1300人以上になると、じつはペナルティーがくるんです。卒業させなくちゃいけないんです、できなくても。補助金がカットされちゃうんです。1.3倍以上になると。

〈小野アナウンサー〉あんまり留年させちゃいけないんですね。

〈諸星さん〉これはすっごくビックリしたんです。本当に僕も、アメリカの大学で長い間教授やって学長までやって帰ってきて、日本の大学の副学長になったときに、できない学生をなんで出すのって言ったら、いや、出さなくちゃなんない。

〈小野アナウンサー〉今おっしゃってる、大学が取り組まなきゃいけない学生、立ち向かわなきゃいけない学生っていうのは今、どういう感じなんですか。その、本当にそんなに勉強ができないんだとしても、やる気はあるんですか。それから、勉強したい気持ちはあるんですか。

〈早川解説委員〉調査の結果を見るとね、日本の学生っていうのは、週に授業以外で勉強する時間っていうのが、5時間以下っていう。だから1日にすると1時間もないっていう学生が3分の2いるっていう状態なんです。これはアメリカとまったく逆の現象なんですね。一方で、国内調査を見るとですね、こんなデータもありまして、小中高の生徒たちよりも、全体で、大学生が一番少ないと。

〈諸星さん〉これ、なんでだと思います?

〈小野アナウンサー〉アルバイトをしてるから?

〈藤本さん〉え、でも大学に言ってる人に、大学私行ったことないから、大学何してるの?って聞くと、「え、遊んでるだけ」ってみんな言いません?だから何やってるんだろうっていつも思ってるんです。

〈諸星さん〉つまり、教員が勉強させないからなんです。日本を代表する「私学の雄」という大学、とくに名前は言いませんけれども、1年間に学生がその図書館で借りて読む本が4.6冊なんですよ。私学のかなりいい学校で。ほかの学校、1年間に60冊読むんです。明らかに勉強量が違います。学校によって。
だいたい教員がね、基本的にこれ悪いことなんですけど、大学の教員ってね、みんな基本、だいたい勉強ができる人たちなんです。もともと。勉強の好きな人たち。ところが、入ってくる学生は必ずしもそうじゃない。それから入ってくるのが、これは日本の大学のもっとも悪いところなんですけども、学部に入ってくる。それ、ミスマッチで入ってくるんですよ。必ずしも、それを勉強したいからそこに入るんじゃないんです。自分は偏差値でそこしか入れなかった。入ってみたら、あ、こんなこともあるじゃんって、もっと、こういうこともあるじゃん、こっち行こうと思って、それ取りにいくと、ダメだよ、君はうちの学部の学生じゃないから。初めからやる気ないんですよ。

〈石渡さん〉学部をつくるときに、ちょっと変な名前をつくってしまった結果、ミスマッチってのもありまして。ちょっと大学名は控えますが、いろんな学部があるということで。たとえばA大学、「保健医療経営学部」。まあ、これぐらいだったらまだいいんですけど、次ですね、「創造芸術学部 肉体表現コース」。ダンス・舞踊と、駅伝・野球・サッカーを合わせたコースです。それから「国際文化学部 キャリア創造学科」「シティライフ学部」...
これで頑張って集めようとするんですけど、「シティライフ」って言われても、何をやるか分からない。で、その結果、定員割れとなってしまうということですね。

〈小野アナウンサー〉じゃあ、ちょっとここでですね、もうすでに、頑張ろうと、いろいろ新しい取り組みを始めている大学もありますので、今度はそっちの例を見ていきましょう。徳永アナウンサーのプレゼンです。


プレゼンテーション②
大学の底上げに取り組む

〈徳永アナウンサー〉そうなんです、ボードを作りました。藤本さんがさっき、一部の人じゃなくて、みんなが通える場所になったらいいんじゃないって、実際実践している大学はたくさんありまして、3つ紹介します。

まず、東京都の武蔵野大学。こんな作戦に出ました。垣根を取り払う。今、諸星先生がおっしゃったことそのままなんですね。やっぱりね、ここ8つ学部があるんですけど、なんとなく入った人もいて、やりたいことが見つかってない人が多かった。じゃあもう、垣根、取り払っちゃいましょう。

具体的に今、こうしました。もう学部関係なく、6人1組のグループを組ませて、あらゆる学問をやってもらいます。看護師目指してる子も哲学をやったり、文学部の子にも数理学やってもらいます。みんなで議論してもらいます。そして、これ、必修です。受けないと卒業できません。 私、哲学見てきたんですけど、パスカルとデカルト、あなたはどっちの考え方に近いですか、ってのを議論をして発表をするっていう、まあ難しいことを敢えて媚びずに教えるんです。そうすると、自分のやりたい本来の学問が見えてきたり、6人1組だからいろんな考え方の学生で話し合うから、これが変わったんですって。

視野が広がると。で、僕は本当はこの学部に行きたかったんだとか、この学問やりたかったんだって目覚める子も出てきて、やる気を底上げした。2年になってから目の色が変わったって学生は、いるんだそうです、このケースは。

〈諸星さん〉アメリカの統計で言いますとね、入るときにはどこの専門にも入らないんですよ。で、こういうことやりたい、心理学やりたいとか教育やりたいとかね、エンジニアリングやりたい、と。実際にそれでもって4年後に卒業する学生って28%しかいないんです。7割は、大学に入ってこういう形でいろんなものに触れて、あ、こんなおもしろいことがあるんだ、こんな物事があるんだと思っていくんです。だから日本はミスマッチでそのままずっといっちゃうわけです。

〈徳永アナウンサー〉そして、石川県の金沢工業大学、意外な作戦です。「試験やめます」。
まだ、話聞いてくださいよ。これだけ聞くと虫がいいですが、違いますよ。だいたい大学の悪いところで、年にだいたい2回試験があります。そのときだけ勉強するって人もいたと思います。

試験やめる。ただし、一年中ずっと評価されます。レポートの考える力、あの授業でのあの発表、全部点数つけられて、100点満点、60点以上いかなきゃ、単位が取れない。ということは、試験の前でもいつでもこうやって出てこないと単位がもらえない。だからおのずと学力が上がっていく、と。

生活リズムも変えるっていうのをやっていて、ポートフォリオってちょっと難しいので、これ、実際パソコンに記録していくのがあって、1年生にやらせているのを、画面を今ちょっと...ここ見てください。まずね、今週の目標を書かせます、パソコンに。

こうすると、春とか秋とか、グータラだった学生が、みんな規則正しい生活になって、結果出てるんですって。あの、大学の方が言ったんで、正直に言いますが、入学当時の偏差値は、決してここは高いほうではないそうですが、就職率がバツグンにいいそうで、9割を超えている。しかも半分が大手の上場企業の内定をとっていて、この4年で徹底的に鍛えるっていう作戦に出ました。

〈諸星さん〉僕たち大学経営のプロが見ていて、もっとも頑張っている大学の一つです。

〈石渡さん〉この大学のいいところはですね、学生が大学に居てもつまらないっていう思いをさせない。たとえば自習したいって思ったらですね、24時間利用可能な自習室があるんです。だから徹夜で勉強したいと思ったら徹夜はできるんです。大学の中で。

〈徳永アナウンサー〉三つ目いきますか。諸星先生がずっと、大学なんのためにあるのかっていうビジョンっていう話がありましたが、そこを徹底的に考えたのが、長野県の松本大学。私立なんですが、こういう特色があります。もう、とことん地域のために尽くすと決めた大学です。募集、地元だけです。東京とか大都市に声はかけません。営業もそんなかけません。8割が長野県の地元の子。残りも新潟と山梨で隣り合っている県だけです。しかも授業は地域の問題をどんどん取り上げる。地方ってほら、少子化、深刻で、商店街もシャッターが閉まってる、こういった問題を地域の人と一緒になって、課題をクリアしていく、考えていくっていう授業をたくさんつくりました。そうしていくと、これができた。「信頼」ができた。

うちの地域や集落が抱える問題を取り上げてくださいって依頼が来るようにもなったんだそうです。そうすると、結果はこういうところに出ました。存在価値が上がった。この大学、定員割れに悩んだこと一度もないそうです。高校が信頼して預けてくれる。そして、地元企業の就職率がバツグンにいいんです。つまり、地域の子をとって、育てて地域に返すことに特化して、信頼を勝ち取った。

〈石渡さん〉たとえばこの大学はあれです、栄養系の学部の学生が、国立公園の食堂で出すメニューを考えて、観光シーズンにそれをちょっと出すとかですね、学びを地域に還元するっていうことですね。それから、学生がもし地域づくりのための何か活動をやりたいと、ま、サークル活動と五十歩百歩ですけど、それやりたいと思ったら、そのためのお金をちょっと出して応援しますよ、と。

〈小野アナウンサー〉すみません、私やっぱりちょっと、もうちょっとだけ蒸し返していいですか。大学って、その、やっぱり地域のしがらみやなんかから解き放たれて、夢を追いかける若者がですよ、都会に出ていったり、どっか知らない土地に行って、親の管理からも離れ、ま、サボるところはサボりながら、自分のやりたいことに特化して、サボるときもどのぐらいサボったらもうダメっていうふうになっちゃうのかなってことも探る、こうなんか、自由っていうものを味わう自由がある、学ぶ自由がある場なんじゃないんですか。

〈石渡さん〉それはそれで大事なんですけど、ただ、それだけでやってしまうと、今の大学は正直生き残れないですね。

〈藤本さん〉私もどっちかといえば、こっちの今紹介していただいた大学のほうが行きたいです。やっぱり昔のことをすごい、やっぱり、昔大学に行ってた方とかすごく語るけど、でも昔ってパソコンもたいしてなかった時代で、今は一人一台持ってるような時代で、もう本当に時代も変わってきてるのに、昔のままでいいのかなって逆に本当に思う。でも、昔で良かった部分もあると思うから、なんか、今の時代に合わせて、昔のいいところをもちろん持ってきてほしいな、とは思います。

〈小野アナウンサー〉どうあるべきなんでしょう、では、大学は。

〈諸星さん〉あの、いろんな大学があります。僕は一応いろんな大学の分け方があるんですが、簡単にまとめてみました。
一つの種類の大学は、世界レベルの研究をする大学です。これはやはり世界と渡り合っていくためには大変なこと、もう本当に大事なことですから、国家的な事業としてやっていかなくてはいけない。ただ、こういう大学に学生として行くと、あまりものを教えてくれないですから。先生たちはほとんど研究ばっかりやってるわけで、俺がやってることを見てろ、という程度ですね。でも、そのレベルの学生って、だいたいそれでいいんですよね。ついていけるんです。あまり教育は考えない学校。
二番目が、これがほとんどの大学だと思うんですけど、教養人を養成する。この人たちは、すごい高度な教養人から、まあそれほどでもない、社会のちょうどド真ん中を引っ張っていくような人たちを養成する、教育のための学校です。教育のための学校です。
そして三番目が、勉強のできない子、できないっていうのは能力がないってこともあるかもしれませんけれども、部活とか、いろんなことで今までしてこなかったっていう子もいるわけですよね。そういう子をしっかりと伸ばす。伸びしろを考えて、グーッと持ち上げてあげる。ここにいる子をここに持ち上げるってものすごい大変なんですよ。ここにいる子、こんだけ持ち上げることって、そんなたいしたことはないんです。

〈小野アナウンサー〉それは、大学の役割なんですか。

〈諸星さん〉役割です。そういう人たちが入ってきちゃうんですから。

〈早川解説委員〉大学っていうと、これまではトップエリートを育てるところっていう場だったわけですけれども、それだけではもう事足りないわけですね。鏡餅みたいにトップエリートを引っ張る大学もあれば、大衆型、どんどん誰でも入ってくる大学もあると。そしたら、この大衆型の大学の子どもたちをどこまで引き上げるか、っていうところが問われているんだろうと。なぜ、そこが問われているかっていうと、この人たちが社会に出ていったときに、自分の足で歩く、自分の足で稼いでいくっていうことができなければ、社会的にコストがかかってしまう、ということなんですね。だから、その意味で、小学校、中学校、高校の学習がダメだとすれば、大学が最後の砦になるわけですね。そこで頑張らないと、社会のコストがかかってしまう、ある意味での社会保障の役割もあるってことなんです。


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