2012年10月27日放送放送内容まるわかり!

"65歳定年" どうなる!?雇用・働き方

今月11日サントリーが「定年を65歳に延長する」と発表。これは「改正高年齢者雇用安定法」が来年4月に施行されることを受けた取り組みです。
国が高齢者の雇用を推進するのは、来年から厚生年金の支給開始年齢が段階的に引き上がるため。しかし近頃、国が発表した調査結果では、希望者が65歳以上まで働ける企業は50%を割り込んでいることが判明しました。超高齢化社会へと突き進む日本で「65歳定年」「高齢者の雇用」は日本経済にどのようなインパクトを与えるのか、徹底的に深読みしました。

寄せられたご意見・ご感想はこちら

今週の出演者

専門家
清家篤さん(慶應義塾 塾長)
柳川範之さん(東京大学大学院 教授)
今井純子(NHK解説委員)
ゲスト
レッド吉田さん
髙田万由子さん

〈小野アナウンサー〉80歳になって国政に挑戦しようという人もいるぐらいですから、ほんとうに日本の高齢者は元気。お元気なこと自体は、いいことですよね。

〈髙田さん〉ほんとうに何歳からを高齢者と呼ぶか。はっきり言って65歳とか70歳ってまだ、お会いすると高齢者っていう感じがしなくてね。まだまだ元気な方がたくさんいらっしゃるので。

〈吉田さん〉うちの母親も77歳ですけれど、元気なんですよ。戦前から戦後にかけてを生き抜いてる人って、パワーすごいですよね。

〈小野アナウンサー〉その元気な人たちに、働く場があるって万々歳の話のような気もするんですが、ちょっと違う見方もあるかもしれません。小松アナウンサーのプレゼンです。

プレゼンテーション①

〈小松アナウンサー〉元気という言葉が出ましたね。街ゆく人たちもそうです。60歳、まだまだ元気だよと。 じゃあ、元気だから働いてもらうのか?そうではないようなんですね。来年4月から65歳に雇用が延長されます。模型で見ていくことにいたしましょうか。今朝の主役はこの方です。深読之助さんです。

〈小野アナウンサー〉古風なお名前で。

〈小松アナウンサー〉「来年60になるずら。」営業一筋40年。子育ても終えまして、妻と2人暮しでございます。今の会社は、多くの会社が60歳定年ですよね。ですので、深さんの会社も60歳で定年。「じゃあ、わしも辞めるずら...。」ちょっと待って下さい読之助さん!

ここです。年金が関係してくるんです。基礎年金は、男性の場合65歳からですが、厚生年金の方の受給開始年齢がちょっと変わったんですね。来年4月から、男性の場合61歳に引き上げられるんです。基礎年金が65歳、厚生年金、その他の厚生年金が61歳...つまりは60歳から年金をもらえない期間が1年間できます。年金だけじゃありませんよね。会社ももう辞めているってことは...

〈吉田さん〉収入がなくなるってことですよね?

〈小松アナウンサー〉データによりますと、老後の夫婦で必要最低限の生活をするのにどのぐらいあればいいかっていう問いに「月額22万円必要だ」と考える人が多いんです。年間200万ぐらいですよね。それが、空白期間は全くない。さらに、この厚生年金受給開始年齢っていうのは段階的に引き上げられて、2025年には65歳に。つまり、5年間もの空白期間が生まれる。

それじゃあまずいということで「高年齢者雇用安定法」を改正して、企業は働きたいと希望する人全員を65歳まで雇わなくてはいけません、給料払わなくてはいけませんよ、ということになったんです。これを破って「うちはいらないよ」という会社は、名前を公表されることもあるんですね。

〈吉田さん〉でも、厳しいですよね。企業としてはやっぱり人員はあんま増やしたくはないわけじゃないですか。で、65歳まで増やすということは、若者を入れないということにもなってくる可能性もあるというし。

〈小松アナウンサー〉「吉田君、いいこと言うなあ」と読之助さんが、そうつぶやいてるかもしれません。

〈吉田さん〉年に2回ぐらい言われます。いいこと言うなって。

〈小松アナウンサー〉さて読之助さんも、営業現場で働き続けることにしたいと考えました。しかし、読之助さんの同期は、どん!ズラっといます。わしも、私も、あっしも働きたい。来年4月以降に厚生年金を受け取る予定だった人たちというのは、200万人いると推計されているんですね。で、会社内にどういうことが起こるかと言いますと...

読之助さん、営業一筋でした。営業部長もしました。現状どおり営業で働ければ一番いいですよね。またこう、なんとか君、頑張ってくれと。
しかし、そればかりじゃないかもしれません。もう、営業は人いっぱいですから、読之助さん、今度は事務に行って下さい。老眼も進んでいるなかでパソコンに向かわなきゃいけない。慣れない経理処理もしなきゃいけないかもしれない。大変なことです。
更にはこういったことも。読之助さん、もう本社いっぱいです。子会社に行って下さい。もう、営業部長という肩書きもありません。で、清掃を担当する子会社だったりしますと、全くやったことのない業務をしなくてはいけないというわけですね。

〈吉田さん〉でも、それって大きな企業だったら、まだそこにいけるからいいですけれども、小さな会社だったら、そういうわけにいかないですよね。

〈小松アナウンサー〉それは今日、みなさんで深読んでいきましょうかね、そういう会社はどうすればいいのか。で、読之助さんのことを思って、いろんなことをみんな考えますよね。仕事をどうにかしなきゃいけない。それだけじゃありません。ここ、隠れています。この人たちの表情に注目です。この人たちは、若者や現在働いている中堅社員。企業にこう言われてしまったんです。「昇格や昇給をおさえます」と。

〈吉田さん〉いやあ、住宅ローンとかありますよ。みなさん。ねえ、大変ですよ。

〈小松アナウンサー〉「いやー、すまないなあ、みんな、ごめん」読之助さんの叫びが聞こえてきそうです。で、読之助さんの給料を払わなきゃいけませんから、企業はこんな顔。負担が増えるからです。深読み班で取材しましたところ、冒頭出てきたサントリーや大和ハウスの場合、1年間で60歳以上の人を雇用し続けると、新たな負担は...

〈吉田さん〉10億円。

〈髙田さん〉それ、1社あたり?

〈小松アナウンサー〉1社あたりですね。1年間、これぐらいかかるんじゃないかという。

〈髙田さん〉あ、でも人件費としてかかっても、その方々を雇用していることで、会社に入ってくるお金というのももちろん生まれるわけですよね。だから、メリットが生まれるように、この方々をうまく雇用していくという方向しかないですよね。

〈吉田さん〉いやでも、難しいですよね。だから、縮小縮小でやっぱリストラっていう憂き目にあってる方も、結構いらっしゃいますから。

〈小松アナウンサー〉さらにはこういった人々もいます、学生さんです。これから会社に入ろうという人。経団連に聞いたところ、2割の企業が60歳以上を雇用し続けることで、新規採用を抑えなくてはいけないと考えているというんですね。「ごめんよー、学生さん」読之助さんの叫びが聞こえてきそうです。
読之助さんのような60歳以上の人で、希望する人を雇えるようになっていますよという企業は、先週厚生労働省が発表したデータでは48.8%。つまりは半分の企業が、まだこの体制が整っていないということです。さあ、残された時間は半年です。どうしましょう。

〈吉田さん〉読之助さん、板ばさみ的な感じですよね。

〈小野アナウンサー〉だってほんとは、あの読之助さんが年金に加入した頃には、60歳からもらえますよって言われてたはずですよね。それなのに、もらえないのを我慢して働き続けることにしたら...

〈髙田さん〉やっぱりそこの空白期間は、収入が得られるような体制を作らなければ、絶対に。これは、個人が犠牲になる必要はまったくないと思うので。国の方針の違いの犠牲になるのは、やっぱりちょっと読之助さんが気の毒ですよね。

〈吉田さん〉あと、60歳でもうリタイヤできるんだと思っていたのが、まだ働かなきゃいけねーのかよっていう方もいらっしゃると思うんですよね。

〈小野アナウンサー〉そのあたり、この制度にお詳しいのは清家さんなんです。

〈清家さん〉一番基本になるのは、日本がものすごく高齢化しているってことなんですよね。もうすでに、日本で65歳以上の高齢人口は、総人口のほぼ4人に1人になっているんですね。今大学を卒業した人が、ちょうど働き盛りの40代ぐらいになれば、3人に1人が高齢者になってくるわけですね。そうすると、もう65歳以上の人は引退して、のんびりして下さい、それを64歳までの人が支えますから、という仕組みは維持できなくなってくる。ですから、これは誰が悪いということではなくて、みんなが長生きするようになって、高齢化が進むとやっぱりもう少し長く働き続けないと、社会の仕組みはもたない。それで、厚生年金の支給開始年齢も引き上げられるようになるわけです。

無理やり働いてもらうというのは、大きな問題があるわけですけれど...60代の前半の男性で働く意思がある人がどのぐらいいるかっていうのを国際比較してみますと、実は日本は、先進国の中では断トツに高いんですね。4人に3人以上の人が、働く意思を持っているわけです。

〈小野アナウンサー〉フランス低いですね!

〈髙田さん〉いかに人生を楽しむかっていう考えを根本的に持っている国と比べて、日本人はやはり働くことが生きがいっていう方がすごくいらっしゃるという。明らかですよね。

〈清家さん〉日本は世界で一番高齢化もしているんですけれども、一方で働く意思を持った高齢者の方がとても多いという有利な条件もある。せっかく働く意思がある方がこんなにいるのに、年齢を理由に「もう辞めて下さい」っていう仕組みは、もったいないんじゃないですかという...

〈小野アナウンサー〉いやでも、ちょっと待って下さい。残ったって、ほんとうに収入が確保されるんでしょうか?

〈清家さん〉もうすでに多くの企業が、60歳の定年の後も会社に残ってもらう仕組みを作っているんですね。で、その際には、定年前よりは少し安い賃金で働いてもらうというような工夫をしながら、雇用を延長していますので、もちろん、収入が得られないということはない。給料っていうのは、ただ払うだけではなくて、払った人に仕事をしてもらって、稼いでもらうわけですから、当然その稼ぎに見合う給料にしていくという形で、給料や雇用の延長を図ってゆくということです。

〈吉田さん〉今、企業も大変じゃないですか、赤字のところもある。そういうところで雇用を増やすっていうことってできるんですかね。

〈清家さん〉要するに、給料と働き方の見合いなんですよね。「年功賃金」ってご存知ですよね。働き始めると、年齢や働いた長さに応じて、だんだん賃金が高くなってくる仕組みです。それが今までのままで定年を延長すると、当然賃金の高い人がたくさん企業の中に滞留してしまう。企業としては、コストも高くなる。それから、そのコストの為に若い人にしわ寄せがいくということもあるわけなんですね。これをもう少しなだらかにして、年をとってもそんなに賃金が高くならないような形にしていけば、企業も、高齢者を雇ってもコストが高くならないし、また若い人にも、しわ寄せがいきにくくなると。

〈柳川さん〉僕も、これだけ元気で働く意欲のある高齢者の方がいっぱいいるんで、働いてもらうことは大賛成なんですよね。でも、それを、今までいた会社でそのまんま働き続けるって、ほんとうにうまく働けるのか、雇用負担っていう感じにならなくて見合うような働き場所がいっぱいあればいいんですけれど、実は残念ながら、そうなってないので、結局それが、お金がかかるから若者が雇えないっていう話になるんだと思うんですね。そうするとやっぱり、少し発想を変える必要があって、今までいた会社にあんまりこだわらないで、もっと他のところで働き場所を見つけていくようにしないと、結局のところ、全体がこう窮屈なまんまで終わっちゃうんだと思うんですね。

〈小野アナウンサー〉今いた会社で働けない人が、外に出て働けたりするものでしょうか。

〈柳川さん〉だからそこは、いろいろ工夫する必要があるんだと思うんですよ。もう少し、いろんな知識を身につけたり、あらゆる機会を与えるとかですね。たとえば、今まで経理をずっとやっていた人が少し経営の勉強するとか、実はずっと経営者の人だったんだけど、じゃ、経理の勉強をしてみるとか。そうすると、ずいぶん働き方が違ってくると思うんですね。

〈吉田さん〉でもなかなか難しいと思いますよ。

〈髙田さん〉今までこう蓄積したその経験だとか、そういったものをうまく活かして、後輩の育成ですとか、指導的立場に立つべき人たちのグループだと思うんですよね。だけど、新しいことというと、どうなんでしょう...

〈今井解説委員〉ただやっぱり企業って、時代が変わっていくなかで、求められる仕事がどんどん変わっていきますよね。昔だったら物づくりが中心だったけれども、それがどんどん海外に出ていって、そうするとサービスとか、そのバックアップ体制とか必要になってくる。そういうことを考えると、同じ企業のなかでも絶えず学ぶ場を提供して、今こっちの仕事はもう必要なくなったんで、こういう方面で頑張ってくださいということで、若いうちからどんどん研修を行って、やっぱ新しい知識、新しい技能を学び続けるべきです。

〈柳川さん〉やっぱりいろんな新しいことが変わってきますので、それに応じて知識を身につけて活躍したいという意欲はあるんだと思うんですよ。本当はだから、60くらいじゃ遅くって、もっと40ぐらいで環境にあわせて、働く仕組みが必要だと思います。

〈清家さん〉働くということを考えたときに、原則というか基本的には同じ会社でずっと働いたほうがいいんですよ。生活の安定からいっても、企業にとっても、長く働いてもらったほうが忠誠心が獲得できるし、それから教育訓練をして、すぐに辞められたら、会社が丸損でしょ? だから、せっかくお金をかけて訓練した人は、長く勤めてもらうということがいいことなんですね。

〈小野アナウンサー〉でも、それちょっとさっき、柳川さんがおっしゃっていたことと矛盾しないですか...

〈清家さん〉いや、矛盾しないんですよ。そういう面でいえば、まず同じ会社なかで、たとえば40代くらいで長い教育訓練の期間などをとって、もう1回リフレッシュして働き続けてもらうという仕組みをつくるというのがまずは一番いいと思うんですね。ただ、それがもしできない場合には、会社を変わっても働けるように、外で訓練したりする機会も増やしていく必要がある...

〈吉田さん〉極端に言えば部長クラスの人がいきなり65歳まで定年のびて、ちょっと役職が変わって、位が下がったときに、なんかそのものすごいご本人も年下の方もやりにくいと思うんですけど...

〈柳川さん〉そういう意味ではむしろ、他の会社に移って、新たな転地で頑張る方が、下にいる人にとっても、上にいる人にとってもやりやすいですよね。

〈今井解説委員〉あるいは、さっき清家さんもおっしゃったように、やっぱ賃金体系をこの際、やっぱ全部組み替えていかなきゃいけない。今だと定年になってからも雇い続けてもらえるといっても、収入が4割前後ガクンと落ちるわけですね。これまでは年金をもらえたから、そういう小遣い稼ぎ程度の働き方でよかったけれども、これからは年金がもらえないので、それじゃ嫌だよねと。それに一律4割カットじゃ、やる気も起きないよねと。そういうことを考えていくと、65歳まで誰でも頑張ったならば、そのぶん処遇してもらえるっていう賃金体系、能力給的な部分をもっと増やしていかなきゃいけない。

視聴者の声
  • ●「高齢者にやさしいのはいいが、そのせいで国の財政赤字もふくらみ、若者の仕事も無くなるのはやめてほしい。苦しみを若者にばかり、押しつけているような気がする」
    《愛知県・20歳・男性》

〈清家さん〉あの、今の点についていえば、まさに若者の将来の負担を軽くするために、高齢者にもっと働き続けてもらわないといけないんですよ。

〈柳川さん〉働き続けるときに、やっぱり今いる会社で働き場所がないのに、無理やり雇わなけりゃいけないってことになるから、負担が増えるって感じになるわけで...

〈小野アナウンサー〉いや、待って下さい。その年金制度を守るために、働き続けなさいといわれた60歳の読之助さん、いたじゃありませんか。でも、そのために若い人が会社に入れなかったら、年金保険料を払ってくれる人がいないってことですよね。結局、年金制度を守ることにならないんじゃないですか。

〈清家さん〉これを考えるときに、みなさん議論するときのイメージっていうのは、だいたい大企業とか役所のイメージなんですね。たしかに経団連のアンケートの「高齢者の雇用を促進すると、定年を延長すると若者雇えなくなる」っていうのは、確かにそうだと思うんですよ。大企業でものすごい年功賃金があって、そして成長をあまり期待できないところでは定年を延長すると、そのコストで若者を雇用できない。 ところが日本の圧倒的な数の企業っていうのはやっぱり中小なんですね。で、中小企業はどういう状況かというと、たとえば300人未満の中小企業の大学卒業生の求人倍率は3倍を超えているんですね。つまり中小企業は若者を取りたくても取れない状況がまだ続いてる。一方で中小企業では、高齢者をもっと雇いたい、ベテランを活用したいという話は多いんですね。それはやっぱり、中小企業は賃金が比較的年功的ではなくて、しかも役職がついていても自分でしっかりと仕事をするような仕組みになっているからなんです。ですから、その面でいうと、たしかに一部の大企業では高齢者と若者の雇用とがバッティングする可能性あるんですけども、中小企業を含めた日本全体でみると、むしろ若者の雇用と高齢者の雇用というのがそんなにバッティングしない。むしろ、さっき今井さんが言われたように、ベテランの人が若い人を指導して技能が継承されていくというような、高齢者と若者の共存とか協力というのが、しっかりあるので、その辺はちょっときちんと見たほうがいいと思いますね。

〈今井解説委員〉もう1つ、大企業自体をみても、状況は変りつつあるのかなと。やっぱりあの、大企業にとってみても、若者の雇用というのは将来の経営を託すために絶対重要なんですね。一時期、氷河期一番きびしかった頃に、大企業も新卒採用を極端にしぼった。その結果、管理職になっても部下の扱い方がわからない人が増えてしまったとか、社内の構造にゆがみが出た。その反省から今では景気が多少悪くなっても、やっぱり一定のコア人材は取り続けたいという企業が増えてるんですね。で、先ほどの経団連のアンケートでは16・9%の企業が「新卒に影響が出てくる」と答えたんですけれども、一年前、「高年齢者雇用安定法」の改正前だと40%近かったんですね。だから現実に高齢者を雇わなければいけないとなったときにも、新卒はとると。それとシニアの雇用とは別だと、別問題と考える企業が増えてきてるってことだと思うんですね。

〈柳川さん〉で、やっぱりそういうものをね、1つの企業のなかでやるのはなかなか大変で、これはやっぱりある程度国が責任を持って、新しい知識を身につけられたりですね、他にいって働き場所があるとか、そのくらいはできるように国がサポートをする。単にお金を、年金を早くから渡すのができないんであれば、そのぶんの働き場所ができるような教育とかにお金を使う。

〈小野アナウンサー〉柳川さん、実は「40歳定年」っていうのを提案していらっしゃるんです。

〈吉田さん〉すごいですね。

〈柳川さん〉そこだけだと清家先生がおっしゃった反対ですけど、そうではなくて。60歳だとやっぱり本当は遅いんですよね。だから、35歳か40歳ぐらいから今の会社じゃなくても何とか働けるようにトレーニングをしていくクセをつける。で、社会も国もやっぱりもっとそういうところにお金を使って、今の会社にずっとい続けなくても、きっちり働けるような社会にしていかないと、結局のところ会社のなかでどれだけ居場所を探そうと思っても、やっぱり世の中の環境変化がはやいので、産業が変わっていって、その会社のなかだけでは居場所が見つけられない。

〈吉田さん〉それはでも国が企業に、ある意味押し付けてるみたいな感じじゃないですか。国が面倒みることはできないんですか。60歳になった方を全員国家公務員にして...仕事をふるみたいな。

〈今井解説委員〉やっぱりシニアはシニアで、これからもっと高齢者が増えてくるわけですから、逆にそこに向けての商品開発や営業で、ものすごいパワーを発揮できる可能性を秘めているわけですよね。そこで売り上げを増やすとか、また若者は若者でこれからの国をひっぱっていく、突破していく、そういう両方でうまく活用していく。

〈清家さん〉わたし、柳川さんの意見に基本的に賛成なんですよ。やっぱり人生70歳ぐらいまで現役でいけるとしたら、40歳ぐらいのときに、もう1回新しい知識だとか技能を勉強し直してね。そういう面では、40歳ぐらいのときに長期研修休暇みたいなものをもうけようっていう取り組みとかとてもいいですよね。ただ、1つだけ異論があるのは、40歳定年っていうふうにいわれると、どんなに働く意欲があっても、年齢だけを理由に会社を強制的にやめてくださいっていう制度ですから、ものすごく会社に強い権限をあたえることになるんですね。で、その意味で、定年が実は唯一認められてるのは、会社が年齢を理由にやめてくださいっていっても、個人の困らないようなとき、ちょうど年金がもらえるようなときだったら、年齢を理由に強制退職してもいいんだけども、40歳でやっぱり年齢を理由に企業に従業員を強制的にやめさせる権限を与えるというのは、ちょっと行き過ぎじゃないかなと思うんですね。

〈柳川さん〉あの、強制的にやめさせるっていうイメージではなくて、また引き続き、その会社が雇うということができるような仕組みは一緒に整えていくと。で、そこで少し区切りをつけて、みんながそういうところで少しキャリアをアップさせるような、あるいは新しい働き場所を見つけられるようなところを、機会を与えるってことが大事なんですよね。

〈小野アナウンサー〉ちょっとここで、、もう一度小松アナウンサーのプレゼン、お聞きいただきます。企業にとって、来年4月から定年延長は負担になりかねないことですが、既に先駆けてはじめていて、しかもちょっと工夫してみたらうまくいったというハッピーな例を見つけてきました。


プレゼンテーション②

〈小松アナウンサー〉そうなんですよね。いくつか見つかりました。題して「老いも若きも働ける職場」。ちょっとこれを例にみなさんの議論深めていただこうかなと思います。

まず1つめが「新たな仕事を開拓した」という企業です。こちら、警備会社です。先ほど前半のニュースにもありましたよね。国民栄誉賞を受賞した吉田沙保里さんが所属している警備会社で、主な業務というのは警備やそれにともなう営業ですので、高齢の方にとっては体力が必要だったりして、なかなか難しい仕事かもしれません。

そこで新しい仕事を用意した。それがコールセンター業務です。この警備サービスをすでに入れている人に、電話をかけて、さらなるサービスどうですか?他にはどんな相談ありますか?というのを、聞いてもらおうじゃないかというものだったのです。しかし会社にはちょっと懸念がありました。初めての業務ですから。それでマナーの研修もしてもらったんですね。大丈夫かなと思っていたのが、なんと実は大成功。

役に立ったのはこちら。「知識と経験」ですよ。

〈吉田さん〉なるほどね。

〈小野アナウンサー〉ん? どういうことですか?

〈小松アナウンサー〉たとえば住宅のまわりに不審者がうろうろしています。どうすればいいですかという相談に、「庭にじゃり石を敷き詰めてみたらどうですか」。人が来たらジャリ、ジャリと音がしますからね。で、さらにこの会社では軽くて音が出やすい砂利というのを販売していたんです。敷き詰めるものものありますよと。そういうこともしたんです。

〈吉田さん〉営業上手ですね。

〈小松アナウンサー〉はい。これまで外注していたコールセンターですと、営業の電話というのは、6本に1本切られてしまったんですが、ほとんど切られることがなくなったというんですね。高齢の方にとって、やりがいに繋がっただけではありません。会社内にも少しゆとりが出ました。若い人の仕事を奪うということもなくなったということです。

〈吉田さん〉うちのおふくろもそうですけど、若い人としゃべりたがりますよね。話している間に、極端にいえば、高齢者の方もそこでストレスを発散できる。だから、お互いにプラスになっているような状況ではないかなと思うんですよ。

〈小松アナウンサー〉ね。さらに会社にもさまざまな人脈がありますから、聞き得た情報から新たな警備サービス進めてはどうだということに繋がったというんですね。

〈吉田さん〉いや、おばあちゃんの知恵袋じゃないですけど...的確なんですよね。すごいっすよ。

〈髙田さん〉やっぱり知識とか経験っていうのは、お金では買えなくて、本当に時間とその過ごした年月によって生まれるものだから、まあ、こういう例をうかがうとうれしいですよね。

〈小松アナウンサー〉まあ、さまざまなよろず相談のような感じになったそうなんです。

そしてもう1つの企業がこちらです。スーパーやショッピングモールを運営する会社なんですけれども、年功序列の人事制度でした。そうすると若い人にとっては、なかなか長く勤続しないと出世できないじゃないかということで、やめてしまうという人が多かったんですね。離職率は20%で、3年いますと半分の人が入れ替わるような状態だった。

これはまずいということでおこなったのがこちら。年功序列を排除する「脱・年功序列!」。

どうしたのかといいますと、スーパーの運営などに勉強したのちに、テストを受けてもらいます。筆記試験などを受けて、受かりますと30代後半でも部長に。一方で、60をすぎると肩書きなどを外されるという方が多いんですが「バリバリやりたい」という60代の方が試験を受けて店長になったという例もあるというんですよね。こうすることで、みなさんの「やりがい」「やる気」につながって、この会社では大手ではいち早く2007年に65歳定年制度を導入できています。そして、この制度のおかげだけじゃないかもしれませんが、売り上げが3兆円から5兆円に、さらに従業員も18万人から26万人に増えているというんです。

〈吉田さん〉なるほど、努力した人に恩恵をちゃんと与えているんですね。

〈髙田さん〉やっぱり個人個人で、やる気も能力もみな違うので、一概に1つの枠にとらわれること自体がやっぱり、難しいですよね。

〈清家さん〉そうなんですよ。それでこれからの日本というのは、安いものをたくさん作るんではなくて、付加価値の高い、要するに誰もが高い値段で買ってくれるようなものを作っていくという形で、成長していかなきゃいけないわけですね。実は地方の中小企業にそういう例がたくさんあるんですね。たとえば豊橋っていうところに、150人くらいの中小企業で「西島」という工作機械のメーカーがあるんですけど。そこはもう世界中に、会社の言い値で売れるような、ものすごい性能の高い工作機械作っているんです。なぜそういう競争力があるかっていうと、受注生産で注文されたこういうものを作って下さいというものを、しっかりと作ることができる。この会社実は定年なしで、その中心になっているのが70代のベテランの技能工とか設計者の方なんですね。大切なのは、その70代のベテランの方が30代ぐらいの方を弟子にして、それで自分の持っている技能とか、知識を教え込んでいるんですよね。そういう形で、1つ1つのものを深く作り込んでいくっていうときには、必ずベテランの知恵だとか知識だとか技能がいります。作り方がわかっているものを 「安くたくさん」っていうのは、スピードが要求されたり、体力が要求されたりするので、若い人の方がいい面があるんですけれども、やっぱり受注生産だとか、そういうものは非常にベテランの能力が生かされやすいですね。

〈柳川さん〉やっぱり、ベテランとかシニアの方の能力だとか、持っている知識を積極的に活かしていく必要があると思うんですね。だけど、そこには新しい発想だとか新しいアイデアだとか、付加されて初めて生きてくるので、どうやってそういう新しいイマジネーションを起こしていくかということが、社会にとっては大事だと思うんですよね。なるべくいろんなアイデアが出てきているというのが理想的なんですけど、そうでないとすると、少しほかの会社へ出て行って、子会社なり別会社つくって、少し違うやり方をするっていうことも、積極的に認める必要があるんではないかと思うんですよね。

〈髙田さん〉今の60代っていうのは、本当に日本をずっと支えてきた、縁の下の力持ち的なところがある世代。便利なインターネットを使った仕事なら若い人にまかせてもいいけど、やはり支えるとか教えていくとか、そういったことというのは、60代の人にお願いするのがいいと思います。不便から生まれる工夫だったり努力だったり、そういうことを今の若い人たち、ちょっと欠けてる部分があると思うので。そういう方々に実際にふれて学んでいかないと。言葉でいわれても、出てこないですよね。

〈清家さん〉おっしゃるとおりなんですね。それで、技能とかなんとかっていうと、まあモノづくりみたいなことがイメージになる。それはすごく大切なんですけど、同時にサービスを受ける側もだんだん高齢化してくるんですね。そういう人たちによく気配りのきく、きめの細かいサービスができるっていうのは、やっぱりベテランの方なんですよ。これもまあ地方の例ですけど、鹿児島に山形屋さんっていう、とてもいいデパートがあるんですけども、そこもやっぱり60以上の方が販売員だとか、あるいは電話の交換手だとかいう形でやっている。

〈小野アナウンサー〉それはわかります。お店いって、誰に「こういうものありませんか?」って相談するかっていったら、若くて美人の店員さんは避けて、なるべく年配の人を探します。

〈柳川さん〉そういう風にうまく活用できたらいいんと思うんですけど、それが強制されてしまうと、結局のところ、そういう活躍場所がなかったり、そういうアイデアが出てこない人まで雇わなきゃいけないってことになって、会社とすれば負担になる。これは悪循環だと思うんですね。本当はいろいろなアイデアを出してきて、いろんな能力発揮できて、会社は「ぜひに」って言って、65歳にとどまらず70とか75歳まで働くっていうのは、理想的な姿だと思うんですけど。

〈小野アナウンサー〉ただその企業にとってみると、高齢の方を雇うということは、「たくさん給料払わなきゃいけない」っていう、デメリットの方を考えてしまうか、そうじゃなくて雇ったことで、その工夫や働きで儲かるっていう風になるかどうかっていう...この境目のところを決めるものは何なんだろう。制度なのか考え方なのか。

〈清家さん〉あの、先ほどのスーパーのケースなんかもそうだと思いますけど、できるだけ働きにあったお給料を払う。そういう形にしていけば、その給料というのは決してコストじゃなくて、利益を得るための必要な経費ということになってくるんですね。

〈柳川さん〉「年金の受給開始年齢が遅くなるんで雇用を義務化しなきゃいけない」っていうのは、よくわかるんですけど、本当はやっぱりこれは理想的な姿じゃなくて。働きがいがある人がいるから、会社の方が是非にっていって雇われてっていう、こういう風につくっていかないと、どんどん負担感ばっかり広がってしまって、それで若者の雇用が妨げられるっていう話になるのは、問題だと思うんですね...

〈小松アナウンサー〉番組をご覧いただいているみなさんから、多くのメールやメッセージを頂いております。 もうちょっと「企業」という枠組みを超える考え方はどうだろうというものです。

視聴者の声
  • ●「60歳を超える人たちは、若者を育てることを仕事にすればいいんじゃないか?大学生や高校生を教育すれば、次世代が就職に不安を感じることも少なくなり、両者にメリットがある。企業が人を育てる余裕がなくなったと聞くけれども、そういった学校などにいって高齢者がその人材を育成する、というのはどうでしょう?」
    《徳島県・50代・女性》

〈吉田さん〉人を育てるっていいですね。

視聴者の声
  • ●「会社で働くことだけが、雇用なんでしょうか。地域社会に貢献する活動をしたら、もっとそれぞれの自治体が活発化しないかなと考えるんですけれども」
    《愛知県・20代・女性》

〈小松アナウンサー〉ありがとうございます。メッセージたくさん寄せられていますね。

〈柳川さん〉やっぱり働き方ももう少し、多様なかたちを考えていく。で、地域で貢献しながら1日、半日ぐらいどっかで働くとか、そういうようなことができていかないと、やっぱりこれからのこういう豊かな社会をつくりあげて、高齢者の人たちがもっとうまく社会に貢献できるような仕組みのアイデアをそんどん出していくってことが大事じゃないですかね。

〈今井解説委員〉ある程度収入は必要になってくるので、企業もいろんな働き方を用意して、週に2、3日働いて、あとは地域に貢献しますとか、あるいは短時間勤務であとは地域に貢献しますとか。そういういろんなバリエーションを用意していくことが必要ですよね。

〈清家さん〉おっしゃる通りですね。で、さっき柳川さんも言われたように、やっぱり目指すべき理想の姿っていうのは、働く意志と仕事能力のある人が、その能力を十分に発揮できるような社会をつくるってことですね。ただそのときの1つの条件として、定年というような年齢だけを理由にやめてくださいっていわれるような制度は、できるだけ見直していきしましょうっていうことだと思うんです。一方では、やっぱり企業にとって必要な人を雇いたいわけだから、個人は自分を磨いていく。だから生涯現役社会っていうのは、ある意味では生涯勉強社会というか、生涯能力を磨く社会である。そういう仕組みをつくろうってことなんですよ。

〈吉田さん〉そういう仕組みっていうのを、社会に出てから学ぶんじゃなくて、小学校や中学校から学ばせるってことできないんですかね。

〈柳川さん〉それは必要だと思いますよね。これからはやっぱりそうやって、ずっと会社にいるわけじゃくて、自分がいろいろキャリアをつんでいく。で、もしかすると、会社だけじゃなくて地域にも貢献する、社会にも貢献する。そういうことをいろいろ考える、そのキャリアを勉強する機会っていうのをもっと増やしてほしいですね。

〈吉田さん〉算数とか理科とかばっかりやるんじゃなくて。

〈清家さん〉あの、学校の勉強すごく大切なんですよ。大学なんかも、そういう職業をみすえた教育をすることが大切だと思うんですよ。ただ、やっぱりどんな仕事でもそうなんですけど、仕事っていうのは仕事をしながら能力を身につける部分が一番大きいんですね。そういう意味では、やっぱり企業のなかで人を手塩にかけて育てる。っていうのは、とても大切で、それ日本の企業の強さでもあるんですよ。

〈柳川さん〉それはその通りだと思うんです。だから昔は、社会が安定していたから、会社って大きな存在で、会社がずっと存続してくれて、いろんな若者も高齢者もみんな養ってくれるみたいな。こういうイメージだったと思うんですよ。ところが今国際競争激しくって、会社が残念ながら無くなってしまうとかですね、小さくなってしまうということがいくらでも起きるんで。そういう意味では会社にあまり頼りすぎると、結局のところ、みんな働き場を失ってしまう。いくらこうやって法律つくっても、会社が無くなっちゃえば65歳も何もないので。そうするとやっぱ会社に頼らないで、能力を身につけられるやり方が必要です。

〈今井解説委員〉それは必要だと思うんです。先ほど中小、1つの会社に留まらない選択肢もあるっていうことでしたけど、清家さんからもお話があったように、中小企業は本当にベテランの人がほしいんですよね。でもそれは決して人がほしいわけじゃなくて、人材、「人財」がほしいわけですよね。だから、望まれる人にならないと、これからは中小企業にいくこともままならないし、大企業のなかでも働き続けることができない。社内で出世することばっかり考えて、こうゴマゴマ・スリスリしていたら、気がつくと自分は会社のなかでも、あるいは社会のなかでも必要とされない人間になっているかもしれない。

〈髙田さん〉会社にいけばお金をもらえるってわけではなくって、会社にいって、自分が会社に貢献して、そこで会社に利益をもたらすっていう、そういうちゃんと役に、役に立つ「人財」にならないと。

〈清家さん〉日本は高齢化が進むんだけど、みんな働く意欲も高くて、そして企業の中で人を育てる仕組みもすごくいいので、そういう日本型のモデルをちゃんと充実していく必要があると思います。


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