2012年1月14日放送

気になるニュースを"じっくり"深読み!
後半深読みコーナーのテーマは…

『ウソ?ホント?"口コミ情報"に要注意!?』

物を買ったり、店を選んだりするときに、多くの人が参考にしているネットの口コミ情報。その信用を揺るがす出来事が起こりました。

飲食店の検索サイト「食べログ」で、一部のお店が店の評価を上げようと“やらせ”の情報を書きこませていたことがわかったのです。「食べログ」の運営会社は、口コミランキングを引き上げる不正な業者の存在を確認したと発表。対策を急ぐとしています。

ネットの口コミ情報はどこまで信用していいのか?専門家と考えました。

今週の出演者

専門家
岡村 久道さん(弁護士)
藤代 裕之さん(ジャーナリスト)
中谷 日出(NHK解説委員)
ゲスト
山田 五郎さん(評論家)
香坂 みゆきさん(タレント)

インターネット上の情報操作は、どう行われたのでしょうか。

プレゼンテーション①
危ない!? ネットの"口コミ情報"

騒動の舞台は、もんじゃ焼きが名物の東京・月島。この町である日、異変が起きました。あるお店の前に、突然長い行列ができたんです。その理由が「食べログ」にありました。「食べログ」は、お店に行った人が食べた感想などを口コミとして書き込むもので、その評価を元に出されるランキングがウリ。全国67万店の飲食店が登録。先月だけで延べ3200万人が利用しており、集客に大きな影響力を持ちます。

問題の店は、このランキングが上昇。その裏に、あるカラクリがありました。店からお金をもらい、お客になり代わって口コミを書く"口コミ代行業者"が存在していたんです。その手口を、NHK科学文化部の西村敏記者が取材しました。

このもんじゃ焼き屋、ある日、知り合いから一人の人物を紹介され、「食べログのランキングを上げるいい方法がある」と言われます。
「私たちがお店のページに何度もアクセスして、ランキングを上げます。その結果ランキングが1位から5位なら1日1,000円の報酬を貰います。6位から10位なら500円、11位以下なら無料でいい」と言ってきました。
お店側は、迷ったものの、客の入りにつながればと、業者に依頼。その結果、ランキングが1位になったこともあり、行列が出来たという訳です。
また、西村記者によると、名刺や資料は見せずに、手持ちの小さなコンピューターの画面を示しながら、「月10万円で5件の口コミを書きます。急にランキングが上がると怪しまれるので、徐々に上げます」と言ってくる別の業者もいました。

「食べログ」の運営をしている会社は独自調査に乗り出し、12月までに39社の代行業者の存在を確認。「こういった業者は情報の信頼を揺るがす存在だ。今後も不正を行うならば、法的措置も取る」と言っています。

他にもランキング操作には様々な方法があります。大手通販サイトでは、出品している会社の社員が、そのことを隠し、あたかもお客さんであるかのように振舞い、自社商品を褒めるケースが。いわば「自作自演型」です。ツイッターで情報発信している女性を集め、自社商品をプレゼント、感想をお願いする健康食品メーカーも。いわば「商品プレゼント型」です。ランキングを上げるために、大変なことが起きていることが分かりました。


〈岡村さん〉ネットは以前、学術研究者中心のものでしたが、急激に色々な人が使うようになりました。その結果、実社会の悪いこともネットの中に入り込んできています。行き過ぎたマーケティングも、その一つです。

〈藤代さん〉背景には、テレビや雑誌、マスメディアの評価が信用されなくなったことがあります。マス広告が効かなくなり、多くの人が口コミを参考にするようになりました。ただ、今回みたいにやらせだと信用されなくなります。だから、きちんとしようと、運営会社が乗り出しました。今回の問題で言えば、運営会社は完全に"被害者"です。

〈山田さん〉インターネット上の無料口コミ情報が信用できないのは当たり前だと思いますが、今回の問題はテレビや雑誌などの既存メディアが、信用できないと思われていることの裏返しだと思います。既存メディアが、なぜ信用されなくなったのか、考える必要があります。

〈中谷解説委員〉今、ネット上で広がっているのが、ステルスマーケティングという広告手法です。レーダーに引っかからないように敵に近づく戦闘機と同じように、広告ややらせと消費者に気付かれないように宣伝をする手法のことです。

〈山田さん〉これは、昔からある手法で、既存のメディアが信用を失った大きな原因は、記事風広告が横行したことにあると思います。

〈岡村さん〉放送局や新聞などでは、これ以上やってはいけない線が引かれています。担当記者の原稿をキャップや校閲がチェックをするなど、客観的な目で何回もチェックをする体制があります。ところが誰でも情報発信出来るネットの場合は、そういった歯止めが構造的にできていません。

〈香坂さん〉使う人、見る人の数が余りにも多くなるから問題になったのでしょうか。昔から"サクラ"はあったと思います。

〈藤代さん〉大学でメディアリテラシーを教えているのですが、女子大生ブロガーで、新しいカフェに行った時や、新しい携帯電話や化粧品が出た時に、試してみたりプレゼントしてもらって、評判を書いている人がいます。どこまでが自発的な口コミで、どこまでがやらせなのか。線引きが難しい問題です。

〈中谷解説委員〉大事なことは、口コミ自体は、昔からマーケティング手法として非常に有用な方法であって、すべてが悪いわけではないということです。使い方の問題です。やらせでなければいいのです。

〈藤代さん〉ネット上でやらせが横行しているのではなく、ネットでやらせを指摘する人が増えたので、分かるようになったということだと思います。自浄作用が働いています。ただ、それを上回る巧妙な手口を考える事業者がいるのです。

〈岡村さん〉以前は、掲示板に悪口を書き込み、ライバル業者の誹謗中傷するケースがありました。その問題が一段落したところで、"褒める側"が出てきました。だんだん巧妙になっています。


アメリカでは、ステルスマーケティングの規制があるので、紹介します。

プレゼンテーション②
アメリカで、その書き込み行為は大丈夫?

アメリカでは、2年前からネット上のステルスマーケティングを規制しています。違反すると、最高で1万ドルの罰金となります。具体例で説明します。

【第1例】 インターネットでブログを作ったアメリカ人女性Aさんは、映画配給会社に勤める友人から「ブログに感想を書いて」と頼まれて、無料の招待券で映画を見ました。映画は素晴らしかったので、ブログに「おもしろかった」と書きました。
この例は罰金の恐れがあります。アメリカでは、感想を書いてほしいと言われて、金品を受け取って書いた場合は、「頼まれて感想を書きました」と明記しなければなりません。書いた人にも、頼んだ人にも責任が及びます。

【第2例】 Aさんは、化粧品会社からボディローションのサンプルをもらい、ブログで感想を書くよう頼まれました。実際使うと、肌に合い、悩んでいた湿疹が治りました。そこでAさんはブログに「試供品をもらって感想を頼まれました。このローションを使ったら湿疹が治って、嬉しい」と書きました。
この例も罰金の恐れがあります。このローション、薬ではないので、湿疹が本当に治ったのか、因果関係は科学的に立証されていないからです。

【第3例】 犬を飼っているAさんは、あるドッグフードの会社から、新製品の無料クーポン券をもらいました。Aさんは、それと引き換えに試供品を無料でもらい愛犬に食べさせたところ、喜んで食べました。そこでAさんはブログに「○○社の新製品はとてもいい。愛犬もお気に入り」と書きました。
このケースは、ブログと関係なく、無料券をもらって食べたらおいしかったというだけの話ですから問題はありません。

大事なことは、「感想を書いて」と先方から頼まれたかどうかという点です。


〈小野アナウンサー〉日本がアメリカのような規制を行なうべきかどうか。どう考えますか?

〈藤代さん〉規制は反対です。今は無自覚にやっている人が多くいますが、「これはまずいことだ」と分かれば、多くの人はやめます。紹介するお店や会社との関係性が大事なのだということを皆に知ってもらう必要があります。まずは教育です。

〈岡村さん〉自主規制が原則です。ただ、どこにでも悪い人はいます。自主規制をアウトローは守らず、正直者だけが損をする形にならないよう、非常に悪質な例については、法律で摘発すべきだと思います。今ある法律で十分対応可能です。

〈中谷解説委員〉インターネットの世界は、アメリカで起こったことが数年後に日本に現れてきます。今、アメリカでは、凄く巧妙になった手口に対して規制がかけられています。だから、アメリカの様子を見ながら、日本独自の新たな規制を作ることが必要だと思います。どこまでが大丈夫なのか、一般の人達の迷いに答えるためにも、きちんと基準を示すべきだと思います。
口コミには、本音という感じがしますが、受け取り側は、それを噂と考えた方がいいと思います。噂には本当のことも嘘のこともあると。

〈香坂さん〉あとは自分で判断するべきだし、その能力を身につける必要がありますね。


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