八戸 探す港風情
八戸の回を担当した坂川です。
私事ですが、青森に転勤してきたのは4年ほど前。失礼ながら、青森のイメージは、りんごとねぶたと太宰治。全部、県の西側・津軽地方のことばかり。それでも、八戸についてかろうじて知っていたのが、港町だということでした。今回取材を進めると、この港は、絶えずヤマセに脅かされてきた八戸暮らしと経済を救おうという、先人の壮大な夢の結晶だとわかりました。ロマンあふれる港のお楽しみスポット、ご紹介します。
今、八戸で最も活気に満ちた場所と言えば、番組でも紹介した館鼻岸壁朝市(たてはながんぺきあさいち)。しかし、1月と2月は、寒さが強くお休み・・・。残念・・・?!いえいえ、そんなことはありません。朝市が開催される館鼻岸壁には、冬の間も港気分に浸れるスポットがあります。
「浜のスーパー 漁港ストア」。レトロな空気感漂うこの店は、漁船向けに製氷工場を経営している会社がタバコ屋として創業。やがて県外から長旅の漁に訪れる漁師たちのために、洗剤や歯ブラシなどの日用雑貨品を売るようになったのだとか。人気なのが、昭和56年に併設された蕎麦屋。夜の漁を終えた漁師たちに朝ごはんを提供するため営業を始めました。今は漁師だけでなく、サラリーマンがお昼を食べに来たり、休日に家族連れが訪れたりなど、八戸市民が広く訪れる憩いの場に。
そんな漁港ストア、冬ならではの限定メニューが「鍋焼きうどん」です。イカゲソのだしが出たつゆが、冷えた体をぽかぽかに温めてくれます。冬の漁師たちも、きっとこうやって体を温めたに違いない。大音量でかかる演歌を聴けば、気分は完全に海の男。あつあつのおでんも一緒に。締めはワンカップをどうぞ。
次にご案内するのは、“もう1つの朝市”。東北新幹線の「八戸駅」を降りたら、JR八戸線で「陸奥湊(むつみなと)駅」へ向かいましょう。駅を降りると出迎えてくれるのが、マスコットキャラ「イサバのカッチャ」。
このキャラの由来を少々。「イサバ」とは、魚の行商のこと。漢字では「五十集」と書くように、どんな魚も集めて、背中にしょった籠に入れ、売り歩きました。この「陸奥湊駅」から、町中へ、山中へ、県外へ。まだスーパーなどなかったころ、港でとれた魚を家庭に届けたのが、イサバの女性(カッチャ)たちだったのです。
今は行商をすることのなくなった女性たち。しかし、かつて県内外へ送り届けるための魚を買っていた市場は、まだ健在。陸奥湊駅前には、今も多くの魚の卸売り店が軒を連ねます。中でも最も大きいのが、駅の目の前にある「八戸市営魚菜小売市場」。これこそ、“もう1つの朝市”です。
鮮魚に刺身、珍味に加工品まで、なんでもそろいます。買った魚は、もちろん持って帰るものよし。ですが、店内奥のテーブルで、ご飯を注文し、そのままおかずにいただくことができるんです。カッチャたちにお薦め商品を聞いたり、値引き交渉をしたりして、自分のお気に入りの一皿を作るのが、また一興。買うのに夢中になりすぎると、食べきれなくなりますので、ご注意下さい。
最後に2つ注意。1つ、こちらの朝市は、日曜日がお休みです。2つ、売り場のカッチャたちは、夜2時には起きて、3時には商売を始めるというかなりの早起き。お昼近くになると、店じまいしてしまっているお店もちらほら。なので、おでかけの際は、お早めに!
個人的には、「本八戸駅」から始発電車で「陸奥湊駅」へ向かうのがお薦め。夜明け前のせわしい市場の港風情、ぜひご堪能ください。
投稿時間:11:00 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク