山口の幻想的な祭りと自然。
番組を担当した関です。放送をご覧いただいた皆さま、取材にご協力いただいた山口の皆さま、どうもありがとうございました。
「山口」と聞いてみなさまが真っ先に思い浮かぶのは「明治維新」でしょうか。しかし、山口市にとって決定的な時代は、明治も江戸も通り越してたどり着く、室町時代。山口の領主・大内氏は、一時は北九州から中国地方までを治め、さらには朝鮮や明との海外貿易にまで乗り出してしまうという、言わずと知れた実力者だったのです。
大内氏は全国的にはまだまだマイナーな存在だと思います。そのため、「山口の歴史に大内氏あり」とうたう今回の番組が、山口という街の魅力を再発見するきっかけになればと、切に願うばかりです。
こちらでは、そんな山口の、とっておきスポットをご紹介します。
まずは、毎年8月6・7日に行なわれている「ちょうちんまつり」です。ちょうちんの灯りに照らされて、街中が紅色に染まる山口夏の風物詩。ちょうちんの数はなんと10万個に達するとも言われています。山口駅近くの商店街にはところせましと出店が立ち並び、ビールや焼きそばを片手に、幻想的な灯りの下を練り歩きます。特段、大きなイベントがある訳ではないのですが、そこがまたこのお祭りの乙なところ。美しいものを真剣に、真面目に愛でる、山口らしいお祭りです。
ところで、このお祭りで使われているろうそくは、2時間以上火が長続きする特注品なんだとか。
ろうそくの火が消えたら、それがお祭り終了の合図。少しでも長くちょうちんのトンネルを楽しめるようにと、商店街の方々が極太のろうそくを用意してくれています。
それにしても、ろうそくの火が宴の始まりと終わりを告げるだなんて、なんとも風流なお祭りです。
きっと来年も、とびきり美しいちょうちんのトンネルがお出迎えをしてくれるはずですので、機会があればぜひ、お越しくださいませ。
こちらは、山口を代表する景勝地、長門峡。番組ではご紹介できませんでしたが、雄大な自然を感じながら紅葉狩りができる秋のオススメスポットです。
実は、山口が生んだ詩人、中原中也もこの長門峡を舞台にした詩を作っています。人生の悲しみや切なさをうたい続けた詩人として知られる中也。彼の最大の悲しみは、わずか2歳の息子・文也との死別でした。中也は、その言い表しようのない喪失感を「冬の長門峡」という詩で表現します。
長門峡に、水は流れてありにけり。
寒い寒い日なりき。
われは料亭にありぬ。
酒酌(く)みてありぬ。
われのほか別に、
客とてもなかりけり。
水は、恰(あたか)も魂あるものの如く、
流れ流れてありにけり。
やがても蜜柑(みかん)の如き夕陽、
欄干にこぼれたり。
あゝ! ―そのやうな時もありき、
寒い寒い 日なりき。
長門峡をなみなみと流れる水流が、愛児の命が辿り着く先に見えたのでしょうか。
もしくは、その圧倒的な悲しみを、雄大な自然にただただ受け止めてもらいたかったのでしょうか。
川のほとりに降り立つと、岩陰からふっと、詩作にふける中也が出てきそう…。そんな気持ちにさせてくれる、非日常的な景観に包まれた峡谷です。
長門峡の入り口へは、山口市内から車で30分ほど。“西の京”観光の際には、ぜひ一足伸ばしてみてください。
投稿時間:11:00 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク