都市の仮面に隠れたもうひとつの仙台。
仙台を担当しました望月です。取材でお世話になった皆さま、本当にありがとうございました。
今回ご紹介した仙台は、説明する必要がないほどの言わずと知れた地方都市。私自身、今年の5月で在住4年目を迎えたのですが、改めて取材を進めていくと「なんだか個性がない街…???」。出張や旅行で仙台を訪れたことのある方ならば、東京と変わらぬ都市化ぶりに驚いた方も多いはず。しかし、一見個性がないように見える街の奥深くには、この街がつくられた400年前から続く揺るぎない礎がみえてきました。
今回はそんな仙台の中でも、心癒やされるスポットをいくつかご紹介します。
“杜の都”と聞いて、おそらく多くの方が思い浮かべるのがこの定禅寺通りでしょうか。道沿いに植えられた4列の見事なケヤキ並木。一番のおすすめは5月。青空のもとでキラキラ輝く新緑を見ながら、ベンチでぼーっと過ごす時間は格別です。
撮影期間中は、まだ葉がつくまえの4月上旬から深い緑に色づく8月上旬まで何度も足を運びました。すると、定期的にケヤキの剪定をしたり、花壇の花を植え替えたり、毎朝並木の掃除をしたりと、本当にたくさんの方々がこの通りを守っているんだなと感じる場面に出くわしました。いまでこそ杜の都を象徴するようなこの並木ですが、植樹された直後はまだ空襲で一面焼け野原だった仙台。かつて町中に木々が生い茂り“杜の都”とよばれていた戦前の風景を取り戻そうと、人々の手で植えられたのが始まりです。それから半世紀近く経ったいまも、市民の皆さんが支えている定禅寺通り。葉が落ちた後の冬には見事なイルミネーションが楽しめますよ。そちらもぜひぜひおすすめです。
そして、定禅寺通りを西へずーっと歩いて行くとぶつかるのが広瀬川。SL列車のある西公園から川をのぞいてみてください。まず驚くのが、川と街の高低差。崖の下に流れる川を見れば、仙台の街が河岸段丘の上につくられたという意味が分かるはずです。そしてその川向こうが青葉山。仙台藩祖・伊達政宗が城を築いた場所です。
川沿いの風景の中でも私の一番のお気に入りがここ。百万都市の真ん中とは思えない、自然を感じられる場所です。地元の人には「花壇」と聞けば分かるはず。このあたりの広瀬川はかなり荒々しく湾曲しているので、少し歩くだけで全く違った景色が楽しめます。牛越橋、澱橋、仲ノ瀬橋、大橋、評定河原橋、霊屋橋と橋ごとに川沿いを歩いてみるのもおすすめです。河原で芋煮をするようになれば、仙台市民の仲間入りかも。
仙台が米どころだということも皆さんはご存じでしょうか。中心市街地から海の方へ車で30分もいけば、ビル街をバックに田園地帯が広がります。
でも、ただ車で目指すのも味気ない。おすすめはそう、水路を辿る道。
仙台駅から少し南、川をせき止めている愛宕堰から始まる用水路があります。六郷堀、七郷堀とよばれる堀は街の中を流れたり、暗渠に入ったり、また地上に現れたりを繰り返しながら仙台平野の田んぼへと辿り着きます。地図を片手に辿ってみるのも楽しいですよ。私も取材期間中は自転車で水路をくまなく辿りました。何度も枝分かれするので、一度に全部制覇しようとすると大変なことに。おすすめは開渠の多い七郷堀です。それにしても、この堀が400年前に伊達政宗の命によって造られ、いまも現役で農家の人々に使われていると思うと、教科書の中にあった歴史がぐっと身近に感じられるようななんとも不思議な気持ちです。
最後にご紹介するのは、再び市街地の中心部。アーケード街のにぎわいから一変、路地に入ると現れる横丁です。仙台にはいくつか横丁がありますが、番組に登場したのは壱弐参横丁。もともとは戦後の闇市から始まったそうで、昭和レトロな雰囲気が漂います。
取材で出会った居酒屋さんの女の子は遊び盛りの3歳。横丁にある手押しポンプの井戸が大好きで店の仕込みが始まる時間になっても遊びは終わりません。最後はお父さんに抱えられて横丁を凱旋。そんな親子のやりとりを見守る店の人たち。建ち並ぶ高層ビルの狭間に残る人情横丁です。転勤族の多い仙台ですが、ここはほっと一息落ち着けるアットホームな場所なのかも。仙台のもう一つの顔をお楽しみ下さい。
投稿時間:11:00 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク