2011年4月

2011年04月26日 (火)

琵琶湖と近江八景

「琵琶湖」を担当した松本です。人間の命の源ともいえる水と、その水と寄り添った近江の人たちの暮らし。番組をご覧になって、その素朴な美しさを感じていただければ幸いです。

琵琶湖は、もともとは都の貴族たちにとってはレジャースポットでした。京都と琵琶湖の距離は、10キロあまり。東京から湘南に行くよりも近いのです。手軽に行ける景勝地ゆえ、数々の名所が生まれました。中国の水墨画の画題であった「瀟湘八景(しょうしょう はっけい)」が日本に持ち込まれたとき、その日本版として真っ先に誕生したのが「近江八景」だったと言われています。「金沢八景」をはじめとする「~八景」のルーツが琵琶湖とも言えるのです。「日本が誇る美しい景色といったら琵琶湖だ」と貴族たちは直感したのではないかと私は思っています。そうして生まれた「近江八景」は、文人墨客はもとより、江戸時代になると全国から人が訪れる観光地として一般の人にも広く愛されるようになります。時代を超えても変わることのない、人の心に訴えかけるものが「近江八景」にはあるのです。

 

oumi.JPG「近江八景」の姿は、昔からさほど変わっていません。確かに、都市化などの影響で「近江八景」に描かれた場所の中には、失われてしまったものもあります。しかし、それでも琵琶湖全体へと視野を広げてみると、昔ながらの景観と、それを守る人たちの営みは今も確かに残っています。ぜひ、琵琶湖を巡って頂きたいと思います。

次回は、琵琶湖のお勧めスポットを紹介します。

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2011年04月19日 (火)

知床の「深み」を知る丘

夜半に降った雨でぬれた落ち葉の上、足もとのおぼつかない急しゅんな坂を登る。
ほとんど人も入らないからだろう。たどるのは誠に心細い、幾人かが残してくれたわずかな踏み跡だけ。人、というよりも、エゾシカたちの獣道と言ったほうが正しいのかも知れない。

s_01.jpg滑落しないよう慎重に登り切ると、目指していた頂にたどり着く。うっそうと茂る広葉樹の間から、強まり始めた北風と共に荒々しいオホーツク海が水平線まで見渡せる。

ここは実は、標高にすると50メート程度の、知床の名も知られぬ頂。ごくありふれた海岸段丘の林といったところだ。だからこの場所が、5世紀から11世紀ごろまで、北海道のオホーツク海沿岸に暮らした人々の遺跡なのだと言われても、にわかには信じがたい。

よく見ると、地面に直径数メートル、深さ1~2メートルの穴がいくつも点在している。聞けば、これがいにしえの人々が暮らしていた住居跡なのだという。

s_02.jpg 

確かに山頂部においては不自然なくぼみではあるが、歳月の風化によってなだらかになり、樹木が生い茂り、自然の中にすっかり調和している。知識がなければ、あるいは説明を聞かなければ、穴の存在にさえ気付くこともないかも知れない。

案内をして頂いたガイドの早坂雅賀さんが、落ち葉の中から1センチにも満たない真っ黒な石の破片を見つけ出した。

「これは黒曜石の破片です。黒曜石はやじりなどに使われていたので、それかも知れません」
 よく見ると確かにその破片は先が鋭くとがっており、何かの道具にしていたかのようにも見える。
 

 

s_03.jpg何より不思議なのは、この遺跡をのこした人々の素性だ。遺跡に残された骨格などから、明らかにそれまでの北海道で暮らしていた人々と異なる人たちであるらしい。なんとサハリンなどの北方からはるばる海を渡ってやって来た人たちだと考えられており、オホーツク人(オホーツク文化人)と呼ばれている。

オホーツク人はクジラなどを高度な武器でしとめる技術をもっていて、海岸部を暮らしの拠点としていた。日本最大の陸上ほ乳類、ヒグマに対する知識もかなり深かったようで、出土品の中には精巧な木彫りなども多数存在する。ヒグマへの信仰心もあったのではないかと考えられている。

さらに興味深いのはこのオホーツク文化が、後のアイヌ文化にも色濃く影響していることだ。アイヌ文化を代表する儀礼の一つに、イオマンテ(クマ送り)があるが、そのルーツはオホーツク文化にあると考えている研究者も多い。北海道の歴史は、まだまだ知られていないことが多すぎる。

実は、知床は北海道でも有数の、遺跡の多い場所なのだという。なんと2万年に人々が暮らしていた痕跡も見つかっている。

世界自然遺産、知床。「手つかずの大自然」にあこがれて、やって来る観光客は年間2百万人とも聞く。筆者はふだんは自然番組を担当しており、この地の大自然の魅力に深くとりつかれている一人だ。知床の自然の奥深さ、貴重さは、誰の目にも疑いようもないだろう。

しかし今回の取材で、知床の地で歴史を刻んできた人たちのことを学んだことで、さらに知床への興味は深まり、かけがえのない場所だと感じるようになった。


○斜里町立知床博物館
 http://shir-etok.myftp.org/index.html
○羅臼町郷土資料室
 http://www.rausu-town.jp/20060222024.html

※知床のオホーツク文化、アイヌ文化の遺跡をめぐるエコツアーをおこなっている地元NPOもあります。
○知床ナチュラリスト協会
 http://www.shinra.or.jp/ainutour/index.html 

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2011年04月15日 (金)

お薦めスポット ~西陣エリア・お地蔵さんとご近所さん~

今回、取材をしていて一番心が落ち着いたスポットは、高級織物の産地で知られる「西陣」です。西陣といってもそういう名前の町はなく、上京区から北区にかけて織物に携わる職人や中小企業が集まった地域の総称です。

歴史は古く、平安時代に朝廷が式典に使う織物を作るために職人を住まわせたことに始まります。その後、応仁の乱で西軍が陣地を置いたことから西の陣地、西陣と呼ばれるようになりました。

nishijin.jpgこの町の楽しみ方はそぞろ歩き。開発が進んだ今でも、伝統的な町屋や長屋がちらほらと軒を連ね、その間を入り組むように小路があります。角を曲がればなにやら立派な祠が・・・。のぞき込むと、そこには愛らしいお地蔵さんの姿。なんと、白化粧と最高級の西陣織・金襴緞子で飾られているのです。

ちょうど地蔵に供えた花をかえているおばあさんを見つけたので話を聞いてみると、地蔵は町内10世帯ほどで世話をしているとのこと。「毎年、お盆に新しい金襴緞子に替えるんです。輝いていてきれいですよ。」と微笑まれました。そこに通りがかった近所のおじさんが嬉しそうに話しに加わってきました。「地蔵盆ではみんなが地蔵の前に集まって一緒にご飯を食べるんや。踊りもするんやで。」と少々自慢っぽく話してニヤリ。かつて、ご近所はみんな機織りを営んでいたそうです。

jizou.jpg同じ職業人としての運命共同体の意識が地域をつないでいるんですね。昔ながらの暖かい人間づきあいが残る西陣の街。気持ちの良いさわやかな風がお地蔵さんを撫でるように吹き渡っていきました。

着物が着られることが少なくなった現在、跡継ぎがいなくなったり、高齢で廃業する家も少なくなく、西陣は活気がなくなったと言われます。実際、売りに出ている町屋もちらほらと目につきました。

しかし、最近はこの情緒ある町並みを気に入って、町屋に移り住む若者たちも増えているそうです。彼ら彼女たちの手工芸品店などから、新しい西陣の文化が開けていくかもしれません。

ぜひ、漏れ聞こえてくるガチャンガチャンという機織りの音を聞きながら小路を歩いてみてください。寺社仏閣などの観光地では感じることのできない京都に暮らす人たちの息づかいが、西陣の風情のなかに垣間見えてきますよ。

◎紹介した地蔵の見られる場所
京都市北区紫野上柏木町周辺
・電車:京阪電鉄「北野白梅町」駅から北西へ徒歩20分。
・車:千本どおりの「千本鞍馬口」交差点から西500mほど
◎お地蔵さんは京都市内のあちこちで見かけることが出来ます。


 

 

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2011年04月12日 (火)

「京都色いろ」スタッフブログ

 「京都色いろ」を担当した小山です。

番組を見て下さった皆さん、京都の色の魅力は伝わったでしょうか。

取材をして改めて思い知ったのは、「京都は日本の都だったんだ」という至極当たり前のことでした。

黒の芸術・水墨画しかり、色と形で四季の風景を映し出す和菓子しかり、色鮮やかな花鳥風月の友禅しかり、金色の輝きを放つ蒔絵しかり。今の日本で当たり前となっている色彩は、発祥を辿るとすべて京都にいきつきます。ここで生まれ、育まれ、日本中へ広がっていきました。

 

jyuunihitoe.jpg平安貴族の色への繊細な感性も驚きです。今なら薄茶色、焦げ茶色など茶色の濃さだけで言い表わしてしまう色名ですが、平安の都人たちは違いました。

薄い茶色は草葉の枯色(かれいろ)、黄褐色は朽葉色(くちばいろ)、赤みの茶褐色は落栗色(おちぐりいろ)、その他にも檜皮色(ひわだいろ)、柿渋色(かきしぶいろ)、胡桃色(くるみいろ)など、同系色を敏感に見極めて自然の物の名前で呼び分けていたのです。

自然を見つめるこの鋭敏な感性は和歌にも通じます。季節の風情に人の感情を重ねて詠んだ貴族たちは、それと同じ感覚を色彩にも向けていました。自然を愛で、季節に見出した色を大切にして、貴族たちは華やか宮廷文化を花開かせたのです。

yuhi.jpg

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2011年04月04日 (月)

「城」スタッフブログ

「城」スタッフブログ
こんにちは。
主に西日本の城の取材を担当した高島です。

西日本には保存状態のいい城が多いのですが、
特に四国には、小ぶりながらも情緒あふれる城が残っています。

なんと、現存12天守の中の4天守が四国にあるんです。まさに古城の宝庫ですね。

その中から、松山城(愛媛県)のオススメポイントを紹介します。

松山城は、道後温泉とともに松山を代表する観光名所。
本丸広場や天守はいつも観光客の方でいっぱいです。
番組でも、天守を中心に紹介させていただきました。

こちらでは、あえてマイナーなポイントを紹介しましょう。
本丸の裏口にあたる「乾門」を出たところから見上げた風景です。

 

20110405.JPG 
複雑に折れ曲がった石垣は、「屏風折れ」と呼ばれる防御の仕掛け。
その上に連なる土塀は、時代を感じさせる鳶色の板壁に覆われています。

そして更にその奥にそびえているのは、天守曲輪の櫓。
土塀や櫓に穿たれた無数の狭間が、攻め寄せる敵を狙っています。

武骨で、複雑で、立体的な造形美を持つ松山城の特徴をよく表している場所だと思います。
ここからは天守(大天守)は見えませんが、城の魅力は天守だけではありません。

城を訪れることがあったら、ぜひ堀や石垣や土塀や櫓にも目を留めて、
かつてそこで繰り広げられたであろう物語に思いを馳せてみてください。

【松山城】
〇住所:愛媛県松山市大街道3丁目2-46

〇TEL:089-921-4873(伊予鉄道株式会社 松山城総合事務所)

〇アクセス
松山空港から・・・「道後温泉駅前行き」リムジンバスで約30分、
「大街道」下車徒歩5分
JR松山駅から・・「道後温泉行き」市内電車で約10分、「大街道」下車徒歩5分
松山市駅から・・「道後温泉行き」「環状線大街道方面行き」市内電車で約6分、
「大街道」下車徒歩5分
※ロープウェーで、上まであがることができます。

〇入城料 大人・・観覧券500円/往復券500円/片道券260円
          小人・・観覧券150円/往復券250円/片道券130円
         (団体割引有り。詳細は、城のHPを参照下さい)

〇松山城HP:http://www.matsuyamajo.jp/

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2011年04月01日 (金)

ご挨拶

「新日本風土記」事務局です。
東日本大震災により被害を受けられた方々に、心よりお見舞いを申し上げます。

四月から始まる、新しい紀行番組「新日本風土記」。日本各地の美しい風景や、長年かけて培ってきた文化などをご紹介する番組です。震災で疲れ果てた心が、ほんの少しでも癒されることを願いながら、いま番組スタッフは準備を進めております。

当ブログ「旅のとっておき」は、さしあたり二つのコーナー(カテゴリー)でスタートします。「ディレクターおすすめスポット」では、各回を担当したディレクターが、取材先で見つけたとっておきのおすすめスポットをご紹介します。「事務局便り」では、スタッフお勧めの見どころや制作の裏話などを随時ご紹介していきます。

今日は、写真のポスターとキャッチコピーをご紹介しましょう。
「新日本風土記」と、連動ミニ番組「もういちど、日本」では、毎回旅情を誘うキャッチコピーから番組がスタートします。読み手は、女優の松たか子さん。透き通った松さんの声で楽しむ「旅人のつぶやき」風の独特のコピーは、毎回の番組の見どころの一つです。

そして、そのキャッチコピーの幾つかを使って、番組のポスターも作っていきます。写真は全国版のポスター。春夏秋冬を表した「季節の樹」を軸に、様々な日本の風景を映し出した写真があしらわれて、群像として日本の美意識を映し出しています。
今後、地域限定のテーマの場合は、その地域を取り上げるポスターも制作しようと考えています。WEB上でもお楽しみいただけますので、ぜひご覧ください。

4月1日~3日に放送されるスペシャル。そして8日夜8時からスタートする「新日本風土記」。この時期だからこそ、心あたたまるエピソードや映像をできるだけ盛り込むべく、制作スタッフも努力しております。少しでも心休まるひとときを過ごして頂けることを、心より願っております。

 

 

 

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