汚されて、よみがえる 渡良瀬川
「渡良瀬川」を担当しました、戸田と申します。半年以上にわたり、いろいろな方々に取材にご協力いただき、本当にありがとうございました。
渡良瀬川は源流といわれる栃木と群馬の県境にある皇海山から、利根川に合流するまでの111キロ、いろいろな顔を持っています。皆さんに渡良瀬川の魅力を知ってもらうべく、いくつかおすすめのスポットをご紹介します。
足尾町(現在は日光市の一部)は、かつて3万人を超える人口を誇った渡良瀬川最上流部にある町です。
町に繁栄をもたらしたのが「足尾銅山」です。
足尾銅山は日本の近代化を支えたという側面がある一方で、鉱毒事件を起こしたことでも知られています。精錬の過程で出る亜硫酸ガスによって足尾の山の木々はほとんどが枯れてしまい、いわゆる「ハゲ山」になったというのは有名な話ですが、いまは地元の人たちの努力もあり、緑が戻りつつあります。足尾に訪れた際は、ぜひその山の様子を見ていただきたいと思います。
かつて使われていた坑道をめぐる施設も観光の人気です。あわせてどうぞ!
足尾から川に沿って下流の桐生まで、44キロにわたって走る鉄道が「わたらせ渓谷鐵道」です。その名の通り、渡良瀬川が作り上げた渓谷に沿うように走っています。
「わ鐵」という愛称で親しまれており、春から秋にかけては窓のないトロッコ列車が大人気です。まだ乗ったことがないという人は、ぜひ乗ってみて下さい。風を感じながら渡良瀬川の魅力をダイレクトに体感できます。
両端の駅の標高差は500メートル以上あり、走るごとに車窓の風景が変わっていきます。この移ろいをのんびりと1時間以上かけて楽しむことが出来るのは、わたらせ渓谷鐵道ならではです。桜に新緑、紅葉に雪景色。どんな季節に訪れても感動すること間違いなし!
取材を始めるまで、渡良瀬と聞いて思い浮かぶのは、正直「渡良瀬橋」くらいでした。森高千里さんの名曲「渡良瀬橋」の舞台となったのは、栃木県足利市に実在する橋なんです。市街地を貫くように渡良瀬川が流れているため、足利には多くの橋が架けられているのですが、そのなかでも渡良瀬橋は人気です。
歌詞にもある「夕日と橋の組み合わせ」は、見ているとなぜか心が落ち着きます。ちなみに「渡良瀬橋」の歌碑も橋の北詰にありますよ。
渡良瀬川の下流にある渡良瀬遊水地は、本州最大の湿地としてラムサール条約にも登録されています。この遊水地は、洪水のたびに足尾銅山の鉱毒が流域に広がるという被害をおさえるために作られました。実は、このあたりにはかつて、谷中村という集落が広がっており、いまも渡良瀬遊水地の中には神社や役場の跡が残されています。
そうした歴史を乗り越えて、いまは驚くほど自然豊かな場所として多くの人々の憩いの場となっているのです。休日には、野鳥観察をする人や、貯水池でヨットを楽しむ人、川で釣りを楽しむ人、いろんな人たちが集まります。
東京からは高速を使えば1時間ほど。歴史を味わうもよし。自然を楽しむもよし。渡良瀬遊水地に足を運んでみてはいかがですか?
まだまだ渡良瀬川にはいろいろな魅力がありますが、それを発見するのも旅の楽しみ。これから暖かくなる季節。ぜひあなただけの“渡良瀬川”を探してみてください。
投稿時間:11:00