2014年07月08日 (火)

和歌山のお寿司

「寿司」を担当しました須藤と申します。

番組中ではおいしそうなお寿司をこれでもか!と見せてしまい、夕食後の時間帯だというのにお腹が空いて困った方も多いと思われます。お寿司を見たら食べたくなってしまうのは、やっぱり日本人なんですよね。

さて、皆さんのふるさとにはどんなお寿司がありますか?

今回取材した地域の中だけでも、本当にいろんな郷土のお寿司に出会いました。海の魚、川の魚、野菜を使ったもの、葉っぱを使ったものなど…。「これがお寿司!?」と言う驚きもたくさんありました。そんな驚きにあふれた郷土のお寿司の世界で、とりわけ私たちが驚いたのが和歌山のお寿司です。

「和歌山県=お寿司」というイメージが無かった我々は、今回の取材を通して、和歌山のお寿司の奥深さを知らされる事となりました。

 

【年季の入ったさんまのなれずし】

紀伊半島の南部東側、三重県との県境にある新宮市は、熊野古道に代表されるように世界遺産が数多くある、神様と近い雰囲気が漂う神秘的な街。その新宮で最初に訪ねたお店は老舗の郷土料理屋の「東宝茶屋」さんです。

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ここは、とあるサンマのなれずしが有名。そのなれずしを味わおうと、はるばる遠方から訪ねてくる人が後を絶たないとか。

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「最初は普通の寿司屋だったんですが…」というご主人。ここには何と30年以上前から漬け込んでいるというサンマのなれずしがあるのです。なれずしが家庭で作られるものだった時代、お店で漬けた物は売れずに残ってしまいました。それが時間を重ねていくうち奇跡の発酵をとげ、30年ものと言われるなれずしが生まれました。その独特な香りと味は次第に口コミでひろがり、すっかりお店の看板メニューになってしまったそうです。

さて、それがこの品。

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魚も米も30年漬けたら液体になるんですね!?衝撃のその姿にどんな味がするのかドキドキしつつ、まずはひと口。…おや?…チーズとヨーグルトの間のような感じ。これは女の人は好きな味かも…うん、うまい!

たくましく発酵し続ける活発な乳酸菌が、お腹に働きかけ、便秘も解消し美肌につながるとか…。男性にとっては二日酔い予防のおつまみだというこの珍味は、ここでしか出会えません。興味のある方は熊野古道を巡る前に、是非お立ち寄りを!きっと体の調子が万全になりますよ。

 

【南紀人の元気の素はお寿司!?】

和歌山人がお寿司をどれだけ好きかお話ししてくれた「丸正酢」の社長はなんと88歳で現役の職人さんです。元気の秘訣はお酢、そして大好きなお寿司を食べる事という社長は、その寿司好きが高じて、地元のお寿司に合うお酢を研究してきたといいます。今ではその寿司酢は、この蔵の一番人気です。

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神聖な蔵に入る前に吹く法螺貝は、精神統一のために毎日欠かさない儀式。その肺活量に一同驚かされました。

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そして、こちらも日課だという太鼓も披露して下さいました。力強くバチを振る腕、しゃんとした立ち姿は、とても米寿とは思えません。

子どもの頃からお母さんやお嫁さんの作る、家庭のお寿司を食べてきた社長は、地元の海でとれる500本に一本あるかないかという「とんぼしび」と呼ばれるビンチョウマグロのお寿司が、世界一美味しいといいます。地元勝浦の魚と、社長の作った渾身のお酢で作るお寿司は、どれだけ美味しいものなのか…今度はマグロの旬の時期にまた訪ねてみたくなりました。

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一方こちらは潮岬で良く知られる串本の姫地区。「姫ひじきのおまぜ」を作ってくれたのは、漁師の奥さんだけで構成されたヒジキの加工場のおかあさんたち。ここではヒジキの収穫、釜炊き、天日干し、出荷まで全ての作業が40人ほどのおかあさん達の手で行われています。

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ヒジキの釜炊き作業は早朝から大釜に灯された火を絶やす事ないよう、大量のヒジキを炊き続ける重労働ですが、おかあさん達はてきぱきとチームワーク良く働きます。

そんな皆さんは、作業の節目があるごとに、慰労会もかねて皆でお寿司を作って食べるのだそうです。

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それにしてもこの姫地区のおかあさん達は元気です。若手(といっても5〜60歳?)が仕切り、どんどんおまぜが握られていきます。家ごとにおまぜのレシピも違うので「こうした方がいい」「こっちのほうが美味しい」と声が飛び交います。その様子は女子会のよう。

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この美しい海で揚がるお魚はとにかく新鮮で美味しいので、その時期ごとにいろんなお寿司にして楽しみます。「この地域はなれずしにはしないのですか?」と聞くと「新鮮だから保存する必要がない」とのこと。なるほど、納得の一言。食べたかったらこれはもう行くしかありません。

 

【秘密の鮎のたべかた】

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古座川の上流・平井川の水は、思わず顔を洗いたくなるほどの透明さ。そんな平井川のそばの平井集落はまさに桃源郷です。見渡す限り全てが自然、近くに聞こえる鳥の声、サラサラと流れる川の音、自分がどこにいるのか分からなくなるくらい幻想的な場所でした。

そしてここは鮎釣りの聖地。鮎釣りの聖地だから出来る、しかも釣りの解禁の時期にしかやらない、とっておきの鮎の食べ方を教えてもらいました。

その名も「にくずし」!

釣ったばかりの鮎を生きたまま川原で開き、家から持って来た握り飯と合わせ、梅肉をつけたらそのままパクリ!という何とも野趣あふれる食べ方。平井の皆さんは、鮎の食べ方としては、塩焼きよりも家に帰ってから作るお寿司よりも、これが一番美味しいと言うのです。

この食べ方のハッキリとした由来は分かりませんが、ここで育った皆さんは口を揃えて「親父がやっていたから」と言います。

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この鮎釣り名人のおばあさまに披露して頂いた「にくずし」。作っている様子は、ちょっと鮎が可哀想なので、ご想像にお任せしますが…。

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食べてみるとさらにびっくりです。スッキリさっぱりと食べられます。臭みなどまったく無いどころか、新鮮な若鮎は歯ごたえも香りも美味しい!地元の皆さんがこの時期だけのご馳走というのが良く分かる味でした。

 

神々しい大自然に囲まれた和歌山。海には海、山には山のお寿司がありました。そして、お寿司を楽しみにする郷土の人々の気持ちに出会う事が出来ました。土地の恵みに純粋に感謝し、おいしいおいしいと召し上がる皆さんの顔は、お金では手に入らない幸せを味わっている、誇らしげな表情にも見えました。

「その場所で生きる人たちと一緒に、その土地でしか出会えないものを体験する」のが旅だとすれば、和歌山はまだまだ手つかずの、本当の旅の要素が潜んでいる場所なのかも知れません。皆さんも是非、和歌山へ旅をしに行きませんか?

 

投稿時間:12:46


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