都の春の風物詩
祇園を担当したクボチです。
憧れるばかりで、遠い世界だった「祇園」。
「祇園」のことを、そこに生きる人々は「祇園町(ぎおんまち)」と呼びます。「祇園町」は、すごく敷居が高くて厳しくて、でもいったん見知った人間に対しては、情けが深く、やさしさもあって……。夏の終わりに、緊張に身体を強ばらせ、芸舞妓さんたちの稽古場にうかがってから7カ月。たくさんの方に情けをいただき、多くのことを教えていただきました。お世話になった皆さま、本当にありがとうございました。
祇園町で、今の季節、見ていただきたいのは、なんといっても「都をどり」。4月いっぱい、毎日4回、祇園の中心にある祇園甲部歌舞錬場で行われています。この木造の歌舞練場は、大正2年に建てられ、有形文化財に指定されている建物。格調高い破風の屋根に赤提灯が並ぶ入口をくぐるだけで、胸がワクワク。
「都をどり」、私のおすすめは「お茶席付」です。舞台が始まる前に2階のお茶席に通され、黒紋付で正装した芸舞妓さんのお点前を見ながら、薄茶とお菓子をいただきます。お茶席への行き帰りには、桜の古木が植えられた素敵な広い中庭も眺められます。90人近い、現役の芸舞妓さんが出演する華やかな舞台。毎年、衣装もすべて、京都の職人さんの手により、作られています。都の春の風物詩、ぜひお楽しみください。
都をどりを楽しんだ後は、花見小路や、花見小路と交わる小さな路地を散策して、紅柄格子のお茶屋の町並みを味わってはいかが。高級懐石料理店から、おいしいコーヒーのいただける喫茶店や甘味屋さんまで、花より団子の向きにもぴったりのお店が、随所にあります。
青柳小路、弥生小路、南園小路、西花見小路……一つ一つの小路には、不思議の世界にいざなわれるような、かわいらしい名前がついています。足もとを注意深く見ながら歩いていると、小路の名前も発見できますよ。ただ、ひとつご注意。細い行き止まりの路地の場合、奥は、お店ではなく、普通の「住まい」であることもしばしばありますので、ズンズン入っていくのは不躾の危険大です。住んでいる方のプライバシーに気をつけながら、路地歩きを楽しみましょう。
最後は、あまりに有名な短歌から。
「かにかくに 祇園は恋し 寝る時も 枕の下を水の流るる」
歌人吉井勇が歌った祇園白川は、今も、変わらぬ流れをたたえています。
花見小路から、大通りの四条通りを渡って、西(八坂神社とは逆の鴨川の方向)に折れ、「切り通し」とよばれる細い通りを右におれ、左側に喫茶店(舞妓さんや、祇園の関係者がしばしば立ち寄るので有名です)を見て、さらに先に進んでいくと、白川にかかる、石造りの「巽橋(たつみばし)」に出ます。
その先には、京舞井上流家元・井上八千代さん初め、祇園の芸妓さん、お茶屋の女将さん達の名前が記された、名高い辰己神社が。
この辰己神社を起点として、北西にのびるのが、白川ぞいの白川南通り。南西にのびるのが、古くからのお茶屋の街並みが残る新橋通り。春になると、白川ぞいの桜が美しく咲き誇り、えもいわれぬ美しさです。紅葉の時期も、もちろんすてきです。
四季折々の祇園の魅力、どうぞ味わってください。
投稿時間:18:39