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福祉ネットワークでは、毎週火曜日「こころの相談室」で、毎月最終週に「ひきこもり」の問題について取り上げています。
ひきこもりの問題については、まだサポート体制が十分ではなく、ご本人やご家族から「社会的なサポート体制が欲しい」という声が挙がっています。第1回目のきょうは、市役所が中心になってひきこもりの支援に取り組んでいる、和歌山県田辺市の例をご紹介します。 |
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こころの相談室
〜ホームページに寄せられた、皆さんからの声〜
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「不登校とひきこもりの最大の違いは、社会復帰のための道筋があるかどうかだと思います。ひきこもりの場合は、部屋や家から出られるようになっても、社会への取っ掛かりがうまく見つけられず、再びひきこもってしまうことすらあります。社会的なサポートがもっとほしいです。」 |
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「何か悩むことがあったら、その日にとりあえずは相談を持ちかけられる。何かあれが相談できるような相手がいてほしいです。そんなサポート体制があれば、とりあえずはバイトなども近い将来できるだろうと思うのですが。」
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ひきこもり相談機関
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公的相談機関
・精神保健福祉センター
・保健所
・児童相談所
・教育相談センター |
民間相談機関
・医療機関
・民間支援団体
・親の会
・自助グループ |
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現実には、これらの相談機関が必ずしも十分に機能していない、という指摘があります。そこで、こうした単独の専門機関ではなく、私たち市民にとって一番身近な窓口である市役所が、ひきこもりの対策に取り組んでいる、和歌山県田辺市の例をご紹介します。 |
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市役所がつくる“ひきこもりネットワーク”
人口およそ7万人の和歌山県田辺市。2年前から市役所を中心に、ひきこもり対策に積極的に取み、ひきこもり専門の相談窓口を市役所が開設しました。こうした例は、全国でもほとんどありません。担当している目良宣子さんは、老人保健や母子保健をおよそ20年間担当してきた保健師です。
これまで受けた相談は、およそ100家族。その7割が親からの相談です。これまで誰にも相談できず、やっとの思いで電話をかけてくる親も多くいます。目良さんは、その悩みや不安に時間をかけて耳を傾けます。
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進学してからうまくいかなくなったとか、仕事に就いたけれどだめだったとか、本当にケースバイケースです。二度三度とつながっていく中で、子どもさんの持っているひきこもり状態の背景を見極めていくようにしているつもりです。(目良さん)
この取り組みは、不登校の親の会「HAPPY!!」が市に要望を出したことがきっかけで始まりました。学校を卒業した後、ひきこもりがちな若者たちの相談窓口や居場所を求めたのです。
この活動の中心になったのが、元教師の酒井滋子さん。まずは行政を動かそうと、市役所のさまざまな部署を訪ねました。
「HAPPY!!」まで出てこられない人、相談できない人をどうするかということを含めて、今「HAPPY!!」を利用してくれている青年たちに対して、社会参加へ向けての支援をもっときちんとしていくには、行政の力を借りないとできないのでは、と思ったんです。(酒井滋子さん)
親の会が要望を出してから3年。ようやく市役所が動き出しました。市役所では、医療、教育、福祉など単独の機関で対応するのは難しいと考え、行政自らが健康増進課を中心として取り組むことを決定しました。2000年12月。田辺市長がひきこもり専用相談窓口の設置を明言しました。
市民から相談窓口の要望が強くありました。こういった問題に対処するには、独自の対策が必要なのではないかと考え、行政だけでは限界がある。さまざまな関係機関の協力を得るほうがいいのではないかということで「ひきこもり検討委員会」を立ち上げ、電話による相談を受け付ける窓口を設置いたしました。(田辺市健康増進課 課長 酒井清
氏)
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田辺市では、相談窓口とともに「ひきこもり検討委員会」を設置し、行政だけではなく、幅広く民間からも委員を選びました。医療、福祉、教育などの専門知識やノウハウを持ち寄り、総合的に対応しようと考えたからです。

委員会では、発足当時の委員長だった寺沢さんが中心となり、それぞれが連携して、どんなサポート体制をつくっていくべきか検討を重ねました。寺沢さんは、地域で知的障害者や精神障害者の生活・就労支援に長年取り組んできた方です。
人と人とのつながり、ヒューマンネットワークと言うのでしょうか。それがこの地域にはあるように思うんです。それを生かして援助できれば、希望につながってくると思います。
(検討委員会初代委員長 寺沢啓三 氏)
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「ひきこもり検討委員会」には、医療、保険、福祉、教育、それぞれの分野の人が集まってきています。それには、例えば社会福祉法人のところで、30年ほど前から知的障害者と精神障害者の作業所的な活動があり、医療機関や市役所の福祉の部分と関係を持っていたとか、市民の有志のところでは、親の会が教育分野とつながっていたなど、ネットワークの実績やノウハウを積み重ねてきたという歴史があったからできました。(目良さん) |
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田辺市の支援の流れ
<家族に対する支援>

・電話相談を受け、できるだけ面談するようにします。
・その中で一番最初に気を付けているのは、ひきこもっている背景が何であるかということです。
・精神障害や発達障害がある場合には、保健所や医療機関、社会福祉法人へ紹介させていただきます。
・それ以外の人たちは「社会的ひきこもり」であると考え、対応します。高校生以下の方の場合は、児童相談所、教育相談センターへ紹介させていただく場合もあります。 |
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<本人に対する支援>

・家族からの面談の後、やがて本人と面談という形になっていくのですが、本人が面談に来られない場合には、教育や福祉の現場で働いている方の協力を得て家庭訪問をし、面談へとつなげます。
・その後、家族に対する支援と同様に、精神障害や発達障害がある場合には、保健所や医療機関、社会福祉法人へ紹介させていただきます。
・それ以外の人たちは「社会的ひきこもり」であると考え、対応します。高校生以下の方の場合は、児童相談所、教育相談センターへ紹介させていただく場合もあります。
・その後、最初の社会復帰の場として「デイケア」、そして本人の意思を聞きながら「居場所」へ・・・と、少しずつ社会との接点を広げていくように進めます。
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田辺市の支援の実際 |
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・面談
目良さんは、面談を通して家族と信頼関係をつくりながら、親の気持ちを支えていきたいと考えています。孤立しがちな親自身の不安を受け止め、気持ちに少し余裕を持ってもらうことで、結果的に本人の心が動くことがあると思っているからです。
やがて、家族を通して「本人とも会いたい」と伝えてもらいます。家族のことばの中に本人の気持ちの変化を読み取りながら、少しずつ進めていきます。 |
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・デイケア
外への第一歩を踏み出した本人に対しては、週に1回、デイケアを行っています。スポーツや趣味など、本人の希望を聞きながらさまざまな活動をしています。この日参加した2人は、母親が相談窓口を訪ねたことがきっかけで目良さんとの面談に行くようになりました。母親からの話を聞くうちに「目良さんに会ってもいい」と思うようになったのです。
半年間ひきこもっていた22歳の男性は、3度の面談を経て、デイケアに参加するようになりました。「目良さんと一緒なら参加してみよう」と考えたと言います。
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ハートツリーハウス |
・居場所
週一回のデイケアから進んで、若者が毎日集える場所として設けられているのが、居場所「ハートツリーハウス」です。現在利用しているのは2名。職員2名とともにお菓子作りをしたり、絵を描いたりしています。人員の問題などから居場所を行政が直接運営するのは難しいため、補助金を出すという形で支援し、民間のボランティア団体が運営しています。
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居場所をつくるにあたっては、ひきこもり検討委員会のメンバーや家族会が中心となり運営委員会を立ち上げました。居場所を必要とする人、つくりたい人たちが集まって作られたボランティア組織です。中でも、作業所などの運営のノウハウを持つ社会福祉法人は、居場所の実現に大きな役割を果たしました。 |
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検討委員会の役割
検討委員会には、医療、福祉、教育などの専門家や経験者が参加しています。いろいろな角度から、ひきこもり本人に対して一番ふさわしいメニューは何か、ということを検討していきます。 |
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自分たちには、知的障害者や精神障害者の作業所を作ってきたノウハウがあります。うちの職員が、そのノウハウも一緒にここに持ってきて活動することを期待しています。(検討委員会初代委員長 寺沢啓三
氏) |

谷真美子さん |
精神障害者の施設で3年間働いていた谷真美子さん。居場所「ハートツリーハウス」に職員として派遣されています。谷さんはこれまでの経験を生かして、参加者がリラックスできる雰囲気づくりを心がけています。
3年間ひきこもっていたという参加者の女性は、これまで家族以外とはほとんど話せませんでした。居場所に来てからは、同世代の谷さんと打ち解け、会話を楽しめるようになりました。 |
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最後に、目良さんにお話を伺いました。
コミュニケーションの苦手な方が多いですので、私がまず面談やデイケアで人と人との信頼関係をつくり、次に居場所の職員さんと信頼関係を作っていく。このように、人と人との信頼関係を広げていくということ、人から人へバトンタッチしていくことが大事なのかなと思っています。
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担当だからこそ発見できた、ひきこもりの有効な対策とは?
本人に出会って、いきなり居場所へというのは難しいです。デイケアでいったん慣れて、そこから居場所へというステップが必要だということ。それから、家族が相談に来られた時に、それが本人に伝えられていると本人につながりやすいので、親子のコミュニケーションがどれだけ取れているかということがすごく大切になってきますね。
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市役所が中心になって対策に取り組んできたひきこもり。担当者として、今、どんな成果を感じていますか?
電話一本設置されて、何の受け皿もない中でのスタートでした。相談を受けながら、並行して、家族会、デイケア、居場所などを立ち上げてきました。
市役所が動き出したことがきっかけとなり、検討委員会のメンバーを中心に医療・福祉・教育など地域の専門機関の人たちそれぞれが皆、自分たちの領域を一歩踏み出したことて、支援対策が広がってきたのだと思います。
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今後の課題は?
検討委員会や居場所に関わってくださっている市民の方や関係者の方は、個人的な熱意で、ボランティア的な意識で活動してくださっています。ですが、それでは広がっていくのに限度がありますよね。人材の育成、国家レベルでの予算的な裏付け、そういう制度が欲しいと思っています。 |