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ひきこもり情報TOPリポート2002〜2004第2回

 

 
第2回 フリースペース
フリースペース わたげの会

 ひきこもりの問題を抱える当事者が、信頼できる人との出会いを重ね、安心して通える「居場所」として、今、「フリースペース」が注目されています。いつでも行きたいときに自由に参加できる、これをやらなくてはいけないという義務はほとんどなく、参加者の自由意志に任されて活動することが多い、フリースペース。「ひきこもり」の状態から第一歩を踏み出す場所として、各地に徐々にできつつあります。
 ”最前線リポート”第3回目は、仙台のNPO法人「わたげの会」が運営するフリースペース「わたげ」を取り上げ、その具体的な活動内容や成果について紹介いたします。

「わたげの会」とは

 「わたげの会」(宮城県仙台市/代表・秋田敦子さん)は、「障害を持つ方、お年寄り、不登校・ひきこもりの経験者が、その家族も含めて、お互いに支え合い、交流し合う」という目的を持つ、NPO法人(宮城県知事・2000年8月1日認証)です。その活動は、ひきこもりの当事者に対する種々の施設の運営や、地域の様々な人たちと交流する、年1回のファミリーコンサートの開催、情報誌「わたげ」の発行など、地域福祉を担うネットワークとして多岐にわたっています。
 「わたげ」という名前には、タンポポのわたげのように、「たくさんの仲間といっしょに大空を旅してみよう、そして、新しい自分を見つけてみよう」という意味が込められているといいます。そんな「わたげの会」が運営しているフリースペース「わたげ」を、2002年9月19日に訪問しました。


フリースペース「わたげ」

 平成9年9月に開かれたフリースペース「わたげ」。月〜金曜日の10時から17時の間開かれており、利用者はその間ならば、いつでも自由に出入りできます。現在はおよそ300人が登録しており、1日平均の利用人数は25人前後、10代から30代までの男女が利用しています。スタッフは専任5人、アルバイトスタッフ4人で運営しています。(入会金1万円、月額利用料1万円です。)

 広瀬川沿いの道から少し入ったところに、フリースペース「わたげ」(以下「わたげ」)はありました。築50年以上たつという木造の一軒家で、庭に面した縁側や、くもりガラスの障子など、古い建物特有の懐かしさと温もり、居心地のよさが感じられます。1Fには20畳くらいの大きな広間と、冷蔵庫や食器棚が置かれた小さな食堂があり、利用者は広間で音楽を聴きながらお喋りをしたり、食堂でお茶を飲みながらくつろいだりと、思い思いに過ごしていました。毎朝10時にきちんと来る人もいれば、午後気が向いた時間にやってきて数時間で帰っていく人、バイトの帰りに立ち寄って夕飯の相手をさがす人もいます。広間では、将棋やオセロの熱戦が繰り広げられることも。将棋が得意な中学生が、年上のメンバーに戦術を指南したり・・・ということもあるそうです。
 広間のふすまには、利用者が書いた落書きがびっしり。こんなところにも「わたげ」の自由な雰囲気がかいま見えるようでした。

襖の落書き

 古い建物特有の狭くて急な階段を上がると(転がり落ちる人もときどきいるらしい…)、2階にはゲーム機やドラムセットなどが置かれた2つの小部屋があります。みんなと一緒にいるのに疲れたら、ここでゲームをしたり、昼寝をしたり、あるいは誰かと内緒話をしたりと、自分の気分にあわせて居場所を選ぶことができます。

「わたげ」見取り図

「わたげ」見取り図



ゲーム部屋
2階には、ひとりでゲームができる空間も。



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 「わたげ」には、さまざまな活動があります。料理、カラオケ、ハイキングをはじめとして、毎月利用者の誕生会には、手作りのケーキで祝います。夏は海水浴やプール、冬はスキーなどの種々のスポーツ活動、年1回の合宿旅行(今年は金沢まで「青春18きっぷ」を使って、普通電車を乗り継いで出かけたそうです)など。このほかにも、体育館を借りてバドミントンやバスケットボールをしたり、河原でバーベキューをしたりなど、やりたい人がいてその準備が整えば、何でも実現可能です。活動の月間プログラムを作 るのは当事者自身。何に参加するのも、何回参加するのも自由です。ただ、最初のうちは、スタッ フなどに相談しながら、自分に合うものを選んでいくことになります。
 今回、「わたげ」を訪問した日も、ほとんどの人がフットサル(少人数で行うサッカー)の練習のために外出していました。家にひきこもっていると体を動かす機会が少ないので、スポーツをやりたいと思う人が多く、今「わたげ」ではフットサルがブームのようです。いくつかのチームから、練習試合の申し込みもあり、揃いのユニフォームを作る計画もあるということでした。
 また、この日は、2日後に行われる「わたげの会ファミリーコンサート」(毎年1回開催)に向けて、歌の練習をしていました。指揮はもともと音楽教室の先生だったという代表の秋田敦子さん。広間に十数人が集まり、電子ピアノの伴奏にあわせて、「翼をください」とゴスペルをハモる練習に、真剣に取り組んでいました。伴奏はピアノが得意な女性の利用者が「やってみる」と買って出たとのこと。参加者のひとりは、「集団で何かするのは苦手だったけど、ここでは強制されてやっているわけじゃないから、気楽です」と話していました。




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 また「わたげ」では、"居場所からの第一歩"として、ボランティア活動や資格取得・学習サポートなど、いくつかの活動も用意しています。

* ボランティア活動
「プレイバス」 ・・・ 特別養護老人ホーム、デイサービスセンター、幼稚園などへの「遊び」の出前をする、無償ボランティア活動。
 お年寄りや子供たちの施設を、マイクロバスに積み込んだたくさんのおもちゃとともに訪ね、ドミノ倒しやビーズなどでいっしょに遊びます。お年寄りや子供たちの楽しそうな姿を見て、当事者のほうが元気をもらったり、人とふれあう自信がついたりするといいます。また、2人1組となり、お年寄りの買い物やお墓参りなどに付き添う、という活動もしています。

「ネコの手」 ・・・ 運転・外出付き添い・病院付き添い・庭木のせん定・草取りなどの、有償ボランティア活動。
 依頼があればそのつど、「わたげ」のスタッフを交えた少人数のグループで出かけていきます。少額であれお金を頂いて活動をすることで、責任感や充実感が生まれるといいます。

* 資格取得・学習サポート
ホームヘルパー2級の資格取得・大検取得・通信制高校の学習サポートなど。 

「わたげ」から5分ほど歩いた場所にある広瀬川を見晴らせるマンションの一室に、勉強に集中できるよう「学習サポートハウス」がもうけられています。ここでは週2回2時間ずつ、「わたげ」のスタッフや学生ボランティアが講師となって、授業形式や、マンツーマンの家庭教師形式の教室が開かれています。 大検の直前などには、連日の特訓も。資格や大検の取得は、就労や学業の中断からくるコンプレックスを補い、次の一歩を踏み出す自信をつけてくれるということです。





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会報 「わたげ」 その他、「わたげの会」のさまざまな活動を伝える情報誌「わたげ」も年6回発行しています。現在この作業を一手に引き受けているミドリさんは、以前、「わたげ」のメンバーでした。1年かけて卒業することができ、今は、スタッフとして「わたげ」を支えています。「『わたげ』から卒業していく人や、社会に出て行く人を見ることで、その道筋を1つ1つ確認できる。やれるんだという自信を取り戻すことができる。そして、次は自分だという目標を持つことができるんです」と、秋田さんは言います。





情報誌「わたげ」



代表・秋田敦子さん

 「居場所」と「社会復帰の機会」を提供している「わたげ」。そんな「わたげ」を支えるキーワードは、「擬似家族」です。「家庭のバランスがくずれると、子どもは、余裕を持って接することができる第三者との関係のほうが楽になります。子どもは、父親、母親、あるいは兄、姉のような信頼できる人間を見つけて心をさらけ出すことで、自分を取り戻していきます」と、秋田さんは話します。



代表・秋田敦子さん




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※ 「わたげの会」は、フリースペース「わたげ」以外にも、ホームステイできる「わたげ寮」(現在11名が生活)、月2回開かれる母親の会「たんぽぽの会」や父親の会「根っこの会」があります。
「タンポポの会」会合
この日の「たんぽぽの会」には、およそ25名が参加。


問い合わせ先

NPO法人「わたげの会」

〒982−0001 仙台市太白区八本松1−12−12
TEL &FAX 022−246−8457

仙台市営地下鉄「長町一丁目駅」下車 徒歩10分
宮城交通バス「飯田団地」八本松一丁目 徒歩1分




本の紹介
今回ご紹介した「フリースペース」などを運営しているNPO法人などの民間支援団体や、医療機関、親の会、自助グループ、また、保健所などの公的機関を紹介している本が出版されています。北海道から沖縄まで、全国140箇所の支援団体・個人を紹介しています。
お近くの「フリースペース」など、支援団体を探される際の参考にしてください。

『ひきこもり支援ガイド』




『ひきこもり支援ガイド』
(森口秀志、奈浦まほ、川口和正編著 晶文社)
2002年10月10日初版 1600円
 

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