2008年05月23日 (金)同世代をリードする指揮者のひとり、ザネッティN響2度目の登場!
■「歌劇場からのたたき上げ」指揮者として経験を積む
いわゆる「歌劇場からのたたき上げ」と呼びうる若手の指揮者は、いまやどのくらいいるのだろう。地道に歌劇場で練習ピアノなどを勤めながらレパートリーを増やし、経験を積んでいく指揮者のありようは、コンクールで一気に名を挙げることのできる機会が提供されている現代においては古くさい、と敬遠されがちなのだろうか。
N響には2003年12月に続き、2回目の登場となるマッシモ・ザネッティは、その両方の道を経験しながら実力をつけてきた、あまりほかに類例のない指揮者であろう。ミラノのヴェルディ音楽院で音楽教育を受け、オペラに並々ならぬ情熱を注ぎ続ける一方で、1990年代には各地の指揮者コンクールで高位入賞を果たし続けた。1997年には、ドイツでもっとも権威があるとされるオペラ雑誌『オーパンヴェルト(オペラの世界)』誌で、1998年には『フランクフルト・アルゲマイネ・ツァイトゥング』紙で最優秀若手指揮者に選ばれる。
この選出により、フランドル歌劇場(アントワープ/ゲント)で1999年から2002年の3年間首席指揮者に任命され、同世代をリードする指揮者のひとりと目されるようになった。すでにコヴェント・ガーデン王立歌劇場、ミラノ・スカラ座、バイエルン州立歌劇場など一流の歌劇場にも数多く出演しており、特に、ゼンパー・オーパーでは2006年9月に新演出の《オテロ》でシーズン幕開けを飾るという快挙も果たしている。2008年にはパリのオペラ・バスティーユ、サンフランシスコ歌劇場にも登場予定とのこと。前回2003年の初登場時と比べても、音楽界におけるその存在は遙かに大きさを増しており、ヨーロッパ大都市でのオペラ公演になくてはならない指揮者へと飛躍を遂げている。より自信に満ちた、スケールの大きな音楽を聴かせてくれることだろう。
■オペラ指揮者「ザネッティ」のBプロ
今回のBプロで予定されている、モーツァルトとリヒャルト・シュトラウスのコンサート・アリアや歌曲の数々では、「オペラ指揮者ザネッティ」としての実力を遺憾なく発揮してくれることだろう。超有名曲であるモーツァルトのアリア《私は行ってしまう、でもどこへ》K.583や、シュトラウスの歌曲《明日の朝》など計6曲を歌うのは、スウェーデン出身でN響初登場のリサ・ラルソン。バーゼルで音楽教育を受け、チューリヒ歌劇場でアルノンクールやウェルザー・メストの薫陶を受けたラルソンは、スザンナやツェルリーナなどのモーツァルト諸役で頭角を現わした。軽めながら清澄な声の魅力が、サントリーホールに満ちることだろう。
■重量級のCプロ
もちろん、ザネッティはオペラだけでなく、バンベルク交響楽団、シュトゥットガルト放送交響楽団、北ドイツ放送交響楽団、バーミンガム市交響楽団、フランス国立放送フィルハーモニック管弦楽団、フィンランド放送交響楽団、スウェーデン放送交響楽団といった、錚々たるオーケストラへの出演へも果たしている。こうした経験を生かして選ばれた曲は、Aプロのプロコフィエフ《ロメオとジュリエット》(抜粋)、Cプロのレスピーギ《ローマの松》《ローマの祭り》など、いずれも大オーケストラのもつ能力を存分に発揮させることのできる、重量級のものばかり。大音量のなかにどのような個性を聴かせてくれるのか、期待は尽きない。
■Aプロ、N響再登場のヘルムヒェン
ピアニストとしてN響再登場を果たすのは、1982年(昭和57年)、ベルリン生まれのマルティン・ヘルムヒェン(Aプロ)。2001年にクララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールで優勝し、2006年にはゲルギエフが指揮するウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との共演も果たしている。室内楽にも熱心で、石坂団十郎(チェロ)、ユリア・フィッシャー(ヴァイオリン)などとの共演は大きな評判を勝ち得ている。チャイコフスキーやブラームスなど、豪壮な協奏曲を得意とし、前回(2005年)はブラームスの《第2番》を取り上げた。今回は、繊細さのなかに秘めた力強さで、ロマン派への先駆を成したベートーヴェンの《ピアノ協奏曲第4番》。若く、つややかな感性で演奏されるベートーヴェンも、聴きどころとなるに違いない。
(広瀬大介 ひろせ・だいすけ 音楽学/慶應義塾大学 非常勤講師)
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投稿時間:17:00
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