2009年07月01日 (水)さまざまなプログラムを堪能できる来シーズンのプログラム 東条碩夫


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■重厚壮大な作品がお好きな方へ
重量感のある作品を手がけてはわが国オーケストラ界随一の強みを発揮するN響は、来シーズンも重厚壮大かつ長大なマーラーとブルックナーの交響曲を、合わせて5曲も取り上げる。マーラーの交響曲は、《5番》をビシュコフが指揮(2月C定期)、《9番》をブロムシュテットが指揮(4月A)、《6番》をアシュケナージが指揮(6月B)。いっぽうブルックナーは、《5番》をブロムシュテットが(4月B)、《7番》を尾高忠明が(5月C)指揮するといった具合だ。いずれもN響の豪壮なパワーが愉しめよう。なおビシュコフ指揮の《5番》の時にはワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》の《前奏曲と愛の死》も組み合わされるが、作品のコンセプトから見ても、これは巧い選曲である。

■ドイツ・オーストリアの名曲特集がお好きな方へ
来シーズンの定期では、独墺系の作品だけで固めたプログラムが8つを数える。前項の「重厚壮大」プログラムを含めれば、シーズン27のプログラムのうち、実に半数近くの13のプログラムが、独墺系のみで固めたもの、ということなる。昔から独墺系の作品に縁の深いN響と言われているが、来シーズンもその例に漏れない。その上、後述する「ミックス・プログラム」のなかにもベートーヴェン、モーツァルト、R.シュトラウスなどの作品が含まれているのだから、その比率は更に高くなる。この方面のレパートリーがお好きな方にとっては、こたえられない魅力であろう。
注目の1つは、ホグウッドが指揮する「メンデルスゾーン・プロ」だ。《フィンガルの洞窟》と《ヴァイオリン協奏曲》では、現在演奏されている版とは別の版が使われるという面白さもある(9月A)。また、首席客演指揮者プレヴィンが指揮するモーツァルトの3つの交響曲も、「ワルターのモーツァルトを精神的な師とする」と語ったプレヴィンのヒューマンな指揮が聴きものだろう(10月B)。R.シュトラウスの作品もプレヴィンの十八番もので、今回はこれに現代ドイツの作曲家リームの《厳粛な歌》を組み合わせるという意欲的な趣向もある(10月A)。同じシュトラウスでも、ドイツのリヒャルトと、ウィーンのヨハン一家とを組み合わせる「両シュトラウス」を聴かせるのがフォスターだ (1月A)。
もちろん、永遠の定番ともいうべき「ベートーヴェン・プロ」も欠かせまい。ホグウッド指揮(9月B)、サンティ指揮(11月B)、ブロムシュテット指揮(4月C)と、3つもそろっている。別に、サンティが指揮するウェーバー、シューベルト、ブラームスの組み合わせ(11月A)は、文字通り独墺音楽の真髄を一望できるプログラムだろう。

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■ロシア・東欧の音楽がお好きな方へ
来シーズンはいつにもまして、ロシアものが多い。おなじみチャイコフスキーの名曲集(フォスター指揮、1月C)やラフマニノフ特集(尾高指揮、5月A)があるほか、ロシア生まれのビシュコフがショスタコーヴィチとストラヴィンスキー(2月A)およびラフマニノフとチャイコフスキー(2月B)を指揮して故国の情熱を聴かせるのが聴きものだろう。なおロシア系の作品は、次に紹介するミックス・プログラムにも20世紀の作品を中心にたくさん入っている。
東欧の作曲家は、特集としては「ドヴォルザーク・プロ」(アシュケナージ指揮、6月A)の1プログラムのみ。

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■いろいろな作曲家を組み合わせたプロがお好きな方へ
音楽監督時代には近代や現代の作品を意欲的に取り入れたプログラムで際立っていたデュトワだが、12月の客演では、比較的中庸を得たプログラムを編成している。といっても、指揮する8曲のうち6曲が20世紀の作品であるところが、いかにもデュトワらしい。ショスタコーヴィチの《ピアノ協奏曲第2番》とストラヴィンスキーの《アゴン》にR.シュトラウスの名作(12月A)、ショスタコーヴィチの《交響曲第11番》とラヴェルの名作(同B)、ヤナーチェクの《グラゴル・ミサ》とチャイコフスキーの名作(同C)など、いずれもなかなかセンスに富む選曲だ。
dyutoa.jpgそういえば、このショスタコーヴィチとストラヴィンスキーなど20世紀に活躍したロシア系の作曲家の作品を西欧の古典の名曲と組み合わせるプロが、来シーズンの定期にはかなり多い。近年は近・現代音楽に手を拡げているホグウッドはモーツァルトとハイドンの名曲にプロコフィエフとストラヴィンスキーの擬古典主義的作品を組み合わせており(9月C)、プレヴィンもモーツァルトの協奏曲のあとにショスタコーヴィチの交響曲の《5番》を指揮する(10月C)。イタリアの名匠サンティまでもが、レスピーギとヴェルディのあとにストラヴィンスキーの《火の鳥》を振る(11月C)。
このようなプログラムの利点は、傾向の異なる作曲家のものでも、組み合わせによっては意外な共通点を見出せたり、思わぬ対照の妙を楽しめたりするところにあるだろう。しかもこれらの組み合わせ、すこぶる味のあるものが多い。
さて、どちらかといえば全体にスタンダードな名曲の多いN響定期のなかにあって、2人の日本人若手指揮者が受け持つプログラムは、いかにも彼ららしく意欲的で個性的だ。広上淳一は武満──ベートーヴェン──プロコフィエフという意表を衝いたラインナップを披露するが(1月B)、武満の《3つの映画音楽》は、今シーズンのN響が定期で取り上げる唯一の日本人作品である。いっぽう近・現代音楽をしばしば指揮している下野竜也は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲をなかに挟み、ベリオ編曲によるボッケリーニの《マドリードの夜の帰営ラッパ》(これは豪壮で愉快な編曲だ)と、バーバーの《弦楽のためのアダージョ》やブリテンの《シンフォニア・ダ・レクィエム》というプログラムでN響定期に新風を吹き込む(5月B)。

 (とうじょう・ひろお 音楽評論家)

NHK交響楽団9月~2010年6月のコンサート情報(クリックするとNHKサイトを離れます)  

投稿時間:18:53

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