2012年01月31日 (火)NHK交響楽団 2月定期公演の聴きどころ
同世代の指揮者二人の競演
NHK交響楽団の2月の定期公演3プログラムには、不思議な共通点がある。指揮者は、1965年生まれのベルトラン・ド・ビリーと、1964年生まれのジャナンドレア・ノセダと、同世代の二人。A、B、C、いずれのプログラムにもロシアの作曲家による協奏曲が演奏され、それぞれの独奏者は、いずれも1970年を中心に前後5年に収まる生まれ。まるでテーマがあるかのような統一感のある 3プログラムからは、なにか面白そうな予感がしてくる。
待望のN響デビューを飾るベルトラン・ド・ビリー
Aプログラムは、2月11日(土)午後6時開演、2月12日(日)午後3時開演、NHKホール。ドビュッシー《牧神の午後への前奏曲》、イザベル・ファウストのヴァイオリンでプロコフィエフ《ヴァイオリン協奏曲第1番》、そしてシューベルトの大作《交響曲第8番ハ長調「ザ・グレート」》。 指揮はベルトラン・ド・ビリー。
ド・ビリーはパリ生まれのフランス人だが、ウィーンで名声を築き、今非常に人気の高い指揮者。今回が待望のN響デビューである。気持ちよく弾むリズムを武器にした活きの良い音楽作りに加え、オペラを得意とするだけに長大な曲をまとめる能力にも長けており、シューベルト《ザ・グレート》は充実した演奏が期待できるだろう。そしてドイツの知性派ヴァイオリニスト、イザベル・ファウストが、モダンな美しさを湛えたプロコフィエフ《ヴァイオリン協奏曲》を弾く。弓捌(さば)きからして格好のよいファウスト、さぞや見事な切れ味のプロコフィエフを弾いてくれることだろう。
近代イタリアの大作曲家、カセルラをノセダのタクトで
Cプログラムは、2月17日(金)午後7時開演、2月18日(土)午後3時開演、NHKホール。デニス・マツーエフのピアノによるチャイコフスキー《ピアノ協奏曲第1番》と、カセルラ《交響曲第2番》。指揮はジャナンドレア・ノセダ。注目はカセルラ(1883~1947)の交響曲。カセルラは 20世紀前半のイタリアの重要な作曲家で、ことにイタリアにおける新古典主義の旗手として知られる。《交響曲第2番》はカセルラが20代後半のときの作品で、音楽にはまだ後期ロマン派の影響が色濃く残っている。これは R.シュトラウスやマーラーの交響曲がお好きな方には聴き逃せないものだ。ノセダはこの曲に取りつかれた一人のようで、近年好んで取り上げている。チャイコフスキー《ピアノ協奏曲第1番》では、1998年の第11回チャイコフスキー国際コンクールの優勝者、デニス・マツーエフの鮮やかなピアノ独奏を堪能できるだろう。
成長著しいディンドがソロを弾くショスタコーヴィチに注目
Bプログラムは、2月22日(水)、2月23日(木)、共に午後7時開演、サントリーホール。エンリコ・ディンドを独奏者に迎えて、ショスタコーヴィチ《チェロ協奏曲第2番》、そしてラフマニノフ《交響曲第3番イ短調》。こちらも指揮はジャナンドレア・ノセダ。ショスタコーヴィチ《協奏曲》のソリスト、ディンドは元ミラノ・スカラ座の首席チェリスト。かの名チェリスト、ロストロポーヴィチがその晩年、ディンドに大きな期待を寄せて、自ら伴奏指揮者を買って出るなど、ディンドがソリストとして一人立ちする後押しをしていた。ディンドもロストロポーヴィチの精神を受け継ぎ、作品の内面に喰らいつくような求心力を得て、近年大きな注目を浴びるチェリストに成長した。
ショスタコーヴィチ《チェロ協奏曲第2番》は、ロストロポーヴィチが初演を託された曲だ。この苦難だらけの人生を送った作曲家の最晩年の渋く暗い音楽を、ディンドは、ロストロポーヴィチから受け継いだ精神で深く掘り下げてくれることだろう。イタリア人ノセダは、長きに渡ってサンクト・ペテルブルクのマリインスキー劇場においてワレリー・ゲルギエフの下で働き、ロシア音楽も得意としている。名ピアニスト、ラフマニノフ《交響曲第3番》を彼が取り上げたのは、決して上演頻度の高くないこの作品の真価を問わんとしているからこそだろう。《交響曲第3番》は、ラフマニノフがロシアを離れてから米国に移住するまでの間、スイスを拠点としていた時期の作品。ロシア時代のピアノ曲における甘く美しいラフマニノフとはまた異なった、激動の時代の中で進むべき道を切り開こうとする人間ラフマニノフの姿を、ノセダはシャープに描いてくれることだろう。
(吉田光司)
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投稿時間:11:50
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