ぶんけい月刊コラム

Column.10

ぶんけいさん

Nコンお疲れさまでした。
有観客開催とはならなかったものの、この状況下でも大会が催されたことに感謝です。

高校全国大会・決勝会場にて


『disPair』の良かった点を自分で挙げるとするならば、この3つだ。
① 舞台が化学室であること(THE教室でない)
② リアルとは言い難いキャラが登場する
③ 上記の設定のおかげで、非日常な言動が成立する


ひとことで言うならば『フィクションだと割り切った』のが良かった。
大会では「整合性があるか・リアルか」といった観点で審査されることも多かったが、大事なのはそこではないと思っている。

たとえば、主人公の帰り道のシーンを描くとする。
リアルな帰り道を考えてみると、歩いて、自転車に乗って、友達と話しながら、など。
まあいわゆる「普通」の景色になる。

ところが、ちょっとひねってみるとどうだろう。
・白線の上だけを歩いて帰る謎の行動
・校門を出てすぐのところで転んで泥まみれの状態で帰る(周囲からの視線)
・吹けない口笛をひたすら練習している
このような一つの要素がシーンに乗っかるだけで、描けるものは大きく変わってくる。
(おまけに、観客はこういった要素を強く記憶する。「帰り道」そのものは記憶されない)

『disPair』は化学部における部長の座争いの物語だが、クラスにおける委員長の座争いだった場合、描ける要素が下記のように変化する。

化学部 クラス
決め方 決着するまで議論 投票
登場人物 1人〜数十人 2、30人程度
その他 化学という専門性がある 専門性はないが多様な人物がいる


このように、それぞれが持つ武器は違ってくる。

そして、Nコンの場合。

多くの作品で”教室”が舞台となる。
であれば、まずはビジュアルから変えてみるのも一つの手だ。
(変にすればいいという意味ではない。しっかりと理由を持たせる必要もある)

君がいま「三角関係の物語」を書いているとしよう。
その3人がどんな人物であれば、より盛り上がるだろう?
↑これを深く追求し、あらゆるパターンを考えて、ベストを見つけ出すのがとても大切。
(結構みんな思いつきで進めちゃう。ぼくもそう)

・同じクラスの3人?
・同じ部活動の3人?
・いまは離れ離れとなった、同じ中学校の3人?
・部員、元部員、マネージャー?
・部長、副部長、先生?
・犬派、犬派、猫派?(?)
無限にパターンが出せると思う。
ぜひ試してみてほしい。

高校3年生のときにつくった『disPair』は、喜ばしいことに全国優勝を果たした。
でもそれは、10年近く前の話。

いまの自分は、これからに向かって進まなければならない。
創作って残酷だなと思う。
つくってもつくっても、全然満足しない。
捉え方によっては、呪いだ。

あの日、優勝したことによってぼくは呪われたんだと思う。
もっと面白いものをつくりたいと思うようになってしまった。
そこに進むことのできる喜びと、越えなければならない呪い。

それらを背負いながら、今日も創作をしている。

連載NコンWEBコラム「ぶんけいの書斎」
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