2月20日(日)放送
深く掘れ 己の胸中の泉 沖縄学の眼差し
 
写真・左:“沖縄学の父” 伊波 普(いは ふゆう)
写真・右:伊波普の愛弟子 仲宗根 政善(なかそね せいぜん)ふるさとの方言研究で大きな足跡を残した


 
写真・左:沖縄の万葉集とも呼ばれる歌謡集「おもろさうし」
写真・右:石垣島の豊穣を願う「結願祭」 主役の「ミルクガナシ」
 
写真:
安仁屋 眞昭(あにや さねあき)さん 琉球王朝でおもろを歌う役職「おもろ主取」の末えい現在も五曲を伝承している

100年前の1911年、琉球最古の歌謡集「おもろさうし」の解読を中心に据えた沖縄文化再発見の書が出版された。伊波普ゆう著『古琉球』。“沖縄学の父”とも呼ばれる伊波は、沖縄が日本に組み込まれ、その文化が根こそぎ否定された時代に、かつて琉球の村々で歌われていた神歌「おもろ」を解読し、沖縄文化の価値を世に問おうとしたのである。それは、近現代史の荒波に翻弄され続けてきた沖縄にあって、独自の文化価値を確認し、自立の道を模索してきた沖縄学の起点であった。
その後、沖縄学は、仲宗根政善等によって継承されてゆく。ひめゆり学徒隊を引率し、その史実を訴え続けたことで知られる仲宗根は、伊波のまな弟子だった。仲宗根は、アメリカ軍統治下の沖縄で、故郷の方言の中に、沖縄の心を探し続けた。
琉球処分、沖縄戦、占領、本土復帰。いつの時代にも、沖縄学は、言語学・民俗学を中心に据えた学問でありながら、常に時代と向き合い続けることを宿命づけられてきた。伊波普ゆうは最後の著作となった『沖縄歴史物語』を次のように結んでいる。「地球上で帝国主義が終わりを告げる時、沖縄人は「にが世」から解放されて「あま世」を楽しみ十分にその個性を生かして、世界の文化に貢献できる」
しかし「あま世」は遠い。普天間基地は、沖縄県民の総意を無視するように県内移設移の方向が模索されている。伊波が創始した沖縄学は今、私たちに何を語りかけるのだろう。
番組では、沖縄文化の魅力を味わいながら、伊波普ゆうとそれに連なる“沖縄学”100年の系譜を近現代史の中にたどる。それは沖縄学のまなざしから沖縄の現在を見据えることである。

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