12月26日(日)放送
大阪“非常事態”宣言 生活保護・受給者激増の波紋
 

写真・左:毎月1日の生活保護受給日には早朝から受給者が長蛇の列を作る(浪速区役所にて)
写真・右:平松邦夫市長ら大阪市「生活保護行政特別調査プロジェクトチーム」は激増する保護の実態解明に当ってきた

 

最後のセーフティネットと言われる 「生活保護」 をめぐって異変が起きている。ここ数年で受給世帯が激増し、いまや全国135万世帯187万人。受給者数は1990年代半ばの倍を超え、膨れ上がる生活保護費は国や地方自治体の財政を直撃している。なかでも最も深刻なのが大阪市で、受給者人口13万6600人。この数字は市民の20人に1人が生活保護を受けていることを意味する。22年度に計上した生活保護費は2863億円…。市税収入の半分に相当する額で、このまま受給者が増え続ければ財政がたちゆかなくなるのは明らかである。

危機感を抱いた平松邦夫市長は、去年秋、市役所に「生活保護行政特別調査プロジェクトチーム」を起ち上げ、激増の実態と背景の解明を急いできた。現在は患者のほぼ全員が生活保護受給者である市内16医療機関に対する調査を行うなど、医療と「貧困ビジネス」との結びつきにメスを入れようとしている。また、大阪の不動産業者が全国各地で路上生活者を集め、大阪に連れてきて生活保護を受給させアパートに住まわせることで、空き部屋を埋め家賃収入を確保するという新たな動きも明らかになってきた。

一方、民間企業のノウハウを導入して、受給者に履歴書の書き方や面接の受け方から指導するなど就労支援にも力を入れているが、低迷する経済情勢のなか受給者の再就職は困難を極め、ようやく就職できても生活保護を廃止できるほどの収入にはならないケースが大半である。税金をつぎ込んでようやく自立(保護の廃止)までこぎつけても、失業や派遣切りによってその何倍もの人数が新たに生活保護に落ちてくるといういたちごっこなのである。

不況が最も深刻な大阪で起きたことは、やがて全国で起きると言われる。番組は苦悩する大阪市の生活保護行政最前線に密着取材、「セーフティネットの最後の一枚」が破綻しつつある現実を描き出す。

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