7月25日(日)放送
食べなくても生きられる 〜胃ろうの功と罪〜

日本に胃ろうを広めた外科医の鈴木裕さん(国際医療福祉大学)
いま、胃ろうに1つの疑問を感じている

 

男女を合わせた平均寿命が80歳を越え、日本は世界最高の長寿国になった。その理由の1つが、欧米とは異なり積極的な延命治療が行われていることにある。中でも、胃に直接栄養を送る経管栄養(胃ろう)は急激に普及し、現在およそ40万人に施されている。もともと胃ろうは、摂食障害のある子どもたちのために開発された技術だが、患者への負担が少なく生存率が画期的に延びるため、高齢者にも応用されるようになった。現在の日本では、嚥下の能力が衰え、ものを食べられなくなると、ほぼ自動的に胃ろうが施されるまでになっている。
しかしいま、この現状を変えようという動きが医療現場で起きている。「ただ生かすことが、本当に患者のための医療か」「自然な死を迎えられない現状が良いのか」という声が上がっているのだ。その動きの中心にいるのが、胃ろうの技術を日本に広めた第一人者の外科医だ。「私には延命至上の現状を招いた責任がある。だからこそ、勇気をもって訴えていかなければならない」という。私たちは、胃ろうをどう考えるべきか。そして、どう生き、どう死ぬべきか。その答えを模索する一人の医師に密着する。

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