7月4日(日)放送
HIVと生きる

写真:HIV陽性者やその周辺の人々が書いた手記をさまざまな立場の参加者が朗読するイベント

 

HIV――厚生労働省によれば、日本での感染者報告数は、2009年末までで16903件。先進国の中では唯一増加傾向にある。特にここ5年間の報告数は、累計の実に40パーセントをしめており、HIVが過去の病ではなく、「今ここにある病」であることを物語っている。
HIVは、医療技術の進歩により、感染しても適切な治療ができれば、通常の生活を送ることが可能になってきた。一方で、HIVに感染した陽性者の離転職経験者が4割を超えるという調査結果などもあり、社会の偏見が根強いことがうかがえる。医療・介護現場でも、“風評被害”を恐れて、患者を受け入れる病院・施設は少なく、陽性者たちは、行き場を失っているのが現状だ。そうした社会の中で、なかなか声をあげられず、陽性者の姿が見えてこないことが、余計に偏見・差別を生むという悪循環に陥っているという指摘もある。
そうした現状を変えようと、6年前にユニークな取り組みが始まった。陽性者の支援や予防啓発を担う複数の団体によって立ち上げられた「Living Together計画」。陽性者や周囲の人たちの思いをつづった手記を集め、月に一度、新宿のクラブイベントでそれをさまざまな人が朗読、HIVについて語り合うという取り組みは、現在、全国各地に広がりを見せている。感染の事実を誰にも伝えられない人、恋愛にも臆病になってしまい、孤独を募らせる人、一方で周囲の人たちに支えられ、幸せな日々を送っている人――陽性者の生活をリアルにつづった手記からは、今、HIVとともに生きる人々が抱える問題が見えてくる。番組では、集められた手記の朗読とともに、手記を書いた陽性者などの日常を取材。日本のHIV陽性者をめぐる現状・課題について改めて考える。

手記朗読:中谷美紀(女優)、松尾スズキ(作家・演出家・俳優)

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