戦艦、戦車、戦闘機、肉弾三勇士に満州国旗―戦争をモチーフに描いた着物、「戦争柄」。日清戦争から日中戦争の時代に大流行したが、その後歴史の中に埋もれてしまった。
勇ましい柄として、男性用の羽裏や襦袢(じゅばん)、男児の日常着が多いが、花柳界などの女性の着物にも取り入れられた。近年、銃後の暮らしを探る研究が進み、生活用具や衣類にあらわれる戦争イメージが重要視されるようになってきた。戦争柄の着物は、人々の戦争への熱狂を知る手がかりとして注目され、収集と研究が進んでいる。戦争すなわち「勝利」だったこの時代、戦争柄は吉祥模様として国威発揚の機運を盛り上げた。着物の柄に政府や軍部の指導はなく、染め元が「売れる」から作った流行の柄だった。流行に地域差はあるが、人々は積極的に戦争柄を選んだ。着た記憶のある人たちは、先端ファッションをまとう誇らしさがあったと証言する。太平洋戦争が始まるまでは、戦争は消費の対象だった。戦争への熱狂は、上からの強制の結果だけで生まれたのではなく、人々の側から発生し、醸成されていった面もあることを戦争柄の着物は示している。また着物のほかにポスター類、子供茶碗(わん)といった生活具などから、戦争の表象を探っていく。
番組では、戦争柄研究の第一人者であり収集家でもある東海大学国際文化学部の乾淑子教授と作家の澤地久枝さんを中心に、メディア、子どもなど様々(さまざま)な視点で、戦争柄に現れた事象を読み解いていく。
【出演者】
澤地久枝(作家)
乾淑子(東海大学国際文化学部教授)
山中恒(作家)
吉見俊哉(東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授)
浅川範之(江戸東京たてもの園学芸員)
木立雅朗(立命館大学文学部教授)ほか
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