5月24日(日)放送
地域医療再生の処方せん
〜最前線に立つ5人の提言〜

写真・左:医師の希望に沿った農地を捜す菊池永菜さん
写真・右:4月から入院ができなくなった住田地域診療センター(岩手県)

 

地方自治体が経営する自治体病院は長いあいだ地域の医療を支えてきた。それが医師不足と財政難(膨大な経営赤字)のなかで苦しんでいる。従来通りの規模・かたちで医療を継続することは不可能なのだが、再編を図ろうにも様々な利害が錯綜(さくそう)してまとまらないのが現状である。岩手県では5つの県立診療所の無床化(入院ができなくなる)をめぐって、知事が議会で土下座する騒ぎに。千葉県銚子市では医師のいなくなった市立病院を廃止し、民間に委譲しようとした市長が住民によってリコールされた…。

地域医療再編をめぐる混乱から浮かび上がってくるのは、日本の医療が抱えてきた様々(さまざま)な歪(ゆが)みである。いま進められている医療再編から抜け落ちているものは何か?日本の地域医療を再生するには何が必要なのか?…最前線の現場で活躍する5人の論客が語り合う。

「自治体病院の病床を減らすことにはやむを得ない面もあります。本来は医療の問題ではない、いわゆる「社会的入院」の患者を入院させて、過大な病床を維持し、病床あたりで支払われる地方交付税を確保してきたからです。しかし、現状のまま病床を減らせば、行き場のない高齢者が大量に生じてしまいます」
(伊関友伸 城西大学准教授)

「医師の偏在が問題だといいますが、専門医は偏在させなければ力を発揮できません。専門医は都市の大病院に"偏在"させ、広範な症状を基本的に診ることができる総合医をあまねく地域に行き渡らせるべきです。それには、住民も専門医信仰、総合病院信仰を棄てなければなりません」
(兼古稔 北海道上富良野町立病院副院長)

「遠野では、この春から新たに二人のお医者さんが県立病院に来てくれました。 農業をやりたいという医師には、十数ヶ所を下見して適当な候補地を紹介しました。奥さんの意向も大切で、倉庫が欲しい、家庭農園を作りたいなどの要望に応えています。地域に必要な医療を確保したうえ、家族も含めた若年人口の増加を図る必要があります」
(菊池永菜 岩手県遠野市 市民医療整備室長)

「確かに行政の担当者や議員には医療についての理解度が低い場合が少なくありませんが、ドクターの側にもそうした人たちに対する無理解があります。"免許の人"(医師)と"選挙の人"(首長・議員)とが互いに理解しあわなければ、地域医療の再生はできません」
(佐藤元美 岩手県藤沢町民病院院長)

「もはや大学に頼ってみても地域の医療の再生はありません。地域に必要な医師を地域で育て上げることが必要です。それには、住民はもちろん、開業医や地域の薬剤師の協力が欠かせません。自(みずか)ら医師を育てる地域のみが医療を確保できる…これが医療再生のキーワードです」
(平井愛山 千葉県立東金病院院長)

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