3月1日(日)放送
ひとりと一匹たち 多摩川 河川敷の物語

写真:左から
・多摩川で暮らして6年目 16匹の猫と一匹の犬を飼っているおじさん
・多摩川で暮らして2年目 4匹の猫と暮らしているおじさん
・ホームレスが飼う猫を撮影する小西修さん
・多くのホームレスは空き缶を売って生活しているが、世界不況の中、空き缶相場は暴落した

 

写真家、小西修が多摩川にすむ猫を撮影しはじめて16年になる。河川敷に捨てられた猫たちが懸命に生きる姿に心ひかれてきた。小西にとって猫とつきあうことは、ホームレスとつきあうことでもある。ほとんどすべての猫は、ホームレスとなった人々が世話をしているからである。

東京と神奈川の境界を流れる多摩川。その河川敷に暮らすホームレスは、およそ900人、全国の河川の中でも最多である。もう10年近くテント小屋で暮らす60代、最近、急増した30代・40代のホームレス・・・。けがや不況、人間関係の挫折、ホームレスになった理由はさまざまだ。彼らは社会からはじき出された自分と重ね合わせるように、捨てられた猫に愛情を注いでいる。

今、世界不況の波が河川敷を襲っている。ホームレスの多くは空き缶を集めて売り、生活の糧を得ているが、その空き缶の相場は、去年秋に比べ、4分の1にまで下落した。河川敷の世界も、かつてない危機にみまわれているのだ。その中で、ホームレスたちは、新しい仕事を探し、自分の食費を切り詰めながら、猫たちの餌を確保しようとしている。

ホームレスたちは河川敷暮らしを“丘から川に降りる”という。そして、一度降りると、“丘”に上がるのは、物理的にも精神的にも困難だ。ある30代のホームレスは、“丘”について“なんか怖いのだ”と語る。競争原理が支配する“丘”の世界、不要になった生き物を壊れた玩具の様に捨てていく“丘”の世界。そこは川に降りた者たちの目に、どのように映っているのだろう。番組では、小西さんと一緒に多摩川を歩き、猫とホームレスの秋から冬にかけての数か月を取材する。“ひとり”たちと“一匹”たちの悲しくも優しい物語、そこからは弱者の存在を許さない社会の様が浮かび上がってくる。

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