政治学者・姜尚中さんの人生のかたわらにはいつも「文豪・夏目漱石」の本があった。近代人の自我を描き、その先に明るさを決して見出していないにもかかわらず、「愛」にも「金」にも「本能」にも逃げず“悩み”を引き受ける覚悟を示した漱石。そうした漱石の文学に内在するメッセージは、在日コリアンとして常に「自己矛盾」と「自己嫌悪」を抱えて生きてきた姜さん自身の生き方に大きな影響を与えてきた。
人はいかに「生きる」のか、そして「生きる」ことと背中合わせにある「悩み」とどう向き合っていくべきなのか。姜さんが得た漱石を通じ培った“悩む力”の大切さを語るトークドキュメンタリー。それは混沌とした今の時代に生きる人たちへの応援歌となる。
●姜 尚中(カン・サンジュン)……1950年、熊本市生まれ。政治学者。早稲田大学大学院修了後、ドイツへ留学。現在は東京大学大学院教授。主な著書に「マックス・ウェーバーと近代史」「東北アジア共同の家をめざして」「在日」など。
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